「広報研修」とは、主に広報PR業務を体系的に学ぶ教育プログラムを指します。社内研修を導入するほか広報研修のカリキュラムを外部に依頼する企業も見られますが、具体的な役割や実施までの流れがわからず悩んでいる広報PR担当者の方もいるのではないでしょうか。
広報PR部の立ち上げ前はもちろん、広報PR業務の課題解決を目的とした取り組みにも研修が有用です。本記事では、広報研修の重要性を解説したうえで、実施目的や研修で扱うべきテーマを解説。効果を発揮するためのポイントもピックアップしていますので、広報研修の導入を検討中の方はぜひ参考にしてください。
広報研修が重視されている背景
広報PRは、ステークホルダーとの信頼関係を構築したりブランド価値を高めたりといった役割を担っています。この効果を発揮させるためにも広報研修で担当者の知見を深めたり、スキルアップや経験値アップを図ったり、重要視されていると感じる方も多いのではないでしょうか。広報研修が必要とされる背景を3つの項目に分けて解説します。
高まる広報PR活動の必要性
コミュニケーションを通したステークホルダーとの関係構築を担う広報PR活動は、近年ますます需要が高まっています。情報の拡散スピードが速く、生活者の価値観が多様化することで競合他社との差別化も困難になっているためです。
メディア環境の変化にいち早く対応し、自社商品・サービスならではの価値を認知してもらうためには各ステークホルダーに応じた広報PR施策を検討しなければなりません。広報研修を通して発信力・対応力が身につけば、効率的かつ効果的な業務を実現できるでしょう。
デジタル化によるメディア環境変化への対応
広報研修が重視される大きな理由のひとつが、急速に進むデジタル化です。生活者が情報を得るツール・プラットフォームが多岐にわたるため、広報PRの現場においてもメディア環境の変化に対応しなければなりません。
広報PRの目的は認知拡大ですが、単に知ってもらうのではなく「届けたい人に、届けたいときに届ける」という戦略が必要となります。テレビや新聞といった従来のメディアに加え、SNS・ホームページ・プレスリリース配信サービスなどインターネットを活用し、適切な方法で施策を展開するためにも広報研修は重要なプロセスといえるでしょう。
広報PR担当者に求められるスキルの多様化
情報発信のバリエーションが増えた昨今、広報PR担当者に求められているスキルも多様化しています。以下のようなスキルを習得するだけでなく、重要な場面で適切に対応する力も必要です。
- 信頼性・透明性を向上させる伝え方
- 炎上リスクなど危機管理能力の習得
- 経営戦略と連動した戦略的広報
IRや採用など他部署との連携力を高めることで、複数の視点を持って対外的な発信ができるようになります。臨機応変な対応力に加え、ほかの分野の知見を深めておくことは広報PR担当者にとって重要なスキルといえるでしょう。広報研修はこのような取り組み方を知る機会にもつながるのではないでしょうか。
広報研修の役割と実施目的
広報研修には、新任者の教育のほかにもチーム全体の専門性を底上げしたり企業全体で広報PR意識を浸透させたりといった役割があります。複数人で担当するケースが多いため、全体でスキルアップして知識・技術の量と質を底上げするのも重要な目的です。広報研修における具体的な役割と実施目的について解説します。
広報PR部の立ち上げ・新任者の教育
そもそも広報PRに特化した部門がない企業の場合、広報研修を経てチームを構成する流れが適切といえます。立ち上げ自体に厳密な規制はないものの、知識が乏しいままでは十分な業務内容を検討・構築しづらいためです。
広報研修で知識を深めたり、実践に近いワークプログラムを体験したりすることで、立ち上げ直後から効果的な業務に取りかかりやすくなるでしょう。ゼロから現場に出るのではなく、事前学習のようなかたちで取り組むことにより、広報PR担当者としてするべきことを理解したうえでスタートできます。
広報PRチーム全体のスキル・専門性を底上げ
広報PR部の立ち上げや新任者の教育目的だけでなく、継続的な研修によりチーム全体のスキルアップが期待できます。広報PRに関するスキル・専門性を底上げするだけでなく、メンバーでスキルを共有したり共通のプログラムを受けたり、チームワークの向上にもつながるでしょう。
定期的な広報研修により豊富なスキルが獲得できれば、よりテクニカルな戦略設計を立てて類似商品・サービスや競合他社との差別化を図れるようになります。専門性を高めたメンバーは新任者の教育にもあたれるため、広報研修は長期的に見ても重要な役割を担っているといえるでしょう。
全社の広報PR意識の浸透
企業全体で研修プログラムを導入することにより、広報PR業務の重要性や取り組み方といった共通意識を浸透させられます。自社事業の業界を中心に発信したり、社内での広報PR活動として社内報を発行したり、目的に応じた施策の必要性を理解してもらうきっかけになるでしょう。
また広報研修は、自社の広報PRに対するコンセプトや理念などを統一し、企業全体で齟齬が生じないようにするためにも有用です。
広報研修で扱うべき基本テーマと内容
広報研修では、基礎的な部分からメディア対応、危機管理広報といった部分まで幅広く取り扱わなければなりません。具体的にどのようなテーマがあるか把握できると、自社の広報PR業務と教育に必要な内容も自ずと見えてくるでしょう。広報研修で扱うべき6つのテーマについて解説します。

広報PR業務の基礎理解
広報研修で始めに学ぶべきは、広報PR業務全般の基礎知識です。広報PRの必要性から企業としての役割、企業ブランディングとの関係といった部分を深堀りし「広報PRとは何であるか」の解像度を高めていきます。
社外に向けた活動だけでなく社内広報も重要な業務となるため、社内外の広報PR活動の違いや、それぞれの役割・目的もここで取り上げましょう。以下の記事では、広報PRの種類を8つピックアップしてひとつずつ解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
プレスリリース作成・発信の基本
広報PR活動において、特に重要な担当業務となるのが「プレスリリース」です。新商品・サービスの発売や店舗リニューアル、年頭所感などあらゆる企業情報をステークホルダーに向けて発信します。メディアフックにつなげるにはコンテンツを充実させる必要があるため、プレスリリースの書き方を学ぶ機会は必要と考えたほうがよいでしょう。
基本的な構成はもちろん、プレスリリースに適したタイトル設計やビジュアルコンテンツの使い方といった組み立ても大切。PR TIMESなどの配信サービスを活用したり、メディア関係者に直接文書を送付したり、チャネルをうまく使い分けることも必要です。
プレスリリースの構成については以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧になってみてください。
メディア対応・取材対応の実践
能動的に情報発信をする業務が多い広報PR活動ですが、取材や会見などの対応を求められることもあります。記者をはじめとするメディア関係者と良質な関係を構築できるよう、メディア対応・取材対応の実践も取り入れなければなりません。
インタビュイーとしてのスキル習得はもちろん、記者会見の段取りを整えたり、FAQを事前に作成したりといった業務も重要です。「メディアトレーニング」のメリットや費用について解説している以下の記事も参考にしてみてください。
SNS・オウンドメディア活用の基礎
インターネットを活用した広報PR業務の中でも、SNSやオウンドメディアの基礎は固めておきたい分野です。特にXをはじめとするSNSはタイムリーかつ高頻度な発信に向いているため、プレスリリースより少ないボリュームでも手軽に公開できます。
ステークホルダーとの関係構築につなげるには、投稿設計や炎上対策といったルール整備が必要。社内で統一すべきルールを事前に整えられるよう、広報研修で詳しく学べると安心です。以下の記事では、広報PR担当者によるSNS運用について説明しています。
危機管理広報の初動と準備
何事にも想定外はつきものですが、広報PR活動によるトラブルは企業やブランドのイメージを下げる結果になりかねません。対応のタイミングや発言を誤ると思わぬ結果を招くリスクがあるため、信頼性を守る、あるいは回復させる危機管理広報は非常に重要です。
広報研修では、危機的状況として想定されるシナリオを作成したり、一次情報を整理したりといった初動・準備の学びを深めます。広報PR部だけでなく社内全体での伝達フローが明確であれば、もしもの事態にも臨機応変に対応できるでしょう。
以下では危機管理広報の基礎や役割のほか、具体的なマニュアル作成についても解説しています。
測定・分析・効果検証
プレスリリース配信やSNS運用などの広報PR活動で「認知拡大に効果が見られたか」を明らかにするためには、明確な目標設定と効果検証が必要です。広報研修で正しい測定・分析・検証の方法を習得できれば、中長期的な広報PR施策に有効活用できます。
効果が見られれば終わりというものではないため、繰り返しPDCAを回さなければなりません。反響の程度を把握できるよう、フレームワークとその役割を知っておきましょう。目標設定とKGI・KPIについては以下で詳しく解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
広報研修を設計するときの進め方
実際に広報研修を設計する際は、研修を受ける人がどのようなゴールを踏むか検討します。広報PR活動における課題を洗い出したり、実践的なワークプログラムを企画したりといった作業も重要です。外部リソースを活用する企業も多いため、自社に合った研修内容を組み立てていきましょう。広報研修の設計の進め方を、3つのステップで解説します。
STEP1.研修の対象者とゴールを設定する
広報研修のプログラムを決める前に、まずは「誰にどうなってほしいか」を明らかにする必要があります。新たに立ち上げる広報PR部の新任者なのか、稼働中の担当者なのか、さらに広報PR活動の何を中心に学んでほしいのかを検討してみるとよいでしょう。
研修後すぐに業務を担当する場合は、特に実践的なプログラムが重要となります。多くの場合基礎から応用へ段階的に展開していくため、対象者がゴールを達成できるような内容を見極めましょう。
STEP2.広報PRの課題を踏まえたカリキュラムを設計する
カリキュラムを組み立てる際は、現時点で自社の広報PR活動にどのような課題があるのか整理しておくのがおすすめです。広報PRの一般知識を学ぶのはもちろん重要ですが、課題解決が期待できるプログラムがあれば積極的に取り入れましょう。
認知拡大などの効果につながるだけでなく、担当者が研修後の業務をイメージしやすいメリットがあります。「プレスリリースの書き方がわからないから制作方法を中心に」「リスクマネジメントが甘いから危機管理広報に注力する」など、自社の課題をもとに設計していくとよいでしょう。
STEP3.ロールプレイやワークショップなど実践ワークを企画する
広報PR活動の現場をイメージしてもらうためには、実践的かつ現実的なワークプログラムを取り入れる必要があります。メディア対応を想定したコミュニケーションプログラム、プレスリリースを制作する筆記プログラムなどを検討しましょう。
- メディア対応:聞かれやすい質問リストを用いて回答する
- プレスリリース配信:基本構成にならってプレスリリースを作成する
- 危機管理広報:SNS炎上を想定し、適切なアクションを考える
筆記・ワークプログラムといったプログラムの形態を問わず、社外から講師をアサインするのも一案です。依頼には金銭的なコストがかかるものの、外部リソースの活用によって人的コストが抑えられます。
広報研修の効果を最大化する5つのポイント
広報研修の効果を発揮するためには、課題の分析やフィードバックといった社内体制が重要となります。広報研修を早急に取り入れればよいというものではないため、自社の現状を把握したうえで実施に進み、その後も効果測定や改善のPDCAサイクルを回すフローを徹底しましょう。広報研修のステップを踏まえて、効果を最大化するためのポイントを5つご紹介します。

ポイント1.広報研修の前に現状を分析し、目標を決める
広報研修を設計する際に重視したいのが、自社の現状です。なぜ広報PR活動に力を入れる必要があるのか、広報研修によってどのような効果・変化を期待しているのかを入念に分析することで、カリキュラムに取り入れるべき内容が見えてきます。
広報PR活動自体を学べていない段階であれば、想定している対象者に「何を学びたいか」「どこに課題があると感じているか」といったヒアリングを行ってもよいでしょう。参加者にとって納得感の薄いカリキュラムでは効果が発揮できないため、事前準備は非常に重要です。
ポイント2.実務に直結するカリキュラムを設計する
広報研修のカリキュラムが魅力的であっても、参加者がアウトプットできなければ効果を発揮できません。自社の事業や商品・サービスと関連性のないプログラムは現場での業務をイメージしづらいため、なるべく実務に近いカリキュラムを設計することが大切です。
社外の研修サービスを利用する場合は、各プログラムで何を学べるのか、自社事業に活かせそうか事前に確認したほうがよいでしょう。
ポイント3.広報研修の継続的な実践とフィードバック体制を整える
一度しっかり固めたカリキュラムを継続運用するのではなく、都度改善点を模索してアップデートする作業も重要です。引き続き取り入れるべき項目と変更すべき項目を洗い出し、フィードバックを反映しながら細かく調整していきましょう。
フィードバック体制を徹底することで、広報PR活動の移り変わりにも素早く対応できます。時流に合わせたカリキュラムを設計するためにも、広報研修の継続的な実践とフィードバックは重視したいポイントです。
ポイント4.研修効果の測定と改善サイクルの確立
広報研修によってどのような影響があったか把握するためには、PDCAサイクルが有用です。計画・実行・評価・改善のサイクルを長期間回し、研修に参加することで広報PR活動にどの程度の効果が表れたのか明らかにしていきましょう。
PDCAサイクルで重要なのは、参加者のフィードバックだけでなく業務効率化・反響獲得といった数値面も可視化することです。実際の広報PR活動によい影響があった部分、効果を最大化できる実施頻度など、計画から改善の流れを繰り返しながら自社に合った研修カリキュラムやスケジュールを調整します。
ポイント5.広報PRの専門家へ依頼し多角的に学習する
専門的な知識を持つ関係者がいない場合は、社外の研修サービスを活用したほうが効果的に学べるでしょう。課題解決に苦戦している状況であれば、社内のみでは見えづらい問題点が浮き彫りになって学ぶべき項目がわかるかもしれません。
また、多くの研修カリキュラムはテーマやカテゴリに特化しているため、専門的な知識を多角的に学ぶよい機会となります。社内で実現しづらいワークプログラムは、特に積極的に取り入れたい体験機会です。実施頻度やカリキュラムに応じて、社内研修・社外研修を組み合わせてもよいでしょう。
広報研修を継続的に実施して広報PRの課題を解決していこう
デジタル化が進む昨今、適切なメディアで適切なかたちの広報PR活動を展開するスキルが求められています。プレスリリース配信やSNS運用、炎上をはじめとする危機管理といったあらゆる場面に対応するためには、広報研修で多角的に知識を得ることが大切です。
広報研修にも多様なカリキュラムがあるため、自社の広報PRの課題を解決できるプログラムを選定していきましょう。実施後はPDCAサイクルを徹底し、フィードバックをもとにアップデートする作業も重要。今回ご紹介したプログラムテーマやポイントを参考に、価値ある広報PR活動につながる研修を検討してみてください。
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