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広報の役割とは?企業における広報部・広報担当者の5つの役割と必要な理由を解説

広報の役割とは?企業における広報部・広報担当者の5つの役割と必要な理由を解説

企業の信頼を築き、ブランド価値を高め、社会との関係をつなぐ――「広報」は、現代のビジネスにおいて欠かせない重要な機能です。しかし、広報部門や広報PR担当者が実際にどのような役割を果たしているのか、明確にイメージできていない方も多いのではないでしょうか。

広報は単に「情報を発信する仕事」ではありません。企業の戦略と連動しながら、社外との信頼関係を築き、社内外のステークホルダーと良好な関係を育む役割を担っています。

本記事では、企業広報・広報担当者の具体的な「5つの役割」と「広報が必要とされる3つの理由」をわかりやすく解説します。さらに、広報業務の実際の役割分担や、広報担当者に求められるスキル・資質についても紹介。これから広報部門を立ち上げる企業や、新たに広報職に就く方にとって役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

企業にとっての広報の5つの役割

広報の役割は、「企業と社会の信頼関係」をつくり、維持し、必要に応じて変化を促すことにあります。
単に情報を発信するだけではなく、社会の受け止めを受け取り、企業活動に反映し、信頼を積み重ねていく──その一連のコミュニケーション全体を担うのが広報です。

企業や団体などの組織にとって、顧客、社員、取引先、投資家、地域社会、メディアなどのステークホルダーと良好な関係性を構築・維持するための活動を「広報PR活動」と呼びます。広報PR活動の本質は、自社の考えや行動を社会に伝えることだけではなく、社会の声を受け止め、企業としての判断や行動を調整し続ける点にあります。

企業における広報PR活動の基本的な目的は、「自社と社会との間で信頼関係を構築し、維持すること」です。この目的を実現するために、広報には大きく分けて5つの役割が求められます。具体的には、「①伝える」「②対話する」「③フィードバックする」「④自己変革を促す」「⑤信頼関係をつくる」という役割です。これらはそれぞれ独立したものではなく、相互に連動しながら機能することで、企業と社会の持続的な関係性を支えています。

本記事では、『2021年度版 広報・PR概説』(公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会編)を参考にしながら、情報発信にとどまらない広報の本質的な役割について、実務の視点を交えて詳しく解説していきます。

役割とは

広報の役割1.伝える役割

広報PRの役割の中でもっとも基本的なものは、企業の存在意義や経営理念をステークホルダーに正確かつ効果的に伝えることです。企業の価値観やビジョンを理解してもらうことは、ビジネスの継続と長期的な成功のために欠かせません。

情報発信の方法は、プレスリリースやSNS投稿などの言語的コミュニケーションだけでなく、企業の姿勢や行動も含まれます。例えば、企業の対応一つで「誠実な企業」と評価されることもあれば、「信頼できない企業」と見なされることもあります。このような非言語的な要素は意図しない形で受け止められることも多いため、経験を積み適切なスキルや知識を持って対応することが大切です。

広報の役割2.対話する役割

伝えるだけで完結させず、ステークホルダーと双方向のコミュニケーションを行うことも広報PRの重要な役割です。広報PR活動のひとつでもある「広聴」を通じてステークホルダーの理解に努め、社会のトレンドを把握し、自分の発信した情報が相手にどのように受け取られたのかを確認します。

その際ステークホルダーの要求や批判にもしっかりと耳を傾け、相互の理解を深めることは、信頼関係の構築に不可欠なプロセスです。

また、顧客や取引先、メディアからのフィードバックに対しても、単に情報を集めるだけでなく、適切に対応し、相互の理解を深めることが信頼構築の第一歩です。

「広聴」については以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

広報の役割3.フィードバックの役割

広報の役割は、外部への情報発信にとどまりません。社会からの期待や評価・批判を受け止め、社内の仕組みや体制に反映させることも重要な役割です。

例えば、顧客の不満の声をただ受け止めるだけではなく、それを製品開発やサービス向上のヒントとして活用することで、企業の競争力向上につながります。

広報担当者は、外部の声を「ただの意見」として流さず、社内の意思決定に反映できる仕組みを作ることが求められます。

広報の役割4.自己変革を促す役割

ステークホルダーからのフィードバックに対応するうえで、製品やサービスだけではなく、組織文化など企業そのものを変革しなければならないこともあります。そんなとき広報PR担当者は、指摘された改善点や批判を経営陣に共有し、経営課題として経営戦略に落とし込んでもらえるよう働きかけなければなりません。

ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通じて経営をサポートする立場である広報PR部門は、企業にとって耳に痛い話も進んで受け入れ、企業の改革を促す役割を担っています

広報の役割5.信頼関係をつくる役割

広報でもっとも重要な目的は、1〜4の役割を十分に果たした結果として、企業と社会・ステークホルダーとの強固な信頼関係を構築することです。広報PR活動を重ねる中で、企業と社会の「コミュニケーションのインフラ」が形成されていきます。コミュニケーションのインフラがしっかりとしていれば、企業としてうまくいかない時期があっても、ステークホルダーからの信頼をもとに難局を切り抜けることができるでしょう。

企業にとって、ステークホルダーとの信頼関係は重要な資産です。その資産を維持・拡充するという重大な役割を担うのが広報PRです。

信頼関係 イメージ

広報の5つの役割はどうつながる?「伝える→対話→改善→信頼」の循環モデル

広報に求められる5つの役割は、それぞれが独立して存在するものではありません。「伝える」「対話する」「フィードバックする」「自己変革を促す」「信頼関係をつくる」という一連の役割は、循環するプロセスとして機能することで初めて意味を持ちます。情報を発信して終わりではなく、その反応を受け取り、行動を変え、再び社会に示す。この循環が回り続けることで、企業と社会の関係性は更新され、信頼は蓄積されていきます。

次に、5つの役割がどのようにつながり、どのように実務で効いてくるのかを整理します。

役割は単独で完結しない:発信の質が対話の質を決め、改善が信頼を更新する

広報の役割は、どれか一つを切り取って果たせば成立するものではありません。例えば、どれほど多く情報を発信しても、その内容が不十分であったり、背景や根拠が整理されていなければ、社会との建設的な対話は生まれにくくなります。発信の質が低ければ、返ってくる声も断片的になり、改善につながるフィードバックを得ることは困難です。

一方で、一次情報が整理され、意図が明確な発信ができていれば、対話の質は高まり、具体的な意見や指摘が集まりやすくなります。その声をもとに企業が行動を修正し、改善した結果を再び社会に示すことで、「話を聞き、変わる企業」という評価が生まれ、信頼が更新されていきます。

有事に効くのは平時の運用:説明責任・スピード・整合性の土台になる

不祥事やトラブル、批判が集まる場面など、いわゆる有事の局面で広報の力が問われることは少なくありません。しかし、その対応力を左右するのは、有事になってからの対応だけではなく、平時にどれだけ循環モデルを回してきたかです。日頃から正確な情報発信を行い、社会の声に耳を傾け、必要な改善を積み重ねている企業ほど、説明責任を果たすための材料が整っています。

また、社内外での情報整理や意思決定の流れが確立されていれば、初動のスピードや発信内容の整合性も保ちやすくなります。平時の広報運用は、有事対応のための「信頼のインフラ」を築く行為だといえるでしょう。

「言う」より「やる」:行動の積み重ねが最終的な信頼を形成する

広報活動において、言葉や表現は重要な要素ですが、それ以上に重視されるのが企業の実際の行動です。どれほど丁寧なメッセージを発信しても、行動が伴わなければ信頼は定着しません。社会との対話を通じて指摘された課題に対し、どのような改善を行い、その結果をどう示したのか。その積み重ねこそが、最終的な評価を形づくります。

広報の循環モデルは、「うまく伝える技術」を競うものではなく、「行動を通じて信頼を積み上げる仕組み」です。この視点を持つことで、広報は単なる情報発信の役割を超え、企業活動そのものを前に進める機能として位置づけられるようになります。

企業にとって広報部・広報担当者が必要な3つの理由と重要性

広報PRの5つの役割からわかるように、企業や団体にとって、広報業務の重要性は極めて高いものです。

広報部の根本的な役割は、「自社と社会との間で信頼関係を構築し、維持する」という広報PRの目的に基づいた広報部・広報PR担当者の究極のミッションの実現、つまり「企業・団体の存在意義を周知し、経営を持続させ、企業価値を高めていくこと」です。

そのためには、「①自社に対する正しい認識を促す」「②企業を取り巻く環境の変化にいち早く適応する」「③企業文化・企業イメージを醸成する」といったことが求められます。これらの広報部の役割や、広報PR担当者が必要な理由について、詳しく説明します。

広報の重要性1.自社に対する正しい認識を促す

企業が持続的に成長していくためには、自社は社会の中でどのような役割を果たしているのか、業界内だけでなく社会の一員として考えたにときどのような立ち位置なのか、といった自社への客観的な理解を深めることは、適切な経営戦略を立てたり商品開発を行ったりするうえで非常に重要です。

前述のように、広報PR担当者には社会からの声に耳を傾け企業活動に反映させる「フィードバックの役割」があります。企業の内外を俯瞰的に見つめ、自社がどう見られているのかを客観的に捉え、必要な気づきを経営陣や社員にフィードバックできるのが、広報の専門性と価値です。

広報の重要性2.企業を取り巻く環境の変化にいち早く適応する

広報PR担当者は常にさまざまなニュースやトレンドを収集し、企業とステークホルダーの信頼関係を築くために活用します。

経営陣や従業員は自社の事業や業界の動向のみに集中しやすいため、世の中の流れから取り残されてしまうこともままあります。そこで広報PR担当者が自社を取り巻く環境の変化を察知し、経営陣や従業員に共有するのです。

例えば、事業に関連する法案が可決に向かっているという状況をいち早くキャッチし、商品・サービスの担当者と対応策を練るといったケースが考えられます。

このように、経営陣や従業員が自らの業務に集中しているときでも、広報PR担当者は冷静に広い視野を持ち続け、社会の一員として自社が果たすべき役割を考えて行動します。

広報の重要性3.企業文化・企業イメージを醸成する

企業イメージと企業文化は、企業のブランド価値、従業員のモチベーション、顧客の信頼などに大きな影響を与えます。

広報PR担当者が常に誠実な姿勢でステークホルダーと向き合い、対話とそれに伴う企業の変革を繰り返していくことで、社外にはステークホルダーの声に応えてくれるという信頼に基づいた企業イメージが、社内には改革をよしとする企業文化が醸成されていきます。

「〇〇社は遊び心のあるコミュニケーションを大事にしている」「〇〇社は実直な商品開発を行っている」といった企業イメージが形成されれば、企業のブランド価値が高まる効果が期待できます。

また、企業文化を醸成することで、従業員が企業の価値観や方針に共感できるようになり、モチベーションが向上します。顧客にとっても企業への共感は購入や支援の大きな理由となるでしょう。

このように好ましい企業イメージと企業文化が醸成されるよう広報PR担当者が働きかけることは、企業の価値や業績に大きな影響を与えます

企業で広報部の仕事はどのように役割分担される?社内広報・社外広報の役割とは

広報PR担当者はステークホルダーとの信頼関係を築き、信頼関係に基づいて企業価値を高め自社に貢献する存在です。その仕事内容は、働きかけるステークホルダー別に「社内広報」「社外広報」に分けられます。

「社内広報」は社内の人々へのコミュニケーションを、「社外広報」は社外の人々へのコミュニケーションを担います。

それぞれの役割や、具体的な仕事内容について見ていきましょう。

社内広報の役割

社内広報の目的は、企業内の情報共有を促進し、社員の理解とエンゲージメントを高めることです。企業の意思決定や方針を正しく伝えることで、組織の一体感を醸成し、企業の成長を支えます。

具体的な業務例

  • 社内報の作成・配信
  • 社内イベントの企画・運営(社員総会、表彰式、懇親会など)
  • 会社案内・パンフレット・プレゼン資料の作成・管理
  • 企業理念・ビジョンの社内浸透活動
  • 社会情勢や業界動向の社内共有
  • 自社のメディア掲載実績の報告

社内広報の重要な役割のひとつが、「情報のハブ」となることです。経営陣の考えや企業戦略を社員に伝えるだけでなく、社員の意見を経営にフィードバックする役割も担います。

社内広報の詳細については、以下の記事でも解説しています。

社外広報の役割

社外広報の役割は、企業・商品・サービスの認知度を高め、売上拡大に貢献することです。

社外広報は、広報PR活動を行う対象に応じてさらに「コーポレート広報」と「サービス広報」に分けることができます。

コーポレート広報の役割

「コーポレート広報」は企業のイメージ向上や企業文化の醸成を担う業務です。望ましい企業イメージを築き、より強固なものにしていくことを目指し、長期的なスパンで株主・投資家、取引先、生活者、国際市場、政府、国際機関など、幅広いステークホルダーとコミュニケーションを取ります。

サービス広報の役割

「サービス広報」は自社の商品・サービスへの認知や信頼を高め、最終的には売上に貢献することを目指します。商品・サービスに関する情報を発信し、興味喚起やイメージ形成を行うことで購入や導入を促します。企業によってはマーケティング担当者がサービス広報の仕事を兼任していることもあります。

広報部・広報PR担当者の仕事内容・やることとは

広報部や、広報PR担当者がどのような仕事をしているのか気になる人もいらっしゃるでしょう。広報部の主な仕事は以下の通りです。

  • プレスリリースの作成・配信
  • メディア関係者への対応
  • 社員の発信についてのチェック
  • 自社メディアやSNSを活用したコミュニケーション
  • 社員に対するフォローや情報発信

それぞれの仕事内容や、広報部でやることについての詳細は、以下の記事で解説しています。

広報部・広報PR担当者に向いている人・必要なスキルとは

広報部の仕事は多岐にわたり、全社視点で物事を見ながらさまざまなステークホルダーとの関わりが求められます。そのため、広報PR担当者には「情報感度が高い」「利他的である」「フットワークが軽く人付き合いが得意」「マルチタスクが得意」などの特性がある人が広報担当者に向いているといえます。

広報PR担当者に向いている人の特徴については以下の記事で詳しく紹介しています。

その他、広報PR担当者に求められるスキルや能力については、以下の記事で解説しているので、併せてご確認ください。

広報担当者の役割は、企業と社会を信頼関係でつなぐこと

企業活動において、広報PR担当者はパブリック(=社会)との間に信頼関係性を構築・維持する役割を担っています。

より具体的には、広報PR担当者には「伝える」「対話する」「フィードバックする」「自己変革する」「信頼関係をつくる」という5つの役割が求められているのです。

企業と社会の「コミュニケーションのインフラ」となる信頼関係を構築する広報PR活動は、企業が存続していくために不可欠なもの。

広報PRの役割や仕事内容について、あらためてしっかりと理解し、自社がよりよい企業活動を行えるように導いていきましょう。

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<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

広報の役割に関するQ&A

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この記事のライター

ならきち

ならきち

在宅ライター主婦。会社員時代は中古IT機器の専門商社で広報をしていました。取材対応をはじめとするメディアリレーション全般、プレスリリース執筆、危機管理対応、記者会見の企画・運営、自社ブログ記事の企画・執筆などを担当した経験を活かし、広報担当者の役に立つ記事を書きたいです。現在はわんぱくな息子に翻弄されながら在宅でライターの仕事をしています。

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