プレスリリースの配信タイミングの一つとして、革新性の高いテクノロジーに関連する取り組みの提供開始や提携開始があります。
専門用語や前提知識の説明が多くなりやすいテクノロジーの話題を、プレスリリースで簡潔に表現し、メディアや生活者に的確に伝えるには、広報担当者の手腕が問われます。
本記事では、テクノロジーに関するプレスリリースの事例10選を紹介した上で、作成時の5つのポイントを紹介します。
テクノロジーに関するプレスリリース事例10選
テクノロジーに関するプレスリリースを作成する際にどんなポイントをおさえて作成をすればよいでしょうか。
まずは実際に配信されたテクノロジーに関するプレスリリースの事例10選を見ながら、伝わるプレスリリースにするためにどんな工夫をしているかを見てみましょう。
事例1.タグラインでサービス・商品・企業のことを簡潔に伝える ー株式会社DAIZ
まだあまり馴染みのない商品やサービス、企業を伝える際は、平易な言葉を使ったキャッチコピー「タグライン」を使った説明が有効です。
大豆由来の植物肉原料を販売するDAIZ株式会社は、ニチレイフーズとの資本業務提携を締結したことをこのようにプレスリリースで発表しています。
「植物肉スタートアップのDAIZとニチレイフーズ、資本業務提携を締結」
まだ日本ではあまり馴染みのない大豆由来の植物肉原料の技術を強みとするスタートアップDAIZ株式会社。企業名のみの記載だと、多くの人は「どんな会社なのか」が分かりません。そこで本プレスリリースでは「食肉スタートアップ」という企業のタグラインをタイトルにつけることで、何を提供しているどんな企業かをひと目で簡潔に伝える工夫をしています。
事例2. タイトルにニュースバリューの高い言葉を入れる ー株式会社リクルートライフスタイル
一見難しく見えるテクノロジーに関するプレスリリースでは、タイトルにニュースバリューの高い言葉を入れることで、より多くのメディアや生活者に興味を持ってもらう工夫をしましょう。
株式会社リクルートライフスタイルが「AirMATE」というサービスをリリースした際のこちらのプレスリリース。
「業界初! ビックデータやAIを活用した飲食店経営の「改善の仕組み」を開発 利益最大化へ導く、お店の経営アシスタント『Airメイト』2018年春より順次提供開始」
このサービスの提供価値は、経営指標を可視化し店舗の課題を見える化すること。プレスリリースのタイトルでは、その提供価値をきちんと伝えつつ、当時メディアで多数取り上げられていた「ビックデータ」や「AI」という時事要素を含むキーワードをタイトル前方に配置することで、より多くの方にプレスリリースに目を留めてもらうきっかけを作っています。
なお、「◯◯初」といった表現をプレスリリース内で使う際は、きちんと調査した上で使用するようにしましょう。詳しくは、下記の記事でチェックできます。
事例3.テクノロジーにより何が可能になるかのみを伝える ー株式会社KDDI
テクノロジーに関する情報発信は、専門用語や前提知識を伝える必要があります。一方で技術部分について丁寧に説明すると、文字量が増えてしまい冗長なプレスリリースとなることも。
株式会社KDDIの5G事業に関するプレスリリースでは、あえてタイトルに5Gという言葉を使用していません。
「今年はバーチャル渋谷で「#StayVirtual」10月26日~31日ハロウィーンイベントを順次開催」
5Gという言葉を全面的に推し出し、その技術を詳細に説明することも可能だったはずです。しかし、このプレスリリースではあえて技術の詳細を説明せず、「ハロウィンイベントの開催」という多くの人が関心を抱くイベント内容に絞ってプレスリリースを作成しています。おそらく、技術の詳細を伝えることが目的ではなく、5Gのある世界の世界観を知ってもらうことがプレスリリースの配信、そしてこのイベントの開催目的の一つだったのではないでしょうか。
このように、どんな便益が得られるのかに焦点を当てて伝えることで、生活者にテクノロジーをより身近に感じてもらう方法もあります。
事例4.サービス・商品をイメージ画像で分かりやすく ー株式会社パルコ
サービスや商品画像を掲載することで、リアリティをもってテクノロジーのイメージを伝えることが可能です。
「パルコがデジタルで描く商業施設の未来!渋谷PARCOで取り組むデジタル施策」
株式会社パルコのプレスリリースでは、新しくできた渋谷PARCOのデジタル活用事例について、イメージ写真や、サービス画面等の画像を使って説明しています。
プレスリリース内で紹介されている「電子レシートサービス」も、もし文字だけの説明のみであれば読み手に想像するものが異なっていたかもしれません。伝えたい情報と読み手の解釈を限りなく近いものにするためにも、イメージ画像の利用は有効です。
事例5.複雑な技術の説明を図解 ー株式会社ABEJA
テクノロジーや技術を図解することで、全体像や事柄の関係性をシンプルに伝えられます。
「ローランド・ベルガーとABEJAが、アパレル業界向けにAIを活用した「需要予測コンサルティングパッケージ」を共同開発」
株式会社ABEJAのプレスリリースでは、「需要コンサルティングパッケージ」の概要を図解しています。今回のプレスリリースは、2社がそれぞれの強みを生かして共同開発をしたソリューションの内容を伝えることが主目的。
文章で説明しようとすると「いつ」「誰が」「何を」を順を追って詳細に説明することが必要ですが、図を用いることで複数の観点の情報がひと目見て分かるようになっています。
事例6.開発背景で解決している課題を説明 ー株式会社メディカルノート
なぜそのテクノロジーの活用・開発に至ったかを伝えることによって、提供価値や便益がより伝わりやすくなります。
「メディカルノート、医療機関DX支援に向けWeb予約等管理システム「Hospital Manager」の提供を開始」
株式会社メディカルノートの「Hospital Manager」の提供開始のプレスリリースでは、開発背景が記載されています。
日本のデジタル化遅れによって生じている課題を挙げ、解決することで現場の業務効率化や時間や場所の制約を超えた医療へのアクセスの改善が可能になることを説明しています。
このように具体的に何の課題を解決し、どんな世界を目指しているのかを説明することで、読み手の理解度を高められます。
事例7.技術の革新性について丁寧に説明 ーアマゾンジャパン合同会社
専門性の高い情報を特定のメディア・生活社に伝える際には、簡潔なプレスリリースを書くのではなく、あえて細かな解説を掲載した形で伝えるのも一つの手です。
アマゾンジャパン合同会社のプレスリリースでは、今回発表した5つのサービスに関して、プレスリリース上で詳細な解説をしています。そのため、プレスリリースの情報を読むだけで取り組みやテクノロジーの概要を理解することが可能です。また、機能の補足説明や、詳しく情報が掲載されているWebサイトのリンクも掲載されているため、読み手が自分で足りない情報を検索する手間が不要になります。
情報量の多いプレスリリースを作成する際は、PR TIMESの入校時に使える太字・箇条書きツールなどをうまく活用すると、情報構造を分かりやすくできます。
事例8.導入者・利用者の声を入れ提供価値を分かりやすく伝える ー株式会社グラファー
複雑な情報や、馴染みのないサービスや商品について伝えるときに有効なのが、導入事例の利用です。
「全国初。グラファーが新型コロナ融資関連手続きの「オンライン申請」を横浜市で提供開始」
株式会社グラファーは、「新型コロナ融資関連手続きのオンライン申請」に関するサービスの提供開始を、横浜市の導入事例とセットで紹介しています。
人は、抽象度の高い概念で説明されるより、具体例な説明の方がより正確に物事を理解しやすいです。横浜市の抱えていた課題や、その課題をどう解決したかを具体的なケースとして紹介することで、読み手にサービスの提供価値を分かりやすく伝えられています。
事例9.実績を示し説得力を強める ーUbie株式会社
テクノロジーの革新性を伝えるシンプルな手段として、実績を示す方法があります。
「外来問診時間を約3分の1に短縮の実績も。医療現場の業務効率化を図るAI問診プロダクト「AI問診 Ubie」大規模病院6施設で導入・試験導入・共同研究開始」
Ubie株式会社の「AI問診 Ubie」の試験導入・研究開始についてのこちらのプレスリリース。タイトルに「外来問診時間を約3分の1に短縮の実績も」と記載されていることで、「AI問診 Ubie」がどんな価値を提供しているサービスなのかが簡潔に伝えられています。
サービスの概要がわからずとも、解決している課題を定量的に示すことで、サービスやテクノロジーに関する理解度が増します。
事例10.専門用語を丁寧に解説 ーLINE株式会社
専門用語が多くなりがちなテクノロジー関連のプレスリリースでは、重要な言葉や用語の定義を揃えたり、言葉の意味を解説したりすることで、読み手の内容に対する理解度を上げられます。
「LINE、NAVERと共同で、世界初、日本語に特化した超巨大言語モデルを開発 新規開発不要で、対話や翻訳などさまざまな日本語AIの生成を可能に」
LINE株式会社のプレスリリースでは、重要な言葉の用語を注釈で記載しています。
本文内で用語の説明をすると、文章が長くなってしまい逆に読みにくくなってしまうこともあります。注釈を活用することで、読みやすさを担保しながら正しい理解に繋げられます。
テクノロジーに関するプレスリリースを作成するときの5つのポイント
ここまでテクノロジーに関するプレスリリースの事例10選をご紹介しました。その中から、伝えたい情報を的確に伝えるために、作成時に意識したい7つのポイントをまとめました。
ポイント1.サービス・商品・企業が一言でわかるタグラインを考える
新しいテクノロジーは、生活者はもちろん、多くのメディアにとってもあまり馴染みがありません。多くの方にプレスリリースに興味を持ってもらうため、新規性の高いサービスや商品、企業は、タグラインとセットで紹介しましょう。
タグラインとは、その商材や企業の特徴・提供価値・カテゴリに関するキーワードを使って作られたキャッチコピーのことです。今回ご紹介したDAIZ株式会社のタグラインを見てみましょう。
「植物肉スタートアップのDAIZ株式会社」
これがもし「DAIZ株式会社」のみ記載ではどうでしょうか。プレスリリース下部の会社概要やWebサイトを見ないとどんな会社か知ることができません。また、「大豆由来の植物肉原料の技術を強みとするDAIZ株式会社」と細かく説明すると、長すぎてタイトルや概要文での使用は適していません。
また読み手が理解しやすいように、タグラインでは専門性の高い用語は避け、少しかみ砕いた表現を使うことが多いでしょう。一見して内容がわかる、もしくは関心を抱きやすい表現が望ましいです。
プレスリリースでは、タイトルと概要文のみで結論と要点を伝える必要があります。新規性の高いサービスや商品、企業は「タグライン」を考え、端的かつ読み手に説明するようにしましょう。
ポイント2.ニュースバリューのある言葉をタイトルに入れる
時流要素や社会要素などの切り口もプレスリリースに交え、より多くのメディア・生活者に目に留めてもらいましょう。
自社のプレスリリースを作成する際は、どんな切り口があるかを他社事例や関連ニュースなどを確認してブレストしてみましょう。ニュースバリューになる要素の一覧はこちらで解説しています。
ポイント3.開発背景を通して解決している課題・目指す状態を伝える
プレスリリースで開発背景を伝えることで、サービス・商品がどんな価値をもたらしてくれるのかを具体的に読み手に伝えられます。
開発背景では、どんな課題に着目をしたか、その課題を解決することでどのような状態を目指すのか、結果どんなベネフィットが得られるのか、などを説明しましょう。
テクノロジーに関する概要だけをプレスリリースで説明してしまうと、なんとなく概要は伝わるものの、「誰の何に役立つのか」の部分が具体的に伝わらないこともあります。なぜ開発に至ったか、を説明することでサービス・商品の提供価値をより分かりやすく伝えます。
ポイント4. サービス・商品説明には図やイメージ写真を用いて分かりやすく
専門用語や前提知識で文字が多くなってしまいやすいサービス・商品概要説明には、図やイメージ写真を用いましょう。
文字が1分間で伝えられる情報は、300文字程度と言われています。一方、図は1分で2000文字ほどの情報を伝えることが可能だそうです。図やイメージ画像を用いて、伝えたい情報を読み手に分かりやすく伝えましょう。
ポイント5.導入事例を紹介し説得力を高める
提供しているテクノロジーについて分かりやすく伝える手段の一つとして、導入事例の紹介があります。
導入事例を使って「どんな課題を解決しているのか」、「どんな結果・実績をもたらしているのか」を示すことで、読み手の理解度が高まるのみならず、サービスや商品に関する説得力も高まります。積極的に導入事例を活用していきましょう。
プレスリリースでの伝え方を一工夫し、テクノロジーの革新性を的確に伝えよう
テクノロジーに関するプレスリリースでは、専門性が高いため専門用語や前提知識を記載しなければならず、内容が複雑で難しくなってしまうことも。専門用語や前提知識のないメディアや生活者に、分かりやすく情報を伝えられるか否かは、広報担当者の手腕が問われます。
伝えたい情報を的確に伝えるためには、タグライン、ニュースバリューのあるキーワード、開発背景、図やイメージ、導入事例などを活用することが有効です。そのテクノロジーに関して詳しく知らない人に分かりやすくするためにはどんな工夫をすれば良いかを想像しながら、プレスリリースを作成してみましょう。
テクノロジー関連のプレスリリースの事例と作成ポイントに関するQ&A
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