前編よりお届けしてきた「新時代のメディアと広報PRを考える」特集。テレビ業界の方々3名をお招きし、PR TIMES MAGAZINE読者の方々から寄せられた質問をもとにメディアと広報PRについてのディカッション内容をレポートでお届けしています。
前段ではメディアリレーションやコンタクトを中心に話題が広がりました。本編では続いて、メディアに送付するネタや情報について深掘りしていきます。
【登壇者(※順不同)】
清水俊宏氏
2002年株式会社フジテレビジョン入社。政治部にて小泉首相番などを担当した後、新報道2001ディレクターや選挙特番の総合演出、ニュースJAPANプロデューサーなど数々の番組制作に携わる。2016年からデジタル関連の仕事に注力し、ホウドウキョク、FNNプライムオンライン、フジテレビュー!!などのオンラインメディアや新規事業を次々と立ち上げている。
西田二郎氏
読売テレビ放送株式会社。演出家としてEXテレビやダウンタウンDXなどの人気番組を手掛けたあと、現在は一般社団法人 未来のテレビを考える会の代表幹事 理事も務め、テレビのビジネスとコンテンツの可能性をビジネスプロデュース局にて探る。
浅岡基靖氏
テレビ東京にてWBS(ワールドビジネスサテライト)のトレたま統括デスクを務めた後、現在はカンブリア宮殿のプロデューサーとして活躍。テレビ東京内のプレスリリースの活用プロジェクトのリーダーも務める。
※記事内は敬称を省略させて頂いております
◆本記事のPOINTをざっくり解説!
- ニュース、バラエティと番組の性質によってネタのアプローチも異なる
- メディアパーソンは企業と視聴者と間で求める情報を届ける
- メディアの視聴者に「ありがとう」と言われるネタかどうかを見定める
どんな情報提供をするのがベスト?
三島:(自社の)ネタを選んでもらいたい広報担当者にとって、どういう話が選ばれるか知りたいポイントだと思うんですが、さっき西田さんから話して頂いた「バラエティは番組がネタを探しに行きたい」などのようなものってありますか? 選考基準みたいなものがあると、動きやすさがあるな、と思いまして。
西田:バラエティだったら鮮度を大切にするところもあるし、演者さんの居心地をみるところもあります。たとえば温泉地だったら鮮度や効能が良かったり、人気じゃなかったり、しても番組内で「あ、ここいいよね」となればそこを選択することもあります。
番組の性格によって情報の取り方は変わってきますね。ニュースだと”新しさ”で新しさ自体が切り口になるけれど、バラエティは新しかろうがなんだろうか、自分たちの番組にのっとってるかどうかが大事になってくるかもしれないですね。
ダウンタウンDXの時は、沖縄で収録をしてたんですけど、毎年いつ行っても美味しい店を人気があるかわからなくても紹介していることもありました。いいたとえになってないかもしれないですけど……!
三島:基本かもしれないですけど、番組をちゃんと見てどういう方針かは見た方がいいですよね。
西田:バラエティに関しては狙わない方がいいんじゃないですかね。ささるときはささるかもしれないので。
浅岡:(ニュースだと)番組を見てくれてるのは大事かもしれないですね。実際に「弊社でこういう新商品はじめまして〜」と電話があって出てみると、別のライバル会社を前の日に取り上げていた、なんてこともあります。一発で「この人が番組を見てるか」わかるんですよね。 同じようなネタをもう一回やり直しみたいにはやらないので、「その会社とは違って〜」と言われてもなかなか難しいんですよね。
清水:逆にこちらからすると、テレビ東京でやってて同じネタは嫌なんだけど、違う会社の商品であればできるかな、という思惑はありますね(笑)
西田:となると、武器を持って電話するときは取り上げていない局にいった方がいいわけですね。
浅岡:逆もありますよ。「このネタ、フジテレビさんで取り上げられたんですけど」ってそのまま言われるとやりたくなくなっちゃうんですよね。
西田:これ広報さんからすると言っちゃいそうなワードじゃないですか!(笑)
浅岡:「ニュースゼロで取り上げられました、報道ステーションで取り上げられました」っていうのがあると、「もう取り上げられてるから、じゃあうちは取り上げられてないネタ探します」っていう流れになりますね。
三島:今回あなたの局だとこんな別の切り口でどうですか?という形だったらありですか?
浅岡:ケースバイケースですかね。
清水:基本は、世の中に出てないものだといいんですよね。
浅岡:「他局さんで取り上げられてるのが”商品だけの一次情報”だけど開発の裏側公開を社内調整できたので、テレビ東京だけは」というような話があれば注目しやすいと思います。
単独インタビューやいままで公開してない研究施設に入れる、などは嬉しいです。リリースをそのまま報道することはないので、リリースにない情報などがあるとやはり嬉しいですね。
清水:リリース通りなら番組制作のCMとして作るので、自分たちは情報を探して、コンテンツを出すのが仕事なんです。
西田:リリースで全部わかったら魅力がないってことですか?
浅岡:そんなことはなくて、リリースは”企業さんがアピールしたいこと”が書いてあるじゃないですか。我々が取り上げるときは、時事的な商品の動向からのニュースを探し、結果的にその商品を取り上げる形になるので、広報担当者さんの発信するプレスリリースと順序立てが全く違うんです。
でも結果、うまくマージすればお互いがWin-Winになります。
メディアパーソンは「へー、ほー、なるほど、ありがとう」を探している
浅岡:僕らは「へぇ〜」を探しているんですよね。たとえば1年前から販売している商品が今月に入って急に問い合わせが来るようになって、という話であれば「これはなんだ?」と思うじゃないですか。リリースだけじゃない部分にそういった情報があるんです。
経済報道だったら数字の変化も大切ですよね。売上が上がったり、下がったりなど。時代が変化するのがニュース、報道だったりするので、それがわかるものを取り上げたくなるんです。
自分の会社のPRだけ、となってしまうと(番組的にも視聴者の求める情報的にも)困ってしまうので、ちょっと面白い情報があります、とメールに付け足してくれてあるかだけで違います。
西田:広報の担当の人はこれ、難しいな〜。それを一生懸命伝えようとしてくれてると思うんですけどね。
清水:僕らは企業と視聴者と間に入っているので、視聴者の代弁者でもあるんです。「へー、ほー、なるほど!ありがとう」と視聴者から思ってもらえるコンテンツを探して僕らは番組を作っています。
視聴者が知って「ありがとう」と言たくなるような情報を探しているので、ネタを取り上げるかどうかは、視聴者がこの情報を伝えてくれてありがとうって言うんだっけな、が基準なんですよね。
清水:たとえば、ペットボトルの水の商品があったとして、「ただ、デザインを変えました」というリニューアルであれば取り上げるのは難しい。「ふ~ん」で終わってしまうので。
それが「いまの時代背景からこの水は今までと違ってこんな良い影響を与えるんだ!」という話があれば、何十年も中身が変わっていない商品でも取り上げやすくなります。
コロナ禍においても、(ピックアップするポイントに)視聴者がどう思うか考えてみてもらうと良いかな、と思います。
浅岡:デザインの話で派生すると「細部に神が宿る」とも言うので、このデザインを作るにあたり、1万人からコメントをもらったとか、ものすごく細かいストーリーがあるかとか、口のところが普通のふたに見えるんだけど実はものすごくエコな仕組みがあって…….なんかがあるかどうかが大事ですよね。
西田:なんの変哲もないように見えるけれど実は…!となると「へえ〜」が生まれるわけですね。
浅岡:そうですね。さらに、「その商品を作るために試作品を50個も作っていて、その試作品も全部残してあります」となると、我々としては絵が浮かぶものを提供してもらえてありがたいですね。
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本稿では、広報PR担当者からテレビパーソンへのネタや情報についてをメインにお届けしました。次の記事では、届いたネタが番組になるまでの流れやポイントなどをお届けします。
また、今回の全3回にわたるディスカッション内容は記事の他、PR TIMESのYouTubeアカウントからもご覧頂けます。記事では伝えきれないリアルな事例などは、動画からぜひご視聴ください。
(スチール撮影:原 哲也、動画撮影:PR TIMES TV)
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