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アルムナイとは?制度導入時のメリットや4つのポイント、留意点などを紹介

近年注目されている、アルムナイをご存じでしょうか。人材不足が懸念される中、新たな採用手法として現在大きな注目を集めています。自社の退職者を再雇用するアルムナイ制度は、優秀な人材を確保できる方法として知られるようになってきました。

しかし、アルムナイという言葉を聞いたことはあるけれども、アルムナイネットワーク構築の負荷が高いのでは、と感じている人は少なくありません。退職者と密にコミュニケーションを取り、関係性を構築していくのは難しいというイメージがあり、アルムナイ制度を実施することに二の足を踏む担当者は多いのではないでしょうか。

今回の記事ではアルムナイについて、制度導入時の4つのポイントやメリット、留意点についてご紹介します。

アルムナイとは?

アルムナイとは「alumni」と表記し、直訳すると「卒業生」や「同窓生」を意味します。ビジネスシーンにおけるアルムナイは「退職者」を意味し、企業の離職者を指します。

生涯雇用ではなく転職が一般化する中で、企業のOB・OGをアルムナイと呼ぶことが一般化し、ようやく定着してきました。

アルムナイ制度・アルムナイ採用が注目されている背景

では、なぜ今アルムナイ制度やアルムナイ採用が注目されているのでしょうか。

もっとも大きな理由は、労働人口減少による採用難です。優秀な人材は企業同士の争奪戦の対象となっており、労働環境を整備しても採用につながらない、採用できたとしても定着しないという場合が多くなっています。従業員の側でも、一度企業を離れたものの、いざほかの企業へ行ってみると自社の良さを再認識できたというケースが増えてきました。

このような状態を踏まえ、これまでの採用市場ではあり得なかったもう一度同じ企業に就職するという考え方が、アルムナイとして徐々に認められるようになってきたのです。

アルムナイ制度を導入するメリット

では、アルムナイ制度の導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットをご紹介します。

導入イメージ

メリット1.採用や育成のコストを軽減できる

人柄を把握しているということに加え、能力的な面でも企業側が既に把握できているという点は大きなメリットとなり、新たに接点を持つ候補者と比較すると企業側の手間が少なくなっています。初期接点創出に労力を割かなくて済むといういことは、その点でのコストを軽減できるということです。

また、アルムナイ制度は育成コストを軽減することにもつながります。アルムナイの場合、自社の文化や勝手を既に理解しているため、新たに入社する従業員と比較するとそのあたりの育成コストが軽減されます。ある程度勝手がわかった人が入社するため、周囲のメンバーもいちからすべてを教える必要はなく、些細な疑問などが互いに蓄積していく可能性が低いといえます。

メリット2.優秀な人材との接点を創出できる

労働人口の減少は、優秀な人材の長期確保のほか、接点創出の機会減少につながっています。アルムナイ制度は優秀な人材との接点を切らさず、継続的な接点創出を行うことができるほか、他社で経験を積んで優秀な人材へと進化を遂げた人材との接点をつくることも可能です。

また、採用市場の中では出会いにくい優秀な人材と、アルムナイ人材を通じて接点を持てるという可能性もあります。自社を卒業し他社で就業したという経験は、新たな人脈づくりに大きく役立っているはずです。

さらにアルムナイの場合、優秀な人材が即戦力となり得ます。他社での就業経験を活かし、能力自体が向上していることに加え、アルムナイ人材はエンゲージメントが高い傾向があります。能力が備わっており、やる気にも溢れている人材は、まさに優秀な人材といえるでしょう。

メリット3.企業ブランディングに効果的

アルムナイ制度を実施している企業は、従業員との関係性が良好だと見て取ることができます。

アルムナイ制度を成功させるには、企業の一方向の努力だけではなく、従業員とのよい関係性を保つことが非常に有効です。退職という企業の出口を綺麗に整えるという観点はもちろん、退職後も企業との関係を持っていたいと従業員に思ってもらう必要があります。言い換えれば、アルムナイ制度がうまくいっている企業は、従業員との関係性が非常に良好だという判断基準となります。

従業員のエンゲージメントが高い会社として外部から認識されるだけではなく、従業員による企業評価を見ることができる口コミサイトなどにおける評価もおおむね期待できるものとなるでしょう。

アルムナイ制度は従業員との関係性を外部に示すうえで、最適な施策だといえます。

アルムナイ制度を導入するときの留意点

では、今後アルムナイ制度を導入しようと考えている企業は、どのような点に留意するべきなのでしょうか。

留意点1.既存従業員に配慮する

アルムナイを制度として導入する場合には、既存従業員への配慮が重要です。

アルムナイ人材が自社に戻ってきた際には、社内環境や従業員が大きく変化している可能性があります。あくまでも企業の中では、昔ではなく今の自社ルールに沿って業務に当たってもらうことが大切です。この点を踏まえ、既存従業員とアルムナイ人材への配慮バランスを見誤らないことが大切です。

また、アルムナイ制度の導入は、既存従業員が「いつでも辞めていいんだ」と思ってしまう可能性にもつながります。結果的に従業員のモチベーションが低下してしまう場合があることを認識し、アルムナイ制度の透明化やアルムナイで入社した従業員のその後などにも、十分に配慮することが大切です。

留意点2.コミュニケーションに掛かる負荷を考慮する

一見メリットが大きく見えるアルムナイですが、実際に制度として運用する際には、高いコミュニケーション負荷が掛かります。接点を継続的に持ち続けることは非常に大変で、その点を十分に理解したうえで制度化することが重要です。

アルムナイネットワークを維持・運営する費用や、イベントなどを開催する場合には、イベント開催費も必要です。人的負荷だけではなく、金銭的負荷が掛かることを理解し、アルムナイ制度導入が最適解かを慎重に判断する必要があります

アルムナイ制度を導入するときの4つのポイント

では、アルムナイ制度を導入する際にはどのような点がポイントとなるでしょうか。大きく4つのポイントをご紹介します。

ポイント

ポイント1.アルムナイネットワークを構築・維持する

まずポイントとなるのは、アルムナイネットワークを構築・維持することです。アルムナイネットワークとは、自社を退職した人材とのコミュニティを指します。学校やサークル活動で例えるなら、OB・OGネットワークと言い換えることができます。

アルムナイ制度を導入する際にはまず、アルムナイネットワークが必要です。ネットワーク構築にはオンライン上にポータルサイトを作成する方法や、SNS上にグループを作成する方法があります。また、オンラインでの関係性構築が難しい場合にはリアルイベントを開催する方法があります。

企業の人事が積極的に介入することはもちろんですが、アルムナイネットワークの管理人を選出し、ネットワークの維持に尽力してもらうという方法もあります。自社のアルムナイ人材と継続的な関係構築を行う場合、どのような方法が最適かを慎重に判断し、アルムナイネットワークの運用を開始することが大切です。

ポイント2.アルムナイ用のポジションをつくる

アルムナイ人材を採用する場合には、アルムナイ用のポジション検討は非常に有効です。

新たに入社を検討している候補者と異なり、既に社内の文化や環境を知っているほか、企業側もアルムナイ人材の能力面を把握しています。すなわち、新たに入社を検討する候補者と比較し、どのような業務を任せるかというイメージを持ちやすいのです。

もともと能力が高いことを把握しているアルムナイ人材に対しては、ある程度の役職などを付与することが可能となるほか、業務範囲を広く設定するのもよいでしょう。

また、既存社員との関係性が重要になるアルムナイ人材は、即戦力として活躍しやすくなるように、チームメンバーなどを考慮したポジションを担ってもらうことが可能です。過去退職時、人間関係が起因となっているアルムナイ人材の場合には、アルムナイ用ポジションはメリットが大きいといえます。

ポイント3.アルムナイ用の採用ルールをつくる

採用のルールも、アルムナイ用を検討することが大切です。

いわゆる1次選考や2次選考、書類選考など、採用初期のステップはアルムナイ人材には必要ありません。人柄や能力など、既に把握している情報が多く、双方にとって無駄な時間となる可能性があります。したがって新たに入社を検討している候補者と同じフローではなく、新たなフロー構築が必要です。

給与制度などを既に把握していることから、再入社の際に自身がどのような待遇となるのかを気にする人材は多いでしょう。既存社員とのバランスを取りながら、成長しエンゲージメントが高く戻ってきたアルムナイ人材をどのように扱うのか、制度設計時に検討することが大切です。

ポイント4.現場の納得感を醸成する

アルムナイ人材が活躍できる秘訣は、現場の納得感といっても過言ではありません。アルムナイ人材が優秀かつ即戦力である一方で、出戻りを歓迎しない既存従業員がいる可能性は非常に高いといえます。また、紹介方法などを誤ると、出戻りそのものによくない印象を持たれる可能性があります。

既存従業員の納得感を醸成し、アルムナイ人材が活躍できる環境を用意するのは企業側の仕事です。アルムナイを制度として活用できるよう、既存従業員への配慮を欠かさないことが大切です。

アルムナイ制度の導入事例

では、どのような企業がアルムナイ制度を利用しているのかをご紹介します。

アクセンチュア

アルムナイ制度が社内はもちろん、社外にもよく知られている代表的な企業といえばアクセンチュアです。

「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」は、アクセンチュアのアルムナイをつなぐポータルであり、78カ国で30万人以上のアルムナイが在籍している巨大ネットワークとなっています。世界各国のアクセンチュアで広く知られた存在であり、アクセンチュアの従業員同士が退職後のキャリアを支え合うケースが少なくありません。

アルムナイネットワークとして完成されており、手本として参考にするべき事例です。

スープストックトーキョー

「こだわりを強く持つ」と自認するスープストック トーキョーでは、「バーチャル社員証」の発行を行っています。従業員だけではなく、パートナー(アルバイト)が退職後も従業員同様に社内割引が適用されるほか、社内情報を手に入れることも可能です。

退職後も従業員であるかのような配慮があるため、継続的な接点を持ち続けることができるほか、ネットワーク内のコミュニケーションは同窓会のような感覚で、気軽に取ることができます。

アルムナイ制度ではあるものの、従業員側のコミュニケーション負荷が非常に軽い事例といえます。

ビースタイル バリューテクノロジーズ

一度は退職したものの、アルムナイとして取締役になった人材を擁するのはビースタイル バリューテクノロジーズです。

自社退職後、他社で培ってきた経験を活かし、古巣の取締役になったという事例です。アルムナイネットワークは、あらゆる従業員とコミュニティを維持する方法ですが、特に優秀だと思う人材をピックアップし、関係性を維持するという方法もあります。

自社の従業員が少ない場合や、そもそも退職者が少ない場合に有効な事例となっています。

日頃のコミュニケーションが、アルムナイにつながる近道

アルムナイを制度として活用していくためには、従業員の退職後だけではなく、在籍時のコミュニケーションが非常に重要です。日々のコミュニケーションの中で従業員との関係性を構築し、退職後も関係を断ちたくないと思ってもらう必要があります。

アルムナイネットワークは、短い時間で構築できるものではありません。しかし日々の従業員とのコミュニケーションも短い時間で構築できるものではありません。従業員が在籍しているうちから密にコミュニケーションを取ることで、結果的に退職後にも密なコミュニケーションを取ることができるのはいうまでもないでしょう。

時間が掛かることを前提に、新たな採用の形として取り組んでみてはいかがでしょうか。

アルムナイに関するQ&A

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この記事のライター

中川真利奈

中川真利奈

現役広報ライター。通信系IT企業にて広報や採用を中心とした人事、総務などを担当。<br> 2019年よりジャンルを問わず執筆する、副業ライターとして活動中。<br> ライティングを通じて新たなジャンルを開拓し、知識を蓄えていくのが好きです。<br> 悩み多きひとり広報時代を救ってもらった記事のような、お役に立てる記事をお届けします。

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