ブランドロイヤリティの向上は、事業拡大や継続的な利益獲得につながる重要な要素です。しかし、「向上させる具体的な方法がわからない」「なかなか成果が得られない」など、課題を感じる広報PR担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ブランドロイヤリティの基本概念から、向上のためのポイントや具体的な施策例などを中心に詳しく解説します。
ブランドロイヤリティとは
ブランドロイヤリティとは、特定のブランドに対して顧客が抱く信頼感や愛着心を指します。この感情により、顧客はほかのブランドがある中でも、特定のブランドの商品やサービスを選び、支持し続ける傾向が強くなります。
さらに、ブランドロイヤリティは商品やサービスの品質だけでなく、ブランドが提供する価値観や顧客体験といった多面的な要因によって形成される特徴もあります。こうしたロイヤリティは、企業の安定した収益基盤を支え、長期的な成長を実現するために欠かせない要素といえるでしょう。
顧客ロイヤリティとの違い
ブランドロイヤリティと顧客ロイヤリティは、対象や形成される要因が異なります。ブランドロイヤリティは、特定のブランドに対する愛着や信頼感に基づいた感情的な要素が特徴です。一方、顧客ロイヤリティは企業や組織全体への信頼や満足感を指し、価格やサービスなどの実用的な要因に影響されやすい傾向があります。
また、同じ企業が複数ブランドを展開している場合でも、ブランドごとにロイヤリティの程度が異なることがあります。こうした違いを理解することは、顧客の購買行動の背景を深く知り、適切な施策を講じるために重要です。
顧客満足度との違い
顧客満足度とブランドロイヤリティは、評価や行動の観点で異なる概念です。顧客満足度は商品やサービスの体験に対する評価で、「期待以上」「期待通り」「期待以下」といった基準で判断されます。
一方、ブランドロイヤリティは特定ブランドへの感情的支持を示し、競合他社の選択肢があってもそのブランドを選び続ける態度や行動を含みます。顧客満足度はロイヤリティを高める基盤となりますが、それだけでロイヤリティに直結するわけではありません。ブランドが顧客に感情的価値や共感を提供することが、ロイヤリティ形成には不可欠です。
ブランドロイヤリティを高める5つのメリット・有用性
顧客の獲得や離脱率低下、価格競争からの解放など、企業にとってブランドロイヤリティを高めるメリットは多くあります。ここでは、ブランドロイヤリティ向上がもたらす具体的なメリットについて解説します。
メリット1.顧客維持率の向上
顧客の維持は、企業にとって収益の安定化につながる重要な要素です。ブランドロイヤリティの向上により、顧客はブランドの価値観や理念に共感し、信頼感が醸成されます。感情的なつながりを深く感じることで、顧客との長期的な関係性を構築することが期待できます。
また、リピート購入や顧客単価の維持も実現しやすくなるため、収益の安定化やコスト率の低減にもつながるでしょう。顧客維持率の向上により、ブランドの持続的な成長の基盤を築くことができます。
メリット2.新たな顧客層の獲得
ブランドロイヤリティが高い顧客は、口コミや高評価レビューを通じてブランドを積極的に推薦する傾向があります。このような自然なプロモーションは、新規顧客に安心感と信頼を与え、購買意欲を高める重要な役割を果たします。
また、口コミや顧客紹介による新規顧客の獲得は、広告費やマーケティングコストの削減にもつながります。こうして、ブランドはより多くの顧客層に支持され、成長の機会が広がりやすくなるでしょう。
メリット3.新商品発売・新サービス導入時の応援
新商品発売や新サービス導入の際の課題に、浸透しにくさや受容性の低さなどが挙げられます。しかし、ロイヤリティの高い顧客を増やすことで、この課題の解消につながることがあります。ロイヤリティの高い顧客は、ブランドへの信頼感が強いことから、新商品やサービスを積極的に利用し、フィードバックを提供する傾向があります。
これにより、市場への定着が進むだけでなく、商品の改善やサービス向上に役立つ情報も得られやすくなるでしょう。結果的に、企業としての収益拡大にもつながります。
メリット4.価格競争からの解放
近年、市場の成熟化や生活者のコスト意識の高まりなどにより、価格競争が激化しています。ブランドロイヤリティの向上によって得られた顧客は、価格よりもブランドが提供する価値や信頼性を重視するため、企業は価格競争の圧力を受けにくくなります。これにより、企業は商品やサービスの質や独自性を追求しながら、安定した収益確保に注力できるでしょう。
ブランドの品質や価値に共感する顧客の存在は、価格を理由とした顧客離れを防ぎながら、長期的なブランド価値の向上に集中する余裕を生む要素となり得ます。
メリット5.社内のロイヤリティ向上
ブランドロイヤリティの向上は、従業員のエンゲージメントや会社への忠誠心にも直結します。顧客からの支持が明確になることで、従業員は自社のブランドや仕事への誇りを感じ、モチベーションが向上しやすくなります。
さらに、顧客から従業員に向けられたフィードバックや感謝の言葉などを社内で共有することで、従業員のさらなる満足感や満足度にもつながるでしょう。「自分が価値あるブランドの一員である」という意識を従業員に感じてもらう機会を増やすことが、社内ロイヤリティを高め、組織の成長を支える基盤となります。
ブランドロイヤリティの計測方法
ブランドロイヤリティを正確に把握し、適切な改善策を講じるためには、定量的な計測が欠かせません。顧客のブランドへの支持度や忠誠度を測定するさまざまな指標を活用することで、ブランドの現状を明確化し、具体的な施策につなげることが可能です。ここでは、代表的な指標とそのほかの指標の活用方法について紹介します。
NPS
NPS(Net Promoter Score)は、ブランドロイヤリティを測定する代表的な指標のひとつです。顧客に「このブランドを他人にどれくらいすすめたいか」を0~10のスコアで評価してもらい、以下の3つのカテゴリーに分類します。
- 推奨者(9~10)
- 中立者(7~8)
- 批判者(0~6)
NPSは、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いて算出され、ブランドへの支持度や満足度を数値化します。スコアが低い場合には批判者の不満点を特定し、批判者を中立者へ、中立者を推奨者へと転換する施策を検討することが重要です。NPSは顧客視点でブランドの状態を把握し、改善に役立つ有効な手法といえるでしょう。
以下の記事は、NPS調査について詳しく書かれた記事です。基本的な調査方法や具体的な質問例などについても解説されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
DWB
DWB(Definitely Would Buy)は、顧客の購入意向を測定する指標です。この指標は、顧客が特定のブランドや商品を「将来も必ず購入したい」と考えている割合を示します。計測にはアンケートやインタビューを用い、「このブランド(商品)を次回も絶対に購入したいと思うか」と質問し、以下の5段階の選択肢で評価します。
- 絶対買いたくない
- あまり買いたくない
- どちらでもない
- 買いたい
- 絶対買いたい
「5. 絶対買いたい」と答えた顧客の割合が高いほど、ブランドの魅力やロイヤリティの高さがうかがえます。このデータを活用して、顧客のニーズを反映した施策を立案することが可能です。
そのほかの指標
指名検索数やSNS上の反応も、ブランドロイヤリティを測定する有効な指標です。指名検索数は顧客がブランド名を直接検索した回数を示し、ブランドへの関心や認知度、信頼感の指標となります。また、SNSでの高評価投稿やリポスト、シェアの頻度は、ブランド支持の広がりを可視化する重要なデータです。
これらの指標は、顧客がブランドをどれだけ信頼し、積極的に共有しているかを反映しています。特に、SNS上でのポジティブな反応は新規顧客の獲得にもつながり、計測データとしてだけでなく、プロモーション戦略にも応用できるでしょう。
ロイヤリティが高いブランドの3つの特徴
ロイヤリティが高いブランドには、共通する特徴がいくつかあります。これらの特徴を活用することで、顧客との信頼関係を深め、長期的な支持を得やすくなるでしょう。特に、ユーザーが積極的に関与できる環境や、ブランドの価値観に共感できる仕組みが整っていることは重要なポイントです。ここでは、ロイヤリティが高いブランドに見られる3つの特徴を解説します。
1.ユーザーが作成したコンテンツ(UGC)が多い
ユーザーが作成したコンテンツ(UGC)が多いことは、ロイヤリティの高いブランドの特徴のひとつです。UGCは、顧客視点のリアルな声で構成されているため、企業による広告では得られない信頼性と影響力を持っています。この信頼性は、新規顧客に親近感を与え、ブランド利用を促進する重要な役割を果たします。
さらに、UGCは近年ますます多様化しており、SNS投稿やレビュー、YouTube動画など、さまざまな形で広く拡散される可能性があるのも特徴です。これにより、ブランドは自然な形で注目を集め、認知度の向上や顧客とのつながりを強化するきっかけとして活用できるでしょう。
2.ファンコミュニティの活動が活発
ファンコミュニティの存在も、ロイヤリティの高いブランドに見られる特徴です。こうしたコミュニティは、ブランドがファン同士の交流を促進することで自然発生的に、あるいは意図的に形成されるのが特徴です。ファン同士が共通の興味を共有し、ブランドに関連する体験や意見を交換する場は、ブランドへの愛着を深める大切な機会となるでしょう。
活発なファンコミュニティを持つブランドでは、顧客のアイデアが新商品やサービスに反映される仕組みがあるケースも多く見られます。このような取り組みは、ファンに「自分もブランドの一員である」という特別な感覚を与え、ロイヤリティのさらなる強化につながります。結果として、長期的な顧客とのつながりを築く重要な基盤になるといえるでしょう。
3.ブランドストーリー・理念が明確
ブランドストーリーや理念が明確であることも、ロイヤリティの高いブランドの特徴です。明確なミッションやビジョンを掲げ、それを顧客に一貫して伝えることで、顧客の共感を得ることができます。この共感は、顧客がブランドを支持する「理由」となり、競合他社ではなく、そのブランドを選び続ける動機を強化します。
さらに、理念に共感する顧客は、ブランドとの感情的なつながりが深まりやすく、長期的な関係を築きやすいのが特徴です。このように、ロイヤリティの高いブランドは、安定した顧客基盤を構築し、持続可能な成長を支える強力な要因を持っているといえます。
ブランドロイヤリティを高めるための5つのポイントと施策例
ブランドロイヤリティの向上には、顧客と信頼関係を築き、長期的なつながりを維持することが大切です。ここでは、ロイヤリティ向上に役立つ具体的なポイントと施策を紹介します。ブランドと顧客の関係を深める重要なポイントになるため、今後の戦略立案などの参考にしてみてください。
ポイント1.メッセージの一貫性
ブランドロイヤリティを向上させるには、すべてのチャネルと顧客接点で一貫したメッセージを発信することが不可欠です。一貫性のあるメッセージは、顧客に信頼感と安心感を与え、ブランドの認知や価値向上に寄与します。これにより、顧客はブランドを「信頼できる存在」として認識しやすくなるでしょう。
具体的には、ロゴやデザインの統一だけでなく、SNSやWebサイト、店頭接客など、すべてのタッチポイントでブランドストーリーを継続的に一貫して伝えることが重要です。このような取り組みは顧客の記憶に残りやすく、ブランドイメージを確立する重要な要素となるでしょう。
ポイント2.ロイヤリティプログラムの導入
ロイヤリティプログラムは、顧客がブランドと関わり続ける動機を高め、リピート利用などを促進する効果的な方法です。ポイント制度や会員ランク特典、パーソナライズされた特典、新商品への先行アクセスや会員限定セールなどが代表的な施策です。
これらの施策により、顧客に特別感を提供し、ブランドとのつながりを強化できます。また、プログラムを通じて得られる顧客データは、ニーズ分析やマーケティング戦略の改善にも役立ちます。結果として、ロイヤリティプログラムの導入により、ブランド価値の向上と収益の拡大に寄与するでしょう。
ポイント3.プレスリリースの活用
プレスリリースは、ブランドの価値観や活動を広く伝える重要なツールです。社会貢献活動や持続可能性、新しい価値提案などを発信することで、顧客の共感を得やすくなり、ブランドへの信頼や愛着が深まるきっかけになり得ます。ブランドの理念やミッションも加えると、さらに有効でしょう。
新商品やサービスを発表する際には、具体的なメリットや価値を顧客に伝え、関心を引くことが大切です。ただ情報を伝えるだけでなく、顧客とのつながりを深める内容を意識することで、ロイヤリティ向上に大きく貢献します。
ポイント4.顧客エンゲージメントの強化
顧客との双方向のコミュニケーションを強化することで、ブランドへの親近感や信頼を育むことができます。特に、SNSやメールでのコメント返信やアンケートの実施などで、顧客から得たフィードバックを商品作りや新サービスに取り入れる共同創造の仕組み作りなども効果的です。
こうした取り組みにより、顧客はブランドとのつながりを実感し、「自分もブランドの一員である」という特別感を抱くようになります。
また、SNSを活用して顧客エンゲージメントを強化する場合は、フォロワー数やいいね数の増加を目指すだけではなく、投稿をきっかけに生活者がブランドの価値観に共感したり、興味を持ったりすることを想定した発信が重要です。
以下は、多くの企業でSNSコンサルティングをされている株式会社ホットリンクのご担当者へ、SNSによる顧客との接点構築の重要性やポイントについて取材した記事です。具体的な活用方法や事例なども紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
口コミを活用した広報戦略、企業のXアカウントでの効果的なリポストやDMの返信方法については、以下の記事を参照ください。いずれも顧客エンゲージメントの強化にとって大切な要素が盛り込まれた記事です。
ポイント5.顧客体験の向上
顧客体験を向上させることは、ブランドロイヤリティを高めるうえで欠かせません。オンラインストアや実店舗での購入、利用体験を最適化することで、満足度や信頼度が向上しやすくなるでしょう。
さらに、体験型イベントやワークショップを開催することで、顧客がブランドを直接体感する機会を提供できます。例えば、新商品の試用会やDIYワークショップなどは、ブランドへの親近感を深めるために有効です。これらの施策は、顧客に特別な体験を提供し、ブランドの価値を実感させる大切な機会となり得ます。
まとめ:ブランドロイヤリティ向上の鍵は「ブランドと顧客の一体感」
ブランドロイヤリティの向上には、顧客との深い信頼関係と、ブランドへの愛着心を築くことが重要です。そのためには、ブランドからの一貫したメッセージの発信や、満足度の高い顧客体験の提供などが効果的です。プレスリリースの配信やSNS、イベントの開催などを通じてブランドの価値観や理念を共有することで、顧客の共感を得るきっかけが作れるでしょう。
また、双方向のコミュニケーションを強化し、顧客の意見やアイデアを取り入れることで、顧客に「ブランドの一員である」という感覚も提供できます。ブランドとの一体感を実感する機会を増やすことで、信頼関係や愛着心が醸成され、さらなるブランドロイヤリティ向上につながるでしょう。
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