広報PR活動を行ううえで欠かせない業務のひとつが「クリッピング」です。クリッピングとは、新聞や雑誌などの紙媒体はもちろん、Webメディア・テレビ・ラジオ・SNSなどから自社や業界に関する情報を収集・整理することを指します。
自社の露出状況を把握できるだけでなく、競合や業界トレンドの分析、広報戦略の改善にもつながる重要なプロセスです。本記事では、クリッピングの基本的な意味や目的、実務に役立つメリットや注意点をわかりやすく解説します。
クリッピングとは?広報活動との関係性
クリッピングとは、本来は新聞や雑誌などの記事を切り抜いて、記録・保管することを指す言葉です。かつては紙媒体中心の手作業でしたが、現在ではその対象が大きく広がり、Webメディアやテレビ、ラジオ、さらにはSNSなどでの露出情報も含まれるようになりました。
広報活動においてクリッピングは、自社や競合の掲載状況を把握し、戦略立案や効果測定の基礎データとなる重要なプロセスです。単なる「記事の保存」ではなく、広報の成果を可視化し、次の施策に生かすための情報収集手段といえます。
クリッピングを活用する目的
クリッピングは、単に記事を保存するだけの作業ではなく、広報PR活動の成果を把握し、次の戦略を立てるための重要な手段だとお伝えました。自社の露出量を把握することはもちろん、施策の効果測定、競合や業界全体の動向把握、そして社内にナレッジとして蓄積することまで幅広い目的があります。
次に、広報担当者が知っておきたい、クリッピングを活用する4つの目的を整理します。
目的1.メディアへの露出量と内容を把握する
クリッピングを行う最大の目的は、自社がどの程度メディアに取り上げられているかを把握することです。新聞やWeb記事の掲載数だけでなく、どのような切り口や文脈で紹介されたかを確認することで、世の中に伝わっている自社イメージを理解できます。メディア露出の量と質を可視化することは、広報PR活動全体の評価軸をつくる第一歩となります。
目的2.効果測定や対策に活用する
プレスリリース配信やイベント実施といった施策の成果は、クリッピングによって定量・定性的に測定できます。例えば「配信後にどの媒体で掲載されたか」「記事内容が自社の狙い通りだったか」を確認すれば、次回の施策改善に直結します。露出数や媒体傾向を分析することで、より効果的な情報発信の方法やターゲットメディアの選定に役立ちます。
目的3.競合・業界の広報動向をモニタリングする
クリッピングは自社の情報だけでなく、競合他社や業界全体の発信状況を把握する目的にも有効です。他社がどのようなテーマで取り上げられているか、どの媒体が業界課題に注目しているかをチェックすれば、自社の立ち位置や差別化のヒントを得られます。業界トレンドをつかむことで、次の広報戦略やメディアアプローチに反映できます。
目的4.組織内ナレッジとして蓄積する
集めた記事や報道内容を社内で共有し、知見として蓄積することもクリッピングの重要な目的です。メディアが注目する表現や構成をストックしておけば、新しいプレスリリース作成時の参考資料になります。
また、新人担当者の教育や経営層への報告資料としても活用でき、広報業務を属人化させずに組織全体の資産にすることが可能です。
クリッピングを行う5つのメリットと活用方法
クリッピング業務では、幅広くメディアの情報に触れられるので、まとめるプロセスも含めてメリットが多い作業です。主な5つのメリットをピックアップしてご紹介します。

メリット1.媒体の特性を理解できる
紙媒体(新聞や雑誌)はもとより、テレビ、ラジオ、Webメディア、SNS(Facebook、X:旧Twitter、Instagram、ブログ等)など、すべてのメディアを横断して調査を実施するクリッピング。その内容を記録することで、メディアごとの想定読者や取り上げ方を知ることになります。
読者層や掲載情報の傾向などを把握できれば、メディアへ情報提供する際の参考にもなります。各社の傾向に合わせた資料を作って売り込むなど、広報PR活動の幅が広がるでしょう。
メディアの特性を理解したら、タイミングなどに気をくばって配信しましょう。
メリット2.トレンドを把握できる
メディアは基本的に「読者が欲する情報」「社会に求められる情報」を掲載します。メディアが発信する情報に目を通す過程で、社会が求める情報のトレンドを把握できるのも、クリッピングの特徴です。把握した情報をもとに、どの言葉選びが好まれるのか、メディアに受け入れられやすいキーワードが含まれているのか、なども含めて考え、新たな広報PR企画を立ててみましょう。
メリット3.広報PR戦略の立案につながる
クリッピングでは、自社はもちろん、業界や業種を問わずさまざまな企業・団体の取り組みを目にすることができます。そんなときは、ぜひ「どんな広報PR戦略をとっているのか」参考にしてみてください。
例えば、クリッピングした記事にいつも見かける企業・団体があれば、ニュースの内容と企業名で検索してみましょう。プレスリリースが上位にヒットするはずです。メディアに掲載されたプレスリリースには、「配信タイミング」「タイトル」「内容」など、見習うべき点があります。どんな戦略で情報を発信しているのか分析し、自社の広報PR戦略のアップデートにつなげましょう。
メリット4.組織のナレッジとして蓄積できる
チームで広報PR業務を行っている場合や他部署と情報共有したい場合、クリッピングは非常に役に立ちます。クリッピングを通してさまざまなメディアの情報をチェックし、そこで得た知見をチームのために蓄積・共有できるからです。クリッピング自体をチームで協力して行ったり、定期的に共有の場を設けたりして、必要な情報が漏れなく行き渡るようにしたいですね。
メリット5.営業活動などに活用できる
クリッピングによって自社の商品・サービスに関する情報がいつ、どんなメディアでどれくらい取り上げられているのかを明らかにすると、営業活動の際の参考資料として活用できるでしょう。メディアという第三者の目を通した商品・サービスの評価はセールストークの強力な武器になるだけでなく、購入や契約といったユーザーの決断の後押しにもなります。
クリッピングの方法とは?準備するための3つのステップ
複雑に感じられるクリッピングの方法ですが、ポイントさえ押さえれば、スムーズに行えます。クリッピング対象の決定から実際の作業まで、3つのステップでクリッピングの方法を確認してみましょう。

STEP1.対象のメディアを決める
まずは、自社のクリッピングの目的に合わせて「どのメディアをどれだけクリッピングするか」を決めます。WebメディアやSNSの場合、一次情報以外にシェアされた情報なども無数にあるので、すべてを網羅することは非常に難しく、メディアを絞らずにクリッピングを進めると、大変です。地上波で取り上げられることを目指すならテレビ番組を中心に作業する、あるいは新聞へ掲載されたいなら紙面を作成するなど、調整してください。特定のテレビ局や新聞社に限り情報を集めたり、「一次情報のみを捕捉し、シェアや転載は含まない」などのルールを決めたりするのもよいでしょう。
STEP2.クリッピングの手法を決める
クリッピングの手法はメディアによって異なります。紙媒体の場合は手作業で切り抜きをスクラップブックに貼る、テレビ・ラジオの場合は録画・録音等をスタンバイするなど、手段が変わるでしょう。ただ、限られた人員でコツコツと集めていると、他の業務にかける時間を確保できなくなってしまうかもしれません。
そんなときは、業務のアウトソースや自動化を考えてみましょう。クリッピングを専門に請け負う企業もありますし、各メディアの自動モニタリングツールも多数存在します。
特にWeb上で膨大な量の情報がやり取りされる現代では、クリッピングにかかるコストや時間は年々大きくなっています。Webクリッピングツールを使うことも、業務の効率化につながります。PR TIMESにも、月額1万円から使用できるWebクリッピングサービスがあります。
STEP3.クリッピングした情報の取り扱いを決める
クリッピングした情報をどんな形式で残し、取り扱っていくのかも、あらかじめ検討しておきたいポイントです。
前述したように組織のナレッジとして共有するのであれば、誰でもアクセスしやすい形式で保管する必要があるでしょう。共有するだけなら、SlackやMicrosoft Teamsなどで記事のリンクを添付できます。営業活動で使うのであれば、Webページを印刷することも必要かもしれません。その場合は、社内ドライブに掲載日時別にクリッピング情報をアーカイブしておく方法もあります。
クリッピングを行うときの3つの注意点
ここまで、クリッピングのメリットや方法について解説してきました。広報PR活動の下地になるクリッピングですが、実施する際には次の3点にも注意しましょう。
注意点1.著作権を侵害しない
誰もが簡単に記事や情報をシェアできる今だからこそ、注意したいのが著作権侵害です。例えば、「自社の情報が掲載された新聞・雑誌記事のキャプチャーや本文を自社ホームページなどに転載する」ことは、著作権侵害にあたります。自社ホームページだけでなく、Web上で公開される社内報についても同様です。一方、記事のリンクを添付することは問題ありません。
シェア行為が著作権侵害とならないよう、クリッピングした記事などを企業としての公式な情報発信に使用する場合は、必ずメディア側に許諾を得たり、二次利用の手続きをしたりするようにしましょう。
あわせて、社内での情報の取り扱いを決めておくことも重要です。
クリッピング結果をどう保存し、誰が閲覧できるのかを曖昧にしておくと、情報の活用が進まないだけでなく、不要な重複作業も生じます。フォルダ構成や共有範囲、保存期間などをあらかじめルール化し、担当者以外も活用できる環境を整えることが有効です。
注意点2.費用対効果を意識する
くまなくすべてのメディアをモニタリングしてクリッピングするには、人的にも時間的にもコストが膨らみがちです。
クリッピングはそれ自体を目的とせず、戦略的広報PR活動を実現するための手段と捉えるのがベターです。そのうえで、どれだけの工数と費用をかけられるのか検討し、必要に応じてツールを導入したり、アウトソースしたりしましょう。
注意点3.次の広報PR戦略につなげる
「情報を集めて終わり」では、クリッピングの本来の目的は果たせていません。冒頭でもご紹介したように、クリッピングはあくまで「未来」につなげるための業務。競合他社が取り上げられている媒体も、貴重な情報源です。例えばメディアリストの作成や、広報PR企画の立案などに活用していけるとよいですね。
さらに、クリッピング結果を定期的にレポート化し、数値や傾向を可視化すれば、社内での共有や次の施策改善に直結します。ダッシュボードでの見える化や定期レビュー会議での活用を通じて、戦略的なPDCAサイクルを回す仕組みに発展させることが大切です。
Web媒体のクリッピングなら「PR TIMES Webクリッピング」

PR TIMESでは、プレスリリースの配信から掲載された記事の調査を実施できる「Webクリッピング」サービスを提供しています。
国内大手サイトをはじめとする、3,000以上のWebサイトに掲載されている記事から、あらかじめ指定したキーワードを含む記事を調査・抽出することが可能です。
効果測定の効率化や、クリッピング業務のサポートにぜひご活用ください。
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クリッピングで重要なのは「なぜやるか」の意識
各メディアの理解やトレンドの把握、広報PR戦略の立案、ナレッジとしての蓄積、営業活動での活用など、さまざまなメリットがあるクリッピング。クリッピングを行い、社内で回覧するプロセスにおいても、これらのサイクルを回していけます。目的意識のないまま作業にあたるのは、非常にもったいないことです。
メリットを正しく享受するためにも、常に目的と活用イメージを浮かべながらクリッピングに臨みましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
「クリッピング」に関するQ&A
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