広報・PRという職種の認知度や需要が高まる一方で、組織の状況や課題に応じて、ゴールや手法も多様化しています。
そのような状況下で、「PRパーソンとしてあるべき姿」や「組織に貢献できるPR活動は何か」「経営目線はどのように身につけていけば良いのか」といった悩みに直面することもあるのではないでしょうか。
長年第一線で活躍する3名のPRパーソンに自身の経験を振り返りながら、PRパーソンとして大切にすべき視点をシェアしていただきました。本レポートでは、そのクロストーク内容を掲載します。
<登壇者>
- Ubie株式会社/株式会社マドベ 片山悠 氏
- Sansan株式会社 小池亮介 氏
- グローバル・ブレイン株式会社 松井小麦 氏
<モデレーター>
- #PRLT 代表 岡陽香 氏
Session 1 : 初心者時代から現在までの広報像の変化とは
PRパーソンとしての歩みから、どのように自身の広報像が変化していったのかを振り返ります。
PRパーソン3名のターニングポイント
- 思い描いていた広報PRの仕事と現実のギャップは、目の前の仕事を120%の質でこなすことで埋まってくる。周りの人から認められることで、舞い込んでくる仕事が変わった
- 組織の中で自分が優位なものを見つけ、そこを徹底することで「◯◯の人」という唯一無二のポジションを確立でき、自信に繋がった
- 経験を積み重ねることで、本当にやりたい広報PRが見え、転職などの新たなチャレンジのきっかけに繋がった
お三方ともに、経験を積むことで自分らしいPRパーソンとしてのスタイルを確立してきたことが分かりました。この後のセッションでは、多くのPRパーソンが陥る課題にどのように向き合ってきたかに迫ります
Session 2 : 点を線にして長期目線で考えるPR活動とは
PRの仕事には上流も下流もない。できることが増えていくことで、活動の幅が広がる
岡「『プレスリリース』や『メディア対応』といった発信の活動から、経験を経て「リサーチ」や「企画」まで活動を広げていったPRパーソンが多い印象なのですが、皆さんはどのように活動を広げられましたか?」
松井「情報発信をし続けていく中で、視点が広くなり、自身で主体性を持って企画をすると情報が広がったり、効果がでてくると次第に気付いていきました。現在は、まずはPRの戦略を策定し、それを経営陣と握り、ロードマップをひいて日々のTO DOに落としていくという流れです」
小池「PR会社出身者だと、タスクから入ることが多いです。そこから発信活動を行いました。事業会社に転職してからは、企画やリサーチ、そして、戦略立案まで活動が広がっています。現在Sansanは4名体制ですが、メンバーと一緒にクオーターごとに戦略をたてています」
片山「戦略があって企画があって実行があってという流れがあると思うのですが、どこが欠けてもいけないですし、上流・下流という見方はしていないです。
PR活動において、実行の部分に付加価値がなく、戦略にこそ付加価値があるという考えには違和感があります。実行の質が高くないと、その戦略はただの絵にかいた餅になってしまいます。たとえばプレスリリースも、初心者のスタッフが担うレベルの低い仕事では決してないと考えています」
小池「あくまでもたどってきた道であり、一つずつできることを増やしていくことが大事。今でも誰よりも早く記事掲載に気付いてますし(笑)」
PR戦略の立て方。なりたい姿と現実のギャップを埋めていくことがゴール
小池「会社が置かれている状況から、なりたい姿に持っていくためにどうすればいいのかを考え、戦略を立てています。例えば、Sansanの場合ですと、『Eight』というサービスを、名刺管理アプリではなく、ビジネスSNSとして認識してもらい、活用する人を増やしていくということをPRのゴールにしています。物事を動かすことがPRで出来ることだと思うので、いかにパーセプションチェンジを生めるかを意識していますね」
岡「そのゴールは社長が掲げているのですか?」
小池「もちろん経営者目線でどう打ち出したいのかは重要ですが、PR目線で世の中にどう見られたいのかということも加味しないといけないと思います。そして社内の理解を得るためにも関係する部署によってその説明を変え、説得していくということも重要です」
松井「会社としてステークホルダーにどう見られたいのかという目線あわせをします。そのために今何をすべきかを整理し、戦略に落とします。そうすると今出来ていること、出来てないことが見えてきます」
片山「関わる事業部や届けるステークホルダーによって目標も変わってくると思います。まず
は目標を因数分解した上で現実との差分を整理し、コミュニケーションの粒度にするとどういったアクションをとるべきかを考えていくのが適切でしょう」
現役PRパーソンのリアルなKPI設定。‟パブリシティ獲得”を目標にするのは正しい?
松井「パブリシティ獲得は、一番分かりやすい評価軸だと思いますが、パブリシティ獲得が持つ意味まで考えられたらもっと成長スピードが早くなると思います」
小池「私たちは露出した記事の内容に点数をつけ、クオーター中に何件良記事を獲得するかというのをKPIにしています。このKPIには2つの意味があって。1つは、良記事は、自分たちで企画をし仕掛けていったものでないとなかなか獲得できないので、メンバーの活動量を担保するのにも有効です。2つ目は、質の良い記事が出てどうパーセプションチェンジにつながっていくかという報告の方が社内に理解してもらえます」
片山「まずはOKRにおけるObjectiveのような定性的な目標を定めるのが大事だと思います。ありたい姿になるためには、もしかしたらパブリシティ獲得ではなく、記事広告やオウンドメディアの活用の方が良いかもしれない。違う視点が見えてくる可能性もあります。広報という手段の自己目的化に陥らないために有効です」
Session 3 : 広報担当者のビジョン・ミッション
求められることが多様化する中で、絶対に譲れないPRパーソンとして肝に命じていること
松井「ひとつひとつのステークホルダーにどうメッセージを届けていくかというのを意識しています。また、PRパーソンは、社内での自己PRも大事かなと。自分がどういうところに貢献できる人間なのか、社内における期待値コントロールをして、初めてPRパーソンとしてやっていけるのかなと思います」
小池「社長の”イタコ”になれているか、経営目線でプレスリリースや外に発信するメッセージが描けているか、ということを意識しています。また発信するものに応じて、新卒社員の目線や、他部署の目線など、社内のあらゆる目線で語れるかどうかも大事」
片山「PRパーソンが陥りやすい固定観念のひとつに『自社愛が誰よりも強くあるべきだ』というものがありますが、額面どおりに受け取らないように気をつけないといけません。自社のことを社会の側から冷静に引いて見ながら絶対に裏切らない存在が優秀なPRパーソン。なので、ステークホルダーに一番近い会社の「窓際」にいるというイメージで、その窓はステークホルダーごとにあるんです。PRパーソンは情報参謀であるべきなので、外側の視点は極めて重要だと思います」
Last Session : 明日から実践できる‟広報迷子”になっている方がやるべきこと
小池「スマホの電源を落として、SNSは見ずに、ノートとペンを持ってカフェに行く。そして、自分と、自分があるべき姿と現在地のギャップを紙に書き整理すること!SNSは基本的に余裕がある人が発信していているので、それを見て焦燥感を持ってほしくないです」
松井「同感ですね。他の人をお手本にするよりも、自分に向き合うことは大事。そしてとにかく目の前のこと実践していくことだと思います」
片山「地に足がついた学びを続け、常に実践者であってほしいです。あとは、憧れを憧れのまませず目標にするということが重要ですね。誰と一緒に仕事をするとか、こんな案件に携わるとか。今やSNSで簡単に人と繋がれてしまう時代ですが、真の繋がりは本気の仕事をした人とでないとできないと思います」
本クロストークは、現役のPRパーソンの経験をもとに、「本質的なPR活動のあり方」が語られました。
- PR活動に上流も下流もない。実行力を高めることで活動の幅が広がる
- ありたい姿と現実のギャップを因数分解することが、PR戦略を立てる上でヒントとなり、アクションに繋がる
- ‟広報迷子”に陥ったら、まずは自分に向き合うこと!SNS絶ちも一つの手
‟迷子”に陥っているPRパーソンは、まずは自身の活動を振り返り、これらのTipsを取り入れて明日からの活動を変えていきましょう。
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