世間への幅広い情報伝達や、社会の声を自社経営にフィードバックすることを職務とする広報担当者にとって、不特定多数の多くの生活者にリーチできるマスメディアは心強い存在です。
今回は、そんなマスメディア4大媒体の種類や役割、それぞれの影響力について解説します。また、第5のマスメディアに成長しつつあるWebメディアやソーシャルメディアについてもご紹介。広報活動におけるマスコミの役割について学び、明日からの広報活動にお役立てください。
まず、マスメディアとは?
マスメディアとは、「マス=大衆」に対して情報を伝達する「メディア=媒体」のこと。具体的には、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの媒体を指します。
マスメディアは不特定多数の生活者を対象に、多様な情報を伝達する「マスコミュニケーション」の役割を担っており、略称でマスコミと呼ばれることも多いです。
一般的にマスメディアは、報道・解説・教育・娯楽・広告など複数の役割を果たし、社会的影響力が大きい特徴もあります。
参考:「マスコミュニケーション」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
マスメディアの種類
ここでは、新聞・雑誌・テレビ・ラジオの「4大媒体」に加え、インターネットやSNSについても解説します。
4大媒体の特徴を解説
1. 新聞
新聞とは、時事的なニュースや特集などを提供する刊行物です。近年は紙以外にもスマートフォンやタブレットで購読できる「電子版」や、Web上で読むことができるネット配信も普及しています。新聞を大きく分けると、一般紙と専門紙の2種類です。
一般紙の中でも、発行されている地域の広さにより全国紙(5大紙)・ブロック紙・地方紙と分類されます。地域によって読者数(=影響力)が異なる場合も多いため、地方でアプローチする場合は、それぞれの媒体の影響力をみて優先順位を決めましょう。
専門紙には、スポーツ紙や業界紙など、特定の分野に特化した情報を掲載するもののほか、機関紙や点字新聞などがあります。
メディアとしての新聞の特徴は以下の3つです。
- 地域密着型のニュースを伝えやすい
- 共有しやすい
- 安価である
全国紙よりも地元紙を読んでいる人が多く見られます。全国紙にも「地域面」があり、地域密着型のニュースを伝えやすいのが特徴。
また、新聞は回覧したり切り抜きを掲示したりと、複数人と共有しやすい性質もあります。加えて朝刊や夕刊は、1部当たりの価格が雑誌などと比べて安価です。広報PR担当者と生活者がニュースを気軽に確認できる点で、コストパフォーマンスの高い媒体といえるでしょう。
参考:新聞とは – コトバンク
2. 雑誌
雑誌とは、月刊・隔週刊・季刊などでさまざまなトピックを掲載した定期刊行物です。総合雑誌、専門雑誌(文芸雑誌・ビジネス誌など)、娯楽雑誌(ファッション雑誌・漫画雑誌・スポーツ雑誌など)、教育雑誌、各団体の機関誌、個人雑誌、広報誌などの分類があります。
購読者の年齢層によって、一般誌・男性誌・女性誌・ティーンズ誌などに分けることもできます。広報PR担当者は、情報伝達したい相手に応じてアプローチする雑誌を変えていきましょう。
書店やコンビニエンスストアなどでの販売に加え、スマートフォンやタブレットで電子書籍として販売するかたちも普及しています。
メディアとしての雑誌の特徴は、五感に訴える表現やデザイン性の高いレイアウトが得意な点です。鮮やかなビジュアルやおしゃれな構成は、視覚的なインパクトも大きくなります。
編集者は媒体ごとに使用する紙の質感を考えることもあり、触り心地や印刷方法によって、読み手が受けるイメージを変えることも可能です。
参考:雑誌とは – コトバンク
3. テレビ
テレビとは、電波で映像を伝送し、遠隔地で再現する技術のことです。あるいは、そのために用いられる受像機(テレビ)自体を指すことも。
テレビの放送局は、公共放送のNHKと民放放送(日本テレビ放送網・テレビ朝日・TBSテレビ・フジテレビジョン・テレビ東京・日本BS放送などを含む全国独立放送協議会)があります。テレビ番組は、報道番組・バラエティ番組・ドキュメンタリー・ワイドショー・教育番組など収録内容によって種類もさまざまです。
映像と音声で情報を伝えることで、視聴者に大きなインパクトを与えられるのがテレビの特徴。速報性が高く、民放放送は視聴料もかかりません。また、ローカル局(地方局)では地元に密着した番組も多数放送されています。
近年はNetflixやAmazonプライム・ビデオ、Huluなどの動画配信サービスが台頭していますが、TVer(ティーバー)やParavi(パラビ)など民放のポータルサイトは見逃し配信も充実しており、どこでも視聴できるようになりました。依然として大きな影響力を持った媒体です。
4. ラジオ
ラジオとは、電波で放送局から送る報道・音楽などの音声放送のこと。テレビとは異なり、画面を見なくてもリアルタイムに情報を得ることができるメディアです。近年はインターネット配信サービスradiko(ラジコ)で若年層へのアプローチやSNSでの拡散性の向上を目指しており、ローカル局のコンテンツも全国へ配信する仕組みが構築されています。
ラジオの特徴は、運転や勉強、料理などの作業と平行して番組を楽しむ人が多い点です。パーソナリティとリスナーがコミュニケーションをとれる双方向性は、ラジオならでは。速報性が高く、災害時の情報発信にも強みがあります。たとえば停電でテレビが見られない状況でも、ラジオなら情報発信が可能です。
参考:ラジオとは – コトバンク
参考:ラジオの意義と課題
インターネットやSNSはマスメディアに含まれるのか
インターネットやSNSは、マスメディアに含まれるのでしょうか。こちらでは、今や社会インフラとなったインターネット上のメディアについて説明します。なおネット上のメディアの分類は、Webメディアとソーシャルメディアの2つです。
Webメディアとは、インターネット上で情報を発信しているWebサイトのことを指し、ニュースサイト・コーポレートサイト・キュレーションサイトなどが該当します。SNSとは、個人の情報発信や1対1のつながりなど、社会的な要素を含んだメディアです。X(旧 Twitter)・Instagram・Facebook・YouTube・ニコニコ動画などが該当するとされています。
Webメディアやソーシャルメディアはすでにマスメディアと同じかそれ以上の影響力を持っており、「第5のマスメディア」ともいわれる媒体です。
電通が2022年3月に発表した「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、インターネット広告媒体費は2兆1571億円となり、マスコミ4媒体の広告費の総計2兆4,538億円を初めて突破。動画広告やソーシャル広告の伸びが成長を後押しし、テレビや新聞よりもネット広告にお金が集まる時代が到来しました。
インターネット上のWebメディアやソーシャルメディアは、速報性と拡散性の高さが特徴です。膨大な情報の中から自分が求めている情報を瞬時に検索し、すぐに不特定多数に拡散できるメリットがあります。
一方で、容易に情報発信できるため、誤情報やフェイクニュースが出回りやすい点は、Webメディアやソーシャルメディアのデメリットです。
参考:「2021年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」 – News(ニュース) – 電通ウェブサイト
マスメディアがもつ3つの役割とは?
マスメディアの機能について、「コミュニケーション学の父」とされるアメリカの学者ウィルバー・シュラムは、「見張りの機能」「討論の機能」「教師の機能」の3つに分類しています。
1つ目の「見張りの機能」は、社会環境の現状や変化に対し、情報を伝えて警告を発する役割です。政治や経済の動向をマスメディアが発信することにより、大衆が危機感や自身の考えを持つきっかけになります。たとえば政治家や企業の汚職を伝えるニュースは、行政機関や企業への見張りとして機能しているといえるでしょう。
2つ目は「討論の機能」。これは社会環境に関して構成員間の意見を整理し、世論を形成させる役割です。4大媒体に加え、近年は「第5のマスメディア」であるWebメディアやソーシャルメディアで個人が意見を発信することが容易になり、メディアが持つ「討論の機能」がより活性化しています。新聞の投書欄からX(旧 Twitter)のつぶやきまで、さまざまな場面で構成員が互いの意見を言いあう討論の機能を有しています。
3つ目の「教師の役割」は、価値観や社会的規範、知識などを次の世代へとつなぐ役割です。新聞は共有性、雑誌は保存性が高いメディアであり、次代への情報伝達に向いています。たとえば新聞は記事や広告の内容が時代を反映したものになるため、文化研究、過去の災害の分析を行う際に引用されるのもひとつの側面です。
また、アメリカの学者、ハロルド・ラスウェルもそれぞれを「環境の監視」「構成員の相互作用」「社会的遺産の世代的伝達」として分類しています。役割の名称は異なるものの、内容は前述の「見張りの機能」「討論の機能」「教師の機能」と同様です。
時代とともにマスメディアの立ち位置は移り変わりますが、原則として3つの機能を持っています。
マスメディアが与える影響とは?
不特定多数に情報伝達を行うマスメディア。世間に及ぼす影響はどのようなものでしょうか。「政治への影響」「経済への影響」「文化・教養としての影響」の3つの観点で説明します。
1.政治への影響
マスメディアは市民に向けて政治的なニュースを報道・解説しており、政治的判断を行う際の基準となります。
新聞の見出しやニュースのテロップの情報、ワイドショーに出演するコメンテーターの意見などが一例です。これらは世論の形成に少なからず影響を与えるため、立法・司法・行政と並ぶ「第四の権力」といわれることもあります。
2.経済への影響
マスメディアは人々の経済活動にも影響を与えます。テレビ・雑誌・新聞・ラジオは日常生活で何度も触れるものであり、強く生活者の印象に残るためです。
マスメディアで目にする商品やサービスは、広告もあれば、広報PR活動の結果実った露出もあります。前者は商品のTVCMや新聞の広告欄、後者はニュースやバラエティ番組で紹介される商品、経営者のインタビューなど、さまざまです。
たとえばマスメディアで特定の事柄が複数回取り上げられることで「これが人気」という共通認識が生まれ、経済効果につながる可能性もあります。テレビ・雑誌で紹介されたスポットに人が集まったり、紹介されたグッズが売り切れることなどがわかりやすい例です。
3.文化・教養としての影響
価値観や知識などを次の世代へつないでいくのは、マスメディアの大きな役割です。文化・教養の土壌作りにも影響を与えており、テレビであれば教育番組・英会話・手話・将棋などの趣味の番組、雑誌であればさまざまなジャンルの専門誌(新聞は専門紙)があります。
映画、ドラマ、スポーツ中継、バラエティーなどの娯楽を提供する番組も多様です。これらは人々が広く楽しむ大衆文化を成立させ、ある対象への人気を確立させることで、流行を生み出すきっかけにもなります。時にはブームに乗って発信する機会もある広報PR活動において、マスメディアがもつ文化的な影響は大きいといえるでしょう。
広報PR活動におけるマスコミの役割
広報PR活動は企業・組織の存在意義を見いだし、経営を持続し、価値を高めていくことが目的です。達成するためには、自社・商品・サービスの認知を拡大させる必要があります。不特定多数への情報発信が得意なマスメディアは、広報PR担当者にとって心強い味方です。
マスメディアが世間に与える影響は大きく、丁寧で慎重なコミュニケーションが求められます。たとえば人気のテレビ番組で数分間紹介されるだけで、ホームページのサーバーがダウンしたり、問い合わせで電話回線がパンクしたり、生産が追いつかなくなったりするほどの反響を巻き起こす場合もあるためです。
新聞・雑誌・テレビ・ラジオの4大媒体とWebメディアやソーシャルメディアは、広報PR担当者としてメディアリレーションズでつながる主要な相手となります。また、紙媒体がWeb版を展開するなど、マスコミは時代に合わせて発信の方法を変化させているため、担当者は動向を逐一チェックしましょう。
マスメディアが与える影響力の大きさを理解しておこう
この記事では、4大媒体と呼ばれる新聞・雑誌・テレビ・ラジオと、「第5のマスメディア」であるWebメディア、SNSなどについて説明しました。
マスメディアは生活者の暮らしと密接な関係にあり、ここを通じた広報PR活動は、世の中に与える影響も多大です。マスメディアが社会で果たす役割、媒体ごとに異なる特徴、得意な表現などがあることを理解し、きめ細かなメディアリレーションズを心掛けましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
マスメディアと広報活動に関するQ&A
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