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オンボーディングとは?人事が実施するときの3つのポイントや流れ、事例を紹介

新入社員や中途社員が企業に入社した際に行う、企業の教育・育成プログラムの「オンボーディング」。新卒で入社した際や転職した際に、実際に受けたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本では新人研修と解釈されることも多いオンボーディングですが、基本的な研修のほかにも、新たに仲間になった人が企業やチームなどの環境に馴染めるようにサポートするという役割も含まれます。

今回は、オンボーディングを実施する目的やメリット、流れや事例を紹介していきます。

オンボーディングとは?

「船や飛行機に乗っている」という意味を持つ「on-board」から派生した言葉。入社したときに受ける、教育・育成プログラムで、新入社員や中途社員が早期に職場の環境やカルチャーに慣れ、定着・戦力化することを目的とした施策です

また、企業によっては、各部署の仕事内容を知る場や、業務で必要となる知識や技術を学ぶ場としてもオンボーディングは活用されます。新人研修よりも大きな枠組みで行うため、教育にムラがなく、平準化を図りながら進められるところもポイントです。

オンボーディングとは

オンボーディングが重視されるようになった背景

オンボーディングが重視されるようになった背景には、企業の「定着率の低さ」や「早期離職」があります。これまで日本では、入社してから同じ企業で長く働くことが良しとされていましたが、近年ではステップアップやキャリア形成のために積極的に転職活動を行う人も増えてきています。また、働き方改革やワークライフバランスなどが見直され、仕事に対する価値観が変化していることも影響しているのでしょう。

これからますます少子高齢化が進み、労働人口は減少していきます。そのため、入社した人を組織に定着させることや、早めに活躍できる環境を整えていくことが企業としての重要な課題となっています。どれだけ優秀な社員を雇用しても、企業側の研修やフォロー体制が整っていないと、定着させることは難しくなりますから、オンボーディングの時間が大切なのです。

特に2020年以降はテレワークを導入する企業も増え、オンラインでの研修やコミュニケーションが定着してきました。オンラインの場合、対面のときよりも細かなフォローが必要なシーンがあるため、オンボーディングの内容も時代にあわせて変化していくことが重要です。

参考:新規学卒就職者の離職状況を公表します

オンボーディングを実施する3つの目的

早期離職を防ぎ、組織に定着させるためにも大切な取り組みであるオンボーディング。ここでは、オンボーディングを実施する目的を3つにまとめてみました。

目的1.新入社員の早期戦力化のため

オンボーディングを実施する1つ目の目的は「新入社員の早期戦力化」です。どんなに高い能力を持っている人でも、企業や組織のルールや環境に慣れるまではパワーを発揮するのが難しいはずです。仕事の進め方や業務で関わる人の把握、使用するツールやサービスの理解など細かい部分で負荷がかかりがちだからです。

オンボーディングは、新たに入社した人の不安を解消することで、結果的に戦力になるまでの所要時間を短縮することにつながるのです。

目的2.カルチャーマッチのため

オンボーディング実施の目的2つ目は、新入社員と企業との「カルチャーマッチ」のためです。それぞれ企業ごとに、社風や理念、考え方、価値観など、さまざまなカルチャーがあります。細かな部分だと、挨拶や連絡方法、他部署との関わり方など、慣れている人には当たり前のことも、入社してしばらくは戸惑ってしまうことでしょう。

カルチャーを知る機会がなく馴染めずにいることは、早期離職につながります。新入社員が不安なまま働くことにならないよう、オンボーディングの内容でフォローするようにしましょう。

目的3. チーム力向上のため

オンボーディングを実施する目的の3つ目は、「チーム力向上」のためです。オンボーディングは、新たに入社した人がもともと持っていた知識やスキル、価値観などを組織に加えていくという意味合いもあります。チームや組織に新たな社員が加わるタイミングは、体制やルールを見直すきっかけにもなります。

またオンボーディングは、社内全体でサポートしていく取り組みのため、他部署の状況や価値観を知れる機会でもあります。部署によってルールのミスマッチがないかなど、オンボーディングを通して見直し、風通しのよい職場づくりを心掛けましょう。

オンボーディングを行うことによるメリットとは?

次に、オンボーディングを行うことでどんなメリットがあるのかを紹介します。ここでは企業にとってのメリットと、従業員にとってのメリットに分けて双方の視点でまとめました。

企業にとってのメリット

オンボーディングを行うことによる企業のメリットはたくさんあります。上記でもお伝えしましたが、まずは新入社員の早期離職の防止や早期戦力化です。早期離職を防ぎ、企業に定着させることができれば、採用にかかるコストの削減にもつながります。また、早めに職場環境やカルチャーに慣れてもらうことで、業務でパフォーマンスを発揮してもらいやすくなります。

優秀な人材を採用し、戦力になるまでの時間が早まれば生産性が向上し、部署やチーム内の連携の強化にもつながります。そして、新たな人材が入社するごとにオンボーディングの内容を見直すことで、人材育成施策のアップデートを図ることもできます。

従業員にとってのメリット

オンボーディングを行うメリットは、企業だけではなく従業員にもあります。入社するときは、多くの人が緊張したり不安な気持ちを抱いたりするものです。新入社員の研修とは異なり、オンボーディングは安心して企業や組織に溶け込んでいけるように、理解を深める時間でもあります

また、他部署の業務内容を知ったり、不明な点を質問したりできる場でもあるので、部署内だけでなく企業全体の動きなども把握することができます。チームに溶け込みやすくなることはもちろん、相談したりアドバイスをもらったりしやすい環境が作られるのも従業員にとってのメリットであると考えられます。

オンボーディングを行うときの流れ5ステップ

オンボーディングを行う際、何から始めたら良いのか迷ってしまう方もいるかもしれません。ここではオンボーディングを行うときの流れを紹介していきます。

STEP1.  目標・目的の設定

まずは、オンボーディングを行う目標・目的を設定しましょう。最終的なゴールを設定することで、このオンボーディングではどんな内容が必要なのか、何をすべきかが明確になります。目標は、コミュニケーションの観点と、知識やスキルを身に付けるための観点から決めることが大切です。また、新入社員に対して、限られた時間の中でどんなコミュニケーションをとり、何をどう伝えていくかの指針になるような内容を心掛けます。

STEP2.  環境の構築

次に、オンボーディングを行うための環境を構築します。効率的に進め、円滑なコミュニケーションを取るためにも環境づくりが必要です。対面型コミュニケーションでは、OJTや1on1、メンター制度などを取り入れていきましょう。また、チャットツールや社内ポータル、SNSなどのオンラインでのコミュニケーション体制を整えておくことも大切です。

さまざまなコミュニケーションの手段を洗い出し、検討しておきましょう。環境の構築にあたっては、実際に新入社員が働く現場となる配属先の理解を得て協力しながらつくり上げていくことも重要です。オンボーディングが終了した後の新入社員のフォローなどを考えることも忘れないようにしましょう。

STEP3.プラン・チェックリストの作成

目標・目的の設定を行い、環境を構築したら、次はプランの作成と見直しです。オンボーディングでは、入社から1年ほどの期間を目安にスケジュールを組んでいきます。スケジュールを組む際、新入社員が確認しながら進めていけるチェックリストを作成するとよいでしょう。入社当日にやること、1〜2週間以内、1ヵ月、3ヵ月、半年、1年という長期的なスパンでプランを考え、チェックリストに落とし込んでいきます。スケジュールやチェックリストは、新入社員の所属部署や業務に必要なスキルなどを踏まえて設定していきましょう。

また、人事や管理職だけで作成したプランでは、現場との認識のズレや見落としがあるかもしれません。そのため、プランを作成したら他部署に共有して確認してもらい、フィードバックを受けることも必要です。実施する内容、達成すべき目標などを具体的に書き出してプランを作成していきましょう。あらかじめ何をすべきかを具体的に決めておくことで、オンボーディングを組む指導者やサポート側の効率アップにもつながります。

STEP4. オンボーディングの実施

プランを固め、スケジュールやチェックリストを作成したら、実際にオンボーディングを行います。オンボーディングを成功させるためには、企業全体が一丸となってフォローすることが大切です。定期的にミーティングを行い、メンバーからの報告も含め、進捗管理を慎重に行います。ミーティングや進捗管理を進めるなかで、改善すべき点があればきちんと記録に残して報告しましょう。

STEP5.  振り返り・改善

オンボーディングの実施後は、忘れずに振り返りを行いましょう。振り返りを行うときは、人事や教育担当の上司のみで進めずに、配属先や現場の声を聞いて協力しながらプランの見直しを進めます。また、プランの見直しや改善を行うときは、実際にオンボーディングを受けた新入社員の感想や意見を聞いて参考にすることも大切です。

どの施策が良かったか、改善すべきところはどこかを、オンボーディングに関わったメンバーで話し合い、評価・改善していきます。その際、STEP3で作成したチェックリストの内容も一緒に確認していきましょう。ポイントで評価指標を定めて、わかりやすく定量的に改善するようにします。

オンボーディングを行うときの3つのポイント

続いて、オンボーディングを行うときのポイントを3つお伝えします。ポイントを押さえ、効果的にオンボーディングを進めていきましょう。

ポイント

ポイント1.  受け入れ態勢を整えておく

企業でオンボーディングを実施するときの1つ目のポイントは、社内の受け入れ態勢を整えるなどの事前準備です。配属先の雰囲気や人間関係がよくない場合、新入社員の早期離職につながってしまいます。事前に配属先の部署やチームにトラブルはないかを確認し、人間関係や雰囲気を良好にしておきましょう。

また、なぜオンボーディングを実施するのか、なぜオンボーディングは必要なのかという社内理解も重要です。新入社員が入社する前に、社員同士で情報共有やミーティングを行い、信頼関係の土台を構築しておきましょう。

ポイント2. 教育体制を整えて充実させておく

オンボーディングを実施するときの2つ目のポイントは、教育体制を整えて充実させておくことです。入社後は、社内のルールや業務を覚えることから始まります。その際、社内の教育体制が整っていないと、新入社員は入社時に不安や疑問が募り、ストレスを抱えてしまうことがあります。ストレスや不安材料があると、業務に集中できず、本来持っているパフォーマンスが発揮できません。社内の教育体制を整えておくことで、新入社員は安心して効率的に業務やルールを学んでいくことができます。

教育制度を充実させるために「メンター制度」の導入もおすすめです。メンター制度とは、業務に関する悩みや、心理的なフォローを行うために、新入社員に近い立場の人がサポートする制度のことです。上司や人事ではなく、新入社員に近い立場の人がサポートにつくことで、ちょっとした悩みや気がかりなことを相談しやすくなるのです。業務やスキルを教わるOJT制度とメンター制度との違いは、環境面や人間関係の悩みなどもフォローできることです。職場の環境に慣れやすくなるため、早期離職を防ぐのに効果的です。

ポイント3.  目標は細かく設定する

オンボーディングを実施するときのポイント3つ目は、目標を細かく設定することです。新入社員は入社時に覚えることがたくさんあります。社内全体の共通ルールから、部署ごとの業務の細かな部分まで多岐にわたります。新入社員それぞれの能力や性格も異なるため、チームや部署ごとの目標のほか、一人ひとりにあわせた細かな目標を設定するようにしましょう。その際、先ほどお伝えしたチェックリストを活用すると、新入社員側もトレーナー側も確認やフィードバックが行いやすくなります。オンボーディングでは初めから大きな目標を掲げるのではなく、スモールステップ法を取り入れることをおすすめします。目標を細分化することで、具体的に成長を実感することもできます。

企業のオンボーディング研修・施策の事例5選

ここでは、魅力的なオンボーディングを行っている企業の事例を紹介していきます。企業ならではの研修やオンボーディングの内容を知り、ぜひ参考にしてみてください。

事例1. 株式会社ヤプリ

プログラミング不要でアプリ開発を実現する「Yappli(ヤプリ)」を提供しているヤプリ。ヤプリでは、全部門が「入社オンボーディング」を重要視しています。オンラインでのオンボーディングではITグループがIT関連のサポートをしていて、2021年11月にはトラブルの検知や関係者とのコミュニケーションを自動化する仕組みも導入しはじめました。

参考:オンボーディング・サポートを自動化する – Yappli Tech Blog

事例2. サイボウズ株式会社

クラウドベースのグループウェアや業務改善サービスを軸に、社会のチームワーク向上を支援しているサイボウズ。サイボウズでは、公式サイトで「オンボーディングと学習支援」の内容を紹介しています。新卒オンボーディングとキャリアオンボーディングがあり、それぞれ入社日から6ヵ月目までに実施する内容を記載。オンボーディングを終えたあとの社員の学びを支援する制度も用意しています。

参考:オンボーディングと学習制度 | サイボウズ株式会社

事例3. 日本オラクル株式会社

ソフトウェア・ハードウェア製品、ソリューション、コンサルティングなどその他さまざまな事業を展開している日本オラクル。中途採用者の定着や社員エンゲージメントの向上施策に力を入れていて、中途入社の人に5週間にわたる研修プログラムを提供しています。研修では、細かい部分をサポートするナビゲーターや、研修期間中に全員とミーティングを行い、うまく進んでいるかどうかを共有するサクセスマネージャーなども配置しています。

参考:Talent Management | Oracle 日本

事例4.LAPRAS株式会社

プロフィールを自動生成し、唯一無二のポートフォリオを提供しているLAPRAS。もともとは対面でのコミュニケーションを重視していましたが、フルリモートになったことにあわせて急ピッチでオンボーディングをアップデートしました。LAPRASでは、「知識」と「信頼関係」を大事にしたオンボーディングを実施しており、新入社員と既存社員とで「知らないこと」「共通認識のずれ」を明らかにするためのワークショップ、ダイアログも実施。共通言語の醸成に努めています。

参考:5. オンボーディング・社員活躍 #5-1. オンボーディング

事例5. Visionalグループ

産業のデジタルトランスフォーメーションを推進する事業を展開しているVisionalグループ。こちらでは数日間の全社オリエンテーションを終えたあと、エンジニア職のオンボーディングがスタートし、個人やチームの状況にあわせて個別に最適化しています。リモートでのオンボーディングを成功させるために、「分単位のスケジューリングでウェルカム」「論理世界こそ神は細部に宿る」「論理的な居場所を醸成する」という3つのプラクティスを追加。エンジニアブログには、実際にオンボーディングを受けた方の記事も掲載されています。

参考:3年間のオンボーディングで培われた、リモートでも効果的な7+3のプラクティス

オンボーディングに使えるおすすめのツール

オンボーディングでは、社内ポータル、社内SNS、チャットツールなどさまざまなツールを活用します。使用しやすく汎用性が高いツールを見つけて、導入してみてはいかがでしょうか。オンボーディングのスケジュールやタスク管理、チェックツールなどは、複数名で同時編集や共有が可能なGoogleスプレッドシートなどもあわせて使うと便利です。

Onboarding
STANDSが提供している、WebサービスをわかりやすくするUX改善ツールです。多彩な表現を実現したガイドや、顧客活用の分析などが特徴で、顧客ごとに最適なシナリオを表示でき、ノーコードで実装できるところも魅力。目的や利用状況に応じて適切なチュートリアルを提示して、モニタリングしながら使いこなせるまで伴走するサービスです。
Onboarding

pottos
ODKソリューションズが提供している、BtoB SaaSカスタマーサクセスの業務を全般的に支援するツールです。顧客のサービス利用状況をトラッキングし、そのデータをもとに、自動的にセグメントとスコアを付与します。利用状況に応じて自動的にポップアップ配信やメール配信も可能です。操作の状況を見て、自動的にオンボーディングの進捗を把握できます。
pottos

Tayori
PR TIMESが提供する、フォーム、FAQ、アンケート、チャットの4つの機能を活用できるクラウド情報整理ツール。難しいWebの知識は不要で、誰でも簡単に作成できます。オンボーディングで重要なFAQが、テンプレートに沿って質問と答えを入力するだけで作成できます。社内向けのマニュアルページ作成など、情報共有や業務効率化に役立ちます。
Tayori

ポイントを押さえてよりよいオンボーディングを実施しよう

新たな社員が入社したときに行うオンボーディングのメリットや、導入する際のポイント、参考にしたい事例などを紹介いたしました。オンボーディングを導入する前に、オンボーディングにはどんな意義があるのか、なぜ行うのかなどを落とし込んでおきましょう。

また、より良いオンボーディングを行うために、目的や目標の設定、スケジュールやチェックリストの内容決めや見直し、実施後の振り返りや改善などの前後の動きも重要です。他社の事例を参考にしながら、自社ではどんなことを大事にしてどうオンボーディングを実施していくのか、さまざまなツールを活用しながら組み立てていきましょう。

オンボーディングに関するQ&A

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