広報PRを担当していると、メディア向けの提案資料やイベント、社内報など、「企画」が必要な場面が数多くあります。今回は、どんな場面にも応用できる基本的な広報企画の立て方について、3つのポイントをご紹介します。自社の広報力アップのために、ぜひ活用してみてください。
そもそも広報PR担当者が企画を立てるシチュエーションとは?
広報PR担当者はいったいどんなときに企画を立てるのでしょうか。提案資料の作成からイベントの実行、社内報の作成まで、代表的な3つのシチュエーションをご紹介します。
1.メディア向け提案
1つ目は、「取材企画書」や「プレスリリース」など資料を作成したうえでの、メディア向けの提案です。
自社のサービス・プロダクトやメンバーなどについて、メディア関係者が興味を持って取材につなげてくれそうなネタとして企画書にまとめ、アプローチします。アプローチ方法は、アポイントをとって直接持ち込んだり、電話やメールで連絡したりとさまざまです。
メディア関係者の心をつかむ企画をつくることが何より重要となるため、ときには自社だけでなく、複数の企業とタッグを組んで企画・提案したほうがよいこともあります。
企画の例:
調査リリース
自社ならではの調査を実施し、社会の新たな動きを数値として発表します。メディアにとってデータ・エビデンスは非常に重要な情報となるため、重宝されるでしょう。
導入事例
自社サービス・商品の導入事例は、「業界初」や「超大手企業」など社会的インパクトの大きい内容であれば、世相を表す新たな動きとしてメディアに取り上げてもらえる可能性が高まります。同業界の他社と連携して、勉強会などのイベントとあわせて企画をつくってもよいでしょう。
ニュースレター
必ずしも新規性のある情報でなくても、トレンドなどを押さえることでニュースになり得ます。提案先のメディアの特性を分析したうえで、時期や話題などと関連させた企画を立てましょう。
2.イベント
2つ目は、社内外向けのイベントです。
メディア関係者向けの発表会や生活者向けのイベントなど、その対象や形式はさまざま。目的や発表内容に応じて、芸能人の招致なども選択肢に上がるでしょう。
コストが高くつきやすいので、実施する目的の整理や効果測定は念入りに行う必要があると言えます。
企画の例:
記者発表会
メディア関係者向けに、自社の新たな動きについて発表会を行います。どのようなメディアをどれぐらい呼ぶかなど、広報PR担当者の働きが非常に重要となるイベントです。
勉強会
プレスセミナーとも呼ばれる、メディア関係者向けの勉強会イベントです。記者発表会と比較すると小規模でも開催でき、メディア関係者とリレーションを構築できるのがメリットです。
ポップアップショップ出店
生活者向けに認知を高める目的でイベントの実施を検討している場合に有効です。出店する場所や期間などを細かく設定する必要があります。
社員総会
インナーコミュニケーション施策として広報PR担当者が企画することの多いイベントです。従業員の自社理解やエンゲージメントが高まるプログラムづくりが重要となります。
3.社内報
3つ目は、社内報の作成です。社外だけでなく社内へ向けた活動を行うのも、広報PR担当者の重要な役割です。
自社の経営状態を把握してもらったり、従業員間のコミュニケーションを促進したりと、社内報を作成する目的は企業によって異なります。自社の目的に応じて、Webツールを利用するのか紙媒体を制作するのか検討しましょう。自社の理念や組織風土を踏まえて、一人ひとりに興味を持ってもらえるような企画づくりを行います。
企画の例:
従業員紹介
従業員のキャリアや人物像が伝わるよう紹介を行います。自己紹介や他己紹介(インタビュー)などの形式が考えられます。リモート勤務の従業員が多い場合や、従業員数が急増している場合に社内コミュニケーションを円滑化する効果が期待できます。
経営陣インタビュー
多くの従業員にとって遠い存在となりがちな経営陣が、直々に社員に対してメッセージを発することができる貴重な機会となるでしょう。ただ、多忙な経営陣とスケジュール調整するのが難しいというデメリットがあります。
開発秘話
サービスや商品に関する裏話を伝えます。社内でも意外と知られていない豆知識やストーリーを公開することで、従業員の自社理解・商品理解が深まるでしょう。
広報PR担当者が企画を立てるための3つのポイント
企画を立てるにあたり、押さえておきたいポイントがあります。実際に広報PR担当者が企画を立てるときにチェックしたい3点をご紹介します。
1.なぜ「自社」がその企画を行うのかを語れるストーリーをつくる
日々多くの企業がさまざまな企画を行い、発表しています。そのなかで「自社らしさ」「自社ならでは」を感じさせるオリジナリティがない企画は、メディア関係者や生活者の目に留めてもらうことはできないでしょう。逆に、もし企画のテーマ自体が他社と似ていても、自社ならではの要素があれば注目してもらうこともできます。
オリジナリティの見つけ方としては、客観的に業界全体を分析することです。SWOT分析や4C分析など、定番のフレームワークを活用してみてもいいでしょう。他社の成功事例を研究し、どのように「自社らしさ」を企画に取り入れているのかを考察することもおすすめです。
「自社らしさ」のない企画を立ててしまうと、メディア関係者や生活者の目に留まらないだけでなく、自社のブランドイメージを損なってしまいかねません。経営理念なども鑑みて、企画内容が自社から発信するメッセージとしてふさわしいかどうか入念にチェックしましょう。
2.なぜ「今」その企画を行うのかを語れるストーリーをつくる
いつでも実施できる企画だと、メディア関係者や生活者に興味を持ってもらっても「このタイミングでなくてもよい」と優先度を下げられてしまう可能性があります。「周年」「季節」「社会情勢」など、話題性のあるネタとひもづけて「今だからこそ行っている企画」であるというストーリーをつくりましょう。「今しか取材できない/今しか訪れることができない」と印象づけることができるので、取材や集客につながりやすくなります。
ストーリーになるタイミングの例としては、
- 季節の変わり目
- 〇〇の日
- 周年記念
- 事業に関連するニュースが話題になっているとき
などが挙げられます。
3.社内外の関係者とこまめにコミュニケーションをとる
企画は広報PR担当者だけでなく、社内外のさまざまな関係者を巻き込んで立てる必要があります。事業の最新の動きをキャッチアップしたり、メディアからの取材に対しインタビュイーとして事業部の従業員に登場してもらったりなど、広報PR担当者だけで完結する企画はほぼないと言っても過言ではありません。広報PR担当者は社内のコミュニケーションハブとしてさまざまな部門と連携する必要があります。
また、他社の広報PR担当者など、社外のステークホルダーと協働することでよりよい企画になることもしばしばあります。同業他社や他業界の企業など、さまざまな人とつながりを持ち、企画ネタのインプットやコラボなどにつなげましょう。
話題になった広報の企画はどのように立てられた?
企画を立てるポイントを押さえたら、実際にメディアで多数取り上げられるなど、話題になった広報PR企画の裏側を見てみましょう。
1.株式会社ワークマン
役員待遇 営業企画部(兼)広報部 部長 林 知幸さん
どうしたらメディアが面白いと感じて取り上げてくれるか、というのは常に考えています。例えば「対立構造」って面白いし、誰しも興味が湧くじゃないですか。〇〇vs△△みたいなものとか。そこから着想を得て、企画したプレスリリースがあります。2019年3月に「WORKMAN Plus」の新店舗が兵庫(西宮市)にオープンするのと同時期に、フランスのスポーツ用品メーカーであるデカトロン社が日本1号店を近距離にオープンすると知ったんです。そこで、「西宮戦争」としてワークマンvsデカトロンの対立構造をつくったプレスリリースを作成しました。これにはかなりの反響があり、テレビ東京系列『ガイアの夜明け』をはじめとしたテレビ番組や雑誌、Webメディア合計160媒体に取り上げてもらいました。
※下記インタビュー記事より抜粋(一部省略・編集しています)
2.楯の川酒造株式会社
経営企画室 広報課 高梨 杏奈さん
そもそも、自社のブランドや商品の認知度の現状を正確に把握したい、というニーズが社内にありました。(略)
そしてこれは私自身が感じていたことなのですが、日本酒業界全体の実態を把握できるフラットな情報がほとんどなかったんです。そこが「もったいないな」と。そこで、せっかく調査をするなら認知度を調べるだけではなく、その結果を活用しようと考えました。調査で得られた結果を業界全体で共有していくことによって、日本酒業界全体に貢献できたらいいなと。加えて「楯の川酒造が日本酒業界全体の発展を考えている」というメッセージを発信することにもつながれば、という思いで、社内で呼びかけたんです。
※下記インタビュー記事より抜粋(一部省略・編集しています)
広報PR担当者におすすめ!企画を立てるときに参考になる書籍
そもそもアイデアを出すのが苦手だったり、なかなか結果につながる企画アイデアが出せない場合など、書籍を通じてインプットを行うのもおすすめです。ここからは、編集部おすすめの書籍を3点ご紹介します。
1.『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』(原野 守弘)
セールス領域から34歳でクリエイティブの世界に転じ、数々の結果を残している著者による本です。
「自分がクリエイティブでない。そう思う人にこそ読んでほしい」と銘打つだけあり、人の心を動かす方法やアイデアについて、実例を交えながら順序だててまとめられています。
2.『考具』(加藤 昌治)
大手広告代理店・博報堂出身の著者が、企画アイデアを出すためのノウハウをまとめた本です。
実際に広告代理店での打ち合わせに使われているメモなども掲載されており、アイデアが求められる現場に立つ人々がどのような手法・マインドセットでアイデアを生み出しているかが具体的に解説されています。
3.『広報の仕掛け人たち』(日本パブリックリレーションズ協会・ 宣伝会議)
企業のプロモーションから自治体の地域活性化、国際機関による人道支援など、実際に行われた9つの事例について解説している本です。
すべて大手企業がPR会社と組んで行っているプロジェクトに関する内容のため、中小企業がそのまままねることは難しいですが、企画を行う戦略や考え方などのエッセンスは非常に参考になるでしょう。
ポイントを押さえて独りよがりにならない広報企画を
本記事では、広報PR担当者が企画を立てる際のポイントや注意点を解説しました。
メディア関係者や生活者、従業員など、さまざまな立場の人の心を動かす企画が求められる広報PR担当者。日頃から情報収集を怠らず、相手の立場になってアイデアを出すことを徹底するようにしましょう。
ご紹介したポイントを参考に、まずは気負わず企画づくりに取り組んでみてください。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報企画の立て方に関するQ&A
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