広報担当者なら誰もが聞いたことがある「プレスリリース」。しかし、広報PRでよく出てくる言葉には混同しがちな言葉もたくさんあります。例えば、プレリリース、ニュースリリース、ニュースレターなどはどれも似たような言葉で違いがわからない、という方もいるのではないでしょうか。
本記事は、プレスリリースとプレリリースの違いを中心に、そのほかの混同しやすい類語についても併せて解説していきます。それぞれの違いを正しく理解して、日々の広報PR活動にぜひ役立ててくださいね。
プレスリリースとは
プレスリリースは、企業や組織が発表する公式文章のことです。語源は、プレス(press=報道機関)リリース(release=発表、公開)の2つの言葉を組み合わせた造語と言われています。もともとは、報道機関に向けて企業の最新情報を発表することを指す言葉ですが、現在は報道向け資料そのもののことをプレスリリースと呼んでいます。
プレスリリースは、新規性のある情報を届けるために活用されるものです。新製品や新サービスなどの情報はもちろん、企業独自の調査結果の公表、経営情報や人事、採用、CSRといった企業の取り組みなどあらゆるジャンルのプレスリリースが配信されています。
近年では、PR TIMESをはじめとしたプレスリリースワイヤーに企業のプレスリリースを掲載することで、メディア関係者だけでなく生活者もプレスリリースの情報に触れる機会が増加しています。報道機関に対する発表以上に幅広い生活者に対してアプローチを行う手段になっているのです。
プレリリースとは
プレリリースは、製品として正式に世の中へ発表する前の段階のものです。IT業界で使われることが多く、ソフトウェアなどの正式公開前のバージョンのことを指します。正式バージョンと同等の機能を実際に操作して動作確認するなどの目的で使われます。
他にも、ミュージシャンがアルバムを発売する前にプレリリースライブと称して興行を行ったり、新規事業のβ版サービスを開始することをプレリリースと呼んだり、正式公開の前に行うものに対してプレリリースという言葉が使われることもあります。店舗のプレオープン、アパレル業界の先行試着会、ゲームの先行体験会なども広義ではプレリリースに含まれることがあります。企業活動では、プレリリースを通じて生活者のリアルなフィードバックを収集し、正式公開に向けてブラッシュアップを行うことが多いです。
プレスリリースとプレリリースの違い
プレスリリースとプレリリースは、1文字違いで言葉は似ていますがまったく異なるものです。プレスリリースが報道機関に対して、情報提供を行う公式文章であるのに対して、プレリリースは正式公開前の段階の製品やサービスのことを指しています。プレリリースは広報PR活動の手段ではなく、事業開発や改善といった目的で活用されます。
プレリリースの情報をプレスリリースとして配信することもあり、広報PRネタとして活用することもできるのです。
プレリリース | プレスリリース | |
対象 | 開発関係者・ユーザー | 報道機関・生活者 |
内容 | ソフトウェアやアプリなど、正式に発表する前のバージョン、新規事業のβ版サービスを開始 | 新商品の発売や新サービス、新規事業の開始の情報提供 |
目的 | 正式リリース前の動作確認をし、正式公開に向けたブラッシュアップ | メディアに取り上げてもらうなどし、広く情報を届ける |
プレスリリース・プレリリースと似た言葉も覚えておこう
プレリリース以外にも、プレスリリースと似ている言葉や混同しやすいさまざまな言葉があります。広報PR業務にまつわる専門用語を中心に、よく聞く言葉8つとその意味をまとめました。この機会にぜひ覚えてくださいね。
ニュースリリース
ニュースリリースは、一般的に「自社のニュースを発表する公式文書」のことを意味するため、プレスリリースとほぼ同義の言葉です。自社の情報を発信するための資料そのもののことを指します。ニュースリリースよりもプレスリリースという言葉の方が一般的な言葉と言えるでしょう。
プレスリリースはプレス(press=報道機関)に向けた情報発信という印象が強いのに対して、ニュースリリースは最新情報を伝えるための資料という印象があります。そのため、情報を発信する相手を報道関係者に限定することなく、生活者へ幅広く発信するもののことを呼ぶ場合もあります。Webサイトの最新情報欄では、ニュースリリースという名前でプレスリリースの内容を公開している企業も少なくありません。
ニュースレター
ニュースレターは、報道関係者を含むステークホルダーとのコミュニケーションを行うためにメール配信したり、郵送して情報を届けたりするコンテンツのことを呼びます。ただし、生活者に対して配信する場合と、報道関係者に対して配信する場合では目的や内容が異なります。
生活者に配信する場合は、読み手にとって有益な情報や企業・ブランドに対する好意度の向上が見込める内容を配信します。近年ではメールマガジンや公式LINEなどで発信されることが多いコンテンツです。
報道関係者に配信するニュースレターは、プレスリリースのような体裁の資料を配布することが多いです。しかし、プレスリリースとの明確な違いは「新規情報を含んでいない場合も成立する」というところです。例えば、時流や季節のテーマに合わせて自社の商品やサービスなどをまとめたものや、従業員インタビュー、開発秘話などのコンテンツも含まれます。
PR
PRは、「Public Relations(パブリックリレーションズ)」の略語です。日本パブリックリレーションズ協会の定義によると「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方」のことです。ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、長期的に良好な関係を構築するための活動全般のことを指します。
日本では、PR=宣伝やプロモーションと捉えられることも多いですが、本来のPR(パブリックリレーションズ)の意味とは異なります。また、広報はPRに内包されている概念であり、コミュニケーションの方法のひとつです。「広報PR」という呼び方をすることもありますが、この場合は広報業務とプロモーション業務を横断的に期待されていることが多いです。
広告
広告は商品やサービスの販売促進を目的に、新聞、雑誌、テレビなどの各種メディアの広告枠を購入して情報を掲載することをいいます。メディアへ自社の情報が掲載されるという点では、広報PRと同じように感じるかもしれません。しかし、広告と広報PRには同じ掲載でも異なる点があります。
例えば、広報PRにおけるメディア掲載は、掲載内容の決定権はメディアの記者や編集者にあります。広報の取り組みの中でメディアに掲載されるのは、メディアが生活者に伝えたい情報です。一方で、広告掲載の場合は、掲載内容の決定権は広告枠を購入した広告主にあります。広告主に有利な情報や広告主が伝えたい情報が掲載されるのが広告です。
近年ではメディア広告だけでなく、SNS広告も主流になってきました。SNS広告はメディアの広告枠とは異なり少額の入札からでも運用が可能です。そのため、広報やPRの一環として、アカウント初期段階の認知獲得手法として取り入れる事例も少しずつ増えています。
ローンチ
ローンチは「launch=立ち上げる、打ち上げる」を語源とする言葉です。ビジネスシーンでは、新サービスの提供開始や新商品の発売などを指して使われます。似た言葉に「リリース」がありますが、こちらも「release=発表する、公開する」という意味の言葉です。そのため、ローンチとリリースはほぼ同義の言葉として使われます。
ただし、プレスリリースのことを略して「リリース」と呼ばれることもあるのがややこしいポイントです。リリースには、新商品・新サービスの提供開始そのもののことを指す場合も、それらの情報を掲載した報道資料を指す場合もあります。社内で何気なく「リリース」という言葉を使っていると、どちらのことなのかわからずに混乱を招いてしまうことがあるので、明確に使い分けるようにしましょう。
IR
IRは、「Investor Relations(インベスター・リレーションズ)」の略語です。投資家や株主に向けて、企業の経営・財務状況など、投資判断に必要な情報を提供する活動のことを指します。例えば、企業の決算説明会の開催、決算資料の作成、アニュアルレポート作成などを行います。
広報PRがメディアに向けた情報を発信するのに対して、IRは株主や投資家への情報を発信するのが役割です。そのため、実務内容は広報PR担当者とIR担当者で異なり、兼務をすることはほぼありません。ただし、IRに関する内容は広報PR業務を含む社内の情報を数値として表したものです。事実関係に相違がないかといった内容に関しては広報PR担当者も確認し把握しておくことが望ましいです。
また、有価証券報告書や四半期報告書など広く公開される情報は、公開後にメディアからの問い合わせがある場合も想定されます。日頃からIR担当者とのコミュニケーションを行い、スムーズに対応できるフローや想定問答を作成しておくようにしましょう。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、マーケティングや営業活動の一環として作られる資料のことです。営業資料やサービス紹介資料とは異なり、読み手の課題解決や有益な情報の提供を目的として作成されます。
具体的な内容は以下のようなものが想定されます。
- 業界にまつわる用語集
- 市場環境のレポート
- 課題解決ノウハウ
- ビジネステンプレート
- セミナー資料
- 最新トレンド情報
- 事例紹介……など
ホワイトペーパーは必ずしも広報PR担当者が作成するものではありません。目的や用途によって、マーケティング担当者や営業担当者が作成する場合もあります。ただ、ホワイトペーパーはステークホルダーとの良好な関係を構築することを目的とする狙いが強いものです。広報PR担当者も制作に加わることでより読み手にとって有益な資料となる可能性があるほか、意外な情報をキャッチアップできることも多いので、可能であれば参加するのがおすすめです。
ホワイトペーパーの内容によっては、資料の公開をプレスリリースのネタとして情報発信する場合もあります。報道関係者にも興味を持ってもらえそうな内容の場合は、検討してみるとよいでしょう。
プレスキット
プレスキットは、報道関係者向けに企業や事業に関する資料・画像・動画素材などをまとめたものです。「メディアキット」と呼ばれることもあります。事前に企業情報や画像素材などをまとめておくことで、ブランドやサービスに関わる細かいニュアンスなど企業が発信したい情報を明確に伝えてもらうことを期待するものです。
例えば、以下のような情報や素材を入れておくとよいでしょう。
- 企業概要
- 問い合わせ先
- 社長プロフィール
- ロゴ画像
- 商品画像
- サービス資料
- 過去のプレスリリース
- メディア掲載実績
配布形式はさまざまで、問い合わせがあったら送付を行う場合もあれば、Webサイトからダウンロードが可能になっていることもあります。社内の対応フローなどに合わせて最適な提供方法を模索するようにしましょう。
プレスリリースとプレリリースの違いを理解して正しく使おう
プレスリリースとプレリリース、2つの言葉の違いについてご紹介しました。また、他にもプレスリリースと混同しそうな言葉についても解説しましたが、違いを理解できたでしょうか。
プレリリースは、広報PR施策やプレスリリースのネタとしても活用できるチャンスがあります。広報PR領域の事柄ではないかもしれませんが、そこからどのように生活者とのコミュニケーションを生み出していくのかを考え、実行するのが広報PR担当者の仕事です。ぜひ、プレリリースの機会があれば、広報PR活動にも活用してみてくださいね。
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