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商標の出願をする場合、プレスリリースはいつ配信する?公開タイミングと注意点・事例を解説

自社の商品やサービスが商標を取得した場合、広報担当者はPR活動の一環としてプレスリリースで公表することを検討するのではないでしょうか。

商標は、それぞれ出願や審査などの時間を要しさまざまな手続きを経て、初めて取得ができます。では、プレスリリースはどの段階で配信するとよいのでしょう。

本記事では、商標の出願をする場合のプレスリリース配信のタイミングや、配信の際に注意するポイントをご紹介します。

商標取得時にプレスリリースを配信する目的と重要性

商標は企業のブランド価値を象徴する重要な資産です。その取得や出願をプレスリリースで発信することは、単なる事務手続きの報告にとどまらず、企業の信頼性や成長姿勢を示す絶好の機会となります。

商標は顧客や取引先にとって「安心して取引できる企業かどうか」を判断する材料のひとつでもあり、広報PRの観点からも戦略的に活用すべき情報です。まずは、商標取得時にプレスリリースを配信する目的と重要性について解説します。

企業ブランドの信頼性を高める

商標登録を公表することで、自社がブランド保護を重視している姿勢を明確に示せます。これは顧客や投資家、取引先に対して「安心感」や「信用力」を与える効果を持ちます。

特に新規参入した市場や新サービス展開のタイミングでは、商標取得が信頼性を担保する要素として大きく作用するでしょう。

競合との差別化や模倣防止につながる

商標は競合他社との明確な差別化ポイントでもあります。独自のネーミングやロゴを法的に守ることで、模倣や不正使用を未然に防ぐことが可能です。

プレスリリースでその事実を公表することで、「ブランドを守る意思」を社外に広く伝え、業界内でのポジション強化にもつながります。

商標登録時にプレスリリースを配信するタイミング

商標登録を行う場合、商標登録されたことをプレスリリースで配信することがあります。

審査まで時間を要する商標登録の手続きの中で、全ての認可が下りるまで配信を待つべきなのか、それとも先に配信した方がよいのでしょうか。

商標登録には新規性が問われない

商標登録自体の申請には、制度の趣旨や保護対象から「新規性」の要件は問われないと考えられています。

商標登録は先願主義のため、出願した後にプレスリリースを出すほうがよい

新規性が要求されないのであれば、商標登録出願前に、商標の情報をプレスリリースで発表してしまっても問題ないようにも思われます。

しかし、商標登録では先願主義という制度を採用していることに注意が必要です。つまり、早い者勝ちです。先に出願した者が優先的に登録されるので、もしプレスリリースを見た他人や他社が先に出願してまうと、登録不可となるリスクがあるのです。また、他人や他社の商標を不正な目的で出願した場合は、商標登録を受けることはできません。(商標法第4条第1項第19号)

審査を待たず、商標を利用するリスク

稀なケースではありますが、出願する前に、同業他社が同じ商標を出願していて商標権取得の設定登録の手続きが行われている場合、商標が取れないケースもあります。

商標を取得する前にプレスリリースを配信したものの、他社が商標権を取得し、その商標を使えない場合は諸々の変更が余儀なくされ、多大な出費が必要となるうえに商標権の侵害として訴訟となってしまうリスクもあります。

新規性が問われない商標登録ですが、万が一のことも考えてプレスリリースは出願を完了し権利を取得してから配信するようにしておきましょう

商標登録に関する情報発信をしている

商標をプレスリリースに記載する際の注意点

商標をプレスリリースに記載する際には、単に「取得した」と伝えるだけでなく、法的表記や表現方法に注意が必要です。

RマークやTMマークの使用は任意ですが、読者に誤解を与えないよう正確な情報を提示することが求められます。また、自社ブランドの背景や想いと結びつけて伝えることで、単なるお知らせ以上のPR効果を発揮できます。それぞれの詳細について解説します。

RマークやTMマークは任意

商標登録をしている名称の右側にアルファベットを丸で囲んだ「®(通称:Rマーク)」や「TMマーク」がついているのを見たことがある方も多いでしょう。

Rマークは「Registered Trademark」を意味しており、商標登録済であることを意味します。TMマークは「Trademark(商標)」を意味しています。

特許庁によると、これらのマークは日本の制度に基づくものではないため、記載は不要だとされています。

「Rマーク(®)」は、外国の商標制度においてRegisteredTrademark(登録商標) を意味するもので、日本の商標法に基づく商標登録表示ではありません。

「TMマーク」も同様、日本の制度に基づくものではありません。単にTrademark(商標)を意味するもので、未出願の商標や出願中の商標について付されることが多いです。

日本における商標登録表示は、『登録商標第〇〇〇〇〇〇〇号』という表示方法です。登録商標を表示する際にはそのように表示することが推奨されます(商標法73条)。

特許庁「商標制度に関するよくある質問

特許庁では、商標を表示する場合『登録商標第〇〇〇〇〇〇〇号』と記載することを推奨しています。商標であることを示したいときには、特許庁の推奨する記載方法を採用し、読みにくく感じられる場合はRマークやTMマークを活用するのも一案です。

ただし、マークや商標番号を記載する必要はなく、任意であることを覚えておきましょう。

読み手が誤解しない表現を心がける

商標に関する情報は専門的になりがちで、読み手に誤解を与えるリスクもあります。「出願中」と「登録済み」を混同されないよう明確に区別し、権利の状態を正確に伝えることが大切です。

また、専門用語だけでなく一般的な言葉を併用することで、投資家や生活者といった幅広い読者にも理解してもらいやすくなります。

併せてブランドストーリーを伝える

商標取得の事実だけでは読み手の関心は持続しにくいため、ブランドの背景や今後の展望を語ることが効果的です。例えば「このネーミングに込めた想い」や「どんな価値を社会に提供していくのか」といったストーリーを盛り込むと、商標そのものが企業の姿勢を象徴するメッセージとなり、PR効果を一層高められます。

商標の取得に関するプレスリリース事例

最後に、商標や特許に関するトピックスで配信した実際のプレスリリース事例を参考にしたいポイントなどとあわせてご紹介します。

事例1.150年継続保持している商標権

貴金属の老舗GINZA TANAKAが発表したプレスリリースでは、150年も継続保持している商標の発表とその功績を発表しています。

私達は、商標から商品やサービスに関する情報やイメージを読み取っています。特に、長く継続して使われている商標は、「信頼ができる」や「安心して利用できる」といったブランドイメージや企業イメージへも繋がります。

本プレスリリースでは、プレスリリースの最後に企業としての想いや姿勢について伝えています。

商標をフックにプレスリリースで企業としての想いを発信し、自社の安定したイメージを強調つけることにより、ステークホルダーとの良好な関係構築の為にも有効です。

企業理念や企業姿勢を発信する機会を模索している場合は、ぜひ参考にしてみてください。

参考:貴金属の老舗 GINZA TANAKA明治から継続維持している商標権『ホシエス』マークが「商標登録継続記念証」を受領

事例2.商標の理由や変遷を紹介

TOTOが配信したプレスリリースでは、現在のトレードマークの50周年記念のお知らせとともに、自社の商標の遍歴を紹介しています。

誰しもが知るTOTOのマークですが、現在のこのトレードマークに至った知られざる歴史を過去の商標を年表を使いわかりやすく見せています。商標を手がけたデザイナーの想いやそのマークに決まった理由や背景も沿え、企業の商品変革も紹介しています。

こちらの事例のように、商標登録をしたという事実について知らせるだけではなく、「どのようにして商標が決まったのか」について発表することで、自社についてより深く認知してもらう機会となるでしょう。

プレスリリース配信 イメージ

商標に関するプレスリリースを成功させるためのポイント

商標に関するプレスリリースは、広報部門だけでなく法務や知財部門との連携が欠かせません。発表時期や競合動向を見極めることで、より効果的に注目を集められます。

また、配信後はメディアやSNSを通じた二次活用も視野に入れるべきです。最後に、商標取得に関するプレスリリース配信を成功に導くためのポイントを整理して紹介します。

ポイント1.法務・知財部門と連携する

商標に関するプレスリリースは、専門的な用語や法的な観点が欠かせません。誤った表現や不正確な情報が外部に出てしまうと、企業の信頼性を損なうだけでなく、競合他社からの指摘や法的トラブルを招く可能性もあります。

そこで重要なのが、法務・知財部門との密な連携です。広報担当者はリリースの草案段階から関係部門と協力し、用語の使い方や事実関係を精査することで、正確性と説得力を兼ね備えた文章に仕上げられます。さらに、将来的な紛争リスクを回避する予防策としても、専門部門の知見を活かすことが不可欠です。

ポイント2.発表時期と競合動向を確認する

プレスリリースの影響力は、配信するタイミングによって大きく変わります。例えば、競合他社が同時期に新商品を発表した場合、自社の商標ニュースは埋もれてしまいかねません。そのため、業界のニュースサイクルや競合の広報スケジュールをリサーチしたうえで、自社発表がより目立つ時期を選ぶことが大切です。

また、自社の展示会や周年イベントなど、話題性の高いタイミングと重ねると注目度を高めやすくなります。広報カレンダー全体を俯瞰し、社内外の施策と連動させることで、リリースの効果を最大化できるでしょう。

ポイント3.メディアやSNSでの二次活用方法を設計する

プレスリリースは配信して終わりではなく、その後の活用設計が重要です。まず、オウンドメディアに転載して体系的な情報発信に活かし、さらにSNSでは要点を抜粋し、ビジュアルや短いキャッチコピーを組み合わせて再発信します。

SNSでの拡散力はビジュアルの魅力やシェアのしやすさに左右されるため、あらかじめ発表内容を共有しやすい形式に整えておくことが有効です。

また、社員や関係者が積極的にシェアできるよう社内展開を工夫すれば、企業全体で情報拡散を後押しできます。ブランドの認知拡大や信頼獲得につなげるために、社内の協力も仰ぎながら実施していきましょう。

ベストなタイミングで商標のプレスリリースを配信しよう

本記事では、商標の性質を踏まえてプレスリリース配信のタイミングを紹介しました。「弊社の商品やサービスなら、商標を取得して積極的にアピールしていきたい」と感じた広報担当もいるのではないでしょうか。

商標に関する知的財産権は法律で定められており、権利を独占して主張することが可能です。長年にわたって商標を使い続けることで、商品やサービスの認知拡大や社会的な信用を得て売上アップに繋げたり、企業としての成長を促したりする力を備えているといえるでしょう。

それ故に、その権利を侵害してしまった場合は企業としての社会的信用へのダメージも否めません。

商標に関するプレスリリースを配信する際は、それぞれの役割と手続きにかかる日数や準備を社内やチームと順序立てながら、リスクを負わないベストなタイミングを見極めて配信していきましょう。

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この記事のライター

マッケンジー友紀

マッケンジー友紀

会社員時代に、化粧品、時計、ファッションの広報を経験。ピラティストレーナーをしながら2016年、PR TIMESのプレスリリース作成チームにジョイン。2020年からはPR TIMES MAGAZINEのメンバーに。公式Twitter@PRTIMESMAGも担当しています。広報PRに従事する人の多彩なポテンシャルを開花するようなコンテンツを目指したいです!

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