広報担当者であれば、自社のメディアリレーションを通じてやりとりする機会が多いのが記者の方々。「仕事がハードそう」など、漠然と記者の仕事に対するイメージがあっても、意外と詳しい仕事内容を知らない方もいるのではないでしょうか。
記者の皆さんと円滑なコミュニケーションを図るためには、実際にどんな流れで業務を行っているのか理解することも大切です。本記事では記者の役割や仕事内容、1日のスケジュール、さらに記者に向いている人の特徴などをお伝えします。
記者の役割とは?役割や社会的意義
記者とは、ニュースや情報を取材し、記事や報道を作成する職業のことです。そもそも、記者とはどんな役割を持つ職業なのでしょうか。
記者の役割は、政治・経済・国際情勢などの世の中のあらゆる出来事を取材して、発信することです。記事を執筆したり、ときには自ら現場でリポートをしたりして、取材した情報を正確かつ迅速に生活者に届ける使命があります。
近い職業ではジャーナリストもありますが、ジャーナリストは社会で起きた出来事に個人的な解釈や批評を加えて発信することが特徴であり、事実を報道するところに記者との違いがあるといえるでしょう。
記者の仕事の種類と媒体別の働き方
取材した内容を、メディアを通して発信することが記者の基本的な仕事です。ただし、記者のなかでも情報発信の方法によっていくつかの種類があり、仕事内容や働き方も異なります。詳しく見ていきましょう。
新聞記者:記者クラブ・担当分野で専門性を深める
一般的に「記者」と聞いて真っ先にイメージするのが新聞記者ではないでしょうか。新聞記者は、ニュースを取材し、集めた情報を編集、新聞記事に載せるのが主な仕事です。
新聞社の中では「政治部」「経済部」「社会部」「スポーツ部」などと分かれており、世の中のあらゆるニュースを扱っています。
テレビ報道の記者:映像前提で取材し、現場対応と連携が鍵
ニュース番組や特集番組に必要な取材、原稿の執筆をし、映像とともに、今起こっていることを伝える仕事です。ときには自ら「顔出し」をして、現場でのリポートやインタビューを行うこともあります。
日々予測ができないニュース番組を担当しているため、事件や災害などが発生すれば、昼夜を問わず現場に駆けつけられる行動力が必要な仕事です。
雑誌記者:企画性が高く、取材から編集まで長期で作り込む
雑誌の誌面に掲載する記事を取材、執筆して発信するのが雑誌記者です。新聞やテレビとは違い、雑誌によって扱う情報のジャンルが左右される特徴があります。
最近では専属ではなくフリーで取材し、記事を寄稿する記者も増えているようです。
Webメディアの記者:スピードと更新性、検索・SNS流通も踏まえる
昨今主流になってきたWebメディアで記事を執筆、編集して発信する仕事です。
自ら取材を行わないまとめサイトなどもありますが、一から情報を集め取材をし、記事を執筆するWebメディアも多くあります。
記者の仕事内容とは?
記者が扱う情報や掲載媒体によって仕事内容は変わりますが、共通する部分も多くあります。ここからは記者の具体的な仕事内容について見ていきましょう。

1.情報収集:日々のアンテナとソース構築が取材の起点
記者は世の中で起こっているあらゆる情報をキャッチして、素早く生活者に届けるのが仕事です。そのためには日頃からアンテナを高く張り、ネタを集める必要があります。
たとえば新聞記者であれば、拠点としている「記者クラブ」から情報を仕入れたり、担当している官庁などに張り込みをしたりして情報を集めるのが一般的です。
スクープのような、他社に先駆けた大きなニュースを獲得するためにも、日頃の地道な情報収集が欠かせません。
2.取材・インタビュー:現場確認と複数ソースで裏を取る
記者の仕事で一番重要なのが取材です。どれだけ大きなニュースを獲得できたとしても、誤報によって会社全体の信頼性を大きく毀損することになり、記者生命にかかわると言っても過言ではないからです。
まずは現場に足を運んだり、書面で質疑応答を行ったりして、あらゆる方面から事実を確認し、慎重に裏をとる過程が非常に重要となります。
3.執筆:短い文字数で要点を伝え、誤解を避ける表現を選ぶ
取材を通して情報が集まったら、素早く記事にまとめます。特にニュースや新聞に載せる情報は速報性が求められるため、タイトなスケジュールで動くことが多いです。
限られた文字数の中で、生活者が求める情報をわかりやすく伝えられる文章力も必要。執筆後は編集スタッフなどに原稿をチェックしてもらい、内容や表現に誤りがないか十分に確認を行います。
4.広報PR担当者・情報提供者とのコミュニケーション:継続的な関係構築
記事になりそうな情報・ネタを常に探すことも記者の大切な仕事のひとつです。広報担当者に最新の企業情報やおすすめの商品・サービスを聞いたり、ネタを提供してくれる人と綿密にコミュニケーションをとったりすることで、有益で鮮度の高い情報をキャッチできます。
広報担当者としても、日頃から記者と関係を構築しておくことで、自社のニュースを扱ってもらいやすくなる可能性もあるでしょう。
記者の仕事の1日のスケジュール・流れ
記者の仕事はなんとなく「ハードそう」、といったイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。メディアリレーションを行ううえで、記者の仕事のスケジュールを具体的にイメージしてみることが大切です。
媒体によって差はありますが、例として一般的な新聞記者の1日の仕事の流れをご紹介します。
| 9:30 | 都庁に出勤 |
| 10:00 | 取材先に移動 |
| 12:00 | 昼食 |
| 13:00 | 都庁に到着 |
| 14:00 | 定例会見 |
| 15:00 | 庁内取材 |
| 16:00 | 記事執筆 |
| 17:00 | 情報収集 |
| 20:00 | 原稿確認 |
| 21:00 | 帰社または会食 |
上記はあくまで一例であり、どの媒体で仕事をするか、どこを取材対象とするかなどによって記者の仕事スケジュールも大きく変わってきます。
特に新聞記者は、早朝または深夜に予告なしで取材をする「夜討ち朝駆け」で情報を引き出すことも。突発的な事件や事故、災害などが発生すれば徹夜で仕事をするケースもあります。
昼夜問わず取材や原稿執筆をするため、不規則な生活になりやすい職業です。やりがいが大きい一方で、肉体的にはハードな仕事ともいえます。
記者の仕事に向いている人の3つの特徴
ここまで、記者の仕事内容やスケジュールなどをお伝えしてきました。それでは、記者の仕事に向いているのはどんな人なのでしょうか。記者に必要な適性を3つにまとめてお伝えします。
1.あらゆる出来事に問題意識を持てる
記者の重要な役割のひとつが「問題提起をする」ことです。そして社会に伝えるべき情報を集め、広く伝えるのが記者の仕事でもあります。
世の中で起こっているさまざまな出来事に常にアンテナを高く張り、好奇心や問題意識を持つことは記者の仕事をするうえでとても大切といえます。

2.体力と精神力がある
朝早くから夜遅くまで仕事をし、休日に急な取材が入ることも少なくないのが記者の仕事。スクープがあれば迅速な取材対応が求められることもあるため、体力勝負の仕事ともいえるでしょう。
また、取材を続けていてもすぐに記事に繋がるようなネタがあるとも限りません。取材対象者とよい関係性を築くためには、地道な取材を積み重ねる精神力も必要です。
3.責任感や正義感が強い
国や企業の不正を取り上げることもあり、記者が取り上げたニュースが重大な社会問題に発展するケースもあるなど、社会的意義ややりがいの大きい仕事。
それだけに、権力に屈せず強い責任感、正義感を持って仕事に臨む思想が求められます。
記者の仕事の大変なところ・辛い部分
記者に必要な適正についてまとめてきましたが、最後に記者の仕事の大変な部分を3点ご紹介します。
1.タイムリーな取材や執筆が必要
新聞もテレビも原稿には締め切りがあり、情報を届けるまでのスケジュールは非常にタイトです。その中で、予測不能な事件や事故、大きな災害などが発生したら、すぐに現場に駆けつけて取材し、原稿を執筆する必要があります。
フットワークの軽さはもちろん、現場において自分の頭で考え、臨機応変に対応できる力など、さまざまなスキルが求められるでしょう。
2. 正確な情報を伝えるための高い技術が必要
前述の通り、記者として誤報を発信することは絶対にあってはいけません。発信元企業や記者本人への信頼を大きく失う結果に繋がります。日々飛び込んでくるニュースをスピーディに届けようとするあまり、情報の正確性をおろそかにしてはならないのです。
たとえスクープのように大きなニュースを得たとしても、地道な取材でしっかりと一次情報をとることや、普段からあらゆる情報に触れ、真偽を見極める感度を高めておくことも重要といえるでしょう。
3. 読者が必要とする情報を判断するセンスが必要
新聞やテレビなどは形式上、限られた文字数で情報をまとめる必要があります。その制約の中で、読者がどのような情報を必要としているのか敏感に察知し、入れ込む情報の取捨選択をするセンスが必要です。
書いた記事が実際に誌面に掲載されるかどうかは「デスク」と呼ばれる上長の判断となりますが、記者自身が読者視点を持って取材・執筆を行えるとなお良いでしょう。
記者のやりがいとは?
記者の仕事の最大のやりがいは、社会の「今」を正確に伝えることで、人々の行動や意識に影響を与えられる点にあります。自ら取材し、足で稼いだ一次情報が世の中に広がることで、問題提起や社会課題の改善に寄与することもあります。
また、記事が多くの読者に読まれたときの達成感や、取材相手との信頼関係を築けた瞬間など、日々の積み重ねが大きなやりがいにつながります。報道には責任が伴いますが、その分社会的意義の高い職業といえるでしょう。
記者を目指す人におすすめの準備・学び
記者を目指すうえで重要なのは、「伝える力」と「取材力」の両立です。大学在学中には、文章力を養うために新聞部やライターインターンに参加するのが有効です。
また、社会の仕組みや時事問題への関心を持ち、自ら調べて仮説を立てるトレーニングも欠かせません。語彙力や論理的思考力を鍛えるために、日常的に新聞を読み、ニュースを自分なりに要約する習慣を持つことも推奨されます。加えて、記者志望者向けの筆記試験対策や模擬面接を行うことで、採用試験対策にもつながります。
広報PR担当者のための補足:記者と良い関係を築く実務ポイント
記者との関係構築は、単なる「顔見知り」や「過去に掲載された実績」だけで成立するものではありません。日々多くの情報に接している記者にとって、広報PR担当者は「取材を前に進められる相手かどうか」という実務的な視点で見られています。
つまり、信頼関係とは感情的な相性ではなく、ニュース判断や原稿制作を円滑に進められるかという業務適合性の積み重ねです。この前提を理解したうえで、情報の出し方、対応スピード、条件提示の明確さなどを一貫した運用として整えることが、結果的に「また連絡したい広報担当者」として認識される近道になります。
記者が求めるのは「ニュース性」と「検証可能性」
記者が取材可否を判断する際に最初に見るのは、「それがニュースとして成立するか」と「事実として検証できるか」の2点です。話題性や面白さだけでなく、社会性、時流との接点、読者・視聴者にとっての意味があるかがニュース性の軸になります。
一方で、どれだけ話題性があっても、裏付けが取れない情報や主観的な主張だけでは記事化できません。そのため、広報PR担当者は「なぜ今なのか」「誰にとってのニュースなのか」「どの事実で裏付けられるのか」を整理した状態で情報提供することが重要です。
これはプレスリリースに限らず、個別の情報提供や雑談レベルのネタ出しでも同様で、記者の判断軸に沿った整理ができているかどうかが信頼度に直結します。
取材依頼を受けたら:一次資料、数字根拠、回答期限をセットで返す
取材依頼への初動対応は、その後のやり取りのスムーズさを大きく左右します。単に「対応可能です」「確認します」と返すのではなく、一次資料、数字の根拠、いつまでに何が出せるかをセットで提示できると、記者側の段取りが一気に立てやすくなります。
例えば、調査データであれば調査主体・実施時期・サンプル数、業績数字であれば対象期間や前年差分など、最低限の前提情報を添えるだけでも検証可能性は大きく高まるでしょう。
また、社内確認が必要な場合でも「本日中に一次回答、正式回答は◯日◯時まで」といった形で期限を明示すると、記者は安心して進行できます。こうした積み重ねが、「話が早い広報」という評価につながります。
オフレコ・情報開示時期・引用範囲:条件提示は早く、明確に
情報提供に条件がある場合は、必ず最初の段階で、かつ明確に伝えることが重要です。オフレコなのか、情報開示できる時期が決まっているのか、コメントのどこまでが引用可能なのかといった条件は、後出しになるほどトラブルの原因になります。
特に、口頭でのやり取りや非公式な情報提供の場では、「これはオフレコです」「ここからは背景説明です」といった区切りを言葉で明確に示す必要があります。
また、情報開示については解除日時を具体的に示し、全媒体に同条件で提供しているかどうかも整理しておくと安心です。条件提示は記者を縛るためのものではなく、双方が安心して情報を扱うための前提共有であるという意識が欠かせません。
取材や発表当日運用:窓口一本化、事実確認フロー、追加質問の想定Q&A
取材当日や発表当日の運用が不安定だと、それまで積み上げた信頼が一気に崩れることがあります。そのため、社内では必ず窓口を一本化し、「誰が最終回答者か」「どこまで即答してよいか」を事前に決めておく必要があります。
また、事実確認のフローが曖昧だと、回答が二転三転し、記者の原稿作業に大きな負荷をかけてしまいます。想定される質問とその回答、グレーな論点についての公式見解をQ&Aとして用意しておくと、当日の対応品質が安定します。
追加質問が来ることを前提に、即答できない場合の返答ルールも含めて共有しておくことが、実務では非常に効果的です。
長期運用:定期的な情報提供と、タイミングを外さない共有
記者との関係は単発の掲載で終わるものではなく、継続的な情報提供によって育っていきます。重要なのは、常に大きなニュースを持っていくことではなく、「この分野ならこの会社」「このテーマならこの広報」と思い出してもらえる状態をつくることです。
そのためには、定期的な近況共有や、記事にはならなくても参考になる背景情報の提供が有効です。また、記者の関心分野や過去の記事を把握し、「今このタイミングで役立ちそうだ」と思える情報を外さずに届けることが信頼につながります。関係構築を属人的な努力にせず、情報提供の頻度や内容を運用として設計することで、長期的に安定したメディアリレーションを築くことができるでしょう。
ハードでもやりがいの大きい記者の仕事
記者の仕事内容や、向いている人の特徴などについてお伝えしてきました。
記者の仕事は突発的なニュースに迅速に対応するため、肉体的・精神的にとてもハードな仕事です。また、日頃から問題意識を持ち、読者が求めている情報をキャッチするなど高度なスキルが求められます。
一方で、日々世の中で起こっている出来事を生活者に伝えられるため、社会的意義ややりがいが大きいのは記者ならではの魅力です。記者の人々の仕事内容や、1日の動き、どのような情報を必要としているのかなどを十分に理解したうえで、スムーズな広報活動に繋げていきましょう。
記者の仕事内容に関するQ&A
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