キャリアアップやキャリアチェンジの手段として転職を視野に入れる人が多くなった今、企業の採用機会もぐんと増えました。しかし、実際には人材が転職活動を行うタイミングでコンタクトできなければ採用には結び付きません。そこで、企業からアプローチするひとつの手段として活用されるのがスカウトメールです。
本記事では、自社の求める人材の採用機会を作り出すスカウトメールについて、その作成や送信に関するポイントなどを踏まえてご紹介します。
スカウトメールとは?
スカウトメールとは、採用活動において企業側から人材にアプローチするメールのことです。その種類には、各種転職支援サービスの登録人材に向けて、自社が設定した条件のもと自動的に送信されるものから、登録人材のスキルや経験・転職条件を見て採用担当者が送信するもの、また、企業の採用条件を把握した転職エージェントが個別に送信するものなどがあります。
さらに最近では、特定の領域に関する勉強会やイベントなど、企業が事業展開の中で形成するコミュニティや、企業が公式に運営するSNSなど、親和性のある独自のつながりを活用するケースも見られます。
スカウトメールが有効な理由・送信するメリットとは?
採用活動においてスカウトメールが有効な理由とは何でしょうか。ここでは、スカウトメールを送ることのメリットについて見ていきます。
メリット1.転職意向を把握したうえでメールを送ることができる
転職支援サービスでは、登録者の転職希望時期や現在の転職意向についてのデータが開示されていたり、サイトへのログイン頻度などから転職意向の高さを測ることができます。また、SNSでつながりがある場合は、その人の発信している情報などから転職意向を読み取ることができる場合があります。スカウトメールは、そうした情報をもとに、送信対象が持つ転職意向のレベルに合わせた内容のメールを送ることができます。
転職意向の高い人には、登録情報からスキルや経験・転職を希望する理由などを把握し、自社の求める人材像に近しい場合は、具体性を持った内容で次のステップにつなげられるようアプローチします。まだ転職意向が低い人や現状は転職を考えていない人には、いきなり具体的な話を進めるのではなく、まずは自社を知ってもらうことから始めましょう。また、その人の仕事に求めるものや課題に感じていることをヒアリングするなど、長期的にコンタクトしていきます。そうすることで、その人が具体的に転職を考えた時に自社を想起するきっかけになります。
メリット2.自社の求人条件や事業の情報などをきちんと伝えられる
スカウトメールは、メールで個別にアプローチしたうえで、転職支援サイトの自社ページや自社サイトの採用ページなどに誘導することができます。Webページで詳細情報を確認することができ、かつ興味関心が生まれた場合はページ内から応募するなどのアクションに移ることも可能になります。
本文は、簡潔に読みやすさを考慮した分量にまとめ、誘導したい先をきちんと入れるようにすると効果的でしょう。
メリット3.メールなので相手の都合の良いタイミングで見てもらえる
転職支援サイトなどの登録情報や自社が保有するリストをもとに、電話でアプローチするという方法もあるでしょう。しかし、相手の都合が良い時にかけられるとは限らないため、つながる確度は高くありません。都合が悪いタイミングや土日などの休日の電話は、印象が悪くなる可能性があります。
一方、メールは相手が都合の良いタイミングで読むため、情報収集を前提とした比較的前向きな姿勢で見てもらえることが多いでしょう。メールをきっかけにコンタクトできるようになってから、電話や対面などの別のコミュニケーション手段を用いることをおすすめします。
スカウトメールの送信が効果的なケース
確固たる理由がある場合を除いて、転職活動は在職中に行うことがほとんどでしょう。採用する企業側も、転職面談時に就業していない場合はその理由を気にすることが多いのではないでしょうか。つまり、求職者は日中就業しているケースが多いといえます。
転職活動に割く時間が限られる中でのスカウトメールは、在職中の求職者にとって貴重な情報源にもなります。手元にある送信対象の情報をもとに、意向を汲んだ内容のスカウトメールを送りましょう。
スカウトメールの種類・送信する媒体例
スカウトメールは、目的別に使い分けるいくつかの種類があります。また、最近では企業がアプローチ先を独自に有するケースも散見されます。ここでは、スカウトメールの種類や、転職支援サービス以外の媒体について見ていきます。
1.募集の段階や職種に応じたもの
転職支援サービスに付帯するスカウトメールは、募集の段階や職種に応じて使い分けることができます。一度に複数のポジションを募集する、スキルや経験が少なくても今後の成長を見込んで採用したい、などの場合は、採用母集団が多いほうがよいケースがあります。できるだけ多くの人を募集対象としたい場合は、スクリーニング条件を最小限にすることで多くのスカウトメールを一斉送信することができます。
必要なスキル・経験が明確な特定のポジションの募集では、求職者が開示しているレジュメをもとに、想定している採用条件に近しい人のみに個別にスカウトメールを送ることがあります。このケースでは、双方の条件面が明示されていることから、すぐに面接に進むことも少なくありません。
2.求人案件への応募促進を目的としたもの
ある程度の経験やスキルを募集条件としつつ複数名から選考したいなどの場合は、自社の想定するいくつかの条件のもとスクリーニングした対象者にスカウトメールを送信します。この場合、転職支援サイトの自社の採用情報に誘導し、応募のアクションをとった人と話を進めていく形になります。
自社が独自に持つコミュニティなど転職支援サービス以外でアプローチする場合は、自社の採用ページなどに誘導しましょう。
3.転職支援サービスのスカウトメール以外のアプローチ媒体例
スカウトメールというと転職支援サービスの付帯サービスを思い浮かべることが多いと思いますが、最近では企業が独自に持つつながりにアプローチするケースも増えてきたように見受けられます。
企業が公式アカウントで運営するSNSは、自社と親和性が高く興味関心を持ってくれている層とつながっています。また、職種によっては自社製品やサービスのエバンジェリスト的な活動を担う社員が運営するSNSやコミュニティなどにも、アプローチ対象となる人は多くいる可能性があります。
特に専門領域の企業や職種では、技術勉強会などのイベント開催を通じた独自コミュニティを形成していたり、関連情報を配信するメルマガを運営しているなどのケースも多く見られます。こうした独自のデータベースにアプローチする際には、コミュニティの目的が転職を前提としているわけではないことを認識しましょう。あくまでもメインの活動目的の中で、受信者が不快に思わない形でアプローチします。例えば、定期配信しているメルマガの付帯情報として採用情報を入れるなどすれば、自社で働くことに興味のある層とのコンタクトのきっかけになるかもしれません。
スカウトメールの返信率の目安
スカウトメールを送っても、すべての人から反応があるわけではありません。一般的にスカウトメールの返信率は10%以下と言われています。これは、ある程度対象に合わせたアプローチの場合で、同じ文面の大量配信になると確率はぐっと下がります。
しかし、目を引くタイトルがついていたり、個別アプローチを感じさせるメールの中には、30%もの反応を得るものもあります。先にご紹介したスカウトメールの配信目的に応じてメール文面を作成することがポイントでしょう。
独自に持つつながりにアプローチした場合は、そのコミュニティが転職を前提としていないため、返信率は低いかもしれません。しかし、反応があった場合は、自社をすでに認知している親和性の高い人である可能性もあります。
返信率の低さは、一概に採用対象としての可能性の低さにつながるものではないかもしれません。転職支援サービスの登録者は、現時点で具体的な転職意向を持っていなくても、将来的に転職することを見据えて、またはいい案件があれば検討することを前提に、常に情報収集しているケースも多く見られます。定期的に送信することで、その人が転職を考えるタイミングでコンタクトできたり、あるいは転職先として自社を想起することにつながるかもしれません。そうした可能性も含めて、長期スパンでのメール配信も有効と言えるでしょう。
成功するスカウトメールを作成する3つのポイント
では、スカウトメールを作成する時のポイントとは何でしょうか。ここでは3点ご紹介していきます。
ポイント1.転職意向を持っている人へのスカウトメール
誰でも自分のことを考えてくれる人の声には耳を傾けたくなるものです。反対に、自分のことばかり主張する人の声はなかなか届かないものです。スカウトメールでも同様に、採用側の目線でアプローチしても求職者には届かないでしょう。転職を考えるということは、大小にかかわらず現状に課題を持っている人がほとんどです。求職者の掲げる条件などからある程度課題を推測し、その課題を解決できる環境であることを伝えましょう。
また、「このメールはあなたに送っている」という特別感を大切にしましょう。「ほかでもないあなたに、働くステージとして自社を選んでほしい」ということが伝わらなければ、もっと話を聞いてみたいという気持ちにはなりません。誰にでも当てはまるような内容では求職者の心は動かないでしょう。
また、同じ求職者に複数回送信する場合は、その都度内容を更新しましょう。同じ内容のメールを何度も送られることは、受け取る側はうれしくありません。しかし、都度内容が変わったメールであれば、「どうしてもあなたに来てほしい」という意図の表れになります。
メールを受け取る側の気持ちを考えた内容を心がけましょう。
ポイント2.転職意向が低い・またはない人へのスカウトメール
転職予備軍の中には、「今すぐに動くつもりはないけれど、情報収集はしておきたい」という層は意外と多いものです。そういう層に「すぐに来てほしい」とまっすぐにアプローチしても、必要ではない情報として遠ざけられてしまう可能性が高いでしょう。
まずは、すぐに転職したいわけではないという意図を汲み、自社の存在を認知してもらうところから始めます。中には、求職者にとって「良い案件だった」としても、すぐに応募につながることもあるかもしれませんが、基本的には長期スパンでコンタクトをしていくことを前提にしましょう。転職に求めるものや考え方を聞いてみたり、採用とは直接関係のないイベントに誘致してみたりと徐々に関係性を深めていくことで、最終的にその人が転職を考えた時の選択肢に入る可能性が高まります。
ポイント3.対象者を問わず気を付けたいポイント
送るほうとしては盛り込みたい情報はたくさんあることでしょう。しかし、情報量の多いメールはよっぽど興味関心の高い場合を除き、読み手にはハードルが高いことがほとんどです。
読み手は自分に関係のある情報だと認識すると、読み進める気になります。求職者の抱える課題や転職に求める条件などを示唆する内容であれば、「自分事」として受け止める可能性が高くなるでしょう。
また、読み進めてもらうためには開封するというステップをクリアしなければなりません。開封したくなるような魅力的なタイトルを考えましょう。対象者が「自分事」と思えるキーワードを、タイトルの冒頭部分などすぐ目に入る位置に入れることをおすすめします。
先にご紹介した配信目的に合わせて、送信対象者が次のステップに進みやすい仕掛けも作っておきましょう。例えば、母集団形成のためのスカウトメールであれば、興味を持った人が参加しやすい説明会や個別相談会などを設定しておくなどすると、最初のステップとしてコンタクトしやすくなります。
開封率を高めるスカウトメールの件名
コンタクトのファーストステップである「開封」。ここでは、開封率を高める件名について見ていきましょう。
BAD例
どこにでも・誰にでも当てはまるようなありきたりなキーワードは、対象者の「読んでみたい」気持ちを引き出せません。また、たくさんのキーワードを羅列することで、一番推したいポイントがわからず開封に至らないことも多くあります。以下のようなタイトルは避けましょう。
「大手企業!東証一部上場の安定した会社です」
「残業なし!プライベートを充実したい方にピッタリの会社です」
「充実の福利厚生・安心して働ける仕事環境です」
「成長中のIT企業・若いメンバーが元気な職場!土日休み&平均年収以上で充実のプライベート!」
「平均月収30万円以上!時短勤務OK&スキルアップも応援!定着率90%以上の優良企業」
GOOD例
「自分事」ととらえた情報は、しっかり読み込みたくなるものです。メールの受け取り手が自分に関係のある情報だと思えるようなキーワードをタイトルに入れましょう。送信対象となる求職者が有している課題や転職に求めることに関連するキーワードは、彼らの目を引きます。また、働く場所として魅力的に映るオリジナリティのある情報や、メリットがわかりやすい内容も開封につながりやすくなります。
「キャリアチェンジをお考えの方、必見!年収アップの未経験転職を実現しよう」
「未経験者でも安心!充実の研修制度を持つ当社で新しくスタートしませんか」
「働きやすさ抜群。定着率95%の当社でエンジニアとして活躍しよう!」
「Webデザイナーのキャリアを活かして、Webディレクターとして仕事の幅を広げませんか」
返信率を高めるスカウトメールの例文
ここでは実際のメール文面例を見ていきます。これまでご紹介したポイントを踏まえてご覧いただくとわかりやすいでしょう。
BAD例
こんにちは。株式会社〇〇の採用担当です。
私たちは、〇〇という事業を展開し、日本をはじめアジア各地で多数のサービスや商品を提供しています。業界トップクラスの規模を誇り、昨年度の売り上げは〇〇円を達成。社長の〇〇は数多くのメディアに取り上げられ、おかげさまで多くの方に認知していただく機会も増えています!
会社の成長は目覚ましく、社員数は現在200名となりました。これからも新規事業をどんどん立ち上げていく予定です。
今回の募集職種では特別なスキルはいりません!面倒見の良い人、明るく楽しく働いてくれる方を歓迎します。少しでもご興味をお持ちいただけましたら、求人ページにより詳細な情報が載っておりますので、ぜひご覧ください。
それでは、あなたのご応募お待ちしております。
BADポイント
- 差出人の名前がない。「株式会社○○の採用担当」では親近感がわかない
- 「私たちは…」と自社の事業紹介を長々と記載している。求職者の興味関心は募集ポジションのため、記載するのであれば後半に簡潔に
- 転職を検討するのに一番必要な募集職種の情報がない。あいまいで何をするかがイメージできず、興味関心をひかない
- 求人ページへの導線(URL)が確保されていないため、具体的な情報にたどりつけない
GOOD例
はじめまして。株式会社〇〇の採用担当をしております〇〇と申します。
この度、〇〇様のご経歴を拝見し、ぜひ一度お話をさせていただきたいと思いご連絡させていただきました。
お声がけした理由としては、〇〇社での〇〇のご経験から、弊社が現在募集している〇〇のスタッフとしてご活躍いただけるのではないかと拝察したためです。
また、転職のご希望として〇〇の職種を挙げていらっしゃるのを拝見し、〇〇様のご期待に添える環境がご提供できると思っております。
今回の募集は広く公開しておらず、弊社がお話しさせていただきたい方に直接ご連絡しておりますので、〇〇様にご興味をお持ちいただけると大変うれしいです!
弊社は創業以来〇〇を理念として掲げ、現在は〇〇に向け全社一丸となって取り組んでいるところです。社風としては、仲間同士で切磋琢磨しているようなチームです。もし、具体的な業務内容・会社の詳細などをご覧になりたい場合は、求人票と弊社ホームページ(公式ブログ)をご覧いただけると幸いです!
<求人情報ページ> http://~
<弊社公式ブログ> http://~
ほかにもいろいろとお伝えしたいので、ぜひ一度お目にかかる機会をいただければと存じます。本メールにご返信いただけましたら、次のメッセージで日程調整のご案内をお送りします。
また、すぐにでも選考に進みたい、というご要望があればご遠慮なくその旨もお伝えください!スケジュール調整はもちろんのこと、ご面談の方法もお電話やSkypeなどで柔軟に対応させていただきたいと考えております。
それでは、〇〇様からのお返事を心よりお待ちしております!
GOODポイント
- 採用担当者の名前を明記している。「誰からのメールか」が明確でかつ窓口となる人がわか安心感につながる
- なぜ声をかけたかの理由を明記している。求職者の経歴を把握したうえ上で連絡していることが書かれており、「自分に送られている」と認識できる特別感がある
- 求職者の転職条件にも言及しており、わかりやすくメリットを提示している
- 自社について簡潔に説明し、補足として自社の公式メディアへ誘導口を設けている
- 具体的な求人情報への導線(URL)を設けている
- 次ステップ(面談)への誘導、またその手段について求職者に合わせて対応することを明記している。「ぜひ会いたい」という気持ちが伝わる文面となっている
2回目のスカウトメールは効果的?
スカウトメールを送る中では、返信のない対象者に再度送りたいと思うこともあるでしょう。受け取る側の気持ちになってみれば、前回とまったく同じメールが届いても開封しようとは思いません。タイトルを変えることはもちろんのこと、本文も興味を持ってもらえるように変更します。
複数回送信することは、「あなたにぜひ来てほしい」という気持ちの表れでもあります。自社に興味関心を持ってもらえるよう、相手が今求めていることを汲んでアプローチしましょう。
スカウトメールを送信するときの3つの注意点
スカウトメールを送る時にはどんなことに気を付けるべきなのでしょうか。ここでは3つの注意点をご紹介します。
注意点1.開封につながる「タイトル」をつける
これまでもお話ししてきましたが、まずは開封してもらわないことには始まりません。最初に目に入るタイトルには、対象者を引きつける魅力的なキーワードを入れましょう。母集団形成を目的とした包括的な内容のメールであっても、タイトル冒頭に「【スカウト限定情報】」など関心を引くキーワードを入れて、開封率を上げましょう。
注意点2.求職者目線のアプローチをする
「自社の力になる優秀な人材を採用したい」と思うあまりに、採用側目線の情報ばかりになっているメールは、求職者の心に響きません。自社が、求職者が抱える課題を解決し、さらにキャリアを積むことができる場所だということを伝えましょう。
「自社があなたに合う理由」という同じことを伝えていても、自分の中にあるものに関連していると受け止められるほうが、人は積極的に関わろうとします。求職者にとってプラスになる情報であると思わせるアプローチにしましょう。
注意点3.対象者に訴求意図が伝わるようにする
スクリーニングした側は自社が採用したい人材像に近いと思っていても、アプローチによっては「自分事」と受け止めてくれない場合もあります。相手が自分に送られていると感じられるよう、内容は対象者の転職条件などを加味したものにしましょう。多くの対象者に送る一斉配信メールであっても、スクリーニングした条件をキーワードとして盛り込むなどして、自分に送られていると受け止められるメールを作成するよう心がけましょう。
求職者の心に響く、想いを込めたスカウトメールを送ろう
スカウトメールは、採用企業と求職者の最初のコンタクトです。メールを介していても、対面のコミュニケーションと同様に、相手が何を求めているかを考えてアプローチすることが大切です。
「あなたにジョインしてほしい」という想いが伝わるスカウトメールで、自社が理想とする人材に積極的にアプローチしていきましょう。
スカウトメールに関するQ&A
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