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技術ブランディングとは?目的・進め方・成功させる6つのポイントなど基礎知識をわかりやすく解説【事例あり】

優れた技術を持つ企業であるにもかかわらず、その魅力が思うように認知されていないと感じている方もいるのではないでしょうか。多くのステークホルダーに技術力を知ってもらうためには「技術ブランディング」に取り組む必要があります。

本記事では、技術ブランディングの基本的な概念や目的・メリット、実践のステップについてご紹介。広報PRの役割と企業事例についても触れていますので、技術力のブランド構築に取り組む際はぜひ参考にしてください。

目次
  1. 技術ブランディングとは?

  2. 技術ブランディングが重視されている背景

  3. 技術ブランディングを実施する4つの目的・メリット

  4. 技術ブランディングを実践するための5つのステップ

  5. 技術ブランディングにおける広報PR・情報発信の役割

  6. 技術ブランディングの成功事例や参考になる取り組み5選

  7. 技術ブランディングを成功させる6つのポイント

  8. 技術ブランディングと広報PRで企業・製品の価値を向上させよう

技術ブランディングとは?

技術ブランディングの目的は、単に技術の高さを発信したり、関連製品の認知を拡大したりといった目的にとどまりません。似た言葉として挙げられる「製品ブランディング」や「コーポレートブランディング(企業ブランディング)」との違いも理解しておきましょう。まずは技術ブランディングの基本的な概念について解説します。

技術ブランディングとは

技術ブランディングの概要

技術ブランディングとは、企業が持つ技術力・開発力を発信して認知を広め、企業の価値やイメージを高める活動のこと。技術力の高さや独自性を適切に伝えるのはもちろん、その技術によってどのような価値を見いだせるのかを体系的に伝えることもブランディングの大切な要素です。

長期的な視点で、自社の技術を棚卸しし、発信内容を適宜見直すなどの取り組みが求められます。技術の強みを理解したうえで、ブランド力として可視化することが技術ブランディングの基本的な概念といえるでしょう。

製品ブランディングやコーポレートブランディングとの違い

技術ブランディング・製品ブランディング・コーポレートブランディングの違いは、フォーカスするポイントにあります。技術ブランディングが技術そのものの価値を見いだすのに対して、製品ブランディングは商品・サービスを取り上げますし、コーポレートブランディングが着目するのは企業の理念や文化です。

それぞれ企業価値を高めるという目的は同じですが、製品と企業の信頼性を裏付けるのが技術ブランディングの役割といえるでしょう。例えば特定の製品を取り上げる際、「この独自技術を搭載している」という切り口で独自性・信頼性を伝えられます。

技術ブランディングが重視されている背景

企業・事業規模の大小にかかわらず、競争優位性を確立するための施策として重視されているのが技術ブランディングです。近年はデジタル化が急速に発展し、生活者は膨大な情報を日常的に受け取っています。

独自技術を搭載した製品であっても、「技術力が高い」という優位性のみではステークホルダーに届きづらく、思うように認知拡大できない課題は多くの企業が抱えているでしょう。可視化しづらい技術をブランドとして発信することで、企業ならではの技術力をより明確に伝えられます。

技術ブランディングを実施する4つの目的・メリット

技術ブランディングには、信頼の獲得や採用力強化といったメリットがあります。社外に対してのみならず、社内の技術資産を共有したり収入を安定化させたりといった部分も、技術ブランディングに注力する重要な目的です。技術ブランディングを実施する4つの具体的な目的・メリットをご紹介します。

メリット1.取引先・顧客・投資家からの信頼獲得につながる

技術ブランディングの大きなメリットは、ステークホルダーの信頼性を高められるという点です。技術力が裏付けられれば営業活動にもよい結果が期待でき、投資家に対して技術資産としての価値や将来性を示すことにもつながります。

技術力は、企業そのものの価値・信頼性といった部分に強く結び付く要素です。技術ブランディングにより企業イメージをアップしたり、事業拡大や成長の展望に注目してもらったりできるでしょう。

メリット2.採用力強化につながる

企業の技術力を維持・成長させるためには、人材の確保も必要不可欠です。高い技術力を誇る企業であることを伝えられれば、優秀な技術系人材にも効果的にアプローチできます。

また、技術力の認知を広めることで、大学との共同研究や産学連携といった機会を増やせるかもしれません。技術ブランディングでは技術に特化した強みや取り組みを発信するため、優秀な学生と企業との接点を作るきっかけになるでしょう。

メリット3.社内に眠る技術資産の再評価と共有促進につながる

自社技術のブランド力を把握するには、技術を見つめ直さなければなりません。この過程で、社内で認識できていなかったら技術資産を掘り起こしたり、これまでとは異なる活用方法を見いだしたりといった「再評価」が期待できます。

企業の技術をあらためて認知・理解することは、言語化した技術力を社内で共有する結果にもつながります。ブランディングで重要な一貫性のある共有・教育だけでなく、技術伝承による将来性にも寄与するでしょう。

メリット4.ライセンス収入を獲得して収入を安定化

技術力を保有する企業にとって、これを起点とした収益機会は重要な要素です。技術ブランディングによって自社技術の価値が認められれば、ライセンス契約による収入源を確保できます。

自社技術を自社のみならず他社にも提供できるようになるため、より安定的な収入につながる点がメリット。特に近年はオープンイノベーションの時代ともいわれ、優れた技術力を求める企業も増えています。技術ブランディングによって技術力の高さや信頼性が伝われば、ライセンス収入による安定化が図れるでしょう。

技術ブランディングを実践するための5つのステップ

技術ブランディングを進める前に、まずは自社技術を見つめ直す必要があります。「誰に向けてブランディングしたいのか」「どういったストーリーがあるのか」を明確にしたうえで、社外へ発信する段階へと進んでいきましょう。技術ブランディングの進め方を5つのステップに分けて解説します。

ステップ

STEP1.技術の価値を明文化する

まずは自社がどういった技術を持っているのか、その価値を明文化します。仕様や性能といったスペックだけでなく、「この技術によって何が解決できるか」「利用者や社会にどのようなベネフィットがあるか」という視点を持つことが大切です。

ブランディングにおいては競争優位性が重要となるため、他社よりも優れているポイントや独自技術を漏れがないよう整理していきましょう。製品に直接関わる技術者はもちろん、営業・マーケティングなどほかの部門も巻き込めると、より多角的に検討できます。

STEP2.ブランディングの対象者像を決める

自社技術の価値を明文化したあとは、「誰に何を伝えたいのか」を軸に方向性を定めていきます。技術を提供する取引先や投資家、大学生・採用候補者など、あらゆるステークホルダーに応じた内容を組み立てる必要があるためです。

例えば投資家に向けたブランディングであれば、高い技術力を持つ企業としての将来性を示さなければなりません。製品を利用する生活者を対象とする場合は、専門知識がなくとも技術力が伝わる表現を前提に進める工夫が必要となります。

STEP3.ブランドストーリーを組み立てる

ブランドストーリーは、技術開発の裏にあるさまざまな物語を表出させる重要なコンテンツです。

  • 開発に至った背景
  • 製品化するまでの失敗
  • この技術でどんな未来を目指すか
  • 開発者の想い

失敗・挫折のようなネガティブな要素を盛り込むことで人間味が増し、企業や技術者に対して親近感を覚えやすくなります。「ブランドストーリー」という名のとおり、重視すべきは技術力そのもののインパクトよりも共感を呼ぶストーリー性です。開発者の想いや背景を丁寧に描くことで、企業への親近感を高められます。

STEP4.ブランドアイデンティティを設計・具現化する

技術ブランドを確立するために必要不可欠なのが、ブランドアイデンティティです。企業ロゴやパーパスと同様に、技術にもビジュアルアイデンティティやキャッチフレーズを設計しておきましょう。ブランドアイデンティティは直感的に理解しやすいメリットがあり、「〇〇メーカーといえば△△の技術」という印象強化が期待できます。

設計したブランドアイデンティティは、企業ホームページやパンフレットなどあらゆる場面での活用が可能。ブランドアイデンティティに触れるステークホルダーは属性を問わないため、信頼感と親しみやすさを両立させましょう。

STEP5.広報PR活動で技術力を発信する

技術ブランディングに必要な要素をそろえたあとは、対外的に発信する施策へ移ります。Webサイト・SNS・プレスリリース・展示会など多様な機会を有効活用し、効率的に認知を広めていきましょう。

技術に特化したメディアはもちろん、一般メディアや自社オウンドメディアを介したアプローチも必要です。情報を発信するのみでなく、企業ミュージアムやセミナーといった場を設けて、技術力を体感できるような機会も積極的に増やしていきましょう。

技術ブランディングにおける広報PR・情報発信の役割

広報PRは、メディアを通じて技術力の認知拡大を図るために必要な活動です。技術という複雑な情報を「物語」として発信することで、技術開発を始めた背景から製品化に至るまでのストーリー、さらに現在から未来に向けた展望までを、あらゆるステークホルダーに伝えることができます。

ブランディングで技術力を知ってもらうことはもちろん大切ですが、ステークホルダーとの持続的な関係構築が欠かせません。技術ブランディングで強みや魅力を発信し、広報PR活動では多角的な認知拡大と関係構築を目指すことで企業全体のブランド価値向上につながるといえるでしょう。

広報PRとブランディングの違いや「技術広報」については以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。

技術ブランディングの成功事例や参考になる取り組み5選

技術ブランディングの進め方や情報発信の役割について解説してきましたが、具体的な施策の展開がイメージしづらいという方もいるのではないでしょうか。ここからは、実際に技術ブランディングを行っている企業事例を5つピックアップし、魅力的な取り組みや参考になる発信内容をご紹介します。

事例1.開発者体験を客観的に評価するアワードの実績と目標を提示

株式会社ゆめみは、サービスデザインやシステム構築、運用・改善といった課題解決をサポートするIT企業です。開発者体験がよいイメージのある企業を表彰する「Developer eXperience AWARD」でランキング1位の獲得を目指し、プレスリリースでこれを宣言しました。

過去3年間にわたって上位にランクインしていることから、「開発のしやすさ」「働きやすさ」といった視点で強みを伝えています。さらに向上するための取り組みを具体的に示すことで、技術部門としての将来性を訴求した好事例です。

参考:ゆめみ、「Developer eXperience AWARD」1位獲得を目指し開発者体験の向上を宣言

事例2.自社開発製品が国交省の認定を取得し、プレスリリースで発表

東京都と大阪府を拠点にタクシー事業を展開するnewmo株式会社は、自社開発製品が国土交通省の認定を取得したことを発表しました。業務前の対面点呼と、業務後の自動点呼を一台のタブレットで完了できる自動点呼機器です。

製品技術に関する紹介だけでなく、公的機関からの認定を切り口に発信することで実績を伝えられています。グリーンに統一した企業・製品のカラーデザインが特徴的で、技術ブランドのイメージからも一貫性を感じられるでしょう。

参考:newmo、自社開発の自動点呼機器が国交省認定を取得

事例3.天才発明家キャラクターを起用したテレビCMを放映

エンジニアのプラットフォームを提供するファインディ株式会社は、2025年7月7日から同社初のテレビCM放映を実現しました。アニメ『ドラゴンボールZ』に登場するキャラクター・ブルマを起用し、エンジニアに向けてメッセージを盛り込んだ構成です。

自社の技術ブランドと、キャラクターの「天才発明家」という位置づけを紐づけたのがユニークなポイント。知名度の高いキャラクターを起用することで技術・製品へのイメージを想起でき、またテレビ放映によりステークホルダーとの接点を増やす効果も期待できます。

参考:ドラゴンボールZの“天才発明家”ブルマが世界を動かす「つくる人が、世界を面白くする。」 Findy初のTVCMがエンジニアを応援! 7月7日(月)から放映開始

事例4.有用なチャネルを活用した効率的な技術ブランディング&広報PR

クラスメソッド株式会社は、AWS(アマゾンウェブサービス)をはじめとする法人向け技術支援を手掛ける企業です。ソフトウェア開発のプロセスを効率化した新サービス「AI駆動開発支援サービス」の提供をスタートし、プレスリリースで発表しました。

サービスの開発背景や展望といったストーリー性があり、プレスリリースにもこれを掲載したのが特徴。また同社は、最新技術情報の発信にも力を入れており、技術系オウンドメディアのチャネルもうまく活用しています。

自社サービスを展開する企業が同じ手法を取ると難しいかもしれませんが、ブランド力を発信する点で活かせる部分は積極的に取り入れられるでしょう。

参考:失敗を恐れずソフトウェア開発に挑戦できる「AI駆動開発支援サービス」をクラスメソッドが提供開始

事例5.複雑な解説よりも利用イメージの想起に配慮したコンテンツ

ELEMENTSグループで画像解析・ビッグデータ解析を手掛ける株式会社Liquidは、オンライン本人確認サービスをリニューアル。操作が煩雑になりやすいIC読取の課題を解消するべく、操作フローや案内画面の大幅な改善を行いました。

自社技術の実装にフォーカスしたプレスリリースですが、特筆すべきはビジュアルコンテンツを豊富に用いた点です。複雑な解説は記載せず、スマホを使った利用イメージを想起できるよう、GIF画像も掲載しながらスムーズな操作性と改善実績を訴求しています。

参考:IC読取による本人確認の離脱を防ぐ新たなUI/UXを提供

技術ブランディングを成功させる6つのポイント

技術ブランディングを成功させるためには、発信する内容を精査したり、生活者向けの言葉を選んだりといった工夫が必要です。技術力を押し出すだけでは正確な情報が伝わりづらいため、一貫性・信頼性のある内容を前提に検討しなければなりません。広報PRでは複数のチャネルを活用し、ブランディング効果を高めていきましょう。技術ブランディングを成功させるポイントを6つご紹介します。

ポイント

ポイント1.発信内容に一貫性を持たせる

技術ブランディングにおいて、発信内容の一貫性は非常に重要なポイントです。例えば「プレスリリースの内容と企業の製品ページで内容が異なる」となると、技術だけでなく企業全体への信頼性を低下させるかもしれません。

記事コンテンツはもちろん、ロゴやカラーイメージといったビジュアル要素にも統一感を持たせて、ステークホルダーが違和感を持たないよう配慮しましょう。発信内容が一貫したものであれば、技術提供者である企業と社外ステークホルダーが考える方向性が乖離するリスクも低減できます。

ポイント2.導入実績や受賞歴は積極的に取り上げる

信頼性の高い情報を発信する際、客観的な評価が有用です。他社とのライセンス契約や製品導入事例は積極的に取り上げ、自社の技術力が評価されているという事実を示しましょう。受賞実績や特許取得といったトピックも訴求ポイントとなります。

このとき、単に実績をまとめるのではなく、評価・受賞によってどのような課題が解決できたのか、社会にどのようなベネフィットを与えられたかといったストーリー性を盛り込むことも重要です。技術者・生活者などステークホルダーに応じた表現も加味しながら、複数のチャネルで実績を発信しましょう。

ポイント3.生活者に伝わる言葉で説明する

生活者に向けて技術ブランディングを実施する際、技術者目線の言葉選びは適切といえません。高い技術力があっても伝わらなければブランディング効果を発揮しないため、読みやすさ・わかりやすさに配慮した発信内容を重視しましょう。

言葉のみで伝えるのが困難な場合は、技術の仕組みを可視化した写真・グラフを用いたり、利用シーンを再現した動画を撮影したりといった工夫も検討できます。複雑な技術においては特に視覚的アプローチが有用なため、積極的に活用するのがおすすめです。

ポイント4.技術を体感・体験できる機会を設ける

技術力の高さや利便性を伝えるためには、体感・体験できる場を設けるのも一案です。企業ミュージアムや展示会で実際に提供するほか、VRを用いて仮想体験をしてもらう方法も検討できます。

ステークホルダー自身の体験も重要ですが、技術者が直接解説する機会があると、より体験価値を高められるでしょう。実体験・疑似体験に加え技術セミナーやワークショップのような場を設けることで、間接的には伝わりづらい価値を見いだし、記憶に定着しやすくなります。

ポイント5.社内で技術力を共有しブランドを浸透させる

技術ブランディングを成功させるためには、社外に限定せず社内への浸透に注力することも大切です。技術を知る関係者だけでなく、企業全体で技術力の理解を深められるような施策を展開していきましょう。

社内報で技術力を取り上げるほか、社内勉強会で技術・製品について説いたり、各部門と技術者が交流する機会を設けたりといった施策が提案できます。社内に技術力を浸透させることで、対外的な発信に一貫性を持たせるメリットも享受できるでしょう。

ポイント6.プレスリリースなどのチャネルを活用する

プレスリリースは、企業の技術力の認知拡大を図るために有用な広報PR施策のひとつです。新たな技術開発や技術提供、特許取得など、自社技術に関するあらゆるトピックを積極的に配信しましょう。

プレスリリースのほかに、技術者が集まるオウンドメディアに掲載したり、イベントに登壇したりといった機会も技術力を伝えるチャンスです。活用できるツールは多岐にわたるため、チャネルに応じたステークホルダーの設定とコンテンツ内容を設計することで幅広い層にアプローチできます。

技術ブランディングと広報PRで企業・製品の価値を向上させよう

企業が持つ技術力をステークホルダーに認知してもらうためには、体系的かつ効率的な技術ブランディングが必要です。技術力を伝えるだけでなく、技術の強みを明文化したり、ブランドストーリーやアイデンティティを設計したりといった工程も成功を左右する要素といえます。

ブランド力を整理したあとは、プレスリリース配信をはじめとする広報PR活動も積極的に取り入れて、さまざまなチャネルからアプローチすることが大切です。本記事で紹介した事例やポイントを参考に、技術ブランディングによる価値向上を実現しましょう。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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