デジタル化や消費行動の変化などに伴い、顧客との接点である「タッチポイント」の重要性はますます高まっています。
一方で、「タッチポイントを効果的に設計する方法がわからない」「増やしてみたものの、期待した効果が得られていないような気がする」といった課題に直面している広報PR担当者も少なくありません。
本記事では、タッチポイントの基本的な概念から効果的な設計方法、そして強化のためのポイントまでを詳しく解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
タッチポイントとは
タッチポイントとは、企業やブランドが生活者と接点を持つあらゆる場面や場所を指し、オンラインとオフラインの両方が含まれるのが特徴です。オンラインでは、SNSの投稿や公式Webサイト、プレスリリースといった情報発信が挙げられます。オフラインでは、店舗での接客、イベント、配布物といった活動が該当します。
タッチポイントは、生活者がブランドをどのように認識し、感じるかに直接影響を与えるため、広報PR活動において非常に重要です。一貫性のあるメッセージや体験を提供することで、信頼構築やブランド価値の向上につながります。どのタッチポイントを強化すべきかを見極め、計画的に設計し活用することが成功の鍵となるでしょう。
オンライン・オフラインのタッチポイント例
タッチポイントは、顧客との接触を通じてブランドの印象を形成し、信頼を構築する重要な役割を果たします。オンラインの広範囲にリーチできる特性と、オフラインの直接的な体験を効果的に組み合わせることで、その効果を最大化できます。ここでは、オンラインとオフラインのタッチポイントの特長や活用方法を、具体例を交えて解説します。
オンラインのタッチポイント
オンラインのタッチポイントは、地域や国を超えて幅広い顧客層にリーチできる点が強みです。公式WebサイトやSNSを通じて、顧客が24時間365日、必要な情報にアクセスできる環境を提供します。
具体的には、SNSでのキャンペーンやメールマガジンによる定期的な情報発信が、顧客との継続的な接点を生み出します。また、プレスリリースの配信は、顧客層だけでなくメディアからの注目を集めるきっかけにもなり得るでしょう。
さらに、Webサイトへの訪問データやクリック数の分析を活用すれば、マーケティング戦略の最適化も可能です。オンラインとオフラインを連携させることで顧客接点を拡充し、多様な購買行動に対応できる仕組みを構築できます。
オフラインのタッチポイント
オフラインのタッチポイントは、直接的な顧客体験を提供できるのが特長です。例えば、実店舗での接客は、ブランドの強みや独自性を直接伝えられる重要な機会となります。イベントや展示会では、商品の試用やサービス体験を提供することで、顧客に信頼や安心感を与えるきっかけを作ることができるでしょう。
さらに、ショールームでの実演や試供品の提供も、顧客に具体的な価値を実感させる効果的な方法のひとつです。こうしたオフラインでの接点を通じて、ブランドと顧客の良好な関係構築が期待できます。
タッチポイントが重要性を増している社会的背景
デジタル化や消費行動の多様化など、社会的な変化によりタッチポイントの重要性は急速に高まっています。これに伴い、顧客がブランドと接する機会や方法が多様化し、企業には、より戦略的なアプローチが求められるようになりました。
ここでは、このような環境変化がタッチポイントに与える具体的な影響と、効果的な活用の必要性について解説します。
デジタル化による情報の分散化
インターネットやスマートフォンの普及により、生活者が接する情報やチャネルは年々増加しています。SNSや口コミサイトの活用が進み、口コミやレビューの影響力が格段に高まっています。このような環境では、顧客がいつ、どのようにブランドに触れるかを正確に予測することは難しいでしょう。
そのため、企業はタッチポイントで、一貫性のある質の高い体験を提供する必要があります。特に、オンラインでの接点はブランド認知の初期段階で重要な役割を果たしますが、ネガティブな体験が拡散されるリスクも高まるため、すべての接点で良質な体験を提供する重要性がさらに増しているといえるでしょう。
消費行動の多様化
生活者の価値観が多様化し、ニーズに応じてパーソナライズされた体験が求められる時代に。オンラインとオフラインのタッチポイントを組み合わせて商品やサービスを選ぶ購買行動も増加しています。
例えば、Webサイトで情報を収集し実店舗で商品を確認するといった行動が典型的です。このような状況下では、各タッチポイントで顧客の期待に応える対応が求められます。パーソナライズされた接触を提供することで、顧客満足度や信頼を向上させ、競争優位性を確立していくことが重要です。
傘業界でシェアNo.1を誇る株式会社ワールドパーティーでは、直営店を単なる販売拠点としてではなく、ブランドの世界観を体験できる場として位置付けました。これによりブランドへの共感を深め、購入やファン化につなげています。
以下の記事では、同社が消費行動の多様化に伴い実施した戦略についても書かれていますので、参考にしてみてください。
市場競争の激化
企業間競争が激化する中で、商品やサービスの選択肢が増え、顧客は簡単に競合商品との比較ができるようになりました。特にオンラインのタッチポイントが拡大している現在では、生活者は膨大な情報から最適な選択肢を選び出しています。
この環境で競争に勝つためには、すべてのタッチポイントで一貫性のあるブランドメッセージと高品質な体験を提供することが不可欠です。これにより、他社との差別化を図り、顧客からの信頼と選択を得るきっかけになるでしょう。
タッチポイントを増やすことや質を向上させるメリット
タッチポイントを増やし、その質を向上させることは、企業やブランドに多くのメリットをもたらします。単に、顧客がブランドと接する機会を増やすだけでなく、信頼構築やロイヤリティ向上といった施策としても機能するでしょう。
ここでは、タッチポイントの増加や質の向上が具体的にどのような成果を生むのか、実例を交えて解説します。
メリット1.第一想起の獲得
タッチポイントを増やすことで、生活者がブランドの商品やサービスに触れる機会が増え、第一想起の獲得が期待できます。公式WebサイトやSNS、イベントといったオンラインとオフラインのタッチポイントを組み合わせることで、ブランドが記憶に残りやすくなるでしょう。
地元だけでなく遠方からも連日多くの人が訪れる人気店「喫茶室 山脈」(岐阜県各務原市)は、プレスリリースの配信やSNSでの発信、コラボレーションイベントなどを活用してブランドのニュースやイメージを伝えたことで、集客が実現しています。そのほかにも、プレスリリースを読んだ人に想起してもらえるポイントなどがあり、参考になりますので、ぜひチェックしてみてください。
メリット2.信頼性の強化
一貫性のある質の高いタッチポイントを提供することで、ブランドや企業への信頼が深まります。例えば、プレスリリースで配信した内容がメディアに掲載され、生活者の目に触れる機会が増えることで、信頼性が向上しやすくなるでしょう。さらに、信頼が口コミやレビューの高評価に結びつき、新規顧客の獲得や認知拡大も期待できます。
これらの取り組みは、顧客獲得だけでなく、企業の採用活動にも効果を発揮します。創業100年を誇る米菓メーカー日の出屋製菓では、プレスリリースの配信やWeb施策によってタッチポイントを増やし、信頼性が向上したことで、採用活動でも効果が見られたそうです。ぜひ参考にしてみてください。
メリット3.顧客ロイヤリティの向上
質の高いタッチポイントを通じてポジティブな体験を提供することで、ブランドへの信頼と愛着が長期的に育まれます。特に、パーソナライズされたサービスや特典を継続的に提供することで、顧客満足度の維持やロイヤリティ強化につながるでしょう。
例えば、会員向け限定キャンペーンや記念日の特典なども効果的です。SNSやプレスリリースの配信で注目を集めた後、ブランドの世界観を伝えるショールーム的な役割を持つ直営店を開設することでファン層の拡大に成功した企業もあります。
こうした取り組みを通じて顧客との関係を深め、長期的な信頼を築いた事例が以下のSoup Stock Tokyo、Blue Bottle Coffeeのセミナーレポートで詳しく紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
タッチポイントを設計する流れ
効果的なタッチポイントの設計には、顧客視点に立った計画的なアプローチが不可欠です。顧客の行動やニーズを各段階でしっかり把握し、適切な接点を構築することで、ブランド価値や顧客満足度の向上を目指します。こでは、タッチポイントを設計するための具体的な流れを5つのステップに分けて解説します。
STEP1.対象顧客の分析
タッチポイント設計の最初のステップは、対象顧客の分析です。ブランドや商品・サービスに関心を持つ顧客層を明確にし、それぞれのニーズや行動パターンを詳しく理解することが重要です。
このプロセスでは、ペルソナ設定を用いて具体的な顧客像を描き出します。また、過去の購買履歴やWebサイト上の行動データを分析し、顧客をセグメント化することも必要です。これにより、顧客視点に立ったタッチポイント設計の基盤を構築し、より効果的なコミュニケーション戦略を立案する準備が整います。
STEP2.購買プロセス(カスタマージャーニー)の可視化
次に購買プロセス(カスタマージャーニー)を可視化します。カスタマージャーニーをマップ化し、認知、検討、購入、リピートといった各フェーズにおける適切な接点を特定することが目的です。
例えば、認知フェーズでは検索エンジンやSNS、検討フェーズでは商品レビューやブログ記事が効果的なタッチポイントとして活用できます。顧客行動に合わせたタッチポイント設計を行うことで、顧客満足度の向上や信頼構築につながるポジティブな体験が提供できるでしょう。
STEP3.タッチポイントの選定
カスタマージャーニーを基に、各フェーズに適したタッチポイントを選定します。タッチポイント選定では、顧客のニーズや行動に応じた一貫性のある体験を提供することが求められます。
例えば、オンラインではWebサイトやSNS、メールマガジン、オフラインでは実店舗での接客やイベントが効果的です。これらを組み合わせて設計することで、顧客との接触機会を最大化し、顧客満足度を高めながらブランドとの関係強化も図ることができるでしょう。
STEP4.メッセージの統一
次のステップは、ブランドメッセージの統一です。各タッチポイントで提供するメッセージやデザインに一貫性を持たせることで、ブランドの信頼性と認知度を向上させます。
例えば、SNSと実店舗で同じキャンペーンテーマを展開する、またはロゴや配色、トーン&マナーを統一することで、顧客に一貫したブランドイメージを伝えることができるでしょう。このような設計により、顧客はどのタッチポイントに接触しても同じブランドイメージを感じられるため、安心感を得られるようになります。
STEP5.効果測定と改善方法の設定
最後に、各タッチポイントのパフォーマンスを定期的に測定し、改善を行います。オンラインではWebサイトのアクセス解析やクリック率を確認し、どのコンテンツが効果的かを評価します。一方、オフラインでは顧客からのフィードバックを収集し、サービスやプロモーションに反映させることが有効です。
これらのデータを活用して改善を繰り返すことで、顧客満足度の向上と、長期的なブランド価値の強化を実現します。
タッチポイントを設計するときの5つのポイント
タッチポイントを効果的に設計するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。これらのポイントを意識することで、顧客との接触機会を最大限に活用し、ブランド価値を向上させることが可能です。
ここでは、タッチポイントを設計する際に重視すべき5つのポイントを具体例を交えながら解説します。
ポイント1.顧客視点での設計
タッチポイントは、顧客がブランドと接触する重要な場面です。顧客が求める情報や体験を正確に把握し、それに応じた設計を行うことが欠かせません。
例えば、忙しいビジネスマンには、短時間で必要な情報が得られる簡潔なWebサイトやプレスリリースの配信が効果的です。また、感情的な共感を得られる体験を取り入れることで、ブランドへの親近感が高まります。さらに、一貫性のあるブランドメッセージを伝えることも、信頼構築の重要な要素となるでしょう。
ポイント2.一貫性の保持
すべてのタッチポイントで一貫性を保つことは、ブランドの信頼性と認知度向上に直結します。一貫したトーン&マナーやデザインは、顧客に安心感を与えると同時に、ブランドの価値を効果的に伝えます。
例えば、SNSの投稿、Webサイトのデザイン、実店舗の接客において、同じキャンペーンテーマやビジュアルを使用することで一貫性を確保します。さらに、部門間で方向性を共有し、企業全体で統一感を持たせることも重要です。
ポイント3.顧客体験の向上
タッチポイントを通じて提供する体験は、顧客満足度やロイヤリティにつながります。各接点でシームレスかつポジティブな体験を提供することで、顧客との信頼関係を強化できるでしょう。
例えば、オンライン注文後に「発送完了通知」を配信する際に、パーソナライズされたメッセージや次回利用できる特典を添えることで、顧客に特別感が生まれ、再利用を促すことができます。このような工夫により、顧客ロイヤリティの向上も期待できるでしょう。
ポイント4.オンライン・オフラインの連携
オンラインとオフラインの連携は、豊かな顧客体験を実現する鍵となります。オンラインで認知を広げ、オフラインで体験を深める戦略を採用することで、接触機会を最大化できます。
例えば、SNSで配布したクーポンを実店舗でも利用可能にする仕組みを導入することで、オンラインでの関心をオフライン体験につなげることが可能です。また、オンライン・オフライン両方のタッチポイントで一貫性のあるメッセージを発信することで、ブランドの信頼性をさらに高めることもできるでしょう。
ポイント5.顧客参加型の施策
顧客が主体的にブランドと関わることができる施策は、愛着の育成や関係性の強化に大きく寄与します。SNSでのフォトコンテストや店舗でのワークショップなど、顧客が楽しみながら参加できる企画を設計することが重要です。
さらに、これらの施策をプレスリリースやSNSで広く告知し、イベント後の反応を共有することで、共感を広げるきっかけになるでしょう。このような取り組みにより、顧客ロイヤリティを高め、ブランドへの愛着を深めることが期待されます。
まとめ:タッチポイントの鍵は「一貫性の保持」と「顧客体験向上」
タッチポイントの効果を最大化するには、一貫性の保持と顧客体験の向上が重要です。一貫性のあるメッセージやデザインは、顧客に安心感を与え、どの接点でもブランドの統一された価値を伝えることができます。また、シームレスでポジティブな顧客体験を提供することで、満足度やリピート率の向上も期待できるでしょう。
これらの要素が相乗効果を生むことで、ブランド価値が高まり、顧客との長期的な信頼関係を築くきっかけになります。特に、プレスリリースではこれらのポイントを意識した情報発信を行うことで、新規顧客やメディア関係者への効果的なアプローチが実現するでしょう。
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