流行の移り変わりが早い今の時代、広報PR担当者にとって、トレンドをキャッチして施策に反映することはますます重要になっています。
プレスリリース配信サービス「PR TIMES」では、2024年1月1日〜10月31日に企業から発表いただいたプレスリリース総計32万8938件を対象に、使用されたキーワードの分析を実施。
本記事では、2024年度に急上昇したキーワードや注目されたキーワードなどをもとに、1年間のトレンドの振り返りと、2025年のトレンド予測を行いました。さらにキーワードを活用したPR施策についても解説しているので、ぜひ自社の広報PR活動の参考にしてみてください。
2024年のトレンド分析!急上昇したキーワードとは?
「PR TIMES」では企業がプレスリリースを発表する際に、内容に関係するキーワードを最大10個登録することができます。2024年1~10月に発表された総計32万8938件のプレスリリースのキーワード登録総数は、39万6227種に上りました。その中から、前年度から大きく増加した急上昇キーワードをピックアップしてご紹介します。
1.AI・生成AI
AI関連のキーワードは、前年に引き続き注目されています。「AI」は総合ランキングで4位、急上昇ランキングでも3位にランクインしました。さらに「生成AI」は総合ランキングで9位、急上昇ランキングで1位を獲得。前年比約2.9倍と、総合ランキングTOP10内で単純増加した唯一のキーワードとなりました。また、これらのキーワードは季節や月に関係なく、どの時期にも上位にランクインしたのが特徴。プレスリリースの内容としては、AIを用いた新製品やサービスの紹介、AIに関する最新情報を学べるセミナーのお知らせなどが、多くを占めました。
参考:生成AIでリノベーション後の画像イメージや動画を生成する“renorf(リノーフ)”のアルファ版をリリース
参考:【1/14 (火) 16時】東大松尾研出身の AI コンサルタントが解説 生成AI全社導入の成功プロセス無料オンラインセミナーを開催
2.イベント
「イベント」は1万4214件のプレスリリースで使用され、件数としては前年から横ばいであるものの、総合ランキングで1位を獲得しています。月別でもすべて1位となっており、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に引き下げられた2023年5月以降、毎月首位をキープ。イベントを通したコミュニケーションのニーズの高まりが見て取れます。プレスリリースの内容としては、展示会や講演会といった一方向のものから、体験型・参加型の双方向性のイベントなど、多岐にわたります。対象は個人向けが多く、子ども向けからシニア向けまでさまざまなイベントが告知されました。
参考:2月1日開催「もっと!こどもの視展 ~こどもになる12の体験~」チケット発売開始!
参考:つくば温泉 喜楽里別邸×バスクリンつくば研究所 コラボイベント実施のお知らせ
なお、イベントに関するプレスリリースを作成する際は、以下のテンプレートも参考になります。ぜひ活用してみましょう。
イベントに関するプレスリリースは、開催前だけでなく開催後にも配信することで、継続的に注目を集めることができます。事後レポートのテンプレートを活用して配信するのがおすすめです。
イベントの多い飲食業界やIT・通信業界の方のために、業界特化型のテンプレートもご用意しています。ぜひ参考にしてみてください。
3.DX
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は総合ランキング2位を獲得し、月別では2位や3位をほぼ独占しました。中でも「交通・運輸・輸送」の業界においては3位にラインクインし、交通インフラに関するDXが推進されていることが垣間見えます。プレスリリースの内容としては、課題解決のためにDXを導入した事例紹介や、DXをサポートするための新商品・サービスを紹介するプレスリリースが多くを占めました。また、DXを推進するためのセミナー・ウェビナーの告知も豊富で、多くの企業がDXを経営課題としていることが推測できます。
参考:ヒューリックホテルマネジメント株式会社が株式会社Edeyansの客室清掃DXプラットフォーム「Jtas」を導入、ハウスキーピング業務の生産性を向上
参考:水回り工事に新風を吹き込む―タイムトラベル株式会社、DX化で快適で効率的な工事体験を提供開始
2025年のトレンド予測!注目のキーワードとは?
広報PRでは、今流行しているものをキャッチすることに加え、将来のトレンドを予想し、施策へと反映することも大切です。そのためには、常にアンテナを張り、これから伸びそうなキーワードを把握することが不可欠です。ここでは、前年度と比較して大きく伸びたキーワードから、2025年も引き続き多く活用されると予想できるものをピックアップし、その理由とともに紹介するので、自社のPR施策へ関連付けられるか検討してみるとよいでしょう。
1.生成AI
2024年は「AI」「生成AI」ともに注目された1年となりましたが、これは2023年に爆発的に増加したAIサービスが普及するフェーズに入ったことが背景にあると考えられます。そのため、2025年はさらに生成AIを活用したサービスの導入事例や、より実践的な内容のセミナーなどが増加する可能性があります。また企業だけでなく、生活者が生成AIを利用するケースも増えているため、個人向けのニーズに対応するサービスへの注目度も高まると予想できます。
一方で、2024年は「LLM(大規模言語モデル)」「RAG(検索拡張生成)」などの生成AI関連の技術用語も増加しました。今後も専門的なキーワードや、より細分化されたニーズに対応するキーワードが増えるかもしれません。
参考:菱洋エレクトロ、GDEPソリューションズのローカルLLMソリューション「LLM/RAG スターターセット」の取り扱い開始
参考:PeopleX、生成AI・LLMを用いた人事業務に関連する非構造データの構造化技術「Lincoln 1」を開発し、「PeopleWork」に実装
2.本社移転
「本社移転」は、前年度から125.8%と大きく増加した注目のキーワードです。コロナ禍が始まった2020年から急減し、以降は横ばいでしたが、2024年はその傾向が大きく変化しました。リモートワークからリアルへの回帰が進み、出社へシフトする企業が増加したことが要因だと考えられます。
「本社移転」のプレスリリースでは、本社を「自社の理念を体現する場」として発信するケースが多いのが特徴。本社移転やオフィスの引っ越しを検討する企業は、PRの機会として活用するのがおすすめです。リアルへの回帰の傾向はしばらく続くと予想できるため、2025年も引き続き注目のキーワードです。
参考:UPWARD、創造性を引き出すハイブリッドワーク拠点として、本社オフィスを移転
参考:オリンパス、働き方改革の一環として本社を八王子市に移転
なお、オフィス移転に関するプレスリリースを配信する際は、こちらのテンプレートを活用するのがおすすめです。盛り込むべき項目や、参考になる事例を紹介しています。
また、オフィス移転の際はプレスリリースの配信だけでなく、広報PR担当者としてやるべきことがたくさんあります。こちらの記事では広報PR担当者向けに、移転のスケジュールやタスクについて解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
3.猛暑
「猛暑」は前年度から約1.8倍増加し、特に7月にピークとなっているキーワードです。温暖化はますます厳しい状況のため、「猛暑」は2025年も引き続き注目されることが予想できます。
「猛暑」を使用したプレスリリースには、夏のグルメやレジャーに関する内容に加え、企業の熱中症対策を事例として伝えるケースも多いです。また、「猛暑」の影響に関連して社会貢献や組織改善の観点でプレスリリースを配信する企業も多く見られました。これらもコーポレートPRとして重要な観点なので、自社の取り組みに活用できるか検討してみるとよいでしょう。
参考:「もつ吉」にて、夏バテ解消・熱中症対策・疲労回復の効果も期待できる”塩麹”を使った新メニューを、2024年9月5日(木)よりスタート!
参考:「京王電鉄×大塚製薬 熱中症対策キャンペーン」を実施します!
こちらは猛暑により通常のサイズより大きく育った規格外のサツマイモを使い、郷土菓子を作った老舗和菓子店、株式会社お亀堂のプレスリリースです。プレスリリースの中で、「正規品から規格外品まで地元産品の消費拡大、域外への発信をしていきたいです」と思いを語っています。猛暑の影響に対して事業で貢献する姿勢が共感を呼ぶプレスリリースになっています。
参考:酷暑で規格外まで育ったサツマイモをモチモチ触感の「鬼まんじゅう」へ 愛知・豊橋のお亀堂が地元青果市場と全面協力
大阪市の三和建設株式会社は、炎天下で働く作業員の熱中症対策として、夏の恒例行事である「かき氷ステーション」導入のプレスリリースを配信。プレスリリースでは、「現場で働く職人さんが安全かつ快適に、そして前向きな気持ちで作業に取り組めるよう、今後も積極的に環境改善に取り組んでまいります」と、働く環境の改善への姿勢を示しています。
参考:三和建設、今年も建設現場にかき氷ステーションを設置し、熱中症対策を強化~身体を内部から効率よく冷却するアイススラリーの効果も~
4.ショートドラマ
「ショートドラマ」とは、1話あたり数分程度の短いドラマのことで、TikTokやInstagramリール、YouTubeショートなどのプラットフォームで人気を集めています。近年ではエンタメコンテンツだけでなく、企業のPR動画としても活用されるようになり、キーワードの数は昨年度の約3.8倍と大きく増加しています。
プレスリリースとしては、ショートドラマを活用してコンテンツをPRしたり、ショートドラマで企業のPRを請け負うサービスを紹介する内容が多く見られました。2025年以降もショートドラマの人気は加速すると考えられるため、さまざまな場面で登場する機会が増えると予想できます。
参考:セガ エックスディーのアイデア発想法から生まれたショートドラマが 2024 年 12 月 19 日(木)配信開始!
参考:グローバルショートドラマアプリ「Vigloo」に、12月19日から新作日本ドラマが登場!!記憶喪失の夫を操る裏切りの妻、暴かれる真実と夫の逆襲劇!
トレンドや、注目キーワードと関連付けたプレスリリースを配信するメリット
プレスリリースを配信する際、トレンドや注目キーワードと関連付けることで、より効果的な広報PRにつなげることができます。これはトレンドをフックにすることで、そのトレンドにマッチするメディアから注目されやすく、掲載される確率が上がるためです。
一方で、プレスリリースは今やメディアだけでなく、生活者にも届くツールに進化しています。トレンドのキーワードは検索される可能性も高いため、そのキーワードへの関心が高い層へプレスリリースを直接届けることが期待できます。また、トレンドや注目ワードはSNSでハッシュタグを付けて拡散されることも多く、そのスピードや影響力は時に大きなビジネスチャンスにつながることも。このため、最初はメディアに注目されていなくても、多くの生活者が話題にすることでメディアに届き、そこから取り上げられるというケースも増えているのです。
このように、トレンドや注目キーワードと関連付けてプレスリリースを配信することは、広報PRの効果を高めることにつながります。そのためには常にアンテナを張って情報収集し、トレンドを把握しておくことが必須といえるでしょう。
トレンドや、注目キーワードをもとにした広報PR施策を検討する方法
トレンドや注目キーワードを広報PR施策に活用するためには、まずはトレンドを把握することが第一歩です。表面的な情報だけでなく、どんな層がどんなことに関心を寄せているのかを深く理解することで、自社との関連を見いだすことができるでしょう。そのうえで具体的な施策に落とし込むことで、効果的な広報PRにつなげることができます。以下のプロセスを参考に、トレンドをもとにした広報PR施策を検討してみてください。
1.トレンドや注目キーワードをリサーチする
トレンドや注目キーワードをリサ―チする方法は多岐にわたりますが、代表的なのがSNSです。Xのトレンド、Instagramのハッシュタグ、TikTokの人気動画などを定期的にチェックすることで、現在流行しているコンテンツや関心を集めている話題がわかります。またニュースサイトでは、業界ニュースや最新のテクノロジーに関する情報など、より専門的な分野のトレンドをキャッチできます。
さらにキーワードに特化して調べる場合は、Googleトレンドで検索ボリュームを分析するのもよいでしょう。「PR TIMES」では企業がプレスリリース配信で多く使用しているキーワードが閲覧できるため、ビジネスシーンで注目されているキーワードをリサ―チする際に参考になります。「PR TIMES」のトップページにある「いま注目のキーワード」からアクセスしてみましょう。
2.自社との関連性を見つける
トレンドや注目キーワードを調査するのと並行して、自社製品・サービスがそれらとどのように関連しているかを考えます。関連性が低い場合は、新たな切り口を見つけてうまく接点を作る工夫が必要です。直接的に関連がなくても、さまざまな角度から検討することで、画期的な切り口を見いだせるかもしれません。その際、競合がトレンドをどのように活用しているかもチェックしておくと、差別化しやすいでしょう。
こちらの記事では、広報PRの切り口をつくることにこだわった事例を紹介しているので、参考にしてみてください。
3.適切な情報発信の方法・時期を考える
トレンドと自社との接点が見つかったら、次はどのようにそれを発信するか、具体的な方法を検討します。発信する媒体も、プレスリリース、公式サイト、SNS、動画コンテンツなどさまざまな方法があるなかで、もっとも適しているものを選ぶ必要があります。また、メディアに掲載されるためには、トレンドと関連の深いメディアに直接アプローチするのもよいでしょう。
また、前年のトレンドを分析し、今年の広報PR施策を考えることも重要です。各メディアでどの時期にどんな特集を組んでいるかなどの傾向を把握することで、今年も同様の取り上げられ方が想定できるためです。例えば、京都で和菓子屋を営む株式会社鼓月は、テレビ情報番組の過去の放送から、6月の上旬にいろいろな桃のスイーツを紹介する傾向があることを調べ、今年も同様の特集が組まれることを予想。自社の桃の和菓子「桃饅頭」をアプローチしたことで、同番組で「旬の桃スイーツ」として取り上げられました。
こちらの記事も、ぜひ参考にしてみてください。
一方で、プレスリリースを配信するタイミングにも注意が必要です。例えば2月は確実に「バレンタイン」がトレンドになりますが、それに関するプレスリリースは前年の10~11月から配信するのが一般的。これはメディアに届くタイミングと、メディアから生活者に届くタイミングを考慮しているためです。このように、「いま」のトレンドを把握してそれに合わせるだけでなく、予測できるトレンドはあらかじめタイミングを見計らって施策を検討することが重要になります。
まとめ:トレンドを活用して効果的に注目を集めよう
2024年に注目されたキーワードや、2025年に注目を集めそうなキーワードをご紹介してきました。トレンドや注目キーワードは、その時の関心事が反映されているため、広報PRのヒントがたくさんつまっています。そのため、広報PR担当者にとっては、常にいろいろなメディアをチェックし、トレンドをキャッチすることが求められます。
また、他社のプレスリリースから、各社がどのようにトレンドを広報PR施策に取り入れているかが見えてくるため、トレンドワードに関するプレスリリースをたくさん見ておくのも学びになります。ここでご紹介した方法を参考に、トレンドや注目キーワードを活用した効果的な広報PR施策を立案してみてください。
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする