新規事業をリリースする際、認知拡大効果を高めるための広報PR施策として「プレスリリース配信」があります。メディア関係者や生活者に向けて情報を提供することで、企業の知名度や信頼性の向上につながることもメリットです。
企業の新たな取り組みを知ってもらうためにぜひ活用したい施策ですが、効率的な認知拡大効果を得るためには、必要な記載項目や注意点にも配慮しなければなりません。メリットを最大限に発揮する記載項目と重要ポイントに加え、7つの企業のプレスリリース事例をご紹介します。
新規事業リリース時にプレスリリースを配信するメリット
プレスリリース配信は、新規事業リリース時の重要な事業戦略のひとつです。プレスリリースがメディア関係者の目に留まることで掲載場所が増え、新規事業に関する情報が拡散してブランド知名度・信頼性の向上につながるというメリットがあります。
新規事業を成功させるカギは、生活者の認知拡大。生活者が商品やサービスを選択する際の候補として認知してもらわない限り、購入や利用につながることはありません。新規事業を市場に浸透させてユーザーを獲得するためには、プレスリリースによる情報発信が不可欠です。
新規事業リリースのプレスリリースに記載する5つの項目
メディア関係者や生活者に自社情報を届けるため、新規事業リリースのプレスリリース内容を把握しておきましょう。記事に記載する5つの項目を解説します。
項目1.新規事業の概要
新規事業の概要は、どのように生活者に触れられるのかをイメージしてもらうために重要な情報です。以下は基本情報として必ず記載するようにしましょう。
- 新規事業の名称
- 商品・サービスの内容
- 商品・サービスの写真や画像
- 新規事業のリリース日
- 利用価格
- 利用・購入場所
- Webサイトの詳細ページなどのURL
そのほか、商品やサービスの内容によって情報を足してください。例えば、食品であれば原材料の情報や裏面情報、サービスであれば具体的な機能の内容などを必要に応じて追加しましょう。
概要は箇条書きを使うと読みやすくなります。具体的なサービス内容や利用者メリットなどを伝えたい場合は、別途項目を設けて文章で記載しましょう。ストーリー仕立てで伝えるほうが、読み手も事業内容をイメージしやすくなります。
項目2.背景や目的
「なぜ新規事業リリースに至ったのか」という背景は、プレスリリースにおいて重要な項目です。企業理念やこれまでの事業内容との親和性を意識したうえで、新規事業を展開する理由・目標を軸に記載しましょう。
概要と併せて簡単に紹介するケースもありますが、「〇〇(新規事業名)リリースの背景」「当社の目的」といった見出しを設けることで具体性が増します。新規事業によってどのような社会的責任を果たすのか、CSRの側面から訴求するのも有用です。
項目3.具体的なマーケティングの情報
新規事業のリリースにあたって、実際のマーケティング情報もプレスリリースに明記します。サービス提供であれば「期間限定割引プラン」、店舗運営であれば「来店者限定プレゼント」などが一例です。
生活者にとってメリットが大きいマーケティング情報を紹介することで、新規事業関連の商品・サービスを利用するハードルが下がります。確定していない事項を無理に記載する必要はありませんが、より多くの人に興味を持ってもらえるよう、詳しい情報を積極的に盛り込みましょう。
項目4.担当者コメント
新規事業について十分に説明したあとは、事業に関係している担当者のコメントを紹介します。新規事業リリースの背景・目的や企業の目標がより強固になる重要な項目です。他社と共同でリリースする事業であれば、各社担当者のコメントをひとつずつ紹介してもよいでしょう。
「責任者〇〇のコメント」「開発担当:新規事業にかける思い」など、個人のコメントであることがわかる見出しがあるとストーリー性を持たせられます。プロフィール写真や新ブランドのロゴなどビジュアルにも配慮しながら、担当者の気持ちが伝わるコメントを掲載しましょう。
項目5.将来の展望
企業や新規事業の展望は、将来的な取り組みを発信するために役立ちます。新規事業の目標や将来性だけでなく、企業全体で目指す姿、今後展開していきたい活動内容も記載しましょう。新規事業が主軸となる項目なので、背景や目的を訴求した流れで見出しを設けるのも有用です。
事業内容と併せて紹介することで、認知度が低い企業に対する興味・関心の向上も期待できます。競合他社との差別化をアピールする場合は、自社ならではの独自性を意識しながら説明することも大切です。
新規事業リリースに関するプレスリリース作成時の5つのポイント
新規事業に関するプレスリリースを作成するときには、どのようなことに留意すればよいでしょうか。5つのポイントを押さえて、新規事業の魅力が余すことなく伝わるプレスリリースを作りましょう。
ポイント1.背景や目的を明示する
新規事業のプレスリリースでは、事業の背景や目的を必ず伝えましょう。メディア関係者や生活者に対して、なぜこの事業が始まったのか、どのような価値を提供しようとしているのかを明確に伝える必要があるためです。
背景や目的は、新規事業の根底にある思いや市場への貢献を理解し、共感してもらうための仕掛けになります。また、企業全体としての姿勢にブレを感じさせない文章にも意識を向けましょう。これまでの事業内容と新規事業に親和性があることがわかれば、読み手も新たな取り組みに共感しやすいためです。
事業のストーリーの理解を深めて共感が得られれば、生活者との長期的な関係構築が期待できます。背景や目的に関する項目はプレスリリースを書くうえで重要な情報源となるため、時間をかけて検討していきましょう。
ポイント2.生活者目線の言葉を選ぶ
新規事業の内容を問わず、専門用語の多用は避けたほうが安心です。専門用語を使いすぎると読み手がプレスリリースの内容を理解できず、新規事業の真の価値や背景にある思いが伝わりづらくなります。
せっかく事業を理解・共感してもらうために作ったプレスリリースも、理解してもらえなければ機会損失です。プレスリリースを作成するときには、専門用語をできるだけ控えて幅広い生活者が理解しやすい言葉を選ぶようにしましょう。
専門用語を使用する場合は、その用語に簡潔な注釈を加えたり、用語解説を別途提供したりといった対策が有効です。生活者目線の言葉選びを心がけ、新規事業の価値や意図が適切に伝わるプレスリリースを完成させましょう。
ポイント3.競合との差異を明示する
新規事業のプレスリリースでは、競合との差異を明確に記載することが大切なポイントです。市場には類似のサービスが数多く存在し、完全に新しい事業アイデアはほとんどありません。自社の新規事業がどのようにほかのサービスや商品と異なるのかを、はっきりと伝えるようにしましょう。
競合サービスの名前を具体的に挙げたり、競合に対する批判的・ネガティブな記述をしたりするのは不適切です。重要なのは、競合の粗探しをするのではなく、自社の新規事業が持つ独自の価値や特徴をポジティブに強調し、それがどのように市場のニーズに応えるかを伝えること。例えば「特殊な技術を応用している」「ユニークなユーザー体験を提供している」などが差別化のポイントとなり得ます。
ポイント4.新規事業らしいビジュアルを活用する
新規事業についてプレスリリースを制作する場合、ビジュアルの活用が非常に効果的です。文章だけでは伝わりにくい事業の魅力・コンセプト・メリットなどを、画像や動画を通じて直感的に伝えることができます。例えば、立ち上げ段階の議論の様子を捉えた写真や、まだ公開されていない新サービスのイメージ図などを掲載すると、読み手も事業内容を理解しやすくなるでしょう。
ビジュアルは、プレスリリースの読み手に強い印象を残すために重要です。視覚的要素を用いることで、新規事業の独自性や魅力をより効果的に伝えることができ、記憶に残りやすくします。
プレスリリース作成をスムーズに進めるためにも、前段階からビジュアル情報の準備を行っておくのがおすすめです。新規事業プロジェクトを推進しているチームと連携し、画像や動画を準備できるようにしておきましょう。
ポイント5.正確な情報を伝える
プレスリリース上では、正確な情報の提供が不可欠。新規事業に興味を持ってくれたメディア関係者や生活者が商品やサービスを利用するとき、スムーズなユーザー体験となるような情報設計が必要です。
例えば、商品・サービスの提供開始のタイミング、サービスエリアなどが限定的であれば、これらの情報を明記しましょう。情報を正確に伝えるためには、誤字・脱字、固有名詞の間違い、URLリンクの間違いなどのミスを避けることも大切です。企業の信頼性を損なう要因にもなりかねないため、配信前には複数回、複数人で確認を重ねるのが適切といえます。
プレスリリースはメディア関係者や生活者への最初の情報源です。内容の精度を高めて、信頼構築と新規事業への興味・関心の喚起を行いましょう。
新規事業リリースに関するプレスリリース事例7選
新規事業リリースのプレスリリースでは重要な記載項目が多数ありますが、実際にどのような記事に仕上げるべきかわからないという方もいるのではないでしょうか。ここからは、7つのプレスリリース配信事例と、参考になるポイントをご紹介します。
事例1.株式会社メルカリ:事業参入と提供開始を2つのプレスリリースで発表
- スポットワーク事業への参入と同時に、パートナーの先行受付キャンペーンを実施
- 新規事業のシステムがわかるよう、イラストを用いたビジュアル
- サービスの全国展開時にも記念キャンペーンを実施し、求職者を中心に呼びかけ
- 開始後1ヵ月の登録者実績と、サービス利用者を対象にしたアンケート調査結果を紹介
参考1:メルカリ、2024年初春にスポットワーク事業に参入、本日より求人募集パートナーの先行受付を開始
参考2:メルカリ、空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」 の全国展開を開始
事例2.株式会社マネーフォワード:新規サービススタート日のプレスリリース配信で認知拡大
- 正式リリースに先駆けてポイントプレゼントキャンペーンを開催
- 「背景」の項目で、課題解決に向けた新規サービスの利点や競合との差異を説明
- 読者の誤解を防ぐよう、専門用語や数字に対して注釈で補足
参考:最大5,000万円の決済に対応する事業用プリペイドカード『マネーフォワード ビジネスカード』を提供開始
事例3.株式会社ベネッセホールディングス:利用シーンが想像できるビジュアルと明確なターゲットへの訴求
- 新規事業の名称やターゲット層、提供開始時期がひと目でわかるタイトル
- 社会的な課題に触れながら自社サービスのメリット、これまでの実績を訴求
- 自社の類似サービスとは異なる点を取り上げ、目的や展望も紹介
参考:発達特性からの”学びにくさ”を感じている小学生への家庭学習支援をスタート 「まるぐランド for HOME」 2024年8月開講
事例4.四国化工機株式会社:新規参入する事業と自社の親和性がわかるプレスリリース
- 新規参入事業の開始時期と「安定稼働ができている」という現状を冒頭に明記
- 「新規参入の背景」の見出しで、今後の展望についても触れている
- 自社実績がわかる写真を掲載し、事業内容や独自性を可視化
参考:四国化工機グループの東洋科学が紙容器の製造事業に新規参入
事例5.株式会社ギークピクチュアズ:国内展開ならではの新規事業リリースについて発信
- 新規事業の背景を、国内で展開する企業ならではの視点で紹介
- 事業概要をイラストにまとめ、サービスの仕組みをわかりやすく解説
参考:GEEK WONDERS「キャラクター専門キャスティング事業」の立ち上げ
事例6.株式会社Polyscape:客観的かつ具体的な数字で新規事業のメリットを訴求
- リード文で企業のミッションを提示し「QA自動化」という新事業との親和性を訴求
- お得なキャンペーン情報を、見出しを使って大々的に発信
- 新規事業リリースまでの経緯と、コストカットを実現した実績を紹介
参考:株式会社Polyscape、2024年3月1日(金)よりゲームQA事業「Polyscape QA Tech Lab」をスタート!
事例7.株式会社Esaris Works:豊富な写真とコメントでリアリティを高めたプレスリリース
- 名称だけではわかりづらい新規サービスについて、細かい項目を設けて紹介
- 実際の写真を掲載しながら、ターゲットであるブライダル企業との親和性をアピール
- 「参加者の声」の見出しを設け、新規サービスならではの魅力をリアルな声で発信
参考:ブライダル企業様向け – チャペルでヨガレッスン「YogaLux」サービス開始
新規事業リリース時に広報PR担当者が行いたい3つの広報PR施策
新規事業をリリースする際には、プレスリリース以外の広報PR施策も検討してみましょう。3つの施策をピックアップし、それぞれの特徴やメリットを解説します。
1.キャンペーン・イベントの開催
新規事業リリース時に、生活者に対して魅力的なキャンペーンやイベントを実施します。例えば割引キャンペーンや製品の体験イベントを行うことで、新サービス・製品への興味を引き起こし、話題を生み出しやすくなります。
SNSなどでこの様子がシェアされると情報が拡散し、さらに多くの生活者にリーチする効果も期待できるでしょう。情報拡散を狙うのであれば、生活者が思わずシェアしたくなる仕掛けも合わせて準備することが必要です。フォトスポット、ハッシュタグなども活用してみてください。
話題性のあるキャンペーンやイベントは、生活者だけでなくメディア関係者の関心も集めることができます。生活者による情報拡散だけでなく、メディアを通じてさらなる認知度向上のため企画を展開していきましょう。
2.モニター募集
新規事業に関する生活者のモニターを実施すると、商品・サービスの使用感や生活者の反応を得ることができます。アンケートなどを利用してモニターの感想を集めておき、商品ページやLPなどのマーケティングに活用しましょう。利用中の写真や動画があれば、プレスリリースのビジュアル素材として利用することもできます。
モニターから集めた情報や素材をほかの広報PR施策へ活用するときには、モニターの選定にも注意が必要です。性別・年齢・生活スタイルなど、どのような生活者の情報を集めたいのかしっかりと要件定義を行ってから実施してください。
モニターからのフィードバックは広報やマーケティングへの活用以外に将来的なサービス改善にもつながります。他部署とも連携し、有意義な情報が収集できるように施策設計を行いましょう。
3.セミナー開催
新規事業の内容を理解してもらうために、セミナーを実施するのも有用な広報施策のひとつです。メディア関係者・生活者・企業担当者などに興味を持ってもらえるテーマを設定し、新規事業の背景や製品の特徴を深く理解してもらう機会にしましょう。
例えば、製品開発の背景にある技術的な解説や市場の動向に関するセミナーを実施し、業界の専門家や意思決定者を対象に深い知見を提供します。専門性をアピールできるため、関係者とのネットワーク構築の助けになるでしょう。
セミナーの内容は、自社だけのリソースで行わなくてもOK。必要があれば、テーマに合致する専門家や有識者をゲストとして呼ぶのもおすすめです。外部からゲストを呼ぶ場合は、事前に新規事業の商品・サービスを利用してもらい、セミナーの中で感想などを話してもらうようにすると、参加者の記憶にも残りやすくなります。
独自性がわかるプレスリリースで新規事業内容を発信しよう
新規事業に関してプレスリリースを配信する際には、記載項目だけでなく、認知拡大が図れるポイントを押さえることが大切です。メディア関係者や生活者の興味・関心を高めるわかりやすさを意識しながら、自社の思いが伝わるプレスリリースを制作しましょう。
またプレスリリース以外に、キャンペーンやセミナーを開催することで認知が広まる可能性もあります。実施に際してプレスリリースを配信すると、より多くの人に情報を届けられるでしょう。ご紹介したプレスリリース事例も併せて、ぜひ新規事業リリース時の広報PRに役立ててください。
新規事業のプレスリリースに関するQ&A
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