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タスクフォースとは?プロジェクトチームとの違いから、立ち上げ方・成功させる3つのポイントを紹介

タスクフォースとは?プロジェクトチームとの違いから、立ち上げ方・成功させる3つのポイントを紹介

もともとは軍事用語である「タスクフォース」は、ビジネスの場でも使われている言葉です。軍隊が特定の任務を遂行するために編成されたチームのように、速やかに解決すべき重要な課題や問題が生じたときに発足されるチームのことを指します。

社会状況の変化で窮地に陥ったときや、不祥事や問題を起こしてしまったときなど、その対応に追われて通常の業務に支障をきたしてしまう場合もあります。そのように、迅速な問題解決が必要な場合や、企業が大きく変革するような場面で編成されるのがタスクフォースです。

今回は、部署や部門を超えた連携が強まり、会社全体の能力向上にもつながるタスクフォースの目的や導入するメリット、進めるときのポイントなどを紹介していきます。

目次
  1. タスクフォースの意味

  2. タスクフォースが導入される目的

  3. タスクフォース型とプロジェクト型(プロジェクトチーム)との違い

  4. タスクフォース型とワーキンググループとの違い

  5. タスクフォースを導入する3つのメリット

  6. タスクフォースのデメリットと失敗しやすい落とし穴

  7. タスクフォースを進める5STEP

  8. タスクフォースを成功させるための3つのポイント

  9. タスクフォースの成功事例

  10. タスクフォースの成果指標とレポート設計

  11. タスクフォースに関するよくある質問(Q&A)

  12. タスクフォースを理解して効果的に活用しよう

タスクフォースの意味

迅速に解決すべき課題や問題の対応などで、臨時に短期間のみ結成・招集される集団のことを指すタスクフォース。もともとは軍事用語で、軍隊が特定の任務を遂行するために編成されたチームのことをいいます。

タスクフォースで作られるチームは、社内の各部署から選ばれた適任者や社外の専門家などで構成されます。通常の企業活動とは切り離され、普段は一緒に仕事をすることのないメンバーで業務を行う場合もあるところが特徴です。

課題解決のほか、新製品や新たな企画開発などの際にも編成されるタスクフォースは、インターネット関連や情報システム部門などにおいてよく活用されています。

タスクフォースが導入される目的

タスクフォースは、企業や組織の課題や緊急性の高い問題をいち早く解決するために導入されます。タスクフォースのチームはイシュー(課題/問題)ベースで組まれ、会社が大きく変化するための業務改善や組織改革などが目的であることが多いです。そのほか、不祥事を起こしてしまったときや大きなトラブルや問題の対応でも結成・招集されます。

高い能力を持ったメンバーを集めることで、課題解決のみでなく、チーム力を鍛える機会としても有効。社内のさまざまな部署や、社外の専門家で組まれるチームのため、枠を超えた連携の強化、会社全体の能力向上も見込めます。また、次世代の有望な人材の発見につながり、リーダーシップの育成が行えることもタスクフォースの特徴です。

タスクフォース型とプロジェクト型(プロジェクトチーム)との違い

タスクフォースと似ている用語に、プロジェクト型の「プロジェクトチーム」があります。プロジェクトチームのほうが、タスクフォースよりも一般的に聞きなれているのではないでしょうか。

タスクフォースとプロジェクトチームの違いは、緊急性と取り組むスパン(長さ)です。タスクフォースは、緊急性のある社内の課題に対して短期的な解決が求められ、プロジェクトチームは長期にわたって取り組み、何度も検証を行って課題を解決していきます。

「課題や問題を解決する」という目的の方向性は似ていますが、緊急性とスパンの違いによって、招集するメンバー選定の規準が変わってきます。業務能力や求めることに対しての向き不向きもあるため、タスクフォースやプロジェクトチームを組む際は意識しておきましょう。

タスクフォース型とワーキンググループとの違い

プロジェクトチームのほかに、タスクフォースと似ている用語で「ワーキンググループ」というものもあります。ワーキンググループはタスクフォースとほぼ同義語で使われており、特定の問題を解決するために作られるチームのことをいいます。

タスクフォースとワーキンググループの大きな違いは、解決すべき課題や問題の規模です。タスクフォースとワーキンググループを使い分ける企業もあり、ワーキンググループのなかで、作業ごとに細分化された組織のことをタスクフォースと位置づけて実行していくケースもみられます。

ワーキンググループは主に、政府系の機関による国家単位での政策、企業の存続や経営不振などの問題に対応するために活用されることが多いのが特徴です。

タスクフォースを導入する3つのメリット

ここまで、タスクフォースの意味や目的などについてお伝えしてきました。続いて、より具体的にタスクフォースを取り入れるイメージを持てるように、導入するメリットを3つご紹介します。

メリット

メリット1.リソースを注ぐことができ、スピーディーに対応できる

リソースとは、活用することで価値を生み出す資源のことをいいます。しかし、企業のリソースは有限なため、どの目的にどれくらい使うのかといった内容や配分をしっかり見極めることが大切です。タスクフォースは、チームとして対応すべき短期的で明確な目的があります。そのため、ヒト、モノ、カネ、情報といった、その課題を解決するために必要な分のリソースをしっかり注ぐことができるというメリットがあります。

また、タスクフォースでは、その時々の解決に必要なスキルや能力が想定しやすいため、各部署から専門性や能力の高い人材を集めてチームを結成できるという特徴があります。結成したチームでは、通常の業務を中断して短期間で課題や問題に対応していくので、スピーディーに解決に向けて取り組むことができる体制が作れます

メリット2.解決に適したメンバーを組織横断で招集できる

タスクフォースのチームでは解決すべき課題が明確です。そのため、解決のために必要なスキルや、体制に適任なメンバーを想定しやすいというメリットがあります。

多くの企業では、部署や部門ごとに分かれ、それぞれが得意とする内容を中心に業務を進めています。しかしタスクフォースでは、組織を横断したプロジェクトとしてメンバーを集めることができるため、各部署や各部門の利害関係を超えて、課題に向き合うことが可能なのです。

短い期間でスピーディーに解決に向けて進めていくためには、優秀なチーム作りが大切です。解決したい課題に対して適したメンバーを集めるためにも、タスクフォースの導入はおすすめです。

メリット3.スキルやチーム力の向上が図れる

タスクフォースのメリットのひとつに、専門家や技術者など普段の業務では接点のないメンバーを社内外から集められるというところがあります。普段の業務では接点のない人たちを集め、同じチームで動いていくことで、思いもよらないアイディアや解決策が生まれる可能性も高くなります。

また、タスクフォースでは複数人で案を出し合い、戦略を練りながら進めていきます。そのため、チームを引率していくリーダーシップやマネジメントスキルの向上、チーム力の強化や他部署との連携を高められるという側面もあります。その結果、タスクフォースに加わった一人ひとりのスキルが向上し、会社全体のチーム力や対応力も高まっていくでしょう。

タスクフォースのデメリットと失敗しやすい落とし穴

タスクフォースは重要課題に短期集中で当たれる一方で、設計を誤ると成果が出ないまま疲弊が残りやすい仕組みでもあります。特に失敗の多くは、能力不足というより「運用前提の欠落」に起因します。

そこで次に、現場で起きがちな落とし穴を「症状→原因→予防策」の観点で整理し、タスクフォースを実務で機能させるためのチェックポイントとして提示します。短期で動かすほど、後戻りのコストが大きくなるため、立ち上げ前にこの章だけでもチームで共有して、失敗のリスクを減らしましょう。

ノウハウが残らない:短期解散で“学び”が散逸する

タスクフォースは期限付きで動くため、活動の最中に得られた判断根拠や試行錯誤が、解散と同時に散逸しがちです。結果だけが報告され、なぜその結論に至ったのか、どの選択肢を捨てたのか、何が前提条件だったのかが残らないと、数ヵ月後に同種課題が再発した際に「またゼロから検討」が起きます。

予防策はシンプルで、アウトプットを「結論」ではなく「再現可能な型」として残すことです。具体的には、

  • 意思決定ログ:論点・選択肢・判断理由・前提
  • 施策の実行テンプレ:手順・担当・必要データ
  • リスク一覧:兆候と対応

を最低限の成果物として定義し、毎週更新します。さらに解散前に引き継ぎを行い、関係部門に運用責任者を決めて移管すると、学びが組織資産になります。

通常業務に支障が出る:人員・稼働の穴埋め設計が必要

タスクフォースは多くの場合、優秀な人材を集めて短期集中します。その結果、元部門の通常業務が回らなくなり、現場が火を噴くパターンが発生します。

特に「兼務前提で集めたが、実際は緊急対応で毎日動く必要が出た」場合、残業増・品質低下・クレーム増という形で副作用が出やすいです。予防策は、編成時に「業務の置き換え」まで設計しておくことです。たとえば、タスクフォース参加者の稼働上限(例:週30%、緊急時は50%まで)を明文化し、穴埋めの方法をセットで決めます。

具体的には、

①優先順位の棚卸し:やめる業務を決める
②代替要員のアサイン:派遣・兼務・外注
③承認フローの簡略化:決裁者を減らす

を同時に実行します。「人を集める」だけでなく「元の仕事をどう守るか」を経営判断として扱うことが、タスクフォース成功の前提になります。

権限不足で進まない:意思決定者不在・合意形成コストの肥大化

タスクフォースが停滞する最大要因の一つが、意思決定権限がチームにないことです。現場で検討しても、結局は各部門に持ち帰って稟議、調整、反対意見の再調整が続き、短期集中のメリットが消えます。さらに、横断チームほど利害関係が絡みやすく、合意形成コストが雪だるま式に膨らみます。

予防策は「最終決裁者」「委任範囲」「例外時のエスカレーション」を最初に決めることです。

たとえば、予算・人員・運用ルール変更のうち、どこまでをタスクフォース内で決めてよいのかを明文化し、週次レビュー最終決裁者が意思決定する枠を確保します。さらに、合意形成を「全員一致」にしないために、決定ルール(多数決、責任者判断、期限までに反対なければ承認など)を置くと、スピードが回復します。

目的が拡散する:何でも屋になり、期限と成果が曖昧になる

タスクフォースは「重要課題の特命チーム」のはずが、いつの間にか関連相談が集まり、何でも屋化することがあります。依頼側は便利でも、チームの時間は有限で、目的が拡散すると成果が薄まり、期限も延び、最後は「頑張ったがよく分からない」で終わります。予防策は、スコープをやることより「やらないこと」で定義することです。

具体的には、①目的(解決したい状態)を一文で固定し、②成功条件(完了の定義)を数値か判定基準で置き、③除外範囲(今回扱わない論点)を明示します。そのうえで、追加依頼が来たら「この目的に直結するか」「期限内にできるか」「他部門に移管すべきか」を判断する「受け付けルール」を作り、入口を管理します。タスクフォースの価値は、器用さではなく集中にあるため、守るべきは範囲であると認識しましょう。

タスクフォースを進める5STEP

タスクフォースを進めていくには、どんなことが必要で、どのような流れになっているのでしょうか。5つのSTEPとしてまとめました。

ステップ

STEP1.タスクフォースを編成する

まずは、解決すべきタスクにあわせて、解決に必要なメンバーを招集します。専門家や技術者などの技術スキルがある人や、チームを円滑に進めていくための対人スキルを持った人など、タスクに関連する各部署から引き抜きます。メンバーを集める際、緊急性の高い課題に対応できるノウハウや経験があるかどうかも大切です。

そして、招集したメンバーのなかから、リーダーシップやマネジメント能力のあるメンバーをリーダーに選出します。社内外のさまざまな部署からいろいろな人が集まるため、チームをまとめてゴールに導いていく引率力がとても重要になっていきます。

また、具体的な業務にタスクを落とし込んでいく際に、必要なメンバーを都度追加していく場合もあります。

STEP2.課題とスケジュールを明確にする

続いて、実際にプロジェクトを進めていく前に、解決すべき内容や規模感、課題はどのようなものか、ゴールはどこにあるのかなどをメンバー内で共有しましょう。それらを明確にしたあと、その課題解決のために必要なタスクを設定し、書き出していきます。

そして、タスクを進めていくためのスケジュールを確認・共有します。その際、どれくらいの期間でどこまで進めるか、いつまでに目標値をどの状態までもっていくのかというように、具体的な内容で設定することが大切です。

また、活動スケジュールは毎週2~3時間程度など、無理のないものにしておきましょう。定期的に進捗を見直したり、照準を改定したりすることも頭に入れておきましょう。

STEP3.方向性を決め、施策を実行する

解決すべき内容やスケジュールを明確にしたあと、どのように動かしていくかなどの方向性を決めてから施策を実行していきます。社内外のさまざまな人が集まって動くチームのため、統一感を持つことが大切です。タスクフォース内での価値観や方向性、ルールなどをあらかじめ決めて、共有しておきましょう。

タスクフォースは、普段からしっかりコミュニケーションがとれている人たちが集まるチームではない場合が多いです。価値観や方向性にズレが生じ、メンバーの能力を活かしきれずに終わってしまうのは避けたいところ。「気軽に発言しやすい雰囲気を作る」「意見を否定するような発言はしない」など、特に重要な方向性やルールは明文化しておくことをおすすめします。スピード感と柔軟性をもって任務を遂行するためにも、方向性やルールはしっかり決めておきましょう。

STEP4.モニタリングを行う

実際に課題解決に向けて施策を進めながら、都度モニタリングを行いましょう。モニタリングすることで、課題の状況やどの程度解決できているのかなど、客観的な視点で見えてくることもあります。タスクフォース内だけでなく、社内外の目線での状況や進捗の把握も大切です。タスクフォースでの実績や課題解決の成果を把握して、ネクストアクションにつなげていくようにしましょう。

タスクフォースは、決してすべてうまくいく場合ばかりではありません。専門家や技術者など能力の高い優秀な人材が集まっても、結果がでなかったり、課題や問題が悪化したりしてしまうこともあります。なぜうまくいかなかったのか、なぜ結果がでなかったのかをしっかり把握することも次へつなげるための大切なステップになります。

STEP5.振り返りを行い、ノウハウを共有する

タスクフォースでの活動後は、その内容や結果の振り返りをきちんと行いましょう。課題解決のために短期的な業務をタスクフォースで行い、そのあとで長期的なプロジェクトチームへと再編成する場合もあります。

タスクフォースは、緊急性のある課題解決のために臨時で編成されるチームです。そのため、課題解決後すぐに解散してしまうこともあり、その場で共有された知識や内容、チームのなかで生まれたノウハウやプロセスが残らないこともあります。進めていくうえで得られた知見や築き上げたものを組織運営で活かしていくこともタスクフォースを実行するうえでの大切なポイントです。課題へのアプローチのみでなく、活動中に生じた改善点や課題なども含め、取り組み自体をしっかり振り返るようにしましょう。同じような課題に遭遇したときに解決の糸口になります。

タスクフォースを成功させるための3つのポイント

タスクフォースは、能力の高い優秀な人材が集まって結成されるチームです。せっかく結成するからには、しっかり課題解決へ結び付けたいもの。ここからはタスクフォースを成功させるためのポイントを3つ紹介していきます。

ポイント1.課題の明確化と適切なリーダー選定

タスクフォースでは、解決すべき課題内容を明確にしておくことと、チームを引率してまとめるリーダー選びが成功への第一歩です。

チーム全体で課題の内容を把握し、何をもってゴールとするのかを明らかにしておきましょう。その部分があやふやになってしまうと、確認事項が増えたり、向かう方向がわからなくなってしまったりと、スピード感を持って対応することが難しくなってしまいます。課題内容の明確化とゴールの共有ができたあとは、具体的なタスクへと細分化することも忘れずに行いましょう。ゴールを明らかにしておくことで、筋道が見えてくることもあります。

そして、チームを結成するにあたり、リーダーを誰にするかも重要なポイントです。タスクフォースでは、リーダーの力量がチームの連帯感や成果にも大きく影響します。リーダーシップがとれる人やチームマネジメントの能力が高い人を選ぶことはもちろん、解決すべき課題に適したスキルや知見のある人を選ぶことも大切です。

ポイント2.迅速かつ柔軟な対応

タスクフォースでは、緊急性の高い課題の解決が目的であることが多いため、何よりもスピード感が求められます。そのため、タスクフォースを成功に導くためには、この問題の解決を最優先と考え、迅速で柔軟な対応を行えるかどうかがポイントになります。

短期間で課題を解決するには、何度も同じ壁に立ち向かうだけでなく、広い視野でさまざまな方法を考えることも大切です。これまでの方法では課題の解決が難しい場合は、柔軟に対応し、どんどんやり方を変更していくようにしましょう。異なるアプローチを試してみることで、新たな解決への糸口が見つかるきっかけにもなります。

社会はどんどん変化を続け、常にアップデートされていきます。従来の方法を守り続けることで企業イメージを下げてしまう場合もあるので、時と場合に応じて適切な対応を心がけるようにしましょう。

ポイント3.知見やノウハウの蓄積や共有

タスクフォースは、短期間での課題解決が目的ではありますが、その活動だけがすべてではありません。話し合いや施策を進めていくうえで得た知見やノウハウをきちんと蓄積していくことも重要なポイントです。

課題解決のために一時的に作られるチームのため、しっかり情報を蓄積・共有していくことを意識していないと、解散後にその場で生まれたことを活かすことができません。あとで、再び同じような課題が生じた際、情報を蓄積しておけばスムーズに対応し、その手前で問題を回避することができるかもしれません。

タスクフォースが解散する前に、タスクフォースで築き上げた内容や問題の検証、解決策のプロセスなどもきちんとまとめておくようにしましょう。

タスクフォースの成功事例

最後に、タスクフォース導入によるさまざまな成功事例を紹介していきます。具体例を参考に、課題解決の際などに導入してみてはいかがでしょうか。

事例1.総務省

1つ目の成功事例として紹介するのは「総務省」です。総務省では、さまざまな案件でタスクフォースを導入して動いています。携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化への取り組みを検討する「スイッチング円滑化」や、サイバーセキュリティの確保に取り組むための「サイバーセキュリティ」など、細かな議題ごとにタスクフォースが組まれています。

概要や議題などの資料なども公開されています。下記の事例を参考としてご覧ください。

参考1:「ポストコロナ」時代におけるデジタル活用に関する懇談会
参考2: 青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース

事例2.味の素グループ

続いて紹介するのは、2020年に「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します」という新たなビジョンを掲げた味の素グループです。「食と健康の課題解決」という目標に向けて、グループ全体でタスクフォースを立ち上げました。

最高経営責任者(CEO)直轄の「事業モデル変革タスクフォース」と「全社オペレーション変革タスクフォース」を新設し、2つの事業本部やコーポレート本部と一体になって変革を進めています。

参考1:全社オペレーション変革|味の素グループ 統合報告書 2020
参考2:味の素グループが実践する「変革」|10年後を見据えて企業文化を変革味の素グループ 統合報告書 2020

事例3.ウェルクス

企業理念に「プロフェッショナルなスキルを通じて社会の問題を解決し、会社に関係するすべての人々の幸福を追求する」を掲げるウェルクスもタスクフォースを導入していました。ウェルクスでは、「会社の課題を全社員に自分ごと化してほしい」との意図から、11の社内横断のタスクフォースチームを作り、社内コミュニケーション施策を実施。

「理念・戦略タスクフォース」や「運動増進タスクフォース」など、幅広い内容のチームを作り、活動していました。

参考1:タスクフォース | 株式会社ウェルクス
参考2: ウェルクスのタスクフォース制度を紹介!《vol.2 理念・戦略タスクフォース》 | 株式会社ウェルクス’s Blog

タスクフォースの成果指標とレポート設計

タスクフォースは短期で動くほど、成果を見える化しないと評価が主観に寄ってしまいます。結果、現場の納得感が得られず、次回の協力も得にくくなります。

指標設計のポイントは、最終成果(アウトカム)だけでなく、実行の質(アウトプット)も並行して追うことです。アウトカムは時間がかかる場合があるため、途中経過を示すアウトプット指標を置くことで、進捗の健全性を判断できます。さらに、レポートは分量よりも「意思決定に使える形式」が重要です。論点・決定・次アクションが一目で追えるテンプレに揃えると、意思決定者と現場の往復が減り、スピードが上がります。

それではタスクフォースの成果指標とレポート設計の詳細を解説します。

アウトカム指標:再発率・損失額・顧客影響など課題に直結する指標

アウトカム指標は、タスクフォースの存在意義を示す「結果のものさし」です。たとえば不具合対応なら再発率、炎上対応なら問い合わせ件数やネガティブ投稿比率、業務改革なら処理時間短縮やエラー率低下、収益課題なら逸失売上の回復など、課題に直結する指標を選びます。

ここで重要なのは、指標を増やしすぎないことと、基準値(現状)と目標値(到達点)をセットで置くことです。さらに、外部要因でブレる指標は「補助」として扱い、タスクフォースが影響できる範囲を明確にすると、評価の不公平感が減ります。

また、短期運用であるほど、週次で動く指標と月次で評価する指標を分けると、判断が安定します。

アウトプット指標:決定事項、実行数、是正完了率、期限遵守率など

アウトプット指標は、タスクフォースが「前に進んでいるか」を示す運用指標です。具体的には、意思決定件数(保留が溜まっていないか)、是正策の実行数、是正完了率、期限遵守率、関係者への周知完了率などが使えます。

アウトカムが出る前でも、アウトプットが積み上がっていれば、活動が機能していると説明できます。逆に、会議回数や資料作成数のような「活動量」だけを追うと、成果につながらない忙しさが正当化されがちです。実務では、アウトプット指標を3〜5個に絞り、毎週同じフォーマットで更新し、達成できなかった理由を「リスク」「依存関係」「意思決定待ち」に分類して残すと、次の一手が打ちやすくなります。

週次レビューの型:論点・意思決定・次アクション・リスクを固定フォーマットで回す

横断チームは、情報量が多く、参加者の前提も揃いません。そのため週次レビューは「会議の質」ではなく「型」が重要です。おすすめは、1枚で追える固定フォーマットに統一することです。

項目は、

①今週の論点:何を決める会議か
②意思決定:決まったこと・保留理由
③次アクション:担当・期限・成果物
④リスク:兆候・対策・エスカレーション要否

の4つで十分です。会議運用としては、冒頭5分でリスク確認、次に意思決定が必要な論点から処理し、報告系は最後に回します。これにより、タスクフォースの時間が「共有」ではなく「決める」に使われ、短期集中の価値が最大化されます。

タスクフォースに関するよくある質問(Q&A)

最後に、現場で特に聞かれやすい質問を取り上げます。自社の状況に合わせて微調整しながら、運用に取り入れてください。

FAQ

タスクフォースとプロジェクトチームは何が違いますか?

タスクフォースとプロジェクトチームの最大の違いは、緊急性と期限、そして意思決定の速度にあります。

タスクフォースは、短期間で収束させるべき重要課題に対して、優先順位を最上位に置き、必要なら通常業務を調整しながら動く「特命体制」です。一方、プロジェクトチームは中長期の価値創出に向けて、仮説検証を繰り返しながら積み上げる体制で、スケジュールも比較的長くなります。

実務上は「止血・収束・再発防止の道筋」までがタスクフォース、「改善・開発・定着」まで含めて継続運用するのがプロジェクト、という切り分けにすると混乱が減ります。両者を併用する場合は、タスクフォースで方向性と重要決定を出し、その後プロジェクトに移管する流れが現実的です。

タスクフォースの適切な期間はどれくらいですか?

「短期」の目安は、課題の種類によりますが、重要なのは期間そのものより「完了条件」が定義されていることです。期間を決めずに走ると、目的が拡散しやすく、通常業務への負荷も読めなくなります。

実務では、最初に2〜4週間程度の「初動フェーズ」を置き、そこで課題の全体像、論点、打ち手、必要な権限と体制を固めます。そのうえで、解決までの期限を6〜12週間程度に置くケースが多く、長くても「いつ解散するか」「何をもって解散か」を合意しておくのが基本です。

もし期限内に収束しない場合は、タスクフォースの延長ではなく、プロジェクト化して体制を組み替える判断が必要になります。

メンバーは何人が適切ですか?兼務でも回せますか?

人数は少ないほど速い一方、必要な専門性が揃わないとやり直しが増えます。実務的には、意思決定を回す「中核(3〜5名)」と、必要に応じて参加する「専門メンバー(数名)」を分けると運用が安定します。全員を常時参加にすると会議が重くなり、合意形成コストが増えるためです。

兼務で回すことも可能ですが、条件があります。第一に、稼働上限と優先順位が明文化され、通常業務の穴埋めが設計されていること。第二に、意思決定者が週次レビューに参加し、保留を溜めないこと。この2つがない兼務体制は、結局両方が中途半端になり、疲弊だけが残りやすいので注意が必要です。

権限はどこまで与えるべきですか?

原則は「課題解決に必要な範囲で、期限内に意思決定できるだけの権限」を委任することです。権限が弱いと、タスクフォースは調整機関になり、スピードが出ません。具体的には、

  • 予算:上限付きの即決枠
  • 人員:兼務割合の調整や外注の起案
  • 運用ルール:暫定ルールの適用
  • 情報アクセス:必要データへのアクセス権

などが論点になります。実務上は、すべてを委任するのではなく「この範囲はチームで決めてよい」「ここから先はスポンサー決裁」という線引きを明確にし、スポンサーの決裁タイムラインを週次で確保すると、統制とスピードの両立ができます。

解散後にノウハウを残すにはどうすればよいですか?

解散後に残すべきは、報告書ではなく「次に同じ課題が起きたときに動ける材料」です。具体的には、意思決定ログ、再発防止のチェックリスト、運用テンプレ(会議体、連絡フロー、承認フロー)、リスク一覧(兆候と対応)をセットにし、保管場所と責任者を決めておきます。

さらに効果的なのは、解散前に「運用移管の最終レビュー」を実施し、タスクフォースの成果物を使って関係部門が一度模擬運用することです。ここで詰まる部分が、実際の定着阻害要因になります。

最後に、再発防止策が現場で守られているかを確認する「30日後レビュー」を1回だけでも入れると、タスクフォースの成果が一過性で終わりにくくなります。

タスクフォースを理解して効果的に活用しよう

今回は、短期間で課題解決に取り組む「タスクフォース」について紹介してきました。タスクフォースの導入は、課題解決のほかにも、リーダーシップやマネジメント能力の向上や、チーム力の強化などさまざまなメリットがあります。

社内外の各部署や部門を超えての連携を図れたり、同じような課題にぶつかったときの参考にできたりと、活かせるポイントがたくさんあるタスクフォース。成功するためのポイントをおさえ、進めていくうえでの注意点を把握しながら、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。取り組む課題の規模や期間、内容ごとに、タスクフォース、プロジェクトチーム、ワーキンググループを使い分け、円滑なチーム作りや取り組みを進めていきましょう。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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