もともとは軍事用語である「タスクフォース」は、ビジネスの場でも使われている言葉です。軍隊が特定の任務を遂行するために編成されたチームのように、速やかに解決すべき重要な課題や問題が生じたときに発足されるチームのことを指します。
社会状況の変化で窮地に陥ったときや、不祥事や問題を起こしてしまったときなど、その対応に追われて通常の業務に支障をきたしてしまう場合もあります。そのように、迅速な問題解決が必要な場合や、企業が大きく変革するような場面で編成されるのがタスクフォースです。
今回は、部署や部門を超えた連携が強まり、会社全体の能力向上にもつながるタスクフォースの目的や導入するメリット、進めるときのポイントなどを紹介していきます。
タスクフォースの意味
迅速に解決すべき課題や問題の対応などで、臨時に短期間のみ結成・招集される集団のことを指すタスクフォース。もともとは軍事用語で、軍隊が特定の任務を遂行するために編成されたチームのことをいいます。
タスクフォースで作られるチームは、社内の各部署から選ばれた適任者や社外の専門家などで構成されます。通常の企業活動とは切り離され、普段は一緒に仕事をすることのないメンバーで業務を行う場合もあるところが特徴です。
課題解決のほか、新製品や新たな企画開発などの際にも編成されるタスクフォースは、インターネット関連や情報システム部門などにおいてよく活用されています。
タスクフォースが導入される目的
タスクフォースは、企業や組織の課題や緊急性の高い問題をいち早く解決するために導入されます。タスクフォースのチームはイシュー(課題/問題)ベースで組まれ、会社が大きく変化するための業務改善や組織改革などが目的であることが多いです。そのほか、不祥事を起こしてしまったときや大きなトラブルや問題の対応でも結成・招集されます。
高い能力を持ったメンバーを集めることで、課題解決のみでなく、チーム力を鍛える機会としても有効。社内のさまざまな部署や、社外の専門家で組まれるチームのため、枠を超えた連携の強化、会社全体の能力向上も見込めます。また、次世代の有望な人材の発見につながり、リーダーシップの育成が行えることもタスクフォースの特徴です。
タスクフォース型とプロジェクト型(プロジェクトチーム)との違い
タスクフォースと似ている用語に、プロジェクト型の「プロジェクトチーム」があります。プロジェクトチームのほうが、タスクフォースよりも一般的に聞きなれているのではないでしょうか。
タスクフォースとプロジェクトチームの違いは、緊急性と取り組むスパン(長さ)です。タスクフォースは、緊急性のある社内の課題に対して短期的な解決が求められ、プロジェクトチームは長期にわたって取り組み、何度も検証を行って課題を解決していきます。
「課題や問題を解決する」という目的の方向性は似ていますが、緊急性とスパンの違いによって、招集するメンバー選定の規準が変わってきます。業務能力や求めることに対しての向き不向きもあるため、タスクフォースやプロジェクトチームを組む際は意識しておきましょう。
タスクフォース型とワーキンググループとの違い
プロジェクトチームのほかに、タスクフォースと似ている用語で「ワーキンググループ」というものもあります。ワーキンググループはタスクフォースとほぼ同義語で使われており、特定の問題を解決するために作られるチームのことをいいます。
タスクフォースとワーキンググループの大きな違いは、解決すべき課題や問題の規模です。タスクフォースとワーキンググループを使い分ける企業もあり、ワーキンググループのなかで、作業ごとに細分化された組織のことをタスクフォースと位置づけて実行していくケースもみられます。
ワーキンググループは主に、政府系の機関による国家単位での政策、企業の存続や経営不振などの問題に対応するために活用されることが多いのが特徴です。
タスクフォースを導入する3つのメリット
ここまで、タスクフォースの意味や目的などについてお伝えしてきました。続いて、より具体的にタスクフォースを取り入れるイメージを持てるように、導入するメリットを3つご紹介します。
メリット1.リソースを注ぐことができ、スピーディーに対応できる
リソースとは、活用することで価値を生み出す資源のことをいいます。しかし、企業のリソースは有限なため、どの目的にどれくらい使うのかといった内容や配分をしっかり見極めることが大切です。タスクフォースは、チームとして対応すべき短期的で明確な目的があります。そのため、ヒト、モノ、カネ、情報といった、その課題を解決するために必要な分のリソースをしっかり注ぐことができるというメリットがあります。
また、タスクフォースでは、その時々の解決に必要なスキルや能力が想定しやすいため、各部署から専門性や能力の高い人材を集めてチームを結成できるという特徴があります。結成したチームでは、通常の業務を中断して短期間で課題や問題に対応していくので、スピーディーに解決に向けて取り組むことができる体制が作れます。
メリット2.解決に適したメンバーを組織横断で招集できる
タスクフォースのチームでは解決すべき課題が明確です。そのため、解決のために必要なスキルや、体制に適任なメンバーを想定しやすいというメリットがあります。
多くの企業では、部署や部門ごとに分かれ、それぞれが得意とする内容を中心に業務を進めています。しかしタスクフォースでは、組織を横断したプロジェクトとしてメンバーを集めることができるため、各部署や各部門の利害関係を超えて、課題に向き合うことが可能なのです。
短い期間でスピーディーに解決に向けて進めていくためには、優秀なチーム作りが大切です。解決したい課題に対して適したメンバーを集めるためにも、タスクフォースの導入はおすすめです。
メリット3.スキルやチーム力の向上が図れる
タスクフォースのメリットのひとつに、専門家や技術者など普段の業務では接点のないメンバーを社内外から集められるというところがあります。普段の業務では接点のない人たちを集め、同じチームで動いていくことで、思いもよらないアイディアや解決策が生まれる可能性も高くなります。
また、タスクフォースでは複数人で案を出し合い、戦略を練りながら進めていきます。そのため、チームを引率していくリーダーシップやマネジメントスキルの向上、チーム力の強化や他部署との連携を高められるという側面もあります。その結果、タスクフォースに加わった一人ひとりのスキルが向上し、会社全体のチーム力や対応力も高まっていくでしょう。
タスクフォースを進める5STEP
タスクフォースを進めていくには、どんなことが必要で、どのような流れになっているのでしょうか。5つのSTEPとしてまとめました。
STEP1.タスクフォースを編成する
まずは、解決すべきタスクにあわせて、解決に必要なメンバーを招集します。専門家や技術者などの技術スキルがある人や、チームを円滑に進めていくための対人スキルを持った人など、タスクに関連する各部署から引き抜きます。メンバーを集める際、緊急性の高い課題に対応できるノウハウや経験があるかどうかも大切です。
そして、招集したメンバーのなかから、リーダーシップやマネジメント能力のあるメンバーをリーダーに選出します。社内外のさまざまな部署からいろいろな人が集まるため、チームをまとめてゴールに導いていく引率力がとても重要になっていきます。
また、具体的な業務にタスクを落とし込んでいく際に、必要なメンバーを都度追加していく場合もあります。
STEP2.課題とスケジュールを明確にする
続いて、実際にプロジェクトを進めていく前に、解決すべき内容や規模感、課題はどのようなものか、ゴールはどこにあるのかなどをメンバー内で共有しましょう。それらを明確にしたあと、その課題解決のために必要なタスクを設定し、書き出していきます。
そして、タスクを進めていくためのスケジュールを確認・共有します。その際、どれくらいの期間でどこまで進めるか、いつまでに目標値をどの状態までもっていくのかというように、具体的な内容で設定することが大切です。
また、活動スケジュールは毎週2~3時間程度など、無理のないものにしておきましょう。定期的に進捗を見直したり、照準を改定したりすることも頭に入れておきましょう。
STEP3.方向性を決め、施策を実行する
解決すべき内容やスケジュールを明確にしたあと、どのように動かしていくかなどの方向性を決めてから施策を実行していきます。社内外のさまざまな人が集まって動くチームのため、統一感を持つことが大切です。タスクフォース内での価値観や方向性、ルールなどをあらかじめ決めて、共有しておきましょう。
タスクフォースは、普段からしっかりコミュニケーションがとれている人たちが集まるチームではない場合が多いです。価値観や方向性にズレが生じ、メンバーの能力を活かしきれずに終わってしまうのは避けたいところ。「気軽に発言しやすい雰囲気を作る」「意見を否定するような発言はしない」など、特に重要な方向性やルールは明文化しておくことをおすすめします。スピード感と柔軟性をもって任務を遂行するためにも、方向性やルールはしっかり決めておきましょう。
STEP4.モニタリングを行う
実際に課題解決に向けて施策を進めながら、都度モニタリングを行いましょう。モニタリングすることで、課題の状況やどの程度解決できているのかなど、客観的な視点で見えてくることもあります。タスクフォース内だけでなく、社内外の目線での状況や進捗の把握も大切です。タスクフォースでの実績や課題解決の成果を把握して、ネクストアクションにつなげていくようにしましょう。
タスクフォースは、決してすべてうまくいく場合ばかりではありません。専門家や技術者など能力の高い優秀な人材が集まっても、結果がでなかったり、課題や問題が悪化したりしてしまうこともあります。なぜうまくいかなかったのか、なぜ結果がでなかったのかをしっかり把握することも次へつなげるための大切なステップになります。
STEP5.振り返りを行い、ノウハウを共有する
タスクフォースでの活動後は、その内容や結果の振り返りをきちんと行いましょう。課題解決のために短期的な業務をタスクフォースで行い、そのあとで長期的なプロジェクトチームへと再編成する場合もあります。
タスクフォースは、緊急性のある課題解決のために臨時で編成されるチームです。そのため、課題解決後すぐに解散してしまうこともあり、その場で共有された知識や内容、チームのなかで生まれたノウハウやプロセスが残らないこともあります。進めていくうえで得られた知見や築き上げたものを組織運営で活かしていくこともタスクフォースを実行するうえでの大切なポイントです。課題へのアプローチのみでなく、活動中に生じた改善点や課題なども含め、取り組み自体をしっかり振り返るようにしましょう。同じような課題に遭遇したときに解決の糸口になります。
タスクフォースを成功させるための3つのポイント
タスクフォースは、能力の高い優秀な人材が集まって結成されるチームです。せっかく結成するからには、しっかり課題解決へ結び付けたいもの。ここからはタスクフォースを成功させるためのポイントを3つ紹介していきます。
ポイント1.課題の明確化と適切なリーダー選定
タスクフォースでは、解決すべき課題内容を明確にしておくことと、チームを引率してまとめるリーダー選びが成功への第一歩です。
チーム全体で課題の内容を把握し、何をもってゴールとするのかを明らかにしておきましょう。その部分があやふやになってしまうと、確認事項が増えたり、向かう方向がわからなくなってしまったりと、スピード感を持って対応することが難しくなってしまいます。課題内容の明確化とゴールの共有ができたあとは、具体的なタスクへと細分化することも忘れずに行いましょう。ゴールを明らかにしておくことで、筋道が見えてくることもあります。
そして、チームを結成するにあたり、リーダーを誰にするかも重要なポイントです。タスクフォースでは、リーダーの力量がチームの連帯感や成果にも大きく影響します。リーダーシップがとれる人やチームマネジメントの能力が高い人を選ぶことはもちろん、解決すべき課題に適したスキルや知見のある人を選ぶことも大切です。
ポイント2.迅速かつ柔軟な対応
タスクフォースでは、緊急性の高い課題の解決が目的であることが多いため、何よりもスピード感が求められます。そのため、タスクフォースを成功に導くためには、この問題の解決を最優先と考え、迅速で柔軟な対応を行えるかどうかがポイントになります。
短期間で課題を解決するには、何度も同じ壁に立ち向かうだけでなく、広い視野でさまざまな方法を考えることも大切です。これまでの方法では課題の解決が難しい場合は、柔軟に対応し、どんどんやり方を変更していくようにしましょう。異なるアプローチを試してみることで、新たな解決への糸口が見つかるきっかけにもなります。
社会はどんどん変化を続け、常にアップデートされていきます。従来の方法を守り続けることで企業イメージを下げてしまう場合もあるので、時と場合に応じて適切な対応を心がけるようにしましょう。
ポイント3.知見やノウハウの蓄積や共有
タスクフォースは、短期間での課題解決が目的ではありますが、その活動だけがすべてではありません。話し合いや施策を進めていくうえで得た知見やノウハウをきちんと蓄積していくことも重要なポイントです。
課題解決のために一時的に作られるチームのため、しっかり情報を蓄積・共有していくことを意識していないと、解散後にその場で生まれたことを活かすことができません。あとで、再び同じような課題が生じた際、情報を蓄積しておけばスムーズに対応し、その手前で問題を回避することができるかもしれません。
タスクフォースが解散する前に、タスクフォースで築き上げた内容や問題の検証、解決策のプロセスなどもきちんとまとめておくようにしましょう。
タスクフォースの成功事例
最後に、タスクフォース導入によるさまざまな成功事例を紹介していきます。具体例を参考に、課題解決の際などに導入してみてはいかがでしょうか。
事例1.総務省
1つ目の成功事例として紹介するのは「総務省」です。総務省では、さまざまな案件でタスクフォースを導入して動いています。携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化への取り組みを検討する「スイッチング円滑化」や、サイバーセキュリティの確保に取り組むための「サイバーセキュリティ」など、細かな議題ごとにタスクフォースが組まれています。
概要や議題などの資料なども公開されています。下記の事例を参考としてご覧ください。
参考1:「ポストコロナ」時代におけるデジタル活用に関する懇談会
参考2: 青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース
事例2.味の素グループ
続いて紹介するのは、2020年に「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します」という新たなビジョンを掲げた味の素グループです。「食と健康の課題解決」という目標に向けて、グループ全体でタスクフォースを立ち上げました。
最高経営責任者(CEO)直轄の「事業モデル変革タスクフォース」と「全社オペレーション変革タスクフォース」を新設し、2つの事業本部やコーポレート本部と一体になって変革を進めています。
参考1:全社オペレーション変革|味の素グループ 統合報告書 2020
参考2:味の素グループが実践する「変革」|10年後を見据えて企業文化を変革味の素グループ 統合報告書 2020
事例3.ウェルクス
企業理念に「プロフェッショナルなスキルを通じて社会の問題を解決し、会社に関係するすべての人々の幸福を追求する」を掲げるウェルクスもタスクフォースを導入していました。ウェルクスでは、「会社の課題を全社員に自分ごと化してほしい」との意図から、11の社内横断のタスクフォースチームを作り、社内コミュニケーション施策を実施。
「理念・戦略タスクフォース」や「運動増進タスクフォース」など、幅広い内容のチームを作り、活動していました。
参考1:タスクフォース | 株式会社ウェルクス
参考2: ウェルクスのタスクフォース制度を紹介!《vol.2 理念・戦略タスクフォース》 | 株式会社ウェルクス’s Blog
タスクフォースを理解して効果的に活用しよう
今回は、短期間で課題解決に取り組む「タスクフォース」について紹介してきました。タスクフォースの導入は、課題解決のほかにも、リーダーシップやマネジメント能力の向上や、チーム力の強化などさまざまなメリットがあります。
社内外の各部署や部門を超えての連携を図れたり、同じような課題にぶつかったときの参考にできたりと、活かせるポイントがたくさんあるタスクフォース。成功するためのポイントをおさえ、進めていくうえでの注意点を把握しながら、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。取り組む課題の規模や期間、内容ごとに、タスクフォース、プロジェクトチーム、ワーキンググループを使い分け、円滑なチーム作りや取り組みを進めていきましょう。
タスクフォースに関するQ&A
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