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広報PR担当者として知っておきたいアンブッシュ・マーケティングの基礎知識

社会的な盛り上がりやムーブメントを利用したマーケティング手法「アンブッシュ・マーケティング」をご存知でしょうか。

「便乗商法」「あやかり商法」とも呼ばれており、マーケティング戦略のひとつとして行われている手法です。近年ではアンブッシュ・マーケティングについての知識がないために、意図せず権利を侵してしまっているケースも見受けられます。

本記事では、広報PR担当者として知っておきたい「アンブッシュ・マーケティング」の基礎知識を紹介します。

アンブッシュ・マーケティングとは?

「アンブッシュ・マーケティング(ambush marketing)」とは、世界的な大会や著名なイベント・モノ・コトについて、公式スポンサーではない企業が、あたかも公式スポンサー、ライセンシーであるかのように生活者に誤認させ、物販や集客を行うことを指します。

「アンブッシュ」とは「待ち伏せ」の意味があり、大型の大会やイベントが開催されるタイミングを見計らって広告や宣伝を行うことから、その名がつけられています。

大きな大会やイベントのロゴ、フレーズといった知的財産は、商標法、不正競争防止法、著作権法などの法令の保護対象であったり、運営側がブランドの権利、また公式スポンサーの利益を守るために規則を設けたりしているケースが多くあります。

たとえ「大会を盛り上げたい」という純粋な思惑からであったとしても、第三者が大会やイベントのロゴ、フレーズなどを無断使用すると、法律や規則に違反する可能性があるのです。

企業には、法令や運営側が設ける規則を遵守したクリエイティブなマーケティングを行うことが求められています。またマーケティングに限らず、プレスリリースなどの情報発信においても遵守する必要があります。

著作権法や商標法などの知的財産に関する法令を理解することはもちろん、大会などの規則は主催者によって異なるため、具体的な内容については個々のケースでしっかりと確認する必要があることに注意しましょう。法令を違反するマーケティング手法を取ってしまうと、企業ブランドのイメージ低下や売り上げ減少などのリスクが生まれます。

関連図書で学ぶイメージ

意図せずアンブッシュ・マーケティングを起こさないために知っておきたい3つのこと

世界的な大会やイベントなどが行われるとき、マーケティング活動や広報活動に活かしたいと考える広報PR担当者も多いでしょう。

しかし、公式スポンサーではないにもかかわらず大型イベントにあやかる活動はアンブッシュ・マーケティングになる可能性があるため、注意が必要です。

国内の法律では、「アンブッシュ・マーケティング規制法」のようなものは成立していません。しかし、大会の主催組織や団体ではアンブッシュ・マーケティングを定義づけ、その行為を規制していることがあります。

企業の広報PR活動やマーケティング活動が法律や規定に違反していないか注意するためにも、事前に確認しておきたい3つのことを解説します。

1.大会ごとの定義

アンブッシュ・マーケティングについて法律による規制はないものの、大会やイベントごとに定義を設けているケースもあります。例えば、以下のようなものがあります。

アンブッシュ・マーケティングとは、故意であるか否かを問わず、団体や個人が、権利者であるIOCやIPC、組織委員会の許諾無しにオリンピック・パラリンピックに関する知的財産を使用したり、オリンピック・パラリンピックのイメージを流用することを指します。

公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「大会ブランド保護基準」

また、アンブッシュ・マーケティングの定義だけでなく、以下のようにロゴマークの使用についても具体例が示されているケースもあります。

【ロゴマークの使用規則にそぐわないとされる例】
× ロゴマークの無断使用
× 個人、企業、国、地方自治体、公益法人、その他非営利団体など以外で、使用が認められていない組織・団体などのロゴマークの使用
× メッセージつきロゴマークを商品パッケージや景品に使用
× スポンサー以外が協賛や寄付など関わりを想起させる「大阪・関西万博を応援しています」「大阪・関西万博のサポーターです」などの言葉とともにロゴマークを使用すること
× 企業・団体のホームページ、企業広告および商品広告を含む広告類(ポスター、チラシ類、テレビCM、新聞広告、雑誌広告、ダイレクトメールなど)でメッセージつきロゴマークを使用すること

参考:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会メッセージ付きロゴマーク 使用申請

大会やイベントを情報発信に活用したい場合は、大会ごとの規定に違反していないかを確認しましょう。また、これらの定義は時代とともに変化していきます。都度確認してアップデートしていくことも大切です。

2.知的財産

どのような行為を規制しているのか、大会ごとに詳細は異なりますが、多くの定義で掲げられるのは「知的財産」です。

土地や現金などに所有権があるように、音楽や発明などといった無体物も財産であるとして、知的財産権が認められています。

世界的な大会やイベントの多くはエンブレムやシンボル、マスコットなど、視覚的に認識しやすいものを設けています。これらは知的財産であり、大会に認められた組織・団体・スポンサーや自治体などの事業者以外が使用することはできません

また、大会名称や大会モットーなどに関連する用語、キャッチコピーなども知的財産に含まれます。これら大会エンブレムや大会名称などは、日本国内では商標法不正競争防止法著作権法などにより「知的財産」として保護されています

3.イメージの流用

上記で挙げた知的財産を用いた直接的な表現以外にも、各大会やイベントを連想させる、または意味を特定できる用語や映像を用いて自社の商品やサービスと関連づけることも、主催者よりアンブッシュ・マーケティングとして問題であると判断される場合があります。

各大会やイベントのWebサイトでは、知的財産の利用についてブランド保護に関するルールを掲載し、利用に関する注意喚起を行っています。主催側で規則やNG例の詳細が記載されていたり、定義づけられているので、確認しておきましょう。

法律イメージ

アンブッシュ・マーケティングと関連する法律

企業の広報PR活動やマーケティング活動では、イベントなどの運営側で定められた規則だけでなく、当然ながら法令も遵守しなくてはなりません。ここでは、アンブッシュ・マーケティングに関連した「商標法」と「不正競争防止法」について紹介します。

商標法

商標法とは、商標の使用者の「業務上の信用の維持」「産業の発達」「需要者の利益を保護」することを目的として、商標を保護する法律です。

商標登録されたロゴやネーミング、シンボルマークなどの「標章」を無断で使用することは、商標法における商標権の侵害になることがあります。

参考:政府広報オンライン「知っておかなきゃ、商標のこと!商標をわかりやすく解説!」

不正競争防止法

不正競争防止法は、「不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」が目的です。商標登録されていない標章であっても、世間で広く認知されているものについて、正式な権利がないのにあたかも関連があるかのように誤認させる表記は、不正競争防止法に抵触する恐れがあります。

その他の法律

ほかにも、著作権法(知的財産のあるものの無断使用)や、景品表示法(消費者を誤解させるような表記)も、広報PR活動に関わってくることがあります。

例えば公式スポンサーではない企業が、広告で「○○大会開催記念」や「○○イベントを応援しよう!」といったうたい文句を使用することは、法令違反、または消費者の誤認を生むとして、権利者より指摘を受けることが考えられます。

時節やトレンドワードを活用した情報発信は大切ですが、思わぬところで権利を侵害していないか、注意することが大切です。

法律や規定に違反しないためにアンブッシュ・マーケティングの知識を身に着けておこう

本記事で挙げた例のように、世界的な大会に絡めた広報PR企画や大きなイベントに合わせた情報発信は、商標法や著作権法などの関連法令に抵触しないことはもちろん、アンブッシュ・マーケティングに当てはまらないよう、注意が必要です。

「大会を盛り上げたい」といった純粋な気持ちで悪意はなくても、公式スポンサーではない限り、知らない間に権利を侵害してしまう可能性があります。

アンブッシュ・マーケティングに関する知識をしっかりと身に着けて、正しい情報発信を心がけましょう。

<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>

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