アジア系グローバルファンドによる買収、上場廃止後、ソリューションサービス企業への変革を目指すパイオニア。変革期を迎えている今、社外への発信を強化しています。その先駆をなしているのが、2020年パイオニアにCDOとして入社した石戸さん。そんな石戸さんとパイオニアの多くの転換期を広報担当者として務めてきた角谷さんに、社外への発信を強化している背景や想い、すでに得られている成果についてお伺いしました。
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パイオニア株式会社 コーポレートコミュニケーション部 部長
大学卒業後、新卒でパイオニア入社。営業からスタートし、商品マーケティング担当を経て2011年より広報業務に携わる。社長交代、構造改革、上場廃止など多くの転換期を広報担当者として務め、現在は2部門10名をまとめるコーポレートコミュニケーション責任者。
セクショナリズムからコーポレーショニズムへ
明確な役割がないままCDOとして入社
── 石戸さんのパイオニアでのミッション、入社されたときに求められていたことなどを教えていただけますでしょうか。
石戸さん(以下、敬称略):役割なく入社したので「これ!」と言っていないんです。当初はモビリティーサービスカンパニーのマーケティングと営業部門の責任者として面接を受けました。リメイクしていく必要があるこの事業では、もっと他にもやりたいことがあったこと、同時にこのポジションでの適任の人材が採用できたことで、明確な役割がないままCDO(最高デジタル責任者)として入社したんです。そのため、採用、マーケティング、広報PRの分野においてそれぞれ、「30・60・90Dayプラン」を自身で提案していましたね。
大きな会社ではよく、広報PR、採用、マーケティングが分かれています。しかし、それらは分けるものではなく、例えば広報PR活動において、技術のことであればCTO(最高技術責任者)など、事業責任者自ら語るから伝わる。そして、広報活動が採用につながる。シームレスになっているべきものだと考えています。
入社後30・60・90Dayプラン
── 30・60・90Dayプランの内容はどのようなものなのでしょうか。
石戸:30・60・90Dayプランは、「どうエンジンをかけ」「どこに向い」「どのような貢献をするか」の目線合わせをするためのものでした。面接プロセスのなかで把握したパイオニアの課題に対し自身がやるべきことを約30ページほどにまとめ、一次面談後と2時面談後に更新、経営陣に提案を繰り返し、実際の入社イメージを双方固めていったんですよ。そして、入社後は30日ごとにその成果、進捗をすり合わせていました。
「月1本以上の露出」の狙い サービスと人材の認知
── 自ら置かれたインナー目標とは、どのようなものでしたか。また、その背景を教えていただけますでしょうか。
石戸:「月1本以上の露出」を掲げていました。パイオニアにはIT人材がワクワクするようなIoTサービスやモビリティサービスにおけるデータがたくさんあるんです。しかし、それを私たちが知ってほしい人たちには届けられていなかった。そのため、1年目は知ってもらうために「月1本以上の露出」を掲げ動きました。
── 成果はどうでしたか。
石戸:1年間で15本、2年目はその2倍の進捗でメディア露出や登壇を実現しています。IT人材がワクワクする要素は複数あり、実際に認知が広がった実感もあります。CTO(Chief Technology Officer)の岩田和宏はじめ、パイオニアが長年蓄積してきたモビリティデータに責任を持つCDO(Chief Data Officer)の保田昌彦、新たなビジネスモデルの企画・開発を推進するNP事業部CMO(Chief Marketing Officer)の井上慎也など、これからモビリティ領域におけるさまざまな課題を「モノ×コト」で解決するソリューションカンパニーへと変革するために必要な多くの仲間が増えてきています。
とはいえ、周囲に聞くと「パイオニアって全然露出ないよね」という印象。もっと認知を広めて、もっと仲間を増やしていかなければならない。まだまだこれからですね。最初は自分自身が前面に出ましたが、これからは多層的にタレントが露出していくこと、そして人ではなく自社ニュースの露出もしていきたいと思っています。
社外への発信と社内への影響
社外発信までの準備
── 社外への発信をするにあたり、どのように進めてこられたのか教えていただけますでしょうか。
石戸:広報PR活動を行うにあたりまず行ったことは、「WHO」届けたい相手は誰か、「WHAT」その人が求めている価値は何か、「HOW」その価値との出会いはどう実現されるか、の検討です。
例えば採用広報の場合ですと、届けたい相手のイメージはできていたため、WHATとなる“届けるべき社内の価値”の理解を深め、HOWとなるSNSアカウントの開設など“届けたい相手との接点”を整えたんです。
次に行ったのは、2ヵ月で100人と1on1の実施です。パイオニアについて発信していくうえで、社員が「どんな思いで入社して、サービスにどんな想いをもって働いているか」、これを知らなければならない、と。各部門の部長陣と会話を重ね、その人たちから次に話す人を紹介してもらい、短期間でこの会社のこと、働く人のことを生の声から把握していきました。
そして、インタビューを受けたり登壇の場を重ね、選考に進んでくださる方に「こちらを読んでみてください」とご案内できるアーカイブを増やしていきました。
プレゼン資料やバーチャル背景からブランディングの統一
角谷さん(以下、敬称略):他にもこれまで当社でできていなかったプレゼンテーションツールの統一やオンラインのときのバーチャル背景をつくりましたよね。
石戸:これまで、プレゼンテーションスライドのテンプレートや使用するフォント、アイコン、カンパニーロゴなど各部門異なるものを使用していたんです。私が登壇する際に各部署から情報を集めて資料を作成するのですが、集まってくる体裁やパワーポイントのマスタ、フォントなどすべてがバラバラ。パイオニアの社員として、社外の人に会う際に見ていただく資料のデザインは統一させる必要があると思いました。オンラインでのやり取りが増えるなかで、使用する背景の統一もするべきだと。私から角谷に相談し、その後デザイン部部長の田中に相談をしたんです。田中も入社早々行った1on1でコミュニケーションした一人なんですよ。クオリティの高い16種ものバーチャル背景をつくってくれ、社外との打ち合わせのときはもちろん、社内でのミーティングのときにも「○○さんはこの背景が好きなんだね」と会話のきっかけになり、役立っています。
石戸:あとは、Tシャツやパーカーなどがあるか、社内で確認しました。すでにTシャツやパーカーをはじめ、会社を表現できるグッズはあったので、社内のWeb会議でも登壇や取材のときでも着るようにしましたね。
私たちが目指すモビリティーサービスカンパニーに必要なデータサイエンティストやエンジニア、デジタルマーケターなどの人材に親近感を感じてもらう狙いもあります。歴史がある会社ですし、スーツじゃないとダメなのではないかと思われることも多いのですが、私がこの装いでいることで印象が変わるんです。
Pickup!外部環境により促進された社内広報
── 社外へのブランディングが社内にも影響しているんですね。その他にも社内への影響はありますか。
角谷:セミナーへの登壇を通じ、これまでは露出していないメディアへの掲載も広がり始めました。それを社外だけでなく社内にも発信することで、社内から新たな登壇の話なども挙がるようになりました。
新型コロナウイルス感染症拡大も大きな影響でしたね。広報担当者としては、これまでやってきたようなインナーコミュニケーション施策が取れない。しかし、トップの想いや考えを伝えなければならない、という状況で、とにかく社長のメッセージを動画で配信しました。平常時であれば新社長として拠点に直接出向いて対話するところですが、それができない。そのため、「生活環境」「市況やコミュニケーションなどビジネス環境」「withコロナ、afterコロナでの取り組み」など、社長と国内外のグループ会社トップが対話する内容をパッケージ化して配信しました。
石戸が入社した際にも「なぜパイオニアを選んだのか」を語ってもらい、発信。先ほど名前が挙がったCTOの岩田にも。現在は動画配信がすっかり定着しています。経営層や事業責任者たちと社員との距離が近く感じる効果もあったようで、リモートワークによるチャット文化の浸透とも重なり、部門や役職、階層を超えてコンタクトを取るなどコミュニケーションが生まれているんですよ。
── 具体的には、どの部署の方からどなたに、どのようなコンタクトがあったのでしょうか。
角谷:エンジニアの若手社員からCTOの岩田に、ということがありましたね。
石戸:岩田のこれまでの経歴や今後目指しているものなどに直接触れたことで、自身の想いをぶつけたくなったんでしょうね。
角谷:石戸さんにもあるんじゃないですか。
石戸:全てに応えられてはいませんが、担当している事業部以外の企画チームやアライアンス担当、若手のエンジニアからなど。「日本で進めているものは海外でも通用するのか」と、海外のチームからもありましたね。社外への発信、社内への発信、両方あってこそ、社内のコミュニケーションにつながっています。
これからの広報PR
成果だけでなく文脈や過程、想いを伝えていくこと
── 広報PRについてお2人がこれから目指されていることや考えなどありましたら教えてください。
石戸:パイオニアには、歴史を知っているセールス担当、優秀な技術者がたくさんいます。今後は多層的にさまざまなパイオニアの社員を表に出していきたいと思っていて、最終的には全社員がサービスや会社に対しロイヤリティーをもち「こんなサービスをつくっているんだ」「この会社で働いているんだ」と自ら発信していってほしいと思っています。
そもそも、広報PRとは文脈や過程、想いを伝えていくものだと思っています。何か成果が出なければ、成功を成し遂げなければ広報PRしないとなると、あまりにもハードルが高い。大切なのは文脈であり過程、そしてその想いなんですよね。
人事のニュースもそうです。会社としても「なぜその人がそのポジションに就いたのか」という文脈や過程、想いを何かしらの形で発信していきたいと考えています。
人材が集まり、さらに社員のモチベートになること
角谷:少しずつではありますが、社内に変化がありました。「多層的にさまざまなパイオニアの社員を出していきたい」と石戸からあったように、商品やサービスを支えるエンジニアやその他の社員にもスポットを当て、これまで外部に出てこなかった「こんな人たちが活躍している」ということを対外的にも出していきたいと思っています。
現在、社外からのパイオニアのイメージは「オーディオやカーナビの会社」かもしれません。これを、数年後に「モビリティ領域におけるソリューションサービスを提供する会社」と認知されるためには、サービスを単にリリースしていても難しい。ですから今後は、パイオニアが面白いことに取り組んでいる、興味深い人材が集まっているなど、サービス以外のことを知ってもらう広報PRをしようとしています。そのことが、社員の目に映ったり、耳にすることで、自身の技術への誇り、モチベートにつながるといいですね。
<編集部コメント>
変革期を迎えているパイオニア。社外に対しても社内に対しても広報活動が重要であることをうかがい知ることができる取材でした。
最後に、1年で広報PR、採用、マーケティングそれぞれの分野で成果を出している石戸さんに、なにか決まってやっていることはないか尋ねました。
Pickup!石戸流 仕事と私生活のルーティーン
── 成果を出すために何かルーティーンはあるのでしょうか。
石戸:私のルーティーンというわけではありませんが、メンバーに対してと自分自身に対して、1社目の会社のころからやっていることがあります。「顧客」「学び」「テクノロジー」「ネットワーク」「PDCA」「経営視点」というカテゴリーにおいて、「自分はできているか」を自身で問う項目を用意してチェックすることです。短期間で取り組みを遂行する、成果を出していく、となると私がメンバー一人ひとりと常に対話できるわけではありません。このシートに沿ってセルフチェックを重ねることで、メンバーが自ら成長していくことを目的としています。
例えば、「顧客:今月新しいサービスを何個使ったか?そのサービスのよかったところは?」。これは、新しいサービスがどんどん出てくるなかで、さまざまなサービスに目を向けアンテナを張っているかをチェックする項目です。
「顧客:今月、自社のお客さま何人に話を聞いたか?」は、傾聴をチェックする項目です。私たちが聞かないといけないのはお客さまの声。それがないと、いくらサービスをよくしようとしても机上の空論になってしまいます。私も中期経営計画に向き合っている期間、忙しくて全く聞けていなかったりするので自戒の念を込めてメンバーにも話していますね。
このチェックリストは業界や職種問わず共通することがほとんどなので、昔からずっと使っています。
石戸:私生活で続けていることは、ひとりキャンプですかね。きっかけは、私は15年くらい無形商材であるデータ、テクノロジー関連の仕事をしていて、GoogleやイスラエスカンパニーのDatoramaなど最先端の技術やAIに触れる反面、Primitiveや自然を欲していくようになったのではないかと思います。セルフコントロールのために始めて5~6年になりますが、現実から少し距離を置いてリフレッシュできるのでおすすめですよ。
(撮影:近澤幸司)
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