コミュニティマーケティングとは、企業と顧客、または顧客同士の交流を通じて関係性を深めていく手法のことです。
本記事では、コミュニティマーケティングのメリット・デメリット、具体的な方法、成功させるためのポイント、そして実際の成功事例まで詳しく解説します。
コミュニティマーケティングに関心がある方、導入を検討している方はもちろん、ステークホルダーとのエンゲージメントを高めたい広報PR担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
コミュニティマーケティングとは
コミュニティマーケティングとは、企業と顧客、または顧客同士のつながりを重視したマーケティング手法です。共通の興味や関心を持つ人々が集まる「コミュニティ」を活用し、関係性を構築・強化することで、企業やブランドの価値向上を目指します。
従来の広告や宣伝とは異なり、顧客との双方向のコミュニケーションを重視し、長期的な関係構築を通じて、顧客ロイヤルティの向上やビジネスの成長につなげることが目的です。顧客のエンゲージメントを高め、ブランドへの愛着を育むことで、口コミによる自然な情報拡散も期待できます。
コミュニティマーケティングが注目されている背景
従来のマスマーケティングの効果が薄れる中、コミュニティマーケティングは顧客との深いつながりを築く手段として注目を集めています。その背景には、社会や情報環境の変化など、いくつかの複合的な要因があります。
まずは、コミュニケーションマーケティングが注目されている背景について解説します。
価値観の多様化
現代社会では、人々の価値観は多様化の一途をたどっています。大量生産・大量消費の時代が終わり、個々のニーズに合わせた商品やサービスが求められるようになりました。そのため、従来のように企業が一方的に情報を発信するだけでは顧客の心に響かなくなってきています。
コミュニティを通じて顧客と直接対話していくことで、多様なニーズを把握し、よりパーソナライズされた価値を提供することが重要になっています。画一的なアプローチでは顧客の共感を得にくくなっているため、コミュニティを通じて顧客の声に耳を傾け、関係性を深めることが不可欠になっているといえるでしょう。
情報収集の方法の変化
インターネットやSNSの普及により、人々は企業からの情報だけでなく、友人や知人、ほかのユーザーの口コミなど、さまざまな情報源から情報を収集するようになりました。企業が発信する広告の効果は相対的に低下し、ユーザーが自ら情報を取捨選択する時代になっています。
コミュニティ内で交わされる情報は、ユーザーにとって信頼性が高く、購買行動に大きな影響を与えます。企業はコミュニティを活性化させることで、ユーザー間の情報共有を促進し、自社の商品やサービスへの関心を高めることができます。
UGCの重要性の高まり
UGC(User Generated Content)とは、ユーザーによって生成されたコンテンツのことです。SNSの投稿、レビュー、ブログ記事などがUGCに該当します。
UGCは企業が発信する情報よりも信頼性が高く、ほかのユーザーの購買意欲に大きな影響を与えます。コミュニティはUGCが生まれやすい場であり、企業はコミュニティを運営することで自然な形でのUGC生成を促し、口コミによる情報拡散を期待できます。
UGCは広告に比べて費用対効果が高く、企業にとって重要なマーケティング資源のひとつだといえるでしょう。
コミュニティマーケティングを実施する3つのメリット
コミュニティマーケティングは、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。特に、顧客との関係性を深め、ビジネスの成長につなげるうえで重要な3つのメリットについて解説します。
メリット1.ロイヤルカスタマーを育成できる
コミュニティを通じて顧客と継続的にコミュニケーションを取ることで、ブランドへの愛着や信頼感を育み、ロイヤルカスタマーを育成することができます。
ロイヤルカスタマーは、競合他社に乗り換えにくく、長期にわたって自社の商品やサービスを利用してくれるため、安定した収益に貢献します。また、口コミやSNSなどで積極的に情報を発信してくれるため、新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
コミュニティ内での交流を通して、顧客はブランドに対する共感を深め、より強いつながりを感じるようになります。
メリット2.LTVを高めやすい
LTV(Life Time Value)とは顧客生涯価値のことで、一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額を表します。ロイヤルカスタマーが増えることで、顧客単価や購買頻度が向上し、継続期間などが延長され、LTVを高めることができます。
コミュニティでは、顧客は商品やサービスに関する情報を深く理解し、ほかのユーザーとの交流を通じて利用方法や活用事例などをシェアしていきます。その結果、商品やサービスへの満足度が高まり、継続的な利用につながりやすくなるといえるでしょう。
メリット3.商品やサービスの改善につながる
コミュニティは、顧客の生の声を聞くことができる貴重な場です。顧客からのフィードバックや要望を直接収集することで、商品やサービスの改善につなげることができます。
従来のアンケート調査などでは得られない、リアルな意見やアイデアを得られることが大きなメリットです。コミュニティ内で活発な意見交換が行われることで、企業は顧客のニーズを的確に把握し、より良い商品やサービスを提供できるようになります。顧客の声を反映することで、顧客満足度の向上にもつながります。
コミュニティメンバーの役割と種類
コミュニティにはさまざまな役割を持つメンバーが存在し、それぞれがコミュニティの活性化に貢献しています。一般的には、貢献度や参加度によっていくつかの種類に分けられます。
ここでは、「メンバー」「コミッター」「リーダー」という代表的な3つの役割について解説します。
メンバー
メンバーは、コミュニティに所属し、情報を受け取ったり、ほかのメンバーと交流したりする参加者のことです。コミュニティの基盤となる存在であり、数が多いほどコミュニティは活気づきます。
積極的に発言する人もいれば、情報収集をメインとする人もいるなど、参加の仕方はさまざまですが、コミュニティの活動を支える重要な存在です。まずはコミュニティに参加し、情報交換や交流を通じてコミュニティへの帰属意識を高めていくところからスタートします。
コミッター
コミッターは、コミュニティに対して積極的に貢献するメンバーのことです。情報発信、イベント企画、ほかのメンバーのサポートなど、さまざまな形でコミュニティの活性化に貢献しています。
コミュニティの中心的役割を担う存在であり、メンバーよりもコミュニティの運営に積極的に参加しようとする意識が高く、コミュニティの成長に大きく貢献してくれます。メンバーからの質問に答えたり、議論をリードしたり、コンテンツを作成したりしている人はコミッターだといえるでしょう。
リーダー
リーダーは、コミュニティの運営や方向性を決定する役割を担うメンバーのことです。コミュニティ全体のことを考え、長期的な視点を持って活動を推進します。コミュニティの目標設定、ルール策定、トラブル対応など、責任範囲は多岐にわたります。
リーダーは、コミッターの中から選出される場合や、企業側が任命する場合など、選出方法はコミュニティによって異なります。コミュニティの成功を左右する重要な存在であり、コミュニティの活性化と維持に責任を持つ役割だといえるでしょう。
コミュニティマーケティングの5つの方法
コミュニティマーケティングにはさまざまな手法が存在します。ここでは、代表的な5つの方法について、具体的な内容と効果を解説します。
方法1.コミュニティサイトの運営
「自社のコミュニティ」と聞いてイメージするのは、企業が運営する独自のコミュニティサイトではないでしょうか。その運営において、オンラインコミュニケーションツール、グループチャットなどの機能を通じて、メンバー同士の交流や情報共有を促進します。
商品やサービスに関する情報提供だけでなく、メンバー同士が自由に意見交換できる場を提供することで、エンゲージメントを高められます。過去の議論や情報を蓄積できるため、ナレッジベースとしても活用可能です。長期的な視点でコミュニティを育成していく場合に有効です。
方法2.ライブ配信
YouTube、Instagram、FacebookなどのSNSプラットフォームでライブ配信を行う方法でもコミュニティ活動ができます。リアルタイムで視聴者とコミュニケーションを取ることができ、双方向性の高い情報発信が可能です。
商品紹介、イベントレポート、質疑応答など、さまざまなコンテンツを配信することで、視聴者の関心を惹きつけます。アーカイブとして動画を保存することで、後から視聴することも可能です。臨場感や一体感を演出し、コミュニティの活性化につなげられます。
方法3.SNSの活用
X、Facebook、InstagramなどのSNSを活用しながらコミュニティを作る方法もあります。ハッシュタグを活用してコミュニティを形成したり、グループ機能を使ってメンバー同士の交流を促進したりします。ほかのマーケティング施策と連携しやすく、情報拡散効果も期待できます。
手軽に始められるのがメリットですが、プラットフォームのルールに依存するため、自由度は低い場合も。また、情報がストックされにくいので、必要に応じて別のツールと組み合わせて活用することがおすすめです。
方法4.オフラインイベント
リアルな場での交流イベントを開催する方法は、メンバーの熱量やロイヤルティを高められます。セミナー、ワークショップ、交流会など、さまざまな形式で開催可能です。
近年ではオンラインでのやり取りが普及し、場所を問わずに参加できることは大きなメリットではあるものの、やはり対面で時間を共有することは大きな意味があります。日常的にはオンラインコミュニティを運営している場合も、直接的なコミュニケーションを通じて、メンバー間のつながりを深める機会を作ることはおすすめです。
参加者同士の親睦を深めるだけでなく、企業と顧客の距離を縮める効果もあります。地域密着型のコミュニティ形成には特に有効です。オンラインとオフラインを組み合わせることで、相乗効果を生み出していきましょう。
方法5.プレスリリースを活用する
コミュニティの活動や成果をプレスリリースとして配信することもおすすめです。メディアへの露出を通じて、コミュニティの認知度向上や新規メンバーの獲得につなげられます。
イベント開催、新企画の発表、メンバーの成功事例紹介など、ニュース性のある情報を発信することで、メディアの注目を集めましょう。第三者からの評価によって、コミュニティの信頼性を高める効果も期待できます。ほかの広報PR活動と連携して行うことで、より効果を発揮するでしょう。
コミュニティマーケティングの3つの注意点
コミュニティマーケティングには多くのメリットがある一方で、実施していく際には注意すべき点もいくつか存在します。以下では、特に重要な3つの注意点について解説します。
注意点1.効果が出るまで時間がかかる
コミュニティマーケティングは、短期的な成果を求める施策ではありません。コミュニティの形成、活性化、そして成果につながるまでには、ある程度の時間が必要です。メンバー間の信頼関係構築、活発なコミュニケーションの醸成、ブランドへの愛着育成など、段階を踏んで進めていく必要があります。
すぐに効果が出ないと諦めてしまうのではなく、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。地道な活動を継続することで、徐々に効果が現れてきます。最初から長期的なプランを立てて取り組み始めるようにしてください。
注意点2.専門のスキルと知識が必要
コミュニティマーケティングを成功させるには、専門的なスキルと知識が求められます。コミュニティ運営、メンバーとのコミュニケーション、イベント企画、データ分析など、多岐にわたるスキルが必要です。
また、コミュニティの特性やメンバーのニーズを理解し、適切な施策を立案・実行する知識も重要です。担当者のスキル不足は、コミュニティの活性化を妨げ、期待した効果を得られない原因となります。必要に応じて、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
注意点3.複数チャネルの管理を実施する
コミュニティは、オンラインフォーラム、SNS、オフラインイベントなど、複数のチャネルで展開される場合があります。それぞれのチャネルには特性があり、適切な運用方法も異なります。複数のチャネルを効果的に管理し、一貫性のあるコミュニケーションを行うことが重要です。
チャネルごとの情報発信、メンバー管理、データ分析など、煩雑な作業が発生するため、適切なツールや体制を整えることが必要です。情報が分散しないよう、全体を俯瞰して管理する視点が求められます。
コミュニティマーケティングを成功させる3つのポイント
コミュニティマーケティングを成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、特に重要な3つのポイントについて解説します。
ポイント1.ユーザー目線で取り組む
コミュニティマーケティングは、企業主導で一方的に情報を発信するのではなく、ユーザー同士の交流や共感を重視する手法です。そのため、常にユーザー目線で物事を考え、ユーザーが何を求めているのか、どのような情報や体験を提供すれば喜んでくれるのかを理解することが重要です。
企業側の都合や利益ばかりを優先するのではなく、ユーザーにとって有益なコミュニティを提供することで、長期的な信頼関係を構築できます。ユーザーの視点に立ち、彼らが本当に必要としている情報や交流の場を提供することが、コミュニティの活性化につながります。
ポイント2.長期視点で取り組む
すでに解説したように、コミュニティの形成と活性化には時間がかかります。短期間で目に見える成果を期待するのではなく、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。
コミュニティメンバー間の信頼関係を築き、活発なコミュニケーションが生まれるまでには、ある程度の時間が必要です。焦って施策を乱発したり、短期的な成果ばかりを追い求めたりすると、コミュニティの成長を阻害する可能性があります。じっくりと時間をかけてコミュニティを育てていく意識が大切です。
ポイント3.コミュニティメンバーを報酬で釣らない
インセンティブや報酬でメンバーを釣るような行為は、コミュニティの健全な成長を妨げる可能性があります。報酬目当てで参加するメンバーは、コミュニティへの愛着や貢献意識が低く、長期的な関係構築にはつながりません。むしろ、コミュニティの雰囲気を悪くしたり、ほかのメンバーのモチベーションを下げたりする可能性があります。
コミュニティへの参加自体が価値のあるものであり、メンバーが自発的に貢献したいと思えるような環境を作ることが重要です。報酬ではなく、共感やつながりを重視することで、質の高いコミュニティを形成できます。
コミュニティマーケティングの成功事例
コミュニティマーケティングは、さまざまな業界で成功事例が見られます。ここでは、特に有名な3つの成功事例を紹介し、それぞれの特長や成功要因を解説します。
事例1.無印良品
無印良品は、「MUJI passport」というアプリを中心に、オンラインとオフラインの両方でコミュニティを形成しています。
オンラインでは、アプリを通じて、商品レビューの投稿、店舗へのチェックイン、イベント情報の発信などを行っています。特に、「IDEA PARK」というコーナーでは、ユーザーが商品のアイデアを投稿し、実際に商品化されることもあります。
オフラインでは、店舗でのワークショップやイベントを積極的に開催し、ユーザー同士の交流を深めています。
無印良品の成功要因は、ユーザー参加型の企画を多く実施することで、ユーザーのエンゲージメントを高めている点です。ユーザーが商品開発に携わることでブランドへの愛着が深まり、ロイヤルカスタマーの育成につながっているといえるでしょう。ユーザーの声を真摯に受け止め、商品開発に反映する姿勢が、コミュニティの活性化に大きく貢献しています。
そのほか、地域課題の解決に向けて、店舗周辺の住民との対話の場を設ける「タウンミーティング」も開催しています。
参考:地域課題の解決に向けた対話の場「タウンミーティング」を2025年も開催
事例2.AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)
AWSは、クラウドコンピューティングサービスを提供する企業として、技術者向けのコミュニティに力を入れています。オンラインでは、フォーラム、ブログ、ドキュメントなどを通じて、技術情報の共有や質疑応答を行っています。また、「AWS User Group」という世界各地のユーザーグループが活発に活動しており、オンライン・オフラインで勉強会や交流会を開催しています。
オフラインでは、大規模なカンファレンス「AWS re:Invent」を毎年開催し、世界中から多くの技術者が集まります。
AWSの成功要因は、技術者同士のつながりを重視し、専門的な情報交換や学習機会を提供することでコミュニティを活性化していることです。ユーザーグループの活動を積極的に支援し、コミュニティ主導の活動を促進している点も特長です。高度な技術情報が集まる場を提供することで、AWSのエコシステム全体の発展に貢献しています。
事例3.LEGO
LEGOは、子どもから大人まで幅広い層にファンを持つ玩具メーカーとして、熱心なファンコミュニティを形成しています。オンラインの「LEGO IDEAS」というプラットフォームでは、ユーザーがオリジナルのLEGO作品を投稿し、ほかのユーザーからの投票によって商品化される企画があります。
以下は、実際に、ファンのアイデアで実現したアイテムが販売された事例のプレスリリースです。
参考:ファンのアイデアで実現した、実際に弾くことができるレゴ 鍵盤やハンマー、ペダルなど細部まで忠実に再現 レゴ®アイデア グランドピアノ セット
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また、SNSやフォーラムを通じて、ファン同士の交流や情報交換が行われています。オフラインでは、LEGOのイベントや展示会が世界各地で開催され、ファンが集まる場となっています。
LEGOの成功要因は、ユーザーの創造性を刺激する企画を多く実施することでエンゲージメントを高めていることです。特に、「LEGO IDEAS」は、ユーザーが商品開発に参加できる仕組みとして非常に成功しており、ファンの熱意を商品開発に活かしています。ファン同士の交流を促進する場を提供することで、ブランドへの愛着心を高めている事例だといえるでしょう。
コミュニティマーケティングで顧客との関係を強化しよう
コミュニティマーケティングは、顧客との長期的な関係を構築し、ブランドへの愛着を高めるための有効な手段です。顧客同士のつながりを促進し、企業と顧客間の双方向のコミュニケーションを活性化することで、顧客ロイヤルティの向上、LTVの向上、商品やサービスの改善など、さまざまな効果が期待できます。
効果が出るまでには時間がかかりますが、ユーザー目線を忘れず、長期的な視点で取り組むことで、必ずビジネスに貢献するでしょう。ぜひ、本記事を参考にコミュニティマーケティングを実践し、顧客との強固な関係を築き、ビジネスの成長につなげてください。
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