広報PR担当者なら、一度は広報PR活動の目標設定に悩んだことがあるのではないでしょうか。中には、まだ明確な目標設定ができないまま施策をしてしまっている人もいるかもしれません。
広報PRは成果を数値化しづらい活動だからこそ、進捗や自社への貢献度を周囲に理解してもらうために目標設定が必要不可欠です。
今回は、広報PR活動の目標やKGI・KPIを決めるためのポイント、設定例をご紹介します。
広報PR活動に目標設定やKGI・KPIは必要か
冒頭でも解説したように、広報PR活動において目標設定やKGI・KPIの設定は必要です。広報PR担当者が企業とステークホルダーの信頼関係を構築するためには、目標設定と効果検証を繰り返してPDCAを回さなくてはなりません。
目標とする数値がなければ、施策の効果があったのか検証することが難しくなります。施策の効果検証や、予算の分配のためにも、数値化された目標設定や、KGI・KPIの設定は行うようにしましょう。
広報PR活動におけるKGI・KPIの例
目標設定に使われる概念には、以下のようなものがあります。
KGI:Key Goal Indicatorの略。目標を数値で表したもの
KPI:Key Performance Indicatorの略。KGI達成のためにもっとも重要な要因(CSF:Critical Success Factor)を数値で表したもの
採用広報における目標設定を例に考えてみましょう。
「求人への応募を増加させる」ことを目標(Goal)とする場合、KGIは「求人への応募率を前年比120%にする」などと置けます。
求人への応募を増加させるためのプロセスにおいて、最重要ファクターを「自社の採用ページへのアクセスを増やす」と置いた場合、KPIは「採用ページのPV数を前年比130%増加させる」などと置けるでしょう。
このKPIを基準に、採用のターゲットとなる層が日頃触れるメディアを調査し、媒体研究を行ったうえでプレスリリースを配信したり、メディアプロモートをしたりと広報PR活動を実施します。
【参考】
目標設定に使われる概念として、「OKR」というフレームワークも存在します。
KGIとKPIが部署・プロジェクトの目標の達成度チェックのために用いられるのに対し、OKRは組織(企業)の目標と個人の目標をリンクさせることを目的に用いられます。
OKRの詳細は、以下の記事からご確認ください。
広報PR活動で目標やKGI・KPIを設定する効果やメリット
広報PR活動で目標やKGI・KPIを設定することは、広報PR活動の改善につながるだけではありません。
成果を可視化しづらい広報PRの領域において、目標設定やKGI・KPIがあることで社内評価しやすくなります。他部署や経営層からも広報PRの業務への理解を獲得しやすくなる効果もあります。
広報PR活動の効果を測定する方法や指標については、別途こちらの記事で解説しています。
広報PR活動の目標やKGI・KPIを決めるときの5つのポイント
広報PRの目標やKGI・KPIを決めるときは、どんなことに気をつければよいのでしょうか。5つのポイントをまとめました。
ポイント1.Goal→KGI→CSF→KPIの順で逆算して設定する
「まずKPIを設定しなければ」と考えている方もいるかもしれません。KGI・KPIの概念を正しく理解し効果的に活用するのであれば、はじめに決めなければならないのは「最終的に到達したいゴール」です。最終的に到達したいゴールが決まったら、それを表現できる指標を決め、数値目標(KGI)として設定します。
KGIが定まったら、現状の数値を分析し、KGIとどれほどのギャップがあるのかを確認します。そのうえで、ギャップを埋めるためのプロセスを整理してもっとも重要な段階を絞り込み、その段階においてどのような状態を目指すか(CSF)を決めます。CSFが決まったら、それを表現できる指標を決め、数値目標(KPI)として設定する、という流れです。
KPIばかりに目が行きがちですが、必ず「最終的に到達したいゴール」から逆算して考えるようにしましょう。
ポイント2.コントロール可能かつ入手しやすい数値を指標にする
最終目標やCSFを数値目標に落とし込む際、自社だけでコントロールできない指標(景気動向指数や有効求人倍率など)を目標に置かないよう注意が必要です。たしかにそうした国家や世界全体の動向を表す指標は、目標に到達するための重要な数字ではありますが、一企業が左右できるものではありません。数値を変化させることは非常に難しく、運用が成り立たなくなってしまうでしょう。
また、素早くPDCAを回すためには、指標となる数値は即時に入手できるものでないといけません。自社や自部門で取得できる数値を設定するようにしましょう。
ポイント3.KPIはもっとも重要な数値のみに絞る
KPIは、最終目標を達成するためのもっともクリティカルな要素(CSF)を数値で表したものです。CSFは「もっとも」重要なひとつに絞られるため、KPIも必ずひとつに絞られます。
見るべき数値が多岐にわたっていると、目標に向けた進捗がうまくいっているのか、うまくいっておらず打開策を打つべきなのか判断しづらくなってしまいます。また、数値がたくさんあると、日ごろから意識して活動しづらいというデメリットもあります。
ポイント4.自社の広報PR活動の成熟段階に合わせて設定する
自社の広報PR活動のフェーズに合わせて目標を設定することも重要です。フェーズによって目指すべき状態が異なるため、自社の状態を客観的に踏まえて目標を検討しましょう。
広報PR活動のフェーズは、おおまかに、
- 自社の知名度を高めていくため、さまざまな情報を頻繁に発信する段階
- パブリシティが常に一定程度獲得できるようになり、質の高いパブリシティを獲得するために行動していく段階
- 他部門と連携してステークホルダーへ発するメッセージを統一し、企業としてのブランド価値を高めていく段階
の3つに分けられます。
高すぎる目標や低すぎる目標を設定すると効果的・効率的な活動ができないため、自社のフェーズに合った目標値を設定しましょう。
ポイント5.KPIを3種類に分解する
ポイント3で「KPIはもっとも重要な数値のみに絞る」と伝えましたが、広報PRにおいては活動が結果に直結しないことも多くあります。
そのため、広報PR活動の効果指標としてKPIを設定する際は、KPIを「行動目標」「露出目標」「成果目標」の3種類に分けて管理するといいでしょう。
具体的には、
- プレスリリースの配信件数やメディアリレーションズの新規獲得数など、自分たちの行動の数を示す「行動目標」
- メディアの掲載件数や取材件数など、自社に関する情報がメディアに掲載・報道された数を示す「露出目標」
- 企業や商品・サービスの指名検索数や自社に関連したSNS投稿の件数など、結果的にステークホルダーに対して影響を与えた度合いを示す「成果目標」
の3つです。
広報PR活動の目標として設定するKGIの例
ここからは、広報PR活動におけるKGIとして、どのような数値を指標として設定するのが望ましいのか、具体的な例をご紹介します。
1.ブランド好感度
企業やサービス・商品の認知度向上という役割を担う広報PR担当者は、企業や商品のブランドに対する好感度を目標数値に設定するとよいでしょう。好感度は売上の増加にもつながるため、他部署や経営陣からも納得されやすい指標です。
好感度調査は専門の調査会社に依頼して実施することが多いです。
2.従業員満足度
社内広報PRを担っている広報PR担当者は、従業員満足度を目標に設定するとよいでしょう。
社内広報を通じて企業へのエンゲージメントを高められていれば従業員満足度は高まり、人材の長期的な定着や業績の向上につながります。
従業員満足度は、専門の調査サービスを利用する以外にも、社内でアンケートフォームなどを活用して調査することができます。
3.求人の応募数
採用広報を担っている広報PR担当者は、求人の応募数を目標に設定できます。採用広報は、就職や転職を希望している人材に加えて、就職・転職意向のない潜在的な採用候補者も含めた関係構築を行います。
母集団を形成し応募数を増加させることは、優秀な人材の獲得につながる重要な採用広報の成果です。
広報PR活動の効果を測るKGIの例
広報PR活動のKPIとして設定できる指標には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的な例をご紹介します。
いずれの場合も、KGIを達成するうえでの最重要プロセス(CSF)を表したものとなっているかどうかが重要です。
1.メディア掲載件数
メディア掲載件数は、広報PR活動のKPIとしてよく使われる指標のひとつです。
一方で、一口に「メディア掲載」と言っても、新商品の概要だけを紹介する記事とインタビューも含めた記事では与えるインパクトは大きく異なります。どのようなメディアにどのような記事が掲載されたのか、件数と同時に質に関してもチェックしたいところです。
2.口コミサイトにおける好意的な口コミの件数
口コミサイトで好意的な投稿が多い商品やサービスは、信頼できると判断されて購入・利用の確率が高まります。特にECサイトにおける購買行動では、口コミが重要視される傾向があります。
企業のファンを増やして口コミサイトでの好意的な口コミを増やすことも、広報PR活動のプロセスにおいて重要です。
3.SNSでの好意的な投稿の件数
第三者がSNSで自社に関する好意的な発信をしてくれると、身近な存在からのより信頼できる情報として生活者に受け取られる可能性が高くなります。
SNSアカウントのフォロワー数をKPIとして設定している方も多いかもしれませんが、発信力の高いファンづくりという観点では、好意的な投稿の数をチェックするとよいでしょう。
4.オウンドメディアやサービスサイトのPV数・コンバージョン数
オウンドメディアやサービスサイトは、自社や商品・サービスについて知る入り口となる場です。PV数や流入経路の割合などを追うことで、ステークホルダーの自社に対する認知や関心の推移を確認できるでしょう。
ブログサイトであれば回遊率や読了率、ECサイトであればコンバージョン数など、自社の運用しているメディア・Webサイトに合った指標を設定してください。
5.NPS®
NPS®は「ネットプロモータースコア」の略で、「商品やサービス、あるいは企業を、友人や家族などに推奨したい度合い」を11段階で評価してもらう調査です。
ブランドへの愛着や信頼を数値化することができるため、自社や商品・サービスが顧客からどの程度理解され信頼されているかを示すわかりやすい指標といえます。
目標を設定し、広報PRの成果を可視化しよう
広報PR活動において、目標設定やKGI・KPIは重要です。
広報PR担当者が企業とステークホルダーの信頼関係を構築するためには、目標設定と効果測定を繰り返してPDCAを回さなくてはなりません。
さらに、成果を可視化しづらい広報PRの領域において、目標設定やKGI・KPIがあると社内評価がしやすくなり、他部署や経営層からも広報PRの業務への理解を獲得しやすくなる効果があります。
目標設定とKGI・KPIに関する考え方や、紹介した具体例を参考に、5つのポイントに気を付けて目標設定を行ってみてください。
参考文献:『最高の結果を出すKPIマネジメント』(中尾隆一郎)
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報活動の目標設定やKPIの立て方に関するQ&A
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