メディアに向けて企業の情報を発信する記者会見。会場のセッティングから司会などスタッフの手配、当日・後日のメディアのフォローまで、多くの準備が必要です。
この記事では、記者会見を成功させるまでの10のポイントを解説します。
記者会見を広報PR担当者が準備するときの10のポイントとは?
記者会見を開くときには、広報PR担当者がリーダーやメンバーとしてプロジェクトを進行することが多くあります。広報PR担当者として知っておきたい記者会見の準備方法を確認しましょう。ここでは、【事前】【当日以降】のそれぞれのタイミングで必要な準備のプロセスを、10のポイントに分けて解説します。
1.会見の内容・開催日程の決定
まずはじめに、記者会見の内容と開催日程を決定します。
記者会見は多くの場合、企業の経営、あるいは商品やサービスに関する情報発信となるでしょう。記者会見の内容を決定する際には、開催目的として「誰に、何を、どのように伝えるのか」を明確にすることが大切です。
記者会見の日程は、ある程度の余裕を持って開催できる場合もあれば、コンプライアンスに関わる問題などの場合は準備時間が十分にないまま開催しなければならないこともあります。また、緊急で開催する場合には、社内外の情報を正確かつ迅速に収集・整理して、臨機応変に対応することが求められるでしょう。
いずれの場合でも、記者会見の内容に応じて他部署と情報の連携をしながら、慎重に内容と開催日程を決定してください。その際は、メディアが集まりやすい時期や曜日、時間帯を考慮することをおすすめします。
2.スケジュール・担当者決定
開催日程が決まったら、そこから逆算して準備も含めた全体のスケジュールを決定します。後述するように、記者会見の開催にあたってはさまざまなタスクが発生しますし、タスクごとに担当者も必要です。広報部門だけでの対応が難しい場合には、部署の垣根を越えて協力を求めたり、プロジェクトチームを立ち上げたりするとよいでしょう。
3.会場の下見・予約
開催日程が決まったらすぐに動き出したいのが、会場の下見と予約です。メディアリストなどからおおよその来場人数を仮定して、以下のパターンを中心に選びましょう。
- 自社オフィス・会議室
- カンファレンスセンターなどの貸し会議室
- ホテルの宴会場
- 記者クラブの会見室
記者会見に使えるほど広い会場は、数ヵ月先まで予約で埋まっていることも。空き具合や会見の内容を考慮して会場を洗い出し、なるべく早めに確保しましょう。
また、最近では多くの会場がWeb予約にも対応していますが、予約を確定する前に一度実際に現地へ足を運び、広さや構造、照明・スクリーンなどの設備が条件を満たすかどうか確認することをおすすめします。リアルタイムで会見の動画を配信する場合は、電波や回線の状況を確認することも大切です。
記者クラブなどで行われる記者会見は、数週間前から準備をするのがベターです。例えば、東京証券取引所で開催された上場時の記者会見は、2週間前に許可が下りたケースもあります。
4.会見者・司会者の手配
記者会見には、メディアに向けて説明をする「会見者」と、全体の進行を担う「司会者」が必要です。
多くの場合、記者会見の主体である「会見者」を担当するのは企業側の責任者です。選出基準は、
- メディアに正確な情報を伝達できること
- 発表内容やニュースに詳しい事業分野の責任者であること
- 記者の質問に臨機応変に対応できること
などを考慮するとよいでしょう。また可能なら2名以上を選出し、想定外の質問があった場合にフォローしあえる環境を用意しましょう。
司会者は、フリーアナウンサーや司会を専業とするプロに依頼するのが一般的ですが、広報PR担当者が担当することもあります。いずれの場合でも、台本通りに落ち着いて進行できれば問題ありません。
5.メディアへの案内・出欠確認
で策定した会見の目的(誰に、何を、どのように伝えるのか)に合わせて、情報を伝えたいメディアを選定して、記者会見の案内を送ります。
案内にあたっては、以下の内容を盛り込んだ案内状を用意します。
- 開催日時・場所
- 入場開始の時間(記者・カメラそれぞれ)
- 会見の趣旨
- 登壇者(会見者)
- 出欠の締め切り日時
- 出欠確認欄
- 窓口となる担当者の連絡先
メールやFAX、記者クラブへの投げ込み、プレスリリース配信など、案内状の届け方は、メディアごとに適した方法を選択してください。
また、会場のキャパシティに限りがある際は、1社あたりの最大参加人数に制限をつける必要があります。
6.資料・備品の準備
続いて、資料と備品を準備します。例えば以下のようなものをリストアップして、担当者間で準備できたかどうかをチェックしましょう。
資料 | 台本 |
想定問答集 | |
投影用のプレゼンテーション資料 | |
メディア配布用の資料 | |
メディア配布用の席次表 | |
備品 | マイク |
椅子 | |
案内用のプラカード | |
会見者の名札 | |
飛沫防止パネル |
記者会見では、社内で共有する台本とメディア配布用の資料の内容、および発言に誤りがないよう、細心の注意を払わなければなりません。
前営業日までに、関係者全員でタイムスケジュールを含めて打ち合わせを行います。ここで台本の読み合わせまで行いましょう。打ち合わせができない場合は、用意するデータや言い回しについて矛盾や修正点がないか、複数の担当者と何度もダブルチェックしましょう。出席する担当者の名前や役職も、漢字の誤りなどがないか確認する必要があります。
また、想定問答集は可能な限り多くの質問を想定して作成しましょう。社内の関係者による確認だけでなく、法務担当者や顧問弁護士など、法律やコンプライアンスに詳しいメンバーにも確認してもらうと安心です。
備品は、本番当日の流れをイメージしながら、必要なものを洗い出しましょう。社名ロゴを印刷した背景パネルも必要になるかもしれません。会見用の「備品リスト」を作成しておくと、何度も作り直す必要がなく、漏れ・ダブりの防止にもつながります。
7.リハーサルの実施
資料が出来上がったら、リハーサルを実施します。台本を用意していても、いざ本番となると何かとトラブルが発生してしまうものです。必ずリハーサルを行って、音響やライティング、スクリーンの動作を確認しましょう。記者からの想定質問を読み合わせで確認することも大切です。
リハーサルを行うと、当日までに修正すべき点や不足している資料・備品がわかることも多いです。受け答えのポイントを含め、余裕を持って修正するためには、なるべく前営業日、遅くとも当日の会見数時間前までには済ませましょう。本番に参加する会見者と司会者を交えて実施できると、精度が高くなります。
8.会場のセッティング
会見前日~当日を迎えたら、会見者や司会者の位置の目張り、投影用機材の設置、メディア向けの案内板の設置など、会場のセッティングを行います。トラックなどでの搬入が必要な大きな備品については、あらかじめ業者との間で搬入時刻や場所を確認しておきましょう。
予定していたセッティングに加え、当日現地で「追加すべき」「省くべき」と判断したセッティングがあれば、臨機応変に対応してください。特に、大勢集まることが多いメディア向けの動線案内は、丁寧にセッティングしておくと混乱を防げます。
会見直前に、記者やカメラマンから「パネルの位置を微調整できないか」「マイクが顔にかぶる」などの指摘が入ることもあるでしょう。メディアの意見もヒアリングしながら、柔軟に対応しましょう。
9.会見の実施
いよいよ会見が始まります。「事実に基づいた正確な情報を丁寧に伝えること」が何より大切です。メディアが意図的に想定外の質問を投げかけてくる可能性も、ゼロではありません。そのようなときは、担当者の臆測で回答して誤った情報を与えないように気を付けましょう。
事実と異なる情報が世の中に拡散されるよりは、「調べたうえで、回答させていただきます」と答えるほうがリスクが低いです。そして、後々回答する必要があるときのために、質疑応答を含めた発言は、すべて記録しておきましょう。そのほかの部分は、用意した台本や想定問答集に沿って冷静に対応するように心がけてください。
10.アフターフォロー
会見が終了したら、メディアへのフォロー連絡やレポート作成、効果測定、自社サイト・SNSでの報告などを行います。
特にメディア記者へのフォローは、掲載の有無にかかわらず重要です。会見後に質問があった場合には責任を持って対応する、あるいはメディアに掲載された場合にはお礼や感想の連絡をするなど、広報PR担当者がやるべきことはたくさんあります。それが、結果的にリレーションの維持にもつながるでしょう。
自社内での検証のために必要なレポート作成や効果測定においては、以下のような定量的・定性的な指標を調べて、反応を分析してみましょう。次回以降の記者会見でも、「1.会見の内容・開催日程の決定」から「9.会見の実施」までの行程で改善を行いつつ、PDCAを回しやすくなります。
【効果測定に役立つ指標】
定量的 | 参加者数(現場・オンラインそれぞれ) |
会見の内容に関連したキーワードの検索ボリューム | |
パブリシティ数 | |
視聴完了率(オンライン) | |
途中で退席した人数(現場の退席率) | |
会見後の問い合わせ数 | |
定性的 | 参加者の属性 |
アンケートの反応や、質疑応答で挙がったリアクション・言葉 | |
SNS上でのリアクション | |
パブリシティの内容・ニュアンス(プラスかマイナスか、見出しはどのような言葉か) |
記者会見を開くときに広報PR担当者が注意するべきポイント
記者会見を開く際、広報PR担当者はどんなことに注意するべきでしょうか。正しい情報を適切にメディアへ伝達するための4つのポイントをご紹介します。
1.リーガルチェックを忘れない
記者会見で重要なのは、正確性です。正確性を担保するためには、「事実かどうか」という視点に加えて「コンプライアンスに違反していないか」も確認しなければなりません。想定問答や資料の確認では、積極的に法務担当者や顧問弁護士の協力を仰ぎましょう。
2.メディアが集まりやすい曜日・時間帯を考慮する
記者会見で発信する情報は、メディアを通じて世の中に広がっていきます。まずメディアに来てもらわなければ、会見をする意味がない、と言っても過言ではありません。
平日の夕方・夜のニュースでの露出を狙うなら平日の午前〜昼に会見を実施するのがよいでしょうし、翌日が休日となる金曜日・土曜日や祝前日は避けたほうがよいと判断できます。いずれにしても、自社の都合だけでなく、メディア側が集まりやすい曜日・時間帯を十分に考慮して開催日程を決定しましょう。
3.リスクへの対処法をあらかじめ決めておく
台本や想定問答を用意していても、予期せぬ質問や答えに窮する質問が飛んでくる可能性は、ゼロにはできません。
会見者が答えられない質問についてはいったん「確認中」として会見の最後にまとめて答えたり、それに対処できるよう、念のため社内の担当者のスケジュールを押さえておいたりするなど、対策を講じておきましょう。
想定と異なる方向性でメディアに掲載されてしまったり、誤報となってしまったりするリスクもあります。会見後のメディア掲載の状況を広報PR担当者が逐次確認し、そのような事態に気付き次第コンタクトを取って訂正情報を流してもらう、などの対応が必要です。
4.コロナ禍での開催には最大の注意を払う
最近の記者会見の実施でもっとも注意したいのが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策です。可能ならオンライン開催にしたり、やむを得ずオフラインで開催する場合には消毒の徹底や飛沫防止のアクリル板設置、密を避けるために席の間隔をあける、などの対策をしてください。
入念な準備と臨機応変な対応で記者会見を成功させよう
記者会見の開催にあたって、「ミス」や「想定外の出来事」をまったくゼロにするのは大変難しいことです。しかし、この記事で解説してきた通り、「想定外を想定しておく」ことはできます。入念な準備と臨機応変な対応で、記者会見を成功させてくださいね。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
記者会見の開き方・やり方とは?会場や司会はどう押さえる?
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする