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ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いや、採用を進めるときのポイントを紹介

近年、ジョブ型雇用というキーワードを、よく耳にするようになったという方は多いのではないでしょうか。

本記事では、リモートワークが普及し、急速に需要が高まるジョブ型雇用について詳しく解説しながら、メンバーシップ型雇用との違いや、ジョブ型雇用に基づいた採用のポイントを紹介します。

ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用とは、企業が採用時に職務や勤務地、勤務時間や給与を明確に決めて雇用契約を結び、成果で評価する雇用方法を指します。主に欧米諸国で広く普及しているため、欧米型の雇用方法として紹介されることがありますが、世界的に見るとジョブ型雇用がスタンダードになっています。

雇用のベースとなるのは採用時における雇用契約のため、その契約に即した勤務を行うことが条件となります。したがって別部署への異動や職務転換はなく、変更が生じる場合には、新たに雇用契約を結ぶ必要があります。

メンバーシップ型雇用とは?

一方、メンバーシップ型雇用は、職務や勤務時間、勤務地などを限定しない、日本で最も普及してきた雇用方法といえます。たとえば、新卒一括採用時に「総合職」として多くの人を雇い、研修などを通して配属を決めるのがメンバーシップ型雇用です。

いわゆる年功序列、終身雇用を前提としており、職務や勤務地をローテーションすることで、1社に長く在籍することを目的とした制度です。

違いとは?

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

では、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用には、どのような違いがあるのでしょうか。

1.契約面の違い

メンバーシップ型雇用は企業に入社する”という観点で契約が交わされるのに対し、ジョブ型雇用は職務に基づいた契約が交わされます。入社時、入社後に就く職務に即した契約のため、契約以外の業務を行うことはありません。

また、万が一異なる職務に就く場合には、新たに雇用契約を結ぶ必要があります。しかしジョブ型雇用の場合、人事部に人事異動を命じる権限がありません。したがって本人の希望がない限りは、給与や待遇などの条件をはじめとした改定や、雇用契約の結び直しがされにくいといえます。

2.報酬面の違い

ジョブ型雇用の場合、雇用契約に基づいた報酬が支払われます。報酬は成果に紐づいており、定められた目標などを達成できるか次第で報酬が決まります。よって、人事評価との相関性を判断しやすい点が特徴です。

メンバーシップ型雇用の場合、年功序列となっている場合が多く、成果に関係なく昇給が発生する場合がほとんどです。成果に重点を置いているジョブ型雇用とは大きく異なるといえます。

3.昇給面の違い

ジョブ型雇用で昇給するためには、より専門性を高めておくこと、現在よりも高いポジションが空くタイミングを待つ必要があります。また、昇給の際には新たに雇用契約を結ぶ必要があります。ジョブ型雇用の昇給は転職のような側面があり、新たに違う職種に就くような感覚です。

一方、メンバーシップ雇用の場合、雇用契約の更新などはなく、状況や成果によって昇給していきます。

4.離職面の違い

ジョブ型雇用は職務に紐づいてポジション募集がされているため、企業内で職務が必要なくなった場合には、転職せざるを得ません。もしくは異なるポジションで同じ企業に雇ってもらうということも考えられますが、ジョブ型雇用の強みを活かした採用手法とは言い難く、転職するのが一般的です。

メンバーシップ雇用の場合、職務が無くなった場合には、異なる職務が用意されるのが一般的です。この点が大きな違いとなっています。

ジョブ型雇用が注目されている理由・背景

では、どのような理由でジョブ型雇用は注目を集めているのでしょうか。

1.国際競争力の強化

第一に、国際競争力の強化という観点が挙げられます。

従来のメンバーシップ型雇用の場合、ジェネラリスト育成には繋げやすいですが、スペシャリスト育成は難しいと考えられています。近年、日本は経済後進国ともいわれており、世界市場で戦うことができるビジネス力強化が喫緊の課題です。ビジネス力を極めるという観点に立つと、スペシャリスト育成は必須事項です。

入社時から専門領域に特化した教育を行うことで、エンジニアやマーケターなど、専門性が高く経験が求められる職種の人材を育成し、国際競争力を高めることができるのです。

2.少子高齢化の加速

少子高齢化が加速することにより、一人あたりに求められる業務量や知識量が大きくなっています。副業や複業が浸透してきている背景を見ても、給与を稼ぐという観点に留まらず、一人ひとりが担う業務量が増えていることが分かります。

今後さらに少子高齢化が進む中で、自身のスキルや経験における専門性を高めていきたいと考える人は多いでしょう。

また、働く年数も長くなり、60歳が一般的だった定年の年齢は、どんどん上乗せされていく可能性があります。長く第一線で働き続けるためにも、専門性の獲得は必須事項なのです。

3.リモートワークの普及

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、リモートワークが普及しました。働く場所や時間が自由になった一方で、マネジメントする側の負荷が上がっています。

オフィスでの就業と異なり、どのような仕事をしているのか直接確認することができません。よって従業員それぞれの役割を明確にする必要が生じています。

役割が明確になれば、成果を適切に判断することが可能です。業務の過程ではなく成果で判断することで、マネジメントする側の負荷は大きく軽減することができます。

今後もリモートワークが普及していけば、ジョブ型雇用は必然的に増えていく可能性が高いといえます。

ジョブ型雇用のメリット・注意点

では、ジョブ型雇用にはどのようなメリットや注意点があるのでしょうか。

メリットデメリット

企業にとってジョブ型雇用のメリット

まず、企業におけるジョブ型雇用のメリットをご紹介します。

メリット1.雇用のミスマッチを防ぐことができる

ジョブ型雇用の場合、雇用前に職務に基づいた雇用契約を結びます。実際の業務は雇用契約書に即した形で行われるため、業務内容におけるミスマッチが生じる可能性が極めて低いといえます。

そのためには、実施する業務内容を雇用契約書にしっかりと明示する必要があります。候補者が入社する前にポジションをつくり、募集を行うタイミングで自社内の業務整理が十分にできている必要があるのです。万が一、雇用契約書外の業務を依頼する場合、新たに雇用契約書を結び直す必要があります。

入社前に丁寧に業務のすり合わせを行っているという点から、雇用のミスマッチは生じにくいでしょう。

メリット2.職務を全うできる実力者を採用しやすい

業務内容を明示した形で募集を行うため、業務を確実に遂行できる人を採用することができます。したがって、即戦力を採用しやすいのがジョブ型採用におけるメリットです。

採用前に取り交わした業務を遂行できない場合には、雇用契約を書き換える、もしくは他の人を雇用するといった対応を行うこともできます。企業・候補者双方が納得した上で業務をすすめることができるため、健全な関係性を保ち続けられる可能性が高いです。

メリット3.スペシャリストとして育成できる

ジョブ型は、スペシャリスト育成に優れています。決められた業務を全うしてもらうことができるため、業務における専門性がどんどん高くなることが期待できます。

また、スペシャリストを育成するという観点に立ち、必要に応じての研修を受講してもらうなど、スキルアップを依頼することができます。

より自社に貢献してもらうことができる人材育成という観点で、ジョブ型雇用は非常に有効なのです。

企業にとってジョブ型雇用の注意点

では、ジョブ型雇用にはどのような注意点があるのでしょうか。

注意点1.社員が定着しない可能性がある

職務に基づいた採用かつ昇進や昇給のためには、他のポジションが空く必要があるという点を踏まえると、優秀な社員が定着しない可能性があります。

自社の業務で得られる経験やスキルに限界を感じた場合や、昇進・昇給を狙っても上のポジションが空かない場合には、転職するしか選択肢がないためです。

結果として、社員が定着しにくくなる場合があります。

注意点2.必要なポジションの採用ができない可能性がある

市場価値が高いポジションや、そもそも市場に人口が少ないポジションについては、自社が望んでも採用できない可能性があります。

職務内容や給与など、一部条件を見直すことで入社につなげるなど、妥協点を見つける、もしくはポジションの改定を行うなど、企業側にも採用の負担が掛かることが多い点は注意が必要です。

ジョブ型雇用の導入が向いている企業

では、どのような企業がジョブ型雇用に向いているのでしょうか。

企業イメージ

1.専門分野に特化した職種がある企業

導入が向いている企業として、専門分野に特化した職種であることが重要です。

したがって、人数規模が小さな会社よりも、大きな会社の方がジョブ型雇用に最適な職種がある可能性が高いです。自社の職種を確認した際に、専門分野ごとに職種が分けられているか確認の上、判断することが大切です。

2.制度変更に柔軟に対応できる企業

職種があるだけではなく、ジョブ型雇用を支える制度をつくる企業側のスタンスも重要です。

最初に決めた制度内容が、実際に運用してみるとうまくいかないケースもあるかもしれません。その際は制度を使い続けるのではなく、現状に即して柔軟に制度変化を行うことができるようにすることが大切です。

ジョブ型雇用を導入する際の3つのポイント

では、実際にジョブ型雇用を導入する際の3つのポイントをご紹介します。

ポイント1.専門分野が確立した職種に限定する

応募者にとって分かりやすい求人を作成するという観点から、専門分野が確立した職種に限定し、ジョブ型雇用を導入するのがオススメです。

そもそも専門分野が確立していない、もしくは専門分野とするには内容が不足しているといった場合、適切な雇用契約を結ぶことはできないでしょう。職務内容を記載する上で、曖昧な条件が多くなる場合はジョブ型雇用を導入するタイミングではありません。

また、専門分野が確立されていないポジションの場合、ジョブ型雇用の注意点でご紹介した、必要な人材を採用できない可能性が大きくなります。世の中の職種人口のバランスを考慮して、適切なポジションからジョブ型雇用を取り入れることが大切です。

ポイント2.職務記述書に基づいた、新たな人事制度や評価制度を作成する

ジョブ型雇用を導入する際には、入社した人が実際に行う業務を記載した職務記述書を元に、適切な人事制度や評価制度を構築する必要があります。

採用時だけジョブ型雇用では、ジョブ型雇用は機能しません。メンバーシップ型雇用から移行する際には、人事制度や評価制度も合わせて変更が必要です。

人事制度には、社内への周知を兼ね部署異動がない旨などを記載するほか、評価制度には何をもって評価を行うか、明示しておく必要があります。

メンバーシップ型雇用と同じ評価方法では、業務開始前に示されている業務の明確さが異なるため、適切な評価は不可能です。それぞれに見合った最適な評価方法は、業務開始前に完成させておきましょう。

ポイント3.新たな人事制度や評価制度について、社内へ丁寧な説明を行う

ジョブ型雇用を導入する際は、経営陣や人事だけで完結してはいけません。今後の運用方法や方針について、従業員へ丁寧に説明しましょう。

一見すると、ジョブ型雇用の方が待遇が良く見えたり、優遇されているように感じる人がいるかもしれません。社内での混乱を防ぐために、ジョブ型雇用の採用者が入社する前に、しっかり説明を行うことが大切です。

ジョブ型雇用の導入に関する事例3選

では、どのようにジョブ型雇用は導入されているのでしょうか。実際の事例から、学べるポイントをご紹介します。

事例1.KDDI

KDDIでは、2019年から順次ジョブ型雇用が実施されています。社員の自律性を重んじながら、市場価値に基づく報酬制度や業務深耕を実現することで、KDDIグループ全体の成長を促進することが狙いです。

KDDIのジョブ型で重視されているのは、自社内の評価ではなく市場価値です。そのため市場価値に基づいて、成果に基づく報酬が支払われます。そのため、ジョブ型雇用で入社する場合には、新卒社員であっても一律給与が撤廃されています。

適応には移行期間を設け、数年かけて社内へ適用しているため、従業員は徐々に新たな制度に慣れることが可能です。

事例2.富士通

富士通では幹部社員に限定し、2020年よりジョブ型雇用が導入されています。「より大きな職責にチャレンジする」ことを条件に掲げているため、まずは幹部社員に限定した実行になっています。

日本国内だけではなく、グローバル基準で定められたジョブ型雇用の評価制度は、職責の大きさに応じて報酬が変化する仕組みです。成果を上げた場合、タイムリーに報いることが大切にされています。

レポートライン、難易度、影響力、専門性、多様性などの観点が明確に基準として設定されているほか、幹部職に限定して開始するという点は、他社でも導入時に真似しやすい手法です。

事例3.ニトリ

ニトリのジョブ型雇用は、スペシャリストを育成するものの、少数精鋭ではなく、多数精鋭となるような組織を目指しています。それぞれが専門性を高く持ち勤務することで、スペシャリストでありながら、チームで働くという観点でジェネラリストのような側面も持っています。

あくまでも個の成長にフォーカスしており、ポストではなく職務を追求する制度が整えられています。

役職ではなく職務追求という点は、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行する際には、非常に導入しやすいといえるのではないでしょうか。

メリット・注意点を理解し、慎重にジョブ型雇用導入の検討を

ジョブ型雇用は近年注目を浴びているからこそ、取り入れたいと考える企業は増えています。しかし、雇用時だけではなく、人事制度や評価制度まで十分に整えた上で導入する必要があります。

メリットや注意点を理解し、自社に見合うかを判断した上で、慎重にジョブ型雇用を検討しましょう。

ジョブ型雇用に関するQ&A

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この記事のライター

中川真利奈

中川真利奈

現役広報ライター。通信系IT企業にて広報や採用を中心とした人事、総務などを担当。<br> 2019年よりジャンルを問わず執筆する、副業ライターとして活動中。<br> ライティングを通じて新たなジャンルを開拓し、知識を蓄えていくのが好きです。<br> 悩み多きひとり広報時代を救ってもらった記事のような、お役に立てる記事をお届けします。

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