多くの広報PR担当者が取り組む「メディアリレーションズ」。「メディア関係者への対応のこと」とざっくり捉えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、メディアリレーションズの本来の意味、また似たような言葉で混同しがちなメディアプロモートとの違いについて解説します。また、メディア関係者と良好な関係を築く際のポイントと注意点も紹介しています。
メディアリレーションズ(メディアリレーションシップ)とは?
「メディアリレーションズ(メディアリレーションシップ)」とは、メディアと良好な関係を構築すること、およびそのために行う活動のことを指します。メディアの種類は特に限定されておらず、新聞・テレビ・通信社・雑誌・Webメディア・ラジオなど幅広い機関が対象です。広報PR担当者はこれらすべてのメディアと自社の架け橋となり、記者や編集者、ディレクターなどと適切なコミュニケーションを取る必要があります。
またメディアは、生活者・企業・公共セクターなど、さまざまなステークホルダーに影響を与える存在です。メディアリレーションズとは、企業とステークホルダーをつなぐチャネル(接点)を堅固なものにすることを意味します。
メディアリレーションズとメディアプロモートの違い
「メディアプロモート」とは、自社を記事・番組に取り上げてもらうため、メディア関係者に対し個別連絡などのアプローチを行うことを指します。
メディアに対して自社を売り込む行為であり、「メディアへの営業活動」と表現されることもある言葉です。
メディアプロモートは「メディアリレーションズの一環」に位置付けられます。つまり、メディアプロモートは数あるメディアリレーションズ活動のうちのひとつということです。
メディアリレーションズは、先述の通りメディアとの良好な関係性を構築するための活動全般を指します。その中に、パブリシティの獲得を目的としてメディアにアプローチするメディアプロモートが含まれているのです。
メディアリレーションズとメディアプロモートの具体的な施策とは?
メディアリレーションズおよびメディアプロモートの具体的な施策にはどういったものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
メディアリレーションズの具体的な施策
メディアリレーションズの具体的な施策として、
- プレスリリースの配信
- 記者発表会
- 記者勉強会
- プレスツアー
などが挙げられます。
新製品の発表であれば記者発表会、新技術の発展や業界動向の変化があれば記者勉強会、新施設のオープンであればプレスツアーなど、周知したい情報がもっとも効果的に伝わる方法でメディアへ情報提供を行います。
また、企業側からの一方的な情報提供だけではメディアリレーションズとはいえません。メディア側の動向も気にかけて、直近で探しているネタや課題に感じていることなどをヒアリングし、協力関係を築けるようにしましょう。
メディアプロモートの具体的な施策
メディアプロモートの具体的な施策として、「プレスリリースを送付したメディア関係者に、所感を個別にヒアリングしつつアプローチする」などが挙げられます。アプローチの形式も、メール・FAX・郵送・直接持ち込みなどパターンはさまざまです。
アプローチする際は、メディアの特性によって提供する情報の切り口を変えるとよいでしょう。そのためには日頃の媒体研究も欠かせません。媒体研究については、次項で詳しく説明します。
メディアリレーションズに関する4つのポイント
メディアリレーションズには地道な日々の積み重ねが必須です。ここではメディアと良好な関係を築くための4つのポイントを紹介します。
ポイント1.媒体研究で各メディアの特性を理解する
上述の通り、すべてのメディアに対し同じような内容を伝えていては、なかなかメディアへの掲載につながりません。また、メディア関係者から「うちが普段扱っている内容ではない。うちがどのようなメディアであるかも知らないのか」と心証象を悪くしてしまう可能性もあります。
メディアへの掲載につなげるためにも、メディア関係者と良好な関係を築くためにも、メディアの特性に合わせて提供する情報の切り口を変えることが重要です。それぞれのメディアがどのような体裁でどのような内容の記事を掲載しているか、日頃から調べておきましょう。例えば、「小さな企業の取り組みに光を当てる記事が多い」「データを扱う記事が多い」など傾向を把握すれば、提供すべき情報が見えてきます。
また、記者の署名記事をチェックしていると、「この記者はこのような社会問題に関心が高い」ということもわかります。自社の業界やプロダクトとその社会問題がどのように関わるかについて記者個人に説明し、アプローチすることで興味を持ってもらいやすくなるでしょう。
新聞・テレビ・通信社・雑誌・Webメディア・ラジオなど、研究すべき媒体は多岐にわたります。まずは自社との関連性が高い情報を扱っているメディアについて、特集内容やコーナーを把握しておきましょう。自社の新しいネタを仕入れた際、アプローチすべき対象がパッと思い浮かぶようになります。
ポイント2.急な依頼にも応じられるよう準備を整えておく
突然の問い合わせであっても迅速に対応してくれる広報PR担当者は、忙しいメディア関係者から頼りにしてもらえます。
具体的には、社長からのコメントをすぐ提供できるようにしておく、急な取材に対応できるようにしておく、などです。日頃から経営層や現場の従業員とこまめにコミュニケーションを取り、常に各部署の情報をキャッチアップできる体制を整えておく必要があります。
タイトなスケジュールでも協力的で、レスポンスが早い広報PR担当者はとてもありがたかったです。もちろん、正確な情報を提供していただけることは大前提ですが……。(元雑誌編集者・Aさん)
16時に出たプレスリリースを見て16時半に電話したのですが担当者に連絡がつかず、その日の枠に掲載できなかったということもありました。(元新聞記者・Bさん)
プレスリリースを配信した直後にメディア関係者から連絡が来ることも考えられます。配信後1~2時間は電話やメールに対応できるスケジュールにしておきましょう。
また、取材に備えてあらかじめ想定質問を作っておくこともおすすめします。経営陣や取材に応じることが多い従業員に対しては、事前に想定質問を用意しリハーサルを実施できるとベストです。
さらに、メディアから依頼されることの多い自社や業界に関する直近のデータ(売上・市場規模・沿革など)をあらかじめ資料としてまとめておくと、メディア関係者から重宝されるでしょう。
なお、自社のロゴや役員などの写真、資料などをまとめたものを「プレスキット」と呼びます。プレスキットの作成方法などについては、下記の記事でご紹介しています。
まだあまり知られていない商品・サービスの取材で、累計販売数量や競合他社、市場規模など、記事の執筆に必要なデータを、その場でスムーズに共有してもらえたときは助かりました。(元新聞記者・Cさん)
ポイント3.メディア関係者の立場を理解して行動する
メディアリレーションズで良好な関係を築くためには、メディア関係者の立場を理解して行動することが重要です。
特に報道記者の場合は、社会に意義のある情報を届けるというジャーナリズム精神のもと取材活動や記事の執筆をしています。広報PR担当者という自らの立場からいったん離れ、記者の役割を理解したうえで、中立的かつ誠実な情報提供や対応を行うよう心がけましょう。
災害や不況に関する取材で、設備の損壊・損失の数字など、マイナス面のニュースについても、画像や正確なデータなどの情報提供をしてくれた広報PR担当者は、報道の役割について理解してくださっていると感じ好印象でした。(同上・Cさん)
ポイント4.すべてのメディアに誠意をもって接する
広報PR担当者は、すべてのメディアに対し平等・公平に接することを心がけましょう。これはメディアからの信頼を勝ち取るうえで非常に重要な要素です。
一方で、メディアリレーションズ活動のひとつとして、特定の記者だけに情報提供する「リーク」という手法もあります。特別な発表を控えているときに取られる手法ですが、「あなただけにお伝えします」と嘘をついて複数人にリークするのはNGです。記者が自社だけの特ダネだと思って記事にした内容を、他社も同じタイミングで報じていたら、一気にメディアからの信用を失ってしまいます。
ポイント3とも関連しますが、メディア関係者に対しては、常に誠実な態度を取ることが大切です。
参考:広報活動における「リーク」とは?メリット・方法・知っておきたい注意点
メディアリレーションズ活動を実施するときの3つの注意点
メディアと良好な関係性を築くための注意点を3つまとめました。上述したポイントと関連する点もありますが、あらためて自社のメディアリレーションズに問題がないか振り返ってみてください。
注意点1.自社目線に偏った情報提供をしない
宣伝のような情報提供は避けましょう。プレスリリースも、宣伝文句ばかりのチラシのような内容ではメディアの目に留まりません。そのようなプレスリリースを送り続けていれば、メディア関係者の印象も悪くなってしまいます。自社の宣伝がしたいのであれば、広告費を出して広告を出稿するべきです。
メディアは社会に伝える意義がある情報を取り上げます。自社やユーザーを中心に考えるのではなく、「社会にとって有益な情報」を提供できるよう心がけましょう。
注意点2.掲載内容について無理に要求しない
情報の切り取られ方は掲載時(放映時)までわからない、ということをわきまえておきましょう。自社の言い分ばかり主張したり、自社が思う通りの記事にしてもらうために何度も修正依頼を行ったりすることはNGです。
取材した情報の編集権限はメディア側にあります。ときには、わかりやすい部分だけを切り取られ、自社が伝えたい内容とは違う文脈で記事掲載やテレビ放映が行われてしまうことも。
その際も、明らかな誤り以外の修正を要望したり、不満を伝えたりすることは避けましょう。長期的な視野で企業としての想いや取り組みについて真摯に伝え続け、メディア関係者と信頼関係を築いていく姿勢が重要です。
「いつ載ります?」「ぜひあの企画で使っていただけると……」など、記者がコントロールできない部分である「掲載タイミング」や「扱い」について、何度も聞かれたり、念押しされたりしたときは困りました。(元新聞記者・Cさん)
注意点3.画像や権利に関するルールを守る
メディアにとって画像の扱いは非常に重要です。基本的なルールを把握し、トラブルのない対応を心がけましょう。
メディア関係者とのやり取りをスムーズに進めるために、各メディアで必要な画像サイズや解像度など、画像・動画に関する基礎的な知識を広報PR担当者が理解しておく必要があります。
紙メディアは特に、小さいサイズの画像しか提供してもらえないと困ってしまいます。画像の解像度が足りず、誌面のレイアウトを直前で変更せざるを得なかったこともありました……。(元雑誌編集者・Aさん)
また、権利関係の確認もしっかりと行いましょう。特に芸能人や著名人を起用した画像は、使用期限など細かく契約で決められている場合があります。一般の方が映り込んでいる場合であってもトラブルに発展する可能性はあるため、メディア関係者に画像を提供する際は細心の注意を払っておきたいところです。
紙面掲載用に広報PR担当者から提供された画像を使おうとしたのですが、「許諾が取れていない人が写っているので使わないでほしい」と締め切り直前に言われてしまい、大急ぎで写真を差し替えなくてはいけませんでした。(元新聞記者・Cさん)
さらに、基本的な内容ですが、企業がパブリシティを活用したい場合は必ず二次利用の申請が必要です。Webサイトで掲載された記事のスクリーンショット、新聞や雑誌のコピー、テレビ画面を撮影したものなどを勝手に自社サイトやプレスリリースで使用すると著作権違反となります。使用料を請求されるケースもあるため、各メディアの申請方法に則り、しかるべき手続きを踏みましょう。
メディアリレーションズは地道な活動
メディアリレーションズは、地道な活動の積み重ねで成り立っています。
まずは一つひとつのメディアを知り、その特色や魅力を理解する「媒体研究」から始めましょう。そして、「ほかのメディアではなく、このメディアだから取り上げてもらいたい」「この記者だから取材してほしい」という熱意が伝わるようなアプローチを行います。
そのうえで、急な取材依頼にも応じられるような準備を整え、実際に取材をしてもらった際はメディア関係者の立場を理解し、誠実な態度を心がけることが重要です。
メディアは、あらゆるステークホルダーとの架け橋となる存在。良好な関係を築いてこそ、自社にとって、社会にとってよりよい情報発信を行えるのです。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
メディアリレーションズとメディアプロモートに関するQ&A
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする