創業期のスタートアップ企業は画期的な取り組みをしているにもかかわらず、リソースの問題もあり情報発信について後回しになることも多いのではないでしょうか。
しかし、スタートアップ企業こそ、自社の情報を適切なタイミングで発信していくことで組織の成長や事業の拡大に繋がります。自分たちを取り巻くありとあらゆるステークホルダーに対して組織や事業の魅力を伝えるために、プレスリリースの効果的な配信機会について確認し、企業の成長タイミングを逃さないようにしたいものです。
本記事では、スタートアップ企業がプレスリリースを配信したい12の配信機会と、配信時のポイントを解説していきます。
スタートアップ企業がプレスリリースを配信するメリット
プレスリリースを配信することの大きなメリットは、メディアとのリレーションを構築できる点です。スタートアップ企業にとってメディアへ取り上げられることは、多くの人の認知を獲得し、興味関心を引き寄せることに繋がります。メディアへ掲載されることで企業に対する信頼感や期待感を高められるところも大きなメリットと言えます。
また従来、プレスリリースはメディア関係者のために配信されるものとして知られていましたが、現在のプレスリリースの役割は拡大しており、生活者にも直接活用される情報源となっています。プレスリリースを配信することで、新たなメディアリレーションを築いていくだけでなく、既に関係値のあるステークホルダーや、これから出会うであろうステークホルダーと良好な関係を築くきっかけになるでしょう。
プレスリリースを通して得た信頼や期待感、ステークホルダーとの関係値はスタートアップ企業にとって資金の調達や上場を目指す際に大きな力になることでしょう。
創業期のスタートアップ企業がプレスリリースを配信する12の機会
スタートアップ企業がプレスリリースを配信する際に共通しているポイントは、社会起点のキーワードを盛り込むことです。社会にどのような変革を起こすのか、どのような問題を解決していくかは、メディア関係者はもちろん生活者からも注目度の高い項目です。
「なぜ」事業を立ち上げたのかを改めて見つめ直し、どのように社会に貢献できるのかを整理しましょう。そして、どの配信機会においても、社会起点の考えは必ず説明するようにしましょう。
共通して大事なことを理解したら、次に実際にプレスリリースの配信機会について具体的な事例を通して確認していきます。
配信機会1.会社設立
スタートアップ企業がプレスリリースを配信する1つ目の機会は会社設立時です。
会社設立に関するプレスリリースを配信する際には「何を」する会社なのかを明確にすることがポイントです。
また会社の設立時には「誰が」立ち上げたのかも注目されます。関わる人のプロフィールまで丁寧に盛り込むことで「人」ベースで取材につながることも期待できます。
<会社設立のプレスリリース事例>
定額で全国住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービスを展開する「株式会社アドレス」を設立(株式会社アドレス)
上記のプレスリリースは、タイトルからも「何を」する会社なのかが明白です。本文ではサービスの内容を解説するだけでなく、創業者の想いも詳細に語られていることがポイントだといえるでしょう。
配信機会2.プロダクトローンチ
2つ目の配信機会はプロダクトローンチ時です。
これまで世の中にあったサービスと比較して、 どのような点が新しいのかを明記するのはもちろんのこと、サービスを通してどんな社会を実現していくのかを説明しましょう。
<プロダクトローンチのプレスリリース事例>
自分の感情を見える化する、心のセルフケア・アプリ「Awarefy」リリース(株式会社Hakali)
上記のプレスリリースでは、「感情が見える」という独自性を明記しながら、本文ではリリースに至った経緯についても触れられています。社会問題と絡めることによって注目度が高まります。
配信機会3.機能アップデート
機能アップデートのタイミングも配信機会となります。
アップデートに関するプレスリリースでは、何がどう変わるのかをわかりやすく説明することがポイントです。画像やGIF、動画など上手く活用して、変更内容がイメージしやすいとよいでしょう。
<機能アップデートのプレスリリース事例>
食べチョクが「まとめ買い構想」の第一弾として『カート機能β版』をリリース。同じ商品を複数個買うと送料がまとまる。(株式会社ビビッドガーデン)
上記のプレスリリースのように、β版をリリースする際に、これからどんなアップデートがあるのかも伝え、期待感を高めていくのも広報テクニックの1つです。
今後の開発予定も決まっている場合は、公開するのもよいでしょう。
配信機会4.資金調達
資金調達をした場合も、プレスリリースを配信するといいでしょう。業界の注目を集められるだけでなく、VCや起業家、その他採用したい職種の人など様々なステークホルダーに、成長が期待されるイメージを醸成できます。
資金調達に関するプレスリリースを配信する際は、何をしている会社が、いくらの資金を調達したかタイトルで明記しましょう。
その上で本文では、これまでどんな取り組みをしてきて、これからどんな姿を目指していくのかを丁寧に説明することが求められます。
<資金調達のプレスリリース事例>
タクシーのDXを推進する電脳交通、総額5億円の資金調達。資本業務提携各社と地域交通に関する取り組みを開始。(株式会社電脳交通)
上記のプレスリリースでは、「業界における課題と背景」を説明した上で、どのように社会の役に立つサービスかを伝えることで読み手の理解を深めています。
また、資本業務提携各社のコメントを写真付きで公開していることもポイントだといえるでしょう。
配信機会5.オフィス移転
オフィス移転のタイミングもプレスリリースの配信機会となります。
オフィス移転のプレスリリースでは、なぜ今移転するのか、移転の背景と今後の展望をセットで伝えることが大切です。移転した事実はもちろん、移転時のエピソードを通して企業の今後の意気込みなど、もっと知ってもらいたいことまで伝えることができます。
移転先の地域に思い入れがある場合や、そのエリアを選んだ理由がある場合は、その点も明記するといいでしょう。
<オフィス移転のプレスリリース事例>
フラー株式会社は創業9周年目の節目に本社を「新潟本社」に移すことを発表しました。地域での取組みに関する情報は、一定数のメディアや生活者からの反応があります。本プレスリリースのように地域に注目した切り口で話題になることで、今後、活動していく場所でよりよいコミュニケーションを築くきっかけになることでしょう。
配信機会6.クラウドファンディング
クラウドファンディングを始める時や目標金額を達成した時、実際に商品化する時も配信機会として活用できます。詳細は以下の記事からもご覧いただけます。
<クラウドファンディングのプレスリリース事例>
ナオライ株式会社では、クラウドファンディング開始のタイミングでプレスリリースを配信しました。商品の特徴だけでなく、誕生の背景や商品の楽しみ方まで盛り込んでいます。
クラウドファンディングを切り口に配信することで、プロジェクトの存在はもちろん、実行者の情熱やアイデアをより多くの人に知ってもらい、スタートアップ企業の取り組みに対して共感が生まれるきっかけを自ら作ることに繋がります。
配信機会7.実証実験
新商品や新サービスの実用化に向けて行う「実証実験」もプレスリリースの配信機会となります。
実証実験に関するプレスリリースの配信時には、実施の目的や実施内容について漏れなく記載が必要です。実験内容を詳細に説明しようとすると、複雑でわかりにくい内容になりがちです。専門用語を使わない、図・表・画像などを利用するなどして、第三者にも伝わりやすい内容になっているのかを意識して作成するようにしてください。
<実証実験のプレスリリース事例>
[大手町・丸の内・有楽町地区 スマートシティプロジェクト] 日本初※1、新事業特例制度を用いた電動キックボード公道走行による実証実験を開始(株式会社Luup)
上記のプレスリリースでは、将来的に何を見据えているのかを前半で説明し、後半で提携先や、全体としてどんな未来を描いているのかを詳細に記載しています。
文章で説明するだけでは複雑でわかりにくくなってしまいがちな実験内容は、本プレスリリースのように、図や表を活用して解説することで、第三者にもわかりやすく伝わるでしょう。
配信機会8.業務提携、資本提携
業務提携時や資本提携時も大事なプレスリリースの配信機会です。
業務提携や資本提携に関するプレスリリースでは、「提携を行う理由」と、「今後の具体的な展望」の2点は必ず盛り込みましょう。
提携先のネームバリューも活用することで、日頃とは違うステークホルダーと接点が持てるなど、認知拡大にも貢献できます。
<資本業務提携のプレスリリース事例>
ツクルバ、丸井グループと資本業務提携を締結(株式会社ツクルバ)
株式会社ツクルバが丸井グループと資本業務提携を締結したプレスリリースでは、冒頭で「お客さまの自分らしさの追求に寄り添う「共創」の姿勢が両社で一致した」と理由を示していることがポイントです。
さらに、今後の展望について各社記述していることから、両社が一丸となって未来を作っていこうとしている様子が感じられる内容になっているといえるでしょう。
配信機会9.イベントやセミナーの開催、出展、登壇
イベントやセミナーの開催、出店、登壇時も、配信機会として考えられます。
開催日時、内容を伝えるだけでなく、開催者のプロフィールや、何に対してのプロフェッショナルなのかを明記することで、参加者の期待を高められます。
<イベント開催のプレスリリース事例>
ものすごいベンチャー展 100社登壇スケジュール決定〜成⻑企業100社の最新ツールを知れるオンライン展⽰会〜(株式会社コミクス)
株式会社コミクスの上記のプレスリリースでは、参加する企業だけでなく開催の背景や代表からのコメントを盛り込んで、どんな内容の展示会なのか、どんな意図で開催される展示会なのかを明記しています。展示会に参加するメリットが分かると読み手も参加したいと思えるようになります。
開催や登壇情報のお知らせだけでは話題になりにくいですが、本プレスリリースのように背景や意図まで明記して社会にとって役に立つ情報だと伝えられれば、ニュースとして取り上げられる可能性を高められます。
配信機会10.国や自治体、機関等からの認定や受賞
国や自治体や機関などから認定されたり、企業やメディアが開催する祭典や大会において、受賞したという事実もプレスリリースで配信できます。
第三者に認められた、評価された実績は企業の信頼度を高めます。ただし、業界内で有名な賞や認定の場合も多く、専門家以外には伝わりにくいことが考えられます。認定や受賞に関するプレスリリースを配信する際には、認定や賞がどれくらいの価値があるものなのかを丁寧に説明することです。
<祭典への選出決定のプレスリリース事例>
次世代型経営管理クラウド「Loglass」を提供するログラスがTechCrunch Startup Battle Online 2020ファイナルラウンド進出6社への選出が決定(株式会社ログラス)
上記のプレスリリースでは、選出された祭典の内容を明記していることはもちろんのこと、代表のコメントとして意気込みを語る工夫も見られます。選出された内容での配信機会を通して、企業として事業に対する決意も改めて知ってもらうことができ、機会を十分に活用できているGOOD事例だといえるでしょう。
配信機会11.事業実績
事業実績を数値化して、配信の機会を作ることができます。例えば「〇万社突破」や「〇万人突破」を新規情報として発表することが考えられます。
事業実績をプレスリリースとして配信する際のポイントは、発表する数字は客観的に見てニュース性の高い数字かどうかです。これまでの歩みと比べてどれくらい伸びたのか、客観的な基準で「凄い」と言える数字を切り口にしましょう。
<事業実績のプレスリリース事例>
NOW ROOM、全国80,000室掲載突破! 〜関東、近畿、九州地方にて掲載数No.1に!〜(株式会社NOW ROOM)
上記のプレスリリースでは「全国80,000室掲載突破!」という切り口で発表しています。この数字は「関東、近畿、九州地方にて掲載数No.1」であると、比較対象を記載することで数字へのインパクトが高まります。
配信機会12.特許や商標の取得
配信機会12個目は、特許や商標の取得タイミングです。特許や商標の取得を公表することで対外的に自社の取り組みを周知できます。革新的な技術を持っていることを第三者から認められた事実は今後の活動にとってチカラとなることでしょう。
<特許取得のプレスリリース事例>
【AI特許】東工大発ベンチャーの株式会社ネフロック、従来の画像生成技術の実用化における課題を解決する特許を取得(株式会社ネフロック)
特許の内容は専門的な部分が多く、理解し難い場合もあります。本プレスリリースでは、文章だけでなく図解も盛り込むことで、誰にとってもわかりやすい工夫がされています。
実際にプレスリリースに載せられている図や画像がそのままメディアでも活用されます。丁寧な解説をもって、ニュースとして取り上げられる可能性を高めていきましょう。
配信機会を捉えて組織の成長や事業の拡大に繋げよう
プレスリリースで情報を発信することで、創業期のスタートアップ企業は自社の革新的な情報を世の中に公表することができます。
プレスリリースを通して、メディア関係者はもちろん投資家や取引先、ありとあらゆるステークホルダーと良好な関係を築いていくことで、新たなビジネスチャンスに繋がることが期待できるでしょう。
創業期のスタートアップ企業にとってプレスリリース配信のチャンスとなる機会について理解し、効果的な情報発信を行っていきましょう。
また、PR TIMESではスタートアップ企業に向けたプランもご案内しています。詳細は以下の記事よりご覧ください。
スタートアップ企業のプレスリリース配信に関するQ&A
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