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プレスリリースは意味がない?5つの原因と改善したい5つのポイントを解説|平田貴子

広報PR活動の中でも「プレスリリース」は重要な業務のひとつです。しかし、配信効果の実感が得られず、「プレスリリースは意味がない」と感じてしまう瞬間もあるのではないでしょうか。本記事では、意味のないプレスリリースにしないためのポイントをご紹介。

多岐に渡る業界のPRを手掛けた実績を持ち、松浦産業株式会社(香川県)のPRコンサルタントとして「プレスリリースアワード 2021」パブリック賞を受賞した、株式会社PRorderの平田貴子氏に執筆していただいています。

株式会社PRorder 代表取締役

平田貴子(hirata takako)

医療分野で広報経験後、フランチャイズ事業の本部で経営支援・マーケティング部門などを経て、広報立ち上げを行い、ブランド戦略・新規事業などに携わる。2018年に総合PR会社に入社し、PRコンサルタント・メディアプランナーとして上場企業から地方中小企業まで、多岐に渡る業界を支援。2022年に株式会社PRorderを設立。香川県の取っ手メーカーのリリースでPR TIMES主催の「プレスリリースアワード2021」パブリック賞受賞。株式会社PR TIMES公認「プレスリリースエバンジェリスト」。

プレスリリースは本当に意味がないのか?

PR TIMESなどのプレスリリース配信サービスが普及し、誰もが簡単に世の中に向けて情報発信できる環境が整ってきました。

しかし、プレスリリースを配信してもメディアになかなか取り上げられず、「ひょっとして意味がないのでは?」と思ったり、上司から「配信しなくていい」と言われてしまったり。モヤモヤを抱えている広報担当者も多くいることと思います。

「意味がないプレスリリース」にはそれなりの理由があり、コツをいくつかつかめば、誰でも「意味のあるプレスリリース」へと進化させることができるのです。今回は、広報担当者がやってしまいがちな5つのミスと改善ポイントをご紹介します。

意味がないプレスリリースとなってしまう5つの原因

プレスリリースには押さえるべき基本があります。しかし、なかなかメディアに掲載されず悩んでいる広報担当者は、この基本を見落としがちです。まずは、意味のないプレスリリースとなってしまう要因を見ていきましょう。

1.プレスリリースの体裁が整っていない

忙しい記者は毎日大量のプレスリリースに目を通しています。そんな記者に興味を持ってもらうには、わかりやすく好奇心をそそるタイトルはもちろん、概要を端的に伝える冒頭のリード文、企業概要や事業内容を紹介するボイラープレートなど、基本的な構成要素が大切です。

しかし、専門用語だらけで内容を理解するのに時間がかかったり、記者の問い合わせ先がきちんと記載されていなかったりと、基本を無視した体裁のプレスリリースが多いのも事実。

プレスリリース1枚で自社の商品やサービスに注目してもらうのは簡単なことではありませんが、基本的な構成を押さえた体裁であることは、その難しい壁を越える第一歩なのです。

2.情報が盛りだくさんすぎる

広報担当者は、自社の良いところを知ってもらおうとプレスリリースにたくさんの情報を詰め込もうとします。

もちろん、過不足なく情報を届けようとする姿勢は素晴らしいことです。ただ、「誰に・何を伝えたいのか」という軸がなければ、それは逆効果になってしまいます。

情報の選定や優先順位の判断で大事なことは、「どのメディアに届けたいか」ということです。

ライフスタイル系のWeb媒体、テレビの情報番組、ビジネス誌。これらの記事や放送を観ていれば、媒体ごとに求められている情報が取捨選択できるはずです。

プレスリリースの受け手であるメディア(記者、編集、ライター、ディレクター等)は「ネタ探し」=「この情報は自分が取り扱うべきか?」という視点でプレスリリースを読んでいます。

あれもこれもと盛りだくさんだと、忙しいメディアの方々に最後までプレスリリースを読んでもらうことはできません。「プレスリリースは狙いを定める」が鉄則です。

3.発信のタイミングがずれている

良いプレスリリースのひとつに「新規性」の要素が挙げられます。自社にとってではなく、世の中にとっていかに新しい情報であるかということです。生活者に鮮度の高い情報を伝えるのがメディアの使命なので、この要素は記事にされやすいです。

そしてそれと同じくらい大事なのが「時流を読み取ること」です。時流は「トレンド、流行」とも訳されますが、ここでいう時流は「世の中の流れ、傾向」のことを指します。

この点を押さえていないプレスリリースは、いくら新規性があってもメディアには取り上げられません。なぜなら、メディアは「時流」を読者や視聴者に伝える役割を担っているので、「今扱うべき情報かどうか」を情報選定でとても大事にしているからです。

例えば、ブームがひとしきり去った後に自社も商品発売に踏み切るなどが挙げられます。

良い内容であっても、発信のタイミングがズレることは致命的です。逆にいうと、つたないプレスリリースでも時流をしっかり読めば、メディアに取り上げられるケースがあるのです。

4.カタログ情報になってしまっている

商品やサービスのスペックに終始していて、さながらカタログとなっている場合も意味のないプレスリリースとなってしまいます。自社のホームページや営業資料のサービス概要や商品情報の文章を、ほぼそのままコピペしていませんか。

特にタイトルが「新商品発売のお知らせ」など、平凡な文章だと商品特徴が伝わらず本文を読んでもらうステップに進めません

また、高性能・高機能な商品であればあるほど、本文もその性能の解説で埋め尽くされているケースがあります。しかし、それでは生活者やメディアの興味関心である「何を解決するサービスなのか」「どんなシーンでの使用を想定しているのか」が連想されません。

5.企業の想いが伝わらない

企画者や開発者には、必ず背景となる大切な「想い」があるはずです。その想いが伝わらない場合も、記者の目に留まらないプレスリリースとなってしまいます。

なぜその商品を発売するのか、なぜ今イベントを行うのか、そして、なぜその企画にたどり着いたのか。この要素が抜けていると、生活者の共感を生むことができません。そうなると、生活者が必要としている情報を届ける役割であるメディアにとっても、掲載したいと思う情報ではなくなってしまうのです。

プレスリリース配信における一番の目的はメディア掲載になるのかもしれませんが、広報活動の最終的なゴールは、生活者の認知や感情を変えること(意識変容)です。それはメディアも同じであり、企業の想いやストーリーが見えないと、生活者はおろか記者にも響かないプレスリリースとなってしまいます。

経営戦略や事業戦略が実現するためには「まずは知ってもらうこと」「世の中の認知を変えていくこと」が必要ですが、それを叶えるためのひとつの「武器」がプレスリリースです。自社と、生活者や取引先など関連する方々の間にいるメディアの力を活用して、より広く知ってもらうために発信するのです。

ただし、メディアの方々にとっては、特に中小企業の新商品や新サービスにはあまり興味を持ってもらえないのも事実。だからこそ、「どうして今必要なのか?どの課題を解決するのか?世の中をどう変えるのか?」という企業の想いをプレスリリースにのせることがもっとも大事になります。

メディアも「人」です。人を動かすのは、いつだって「想い」なのです。

意味のないプレスリリースにしないための5つのポイント

ここからは、「意味のないプレスリリース」から脱却するための5つのポイントを紹介します。どれも今すぐ実践できる基本的なことですが、広報担当者は必ず押さえておきたいポイントでもあります。実践に役立つよう詳細に解説するので、ぜひ日々の業務に役立ててください。

ポイント1.必要情報を見直して構成を組み立てる

プレスリリースは、以下の「5W2H +F(展望や目標)」の情報が基本です。

Who:誰が(主体・対象)
What:何を(取り組み内容)
Where:どこで(実施場所)
When:いつ(開始日や実施期間)
Why:どうして(背景や目的)
How:どのように(特徴など)
How much:どのくらい(金額や数量)
Future:今後の展望や目標

いきなりプレスリリースの構成で書き始めると、想像以上に作成に時間がかかったり、必要な要素が抜けてしまったりする可能性があります。まずはこの要素を満たす情報を整理しましょう。

情報が整理できたら、初めてプレスリリースの構成に仕上げていきます。基本の構成は以下の通りです。

平田貴子氏作成「プレスリリースの基本構成」
寄稿者 平田貴子氏作成「プレスリリースの基本構成」

タイトルは記者の注目を集められるよう一番こだわるポイントです。

リード文はシンプルにまとめ、整理した情報の詳細は本文で簡潔な文章で書くようにしましょう。

ポイント2.1プレスリリース1テーマで目的をしぼる

意味のないプレスリリースとなる要因のひとつとして、情報が盛りだくさんであることを挙げました。逆を言うと、焦点をしぼってプレスリリースを書けば、意味のある良い情報とすることができます。

「情報を届けたい生活者はどんな人でしょうか?」「その人に一番伝えたいことは何ですか?」1本のプレスリリースで欲張らずに、しっかり的を定めて発信することが大切です。

しかし、1つの商品やサービスにはさまざまな側面があるのも事実です。そんなときは、プレスリリースを複数本に分ければよいのです。

プレスリリースは1つの商品・サービスにつき1本しか配信してはならない、なんて決まりはありません。光の当て方次第で何本でも出してOK。

ただし、複数本配信したからといって、メディアに取り上げられる確率が上がるわけではありません。逆にばらまきのような行為はメディアの信用を失いかねませんので、すべてが「意味のあるプレスリリース」であることは大前提です。また、メディアが扱うのは「NEWS」、その語源からもわかるように新しいことです。タイトルの一部の季節ワードを変えただけといった“同一内容の再告知”となるプレスリリースはNGですので気を付けてください。

月日が経過すれば新商品もかならず既存商品となります。

新発売のときプッシュしたかったポイントから、そのときは伝え切れなかったことや、新たな価値がでてきたことなど、角度を変えて商品に新たな光を当てて発信していくことも、ぜひトライしてみてください。

ポイント3.時流を読み適切なタイミングで発信する

情報は鮮度が命です。いくらいい情報であってもタイミングがズレれば二番煎じと言われてしまったり、記者や生活者の興味関心の対象から外れてしまったりします。

時流を適切に読むには、世の中の動きの一手先、二手先を感じとることが必要です。

そのためには、例えばプレスリリースがきっかけで話題を読んだ過去の事例を知ること、記者との情報交換でメディアや生活者の最新の動きを知ることが方法として挙げられます。

ベストなタイミングで発信するには、商品の発売時期や商品名を時流を読んで決めるというのもひとつの手です。広報担当者は出来上がった商品を発信するものだと思われがちですが、商品開発といった上流からPR視点を持って参加する姿勢も時に大事になります。

競合他社の動きや世の中の流れを鋭敏に察知し、それを事業に活かすために社内にフィードバックする。会社の規模や経営層や事業部との距離感など組織体制で難しいことかもしれませんが、広報の存在はこういう部分にこそ生きると私は考えています。

ポイント4.キービジュアルにこだわる

プレスリリースはカタログではありません。メディアに掲載されるためには、その商品やサービスが解決する生活者の課題や、使用シーンが連想されることが必要です。

ここで大事になるのがキービジュアル(メイン画像)。リード文の下に掲載する画像です。

このキービジュアルに商品の白抜き画像を使用しているプレスリリースをよく見ますが、ここにはいわゆるイメージ画像を載せるのがおすすめです。

例えば、子ども向けの商品なら子どもが楽しそうに使っている画像、新しいキャンプグッズならキャンプ場を背景にした画像などです。

イメージ画像にすると視覚で記者に商品特徴を訴えることができますし、記者もそのプレスリリースを記事にしたときのイメージが湧きやすくなります。

白抜き画像は、商品概要などではもちろん必要になりますが、プレスリリースのメインの画像としては少し記者目線で画像を選択してみてください。

ポイント5.生活者を意識した文章で書く

最近は誰もが情報発信できる便利な世の中になった反面、生活者を騙すような情報や発信源がわからない不確かな情報も多数散見されます。そのため、何が正しい情報かを知るために生活者も一次情報であるプレスリリースを見るようになっています。

法令順守は当たり前として、記者だけでなく生活者の共感を得られるよう、倫理的な観点で懸念がないかも発信前にチェックしましょう。

例えば、男らしさや女らしさの性別による役割分担を強調しているジェンダー差別や、容姿のコンプレックスを煽りすぎている外見差別がないか、などです。

「世の中との感覚にズレはないか?」この「違和感」を持てるかどうかはとても大事なことです。広報だけでなく経営者など発信する立場にいる方は、自身の感覚を常に時代に合わせアップデートする必要があります。

生活者の倫理観は時代とともに変わりますし、まさに多様な価値観が共存する現代。自分の常識や当たり前はほかの方にとっては違うかもしれないという考えを持っているだけでも、発信の際の姿勢が違ってくると思います。

自社の情報を届けたい方はいろんな考えを持っています。その方々に伝わるプレスリリースにするためにも、年齢や立場が異なる複数人で配信前に内容をチェックする社内体制を作ることも、ひとつの対策になります。

プレスリリースの基本は広報活動の基本

今回ご紹介したポイントは、プレスリリースの作成のみならず広報活動の基本でもあります。

広報担当者は企業とメディア、生活者をつなぐハブのような存在です。自社が発信したい情報を、いかに生活者視点に変換して伝えることができるか。企業が独りよがりにならずに生活者とつながるために、とても大事なことです。

まずはプレスリリース作成時に今回のポイントをしっかり押さえ、さらに、日々の広報活動にも応用して活用できるようにしましょう。

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