SNSをはじめ、メディアなどでも「クラウドファンディング」という言葉が世の中に浸透しつつある昨今。クラウドファンディング実施者(プロジェクトオーナー)がプレスリリースを活用してプロジェクトのPRや自らの想いを発信する機会も確実に増えています。
本記事では、広報PR活動の一環としてクラウドファンディングを行う際のプレスリリース配信機会を事例とともに解説。配信する際のポイントもあわせてご紹介します。
クラウドファンディングの実施時は広報施策のチャンス
「クラウドファンディング」とは、インターネットを通して不特定多数の人(=crowd)から資金を募る(=funding)ことですが、資金調達としてだけでなく、広報PRとして有効に活用できる側面も持ち合わせています。
クラウドファンディングの開始から終了までには、情報を発信する機会も多いもの。プレスリリースを活用してPR効果のチャンスを得るには、配信の機会やタイミングを逃さないようにしましょう。
では、クラウドファンディング実施時にプレスリリースを配信する配信機会を、事例プレスリリースとともに確認していきましょう。
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クラウドファンディング実施時にプレスリリースを配信する3つの機会
クラウドファンディングに関するプレスリリース配信のタイミングは、大きく分けて「開始時」「目標金額達成時」「終了時」の3つです。そのほか、クラウドファンディングを実施し、実際に商品化・サービス化が決まり、一般販売(リリース)するタイミングもよい配信機会になるでしょう。
ここからは、それぞれの配信機会で、どのような内容を盛り込んでいくとよいのか事例のGOODポイントもチェックしていきましょう。
配信機会1.クラウドファンディング開始時
1つ目の機会は、クラウドファンディングの開始時です。クラウドファンディングは、初動が命ともいわれています。開始時にいかに多くの支援を集められるかで、メディアに注目してもらい、ニュースに取り上げてもらえる可能性が高まるからです。スタート時に勢いづけるために、プロジェクトが開始された時点でプレスリリースを出すことが重要です。
クラウドファンディング告知のプレスリリースでは、プロジェクト実施の理由やその想いを明確に伝えましょう。開発者や実施者のコメントを動画にして配信するのもおすすめです。プロジェクトが成功するとどんな効果や影響が生まれるのか、読み手が共感・想像しやすいよう工夫することがポイントです。
|クラウドファンディング開始時の事例
事例1.株式会社うめひかり
参考:食品衛生法改正により存続の危機に陥る手づくり梅干し!「梅ボーイズ」が、全国の梅産地の製造所を整備するクラウドファンディングを3月29日開始
株式会社うめひかりは、クラウドファンディングプロジェクト「無添加梅干しの継承!全国の梅産地に梅干し製造所をつくる!」の開始をプレスリリースで告知しています。
プレスリリースには、食品衛生法の改正により小さな梅産地は存続の危機に陥っているといった社会的背景を導入に、育てた梅を地域で受け継ぎ日本の食文化の「梅干し」を守りたいといった想いを記載。目標の寄付金額からリターン発送までのスケジュールを明記しているのもGOODです。クラウドファンディングを募る際は、明確な情報開示がポイントとなります。
事例2.株式会社ひしや三島プラザホテル
参考:創業明治22年、静岡県三島市の老舗ホテル発!ふわじゅわっと食感「ギモーヴ」×カクテルフレーバー×静岡食材
静岡県三島市にある株式会社ひしや三島プラザホテルは、地元食材、静岡県産のいちごやお茶を使用した「ギモーヴ」をクラウドファンディングサイト「マクアケ」にて発売することをプレスリリースで配信。
プレスリリースでは、明治22年に創業した静岡県三島市の老舗ホテルとして、地域とともに歩み、三島を応援する商品をつくりたいといった商品開発の背景を紹介しています。展開する「ギモーヴ」についても、どんな商品なのかの説明が丁寧に記載。商品の魅力を伝えるために動画や商品解説をまとめた画像もGOODです。
事例3.株式会社会花
参考:老舗酒造が手掛けたコーラのお酒「酒煌螺(SAKE COLA)」が、先行販売を開始しました。
新しい飲み文化の創出を目指す株式会社会花(あいか)は、Makuakeにてコーラのお酒「酒煌螺(SAKE COLA)」の先行販売を行うことをプレスリリースで告知。
プレスリリースでは、舗酒造の六歌仙とコラボレーションしたことや味わいを記載。さらには、ビールやワインのように食事と合わせるなど、どんなシーンでもご自由に楽しめることを紹介しているのがGOOD。シーンを載せることで、読み手が自分事化できるなど共創を生み出しています。
事例4.株式会社βace
参考:【前回Makuake達成率1625%】Minimalの新店「祖師ヶ谷大蔵店」の新作「チョコレートクッキー缶」限定Ver.を、応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」にて7月20日より限定販売
株式会社βaceは、日本発のスペシャルティチョコレート専門店「Minimal – Bean to Bar Chocolate -」の新店で展開する新作をMakuakeにて期間限定販売。2023年9月にオープン予定の祖師ヶ谷大蔵店の新作「チョコレートクッキー缶」の限定バージョンや特別な会員権についてプレスリリースを配信しました。
タイトルに「前回Makuake達成率1625%」と記載し、人気だったことをわかりやすく伝えているのがGOOD。販売するクッキー缶をはじめ、1年間10%オフやプレオープンにご参加いただける特別な会員権の詳細を記しています。さらに、どんな商品を届けたいのかをMakuakeに込めた想いとともに載せることで、多くの人にその取り組みやこだわりを知ってもらうきっかけになっています。
配信機会2.目標金額達成時
次の機会となるのは、クラウドファンディングの期間中または終了時です。実施中の段階で「予定よりも早いスピードで支援が集まっている」など成果が見られたときや「終了前に新情報を伝えたい」といった施策がある場合は、成果・反響の内容、プロジェクトの詳細を盛り込みながら発表しましょう。
なお、一般的なクラウドファンディングでは目標金額達成=プロジェクト成功です。プロジェクト成功時にのみ支援者がリターンを受け取れるルールなので、無事目標を達成したらいち早くプレスリリースでお知らせしましょう。
目標金額よりも大幅に超過した金額が集まった場合は、ニュースとしてメディアに取り上げてもらうことも期待できます。
|クラウドファンディングの目標金額達成時の事例
事例5.穴吹興産株式会社
参考:【完売御礼】Jointα第32号ファンドがわずか15分で募集終了 累計投資金額43億円突破
あなぶきグループの穴吹興産株式会社は、不動産投資特化型クラウドファンディングプラットフォーム『ジョイントアルファ[Jointo α]』第32号ファンドの募集金額を達成したことをプレスリリースで配信。4月15日12:00より開始し、わずか15分で募集終了となりました。
ひと目で達成したことがわかるタイトルがGOOD。達成の報告だけに留まらず、地域に眠る良質な不動産への投資活動を活性化させる目的やさまざまなファンドの組成によって、累計投資金額43億円突破したことも伝えています。
配信機会3.クラウドファンディング終了時
クラウドファンディングのプロジェクトが終了した際にもプレスリリースを配信しましょう。参加してくれた支援者へのお礼と、プロジェクトのレポートを伝えられるとGOODです。
クラウドファンディングは、目標金額が達成したり、実施期間が終了したら終わりではありません。終了後に商品の開発や準備が遅れて、予定していた期限までにリターンが届けられないという事態も発生する可能性があります。そのため、商品到着時期の目安や、遅延の可能性なども記載しておくのがおすすめです。
応援してくれた支援者をがっかりさせないように、プロジェクト終了後の対応もしっかりと告知していくように心掛けましょう。
|クラウドファンディング終了時の事例
事例6.株式会社abien
参考:応援総額860万円超 両面グリル型一枚焼きトースター「abien BREAD GRILL」クラウドファンディングプロジェクト終了
株式会社abienは、両面グリル型一枚焼きトースター「abien BREAD GRILL」のクラウドファンディングプロジェクトの終了をプレスリリースで配信。目標金額に対して4,335%、総額8,671,080円の支援を集め、終了したことを発表いたしました。
“日常にワクワクを届ける”をコンセプトとする名古屋の家電ブランドabienが進める最新調理家電の開発プロジェクトです。プレスリリースには、トースターの開発経緯からトーストを焼き上げまでを紹介。プロジェクトだけで終わらないように、支援者からのコメントも掲載し、一般販売に向けた準備も進めていることも掲載していのがGOODです。
事例7.株式会社ウィファブリック
参考:【クラウドファンディング 達成率260%!】申込受付終了
売れ残った新品商品から古着、雑貨などを販売するオンラインのアウトレットモール「SMASELL」を運営する株式会社ウィファブリックは、クラウドファンディングが目標達成をプレスリリースで発表。「大阪に2024年夏オープン予定のSDGsを体験できる複合型店舗【SMASELL SUSTAINABLE COMMUNE】設営」が、開始後わずか6日で目標金額の100%を達成しました。
プレスリリースには、実施後もSDGsや地域活性化など注目を集めていることや、143名から目標金額を大幅に上回る目標金額の260%の支援を集めたことを掲載。プロジェクトの目的と内容を画像を見ただけでわかるようにまとめているのがGOODです。さらに今後の展望や代表のストーリーを記載。取り組みへの理解が深まるプレスリリースにまとめられています。
事例8.Looking Glass Factory Inc.
参考:Looking Glass Goのクラウドファンディングが終了
ホログラム製品の開発販売を行う米Looking Glassは、最新ポータブル・ホログラフィック・ディスプレイ「Looking Glass Go™」の国内クラウドファンディング先行予約サービスが終了しました。1,547名から64,707,055円の支援を獲得したとプレスリリースで発表しています。
何名からどのくらいの支援額を得たのかが、プレスリリースのタイトルにまとめられているのがGOOD。数字のインパクトが目を引きます。本文には、もともとの目標金額も明記。クラウドファンディング全体の支援者数において、全体の43%が日本で1位だったこと、米国が30%で2位だったこと、日米合計の支援金額が約1億6,700万円であったことも紹介しています。
PickUp!商品・サービスの一般販売(リリース)時
クラウドファンディングが成功して商品・サービスの一般販売が決定すれば、いよいよ一般市場にリリースすることになります。発売時にプレスリリースを配信して、メディアや一般消費者へ積極的にアプローチしていきましょう。このとき、公式販売となった経緯やプロジェクトの背景やストーリー、商品・サービスの商品価値を盛り込むことも重要です。
また、商品・サービスが一般販売されるようになった背景として、クラウドファンディングで応援購入をしてくれた支援者がいたことを忘れず、感謝の意を伝えることも忘れないようにしたいですね。
事例9.株式会社金市商店
参考:蜂蜜の専門家・ハニーハンター市川拓三郎が醸す!「京都蜂蜜酒醸造所」にて国産オリジナル蜂蜜酒(ミード)の初回醸造スタート
株式会社金市商店は、2024年3月にオープンした新ブランド「京都蜂蜜酒醸造所」にて、蜂蜜と水を加え発酵させた「蜂蜜酒(ミード)」の醸造を開始したことをプレスリリースで配信。蜂蜜屋だからこその王道の「蜂蜜酒(ミード)」目指す『TheMEAD』のファーストロットです。
プレスリリースには、蜂蜜について知りつくしたハニーハンター市川拓三郎が厳選した国産百花蜜を原料としたことや、ミード造りの仕込み工程を画像とともに紹介。日本での知名度がまだまだ低く、飲む機会は限られている背景から、創業90年の蜂蜜屋でもあり、蜂蜜酒を15年以上前から取り扱うミードのパイオニアでもある金市商店が、強い想いのもと新たにスタートした好事例です。
事例10.京都府福知山市
参考:“鬼のまち福知山”が「鬼を親しむ 新・節分カルチャー」を全国へ届ける、オリジナル新商品 鬼とヒトが仲良くなれる豆のお菓子 『おにさんこちら』 完成!
京都府福知山市は、鬼を親しむ新・節分カルチャーを全国へ届けるために、市民や鬼に詳しい人々とともに開発したオリジナル新商品が完成したことをプレスリリースで発表。 鬼のまち福知山から、オリジナルの豆菓子「鬼とヒトが仲良くなれる豆クッキー『おにさんこちら』」を展開します。
福知山市は、地域と一緒に仕掛ける、まちおこしプロジェクト「ONIversal city project」クラウドファンディングを実施。プレスリリースには、プロジェクトの注目企画である新商品の完成の報告だけでなく、完成までの会議では“鬼”の気持ちを考えながら研究したことも紹介しており、ストーリー性があります。地域から全国へ発信する参考事例です。
クラウドファンディングに関するプレスリリースを配信する際の3つのポイント
クラウドファンディングに込められた想いをできるだけ多くの人に届けるためには、メディアや生活者の目にとまるプレスリリースを作成したいものです。
最後に、クラウドファンディングのプレスリリースを配信する際の3つのポイントについて解説します。
ポイント1.支援したくなる「共感」ポイントを盛り込む
本記事の冒頭でも述べたように、クラウドファンディングのプロジェクト成功にはより多くの支援者が募ってくれること、プロジェクトに共感してくれることが何より重要です。
プロジェクトの商品・サービスの誕生には、発案者や開発者などプロジェクトに携わっている人たちの想いや理由が必ずあり、その理由や想いに読み手が“自分ごと”として共感できるかがポイントになってきます。
「共感」とは、簡単に言うと「相手の気持ちがわかる」ということです。「こんな商品・サービスを作ります」と言われるのと、「〇〇だから、こんな商品・サービスを作りたい!一緒に作りましょう!」ではどちらに心が惹かれるでしょうか。
クラウドファンディングを利用する際、そしてプレスリリースで発信する際には、いかに共感してもらえるかに焦点を合わせて、メッセージを考えていくようにしていきましょう。
ポイント2.社会性のある情報発信を意識する
「共感」を得るためには、社会性のある情報発信をすることもポイントです。商品・サービスが世の中に定着することで、どのように社会問題を解決できるのかについて発信できるといいでしょう。
また、環境問題やエコを見据えて開発した商品やサービスも、実は暮らしの中の些細なことが発端だったということもあります。プロジェクトのきっかけとなった出来事や背景を発信することで、生活者が自分ごととして捉え行動を起こすきっかけとなります。
ポイント3.プロジェクトの魅力を最大限に生かしたタイトルをつける
通常のプレスリリースと同様に、プロジェクトの魅力がひと目で伝わるタイトルをつけることも重要なポイントです。思わずクリックしたくなるような共感ポイントを盛り込むことを意識してタイトルをつけてみましょう。
また、メディアに興味を持ってもらうために、ほかのプロジェクトと比べて差別化できるポイントをタイトルに盛り込むのもおすすめです。商品・サービスの特徴やプロジェクト発足の背景を改めて整理し、プロジェクトの魅力を最大限に生かした最適なタイトルを見いだしてみましょう。
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プロジェクトの魅力を最大限に伝え多くの共感を生み出すプレスリリースを届けよう
クラウドファンディングは、そのプロジェクトに対して「共感できる」と思ってもらうことが成功への鍵となります。言い換えれば、どんなに素晴らしいプロジェクトであっても共感が生まれなければ日の目を見ないことになってしまいます。
クラウドファンディングに関するプレスリリースは、プロジェクトの紹介や説明を簡潔明瞭に書くだけでは十分ではありません。プロジェクトに至ったバックグラウンドや想い、そこに携わる人の熱意やエネルギーを読み手側が感じられることが、読み手の次なるアクションへとつながります。
クラウドファンディング実施時には、本記事で紹介した配信機会を逃さずに、より多くの人に共感してもらい、応援したくなるようなプレスリリースを届け、プロジェクトの成功を掴み取りましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
クラウドファンディング実施時のプレスリリース配信に関するQ&A
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