自治体や地域内で知名度の高い企業・団体は、日本全国に存在します。地域で自社の商品・サービスを知ってもらうためにも、広報PR担当者にとって地方紙とのリレーション構築は重要なテーマです。
今回は、地方紙とのリレーションの重要性や地方紙の特色、地方紙とリレーションを取る4つのアプローチ方法、地方紙向けのネタ6つを紹介します。
広報において重要な「地方紙」とのリレーション
地方紙は「地元での圧倒的な普及率」「地域密着の話題を大きく取り扱う」「デジタル版が地域で拡散されやすい」などの理由から、ポテンシャルを秘めた媒体でもあります。以下で詳しく解説します。
1.地元で圧倒的な普及率
東京にいると気付きにくいものの、地方紙は特定の地域で圧倒的な購読率を誇っている場合があります。
例えば全国紙の「読売新聞」が販売部数1位なのは9都府県で、都道府県全体の2割に満たないのが現状です。北海道では「北海道新聞」、福岡県では「西日本新聞」がそれぞれ1位。石川県や徳島県など、1つの地方紙が5割以上の世帯に普及しているところもあります。
もし自社の商圏が北海道であれば、北海道新聞へのメディアリレーションズを重視することで、地元に広く発信できるチャンスとなるでしょう。情報をステークホルダーに届けるためにどの媒体にアプローチすべきかは、地域によって異なります。自社が事業を手がける地域でよく読まれている媒体を事前に調べるのがポイントともいえます。
2.地域密着の話題を大きく取り扱う
地方紙では、地域密着の話題を大きく取り扱う傾向があります。
全国紙では掲載されないような地域の小さなイベントや、季節の風物詩などを細かく取材する傾向があります。また、全国紙では小さな記事になってしまう内容であっても、地方紙では写真付きで大きく取り上げられることも。
全国紙に数行掲載されるよりも、地方紙で紙面を割いて掲載されるほうが地元での影響力はあるといってもよいでしょう。
3.デジタル版が地域で拡散されやすい
地方紙のデジタル版で配信された記事が、インターネットやSNS上で拡散されたときの影響も軽視できません。
WebニュースやX(旧Twitter)などを通じた情報収集が当たり前となった昨今、地方紙のコンテンツもデジタル化が進んでいます。映像や画像がおもしろく、話題性のある内容であれば、デジタル版の記事がYahoo ! ニュースに転載されたり、SNSで拡散されたりする可能性があるのです。
デジタル版の記事は、公開後に関係各位へのURLのシェアが容易だというメリットもあります。今や、インターネットで世界中がつながる時代。地方紙に掲載されても地元の人しか読まないと考えて優先度を下げてしまうのは、実はもったいないことなのです。
広報PR担当者として知っておきたい地方紙の特色
広報PR担当者が地方紙にアプローチするにあたり、知っておきたい特色とは何でしょうか。それは「紙面の構成や取り上げているコンテンツ(ネタ)」「管轄しているエリア」「取材体制」の3つです。以下に詳しく説明します。
1.紙面の構成や取り上げているコンテンツ(ネタ)
まずは、ターゲットとしている地方紙の紙面の構成をチェックしてみましょう。
曜日ごとの特集や、その地域で活躍する個人にフォーカスを当てたコーナーなど、どんなコンテンツが含まれているかを洗い出します。
次に、経済面、社会面、生活面、文化面、スポーツ面などの、どの面に自社のネタが該当するか考えます。署名があれば、それぞれのコンテンツの担当記者がわかります。ピンポイントで特定の記者に情報提供するためにも、媒体研究は大切です。
2.管轄しているエリア
次に、ターゲットとする地方紙が管轄しているエリアを調べましょう。
ホームページを見れば、支局の情報や連絡先が記載されているはずです。地方紙では、各支局に配属されている記者が担当エリアの情報をジャンルを問わず幅広く取材しています。自社のネタがどの支局の管轄エリアに該当するのか調べ、そこにアプローチしましょう。
3.取材体制
最後に、地方紙の記者の取材体制を知りましょう。
情報提供の連絡を入れるタイミングや、記者クラブを訪問するのに適切な時間を知るためにも、記者の取材体制を知ることは重要です。
記者と直接やりとりができるようになったら、一日の仕事の流れを尋ねてみるとよいですね。朝刊・夕刊それぞれの記事の締め切り時間や、その記者が取材に出ている時間と支局で記事を書いている時間などが把握できれば、忙しい時間帯を避けて情報提供できるようになります。
発信タイミングについては、こちらの記事も参考になります。
広報PR担当者が地方紙とリレーションを築く・アプローチする4つの方法
広報PR担当者が地方紙とリレーションを築こうとアプローチする場合、どんな方法があるのでしょうか。
今回は「記者クラブを訪問する」「新聞社に連絡しアポイントを取る」「署名記事からピンポイントに記者を探す」「記者会見やメディア内覧会を地方で実施する」という4つの方法を紹介します。
1.記者クラブを訪問する
自社のネタが該当する地域の記者クラブを訪問してみましょう。各地域に県政記者クラブや市政記者クラブがあります。
訪問の際は飛び込みではなく、事前に電話し、受付の方に訪問日時を伝えておくとベターです。その際、記者が多く滞在している時間帯などをヒアリングできるとよいですね。
記者クラブでは、加盟しているメディアすべてに一度にプレスリリースや資料を配布できます。FAXでの投げ込みが可能な場合もありますが、おすすめは各メディアに対して1部ずつ印刷したものを投げ込む方法です。記者の手元に紙のプレスリリースがあったほうが、そのままメモを書き込んだり、思い出したときに確認したりしやすいためです。必要部数は、受付に電話した際に確認しておきましょう。
記者クラブに資料配布に訪れた際、記者へのアプローチが可能であれば勇気を出して声をかけてみましょう。その場で名刺交換し、手短に要件を伝えます。自社のネタに興味を持ってもらえればその場で話ができる可能性もあります。
また記者クラブには地方紙の記者だけでなく、全国紙の地方支局の記者が在籍していることもありますので、アプローチが可能であればトライしてみましょう。
2.新聞社に連絡しアポイントを取る
新聞社に連絡し、記者とアポイントを取るというアプローチ方法があります。支局や通信社の電話番号は、新聞社のホームページや「広報・マスコミハンドブック(PR手帳)」で調べましょう。
電話がつながったら手短に要件を伝え、担当記者に代わってもらうようお願いします。電話に出た記者がそのまま話を聞いてくれることもあれば、担当記者を紹介されることもあります。その後、「ぜひ直接会ってお話ししたい」という旨を伝え、アポイントを取ります。
また、「資料を送っておいてください」という対応で終わることも往々にしてあります。その場合は焦らず、まずは資料の送付からリレーションを築いていきましょう。
3.署名記事からピンポイントに記者を探す
署名記事からピンポイントに記者を探し、その相手にアプローチする方法もあります。
媒体研究をしていると、署名記事を見かけることがあります。競合他社の記事や自社のネタに近い内容、自社のネタを売り込みたい特集やコーナーを担当している記者の署名記事を見つけたら、記録しておきます。
新聞社に電話をかけ、名指しで記者につないでもらえるようならコンタクトを取ってみましょう。
「〇〇に関する記事を拝見しました。弊社の〇〇について、ぜひ情報提供させていただきたく、お時間をいただけないでしょうか」などと頼んでみましょう。アポイントが取れたらその記者とのリレーション構築がスタートします。もしアポイントが取れなくても、メールアドレスを教えてもらうなどして、その後もつながりを維持できるようにしましょう。
withコロナ時代においては、アポイントも対面ではなくリモートを検討してもよいかもしれません。
4.記者会見やメディア内覧会を地方で実施する
地方で、記者会見やメディア内覧会を実施してみましょう。
記者会見やメディア内覧会のメリットは、一度に多くのメディア関係者との接点を持てるという点や、メディア関係者を自社の社長やキーパーソンと直接会わせることができるという点です。
その地域での新たな取り組みや、その地域の企業との提携、新商品発表などについては記者会見、その地域での新施設オープンなどの際は、メディア内覧会を実施するとよいでしょう。
記者会見やメディア内覧会の案内状は、すでにリレーションがある記者がいればその相手に送付しますが、もしいなければ記者クラブに投げ込むのも手です。実際に現地を訪れて持ち込んでもよいですし、郵送での投げ込みが可能であれば必要部数を印刷して郵送しましょう。
場合によっては、オンラインでの記者会見やメディア内覧会の実施も検討しましょう。オンラインであれば遠隔地でも記者会見を実施できるというメリットがあります。メディア内覧会の場合は、映像でうまく施設の様子を見せられるように入念にリハーサルしましょう。
地方紙向けの広報PRネタはどう見つける?6つの切り口を紹介
ここまで地方紙とのリレーションの重要性やアプローチ方法を見てきました。では、地方紙向けの広報PRネタはどう見つけたらよいのでしょうか。ここでは6つの切り口を紹介します。
1.支社・支局、工場などの拠点をその地域に開設
支社や支局、工場などの拠点をその地域に開設する際は、絶好のアプローチタイミングです。
なぜその地域に拠点を開設することにしたのか、これからその地域でどんなビジネスを展開していくのか、支社長・支局長・部門担当者はどんな人物なのかなど、地元のメディアに取材してもらいましょう。
2.Uターン・Iターン社員の活躍
Uターン・Iターン社員の活躍は地元紙で取り上げられやすいネタです。
Uターンの場合、一度都市部に出てから地元に戻ってきた社員を取材してもらうというパターンです。地元で頑張る地元出身者は地域で親近感を抱かれやすく、ワーケーションやフルリモートなどの気運が高まる今、地元出身の活躍する人を取り上げるコーナーなどで特集されやすいのです。
Iターンの場合、出身地域とは別の地方に移住した社員を取材してもらうというパターンです。高齢化や過疎化が進む昨今、地域で奮闘する移住者は注目されます。その社員がなぜその地域へのIターンを選んだのかなど、背景も併せてネタを売り込みましょう。
3.地域初の取り組み
首都圏などで普及しつつあるテーマであっても、その地域で初めての取り組みには、地方紙にとってのニュースバリューがあります。
例えば、ある地域に飲食店が初進出する場合や、珍しい施設のオープン、地域初開催のイベントなどがあります。ほかにも行政機関の発表において、補助金や子育て支援などの給付が地域として初めてであれば取り上げてもらえるチャンスとなるでしょう。
4.地域でのイベント開催
イベントを開催する際は、地域の地元紙に情報提供してみましょう。そのエリアの担当記者がイベントを取材してくれるかもしれません。
地域に活気をもたらすようなイベントや、目新しいイベント、画(え)になるイベント(人がたくさん集まるもの、出店が多く出るもの、ショーなど動きがあるものなど)は取材されやすいです。
5.地方行政と関連した取り組み
地方行政(市役所や町役場など)と関連した取り組みがある場合、地方紙で取り上げられる可能性が高くなります。地方紙の担当者が地元行政の動向をチェックしているためです。
地方行政の広報PR担当者は、すでに地元メディアとのやりとりがあり、連絡先を知っていることがあります。分担してメディア関係者に情報提供したり、一緒に記者会見を行ったりと、協力して広報PR活動ができるとよいですね。
6.地元の教育機関や学生と関連した取り組み
地元の小・中・高校や大学などの教育機関、学生と関連した取り組みも地方紙で取り上げられやすいネタです。
地方紙の読み手は地域密着の情報を得るために新聞を購読しており、その中には学生たちの親世代も含まれているため、学校が絡んだネタは関心を集めやすいのです。
地域の小・中学生を対象としたイベントの開催や、学校向けの製品導入事例、インターンとして受け入れている学生たちの活躍など、学校や学生と関連した取り組みがあれば情報提供してみましょう。
地方紙への掲載はメリットが多い!地域密着ネタでアプローチしよう
本記事では地方紙とのリレーションの重要性や、地方紙の特色、地方紙とリレーションを取る4つのアプローチ方法、地方紙向けのネタ6選を紹介しました。
地元での購読率の高さやデジタル版が拡散される可能性など、地方紙への掲載にはメリットが多いものです。地域密着の取り組みやイベント情報、地方行政や地元の学校と関連したネタなどでアプローチし、リレーションを構築していきましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
地方紙とのリレーションの重要性やアプローチ方法に関するQ&A
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