採用広報とは、自社の魅力や働く環境、価値観を伝えることで、求職者との関係性を築き、採用につなげる広報活動のことです。単なる広告ではリーチできない潜在的な採用候補者にアプローチできる点も、採用広報の重要な役割のひとつです。
特に近年は、新卒採用に限らず中途採用やパート・アルバイト、専門職など多様な人材ニーズに対応するために、採用広報の取り組みが広がっています。情報発信によって企業への興味・関心を高め、応募への動機づけや選考時の理解促進、入社後の定着・活躍にもつなげることが可能です。
本記事では、採用広報で活用したい発信テーマを7つに分類し、それぞれにおける具体的な広報企画や他社事例をご紹介します。企画立案のヒントとして、ぜひご活用ください。
採用広報で発信したい7つの企画と参考事例全55選
採用広報のコンテンツは、「誰に、何を、どのように届けるか」を意識して企画することが重要です。採用サイトやSNS、プレスリリースなど、届ける手段は多様化しており、各チャネルの特性や発信タイミングを踏まえた設計が求められます。
本記事では、採用広報で活用されている代表的な7つのテーマを紹介し、それぞれのテーマにおける発信のポイントと、実際の他社事例を厳選してご紹介します。新卒・中途・パートなど、対象者や採用フェーズに応じて柔軟に活用できる内容です。
これから採用広報に取り組む方はもちろん、すでに運用している企業でもアイデアの引き出しとして活用いただけるよう、全55事例を網羅的にまとめました。ぜひ他社事例も参考にしてみてください。
1.入社式・内定式
入社式や内定式は、企業が新たな仲間を迎え入れる重要なイベントです。新卒採用における節目であると同時に、中途社員向けに行うケースも増えており、企業文化や理念を共有する絶好の機会として活用されています。
このようなイベントを発信することで、採用候補者に対して「社員をどのように迎え入れているか」「どのような価値観を大切にしているか」を具体的に伝えることができます。当日の様子に加え、準備を担当した人事や先輩社員の想い、新入社員のリアルな声などを交えて紹介すると、企業への共感や安心感につながるでしょう。
また、これから就職活動を始める学生や、中途転職を検討している求職者にとっては、自分の未来像を重ねやすいコンテンツにもなります。式当日の様子だけでなく、その後の活躍や成長までを継続的に伝えることで、入社後のイメージ形成にも貢献します。
入社式の参考事例5選
- 2025年度株式会社東洋クレーンゲーム入社式のお知らせ
- 三菱鉛筆恒例 ユニーク入社式 第18回『鉛筆けずり入社式』を実施
- 社会人1日目をアートから始める入社式 – 手のひらでカラフルに未来を描く「ぺんてる体験」を実施 –
- キユーピー マヨネーズ発売から100周年の節目に新入社員133名が参加する「グループ合同入社イベント」を初開催
- 【星野リゾート】ホテル業界最多の約500名が入社、2025年春の入社式を実施
内定式の参考事例5選
- 2025年度新卒内定式を実施 – 来春入社予定の13名がから揚げづくりなどの調理研修を通じ「おいしさデザインⓇ」を体験 –
- メガネブランド「Zoff」2025年度入社内定式“サングラスパーティー”を開催!
- 2025年度内定式開催 入社倍率700倍!16名の内定者誕生〜当事者意識を高めるワークを企画 〜
- 【内定承諾者数100名以上】ニッカホーム 2025年新卒内定式を開催
- 【行事レポート】社内研修、運動会、25卒内定式を同日実施!その効果とは!?
2.新卒採用エントリー受付/採用サイトOPEN
新卒採用において、エントリー受付の開始や採用サイトの公開は、企業としてのスタンスやその年の方針を発信する重要なタイミングです。単に「募集を始めます」と伝えるだけでなく、どのような人材を求めているのか、今年注力したいポイントは何かといった企業からのメッセージを込めることが、応募者との関係構築につながります。
また、採用基準や選考プロセスに変更がある場合は、その理由や背景を丁寧に伝えることで、透明性や納得感を高めることができます。企業の考え方や変化に対する柔軟さをアピールできる機会にもなり、求職者にとっての信頼感にもつながるでしょう。
加えて、サイトの公開タイミングやデザイン・構成も、採用広報の重要な要素です。学生が就職活動を本格化させる前に、わかりやすく魅力的な採用ページを用意し、継続的な情報更新を行うことで、早期からの興味づけが可能になります。
新卒採用エントリー受付の参考事例5選
- 【離職率一桁台】SNSでも人気!眉毛まつ毛パーマ専門サロン『ロレインブロウ』が新卒採用をスタート!!
- エムピーキッチングループ 2026年新卒採用エントリー開始のお知らせ
- ニッカホーム、リフォーム業界で活躍する新卒社員の募集を開始!
- 音楽経験者を大募集!新卒施策「バンドマン採用」今年も3月10日スタート!
- 【星野リゾート】観光業界初!学年問わず選考に参加できる通年採用を開始、「学生主体の就活」へ
新卒採用サイトOPENの参考事例5選
- 博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ、新卒採用サイトをフルリニューアル! 総勢70名の社員が登場する「何者図鑑」「事例紹介」などを新たに公開
- 日本管財、新規学卒者向け採用サイトをリニューアルオープン~部門紹介・社内インタビューに加え、クロストークやショートビデオを新たに追加~
- サイバー・バズ、採用サイトを全面リニューアル。企業カルチャーや事業理解をより深めるコンテンツの拡充
- 【採用ミスマッチは約半分】株式会社リンク、3/27に「農機具王」採用サイトをリニューアル!求職者の“ミスマッチ”を防ぎ、リアルな職場の雰囲気を発信
- メンタルヘルスラボ株式会社が採用サイトを新規リリース!
3.説明会・セミナーの開催
採用における初期の接点づくりとして、多くの企業が取り組んでいるのが会社説明会や採用セミナーです。新卒・中途を問わず、求職者に企業理解を深めてもらうための重要な機会であり、参加者との距離を縮める有効な場となります。
近年では、オンライン開催や録画配信、現場社員との座談会形式など、開催手法も多様化しています。これにより、物理的な制約を超えて全国の求職者に情報を届けられるようになり、企業の採用活動における柔軟性が高まりました。
ただし、単に利便性や実施形式をアピールするだけでは、印象に残りにくく、メディアで取り上げられる可能性も低くなります。「なぜ今この説明会を実施するのか」「自社ならではのテーマや形式は何か」といった背景や意図をあわせて発信することで、認知拡大にもつなげることができます。
また、説明会で使用したスライドや社員のコメント、参加者の反応を二次的に発信すれば、当日参加できなかった求職者にもメッセージを届けることが可能です。採用広報の一環として、単発のイベントで終わらせず、継続的なコンテンツとして活用する視点が求められます。
新卒採用会社説明会の参考事例5選
- 2026年度卒業予定者向け早期会社説明会・選考実施 – 早期化する新卒就活市場に合わせ、昨年度より1か月前繰り上げて開催 –
- 【いーふらん】26卒向け会社説明会 3月開催のお知らせ~新卒向け会社説明会(オフライン・オンライン)3月分の詳細を発表~
- 【株式会社ジーン】2026年卒向け会社説明会開催のお知らせ
- 【2025年卒向け】エージェント職にチャレンジ!! C&R社「総合職1次選考会」をオンラインで開催
- 【楽天イーグルス】3/8(土) 楽天イーグルス主催 新卒採用 合同企業説明会を初開催!
4.インターンシップ/内定者インターン
インターンシップは春夏だけでなく、秋冬や通年でも実施されるようになっており、年間を通して採用広報の訴求機会となります。実施時期にかかわらず、単なる告知にとどめるのではなく、「参加者がどのような体験を得られるのか」「他社と異なる価値は何か」を明確に伝えることで、エントリーの意欲を引き出す効果が期待できます。
特に短期インターンが一般化する中で、参加者が得る学びや体験価値を具体的に言語化することは、選ばれるプログラムづくりにもつながります。終了後には参加者の声やフィードバックを発信することで、次回以降の募集にも好影響を与えるでしょう。
また、内定者インターンは、次年度の採用活動と重なるタイミングでの実施となるため、運営側にとっては負荷が大きい施策です。しかしながら、企業の本気度や育成姿勢を伝えられるという点で、採用広報としては非常に有効な企画のひとつといえます。
発信時には、受け入れの背景や企業の想いも添えると、より強いメッセージになります。さらに、内定者は就職活動中の学生にとって「一歩先を行く等身大の存在」です。就活を経てその企業を選んだ理由や入社への期待などを語ってもらうことで、企業の魅力をリアルに届けることができます。
インターンに関するプレスリリースでは、実施概要に加え、参加者の声や、そこから入社に至った社員のエピソードなどを含めると、読者にとって具体的かつ信頼性のある情報となります。
インターンシップの参考事例10選
(インターンシップ募集)
- 【25年卒※・26年卒対象】介護と旅行のコラボ企画。ツアーに参加して介護職の就業体験ができる「旅行型インターンシップ」開催決定!
- 虎竹の里で未来を切り拓く!2025年竹虎インターンシップ募集開始
- 【岐阜県飛騨市】課題先進地の挑戦!ベンチャー市役所でのドSなインターンシップ体験で公務員のイメージを変える
- (一社)十和田奥入瀬観光機構 インターンシップ募集のお知らせ
(インターンシップ採用)
- 本気で新規事業を体系的に学ぶ。毎年好評の内定直結型インターン「READY」第8期生募集開始!
- 27卒向け内定直結型「Goodpatch Summer Internship 2025 デザイナーコース」を開催します
(インターンシップ受け入れ)
(内定者インターン)
ほかにも、株式会社ARTHではインターンシップで参画する学生を含む若年層の活躍をうまく伝えています。
参考:若手社員が自社施設の客室をプロデュース!株式会社ARTHの人材育成プロジェクトとして、「TheMana Village」に新しい客室“縁(えん)”が誕生
5.アイデアソン・ハッカソン/採用イベント
アイデアソンやハッカソンなどの採用イベントは、単に応募者を集めるだけでなく、特定の職種やスキルに注力していることを社外に示す手段としても有効です。特にエンジニア職や企画職など、成果物やプロセスを通じて適性が可視化しやすい職種においては、実施する意義が大きいといえるでしょう。
こうしたイベントの開催を発信する際は、募集対象だけでなく、「なぜこのイベントを開催するのか」「どのような人材に出会いたいのか」といった企業の意図や背景をあわせて伝えることで、イベントの位置づけや魅力がより明確になります。
また、イベント終了後のレポートも採用広報の重要なコンテンツとなります。参加者のプロフィールや取り組み内容、表彰者の紹介などを通じて、企業が求めている人材像やカルチャーを、具体的なストーリーとして伝えることができます。
一過性のイベントとして終わらせず、前後の情報発信を丁寧に行うことで、より多くの潜在層への認知拡大にもつながります。
アイデアソン・ハッカソンの参考事例5選
- 〜データを使って、こども食堂の課題について考えよう!〜全国横断シリーズ第3弾「こども食堂オープンデータ アイデアソン@沖縄」開催!
- つくば発のスタートアップ、インドの才能を直接採用!優れた技術力と適応力を兼ね備えたエンジニアを発掘
- 【2月14日(金)スタート】エンジニア向けハッカソンを福岡で開催!1ヶ月間のチーム開発に挑戦
- 実践的なデータ分析を通じて、データサイエンティストの業務を体験できるハッカソン型インターンシップ実施
- 【26・27卒】最優秀者は年収500万以上で即内定!チーム開発に挑戦できる3Daysハッカソン受付開始
採用イベントの参考事例5選
- 【25新卒/26新卒】フットサルを通して企業と繋がる!ユニークな就活イベント「フットサル就活」を7/18(木)開催!
- 【イベントレポート】生成AI時代に挑む、未来を創るキャリア座談会(27卒向け就活イベント)を開催
- 就活×寿司×テック!「寿司就活(AI・データ分析編)」で40%以上の学生がインターン・本選考に応募
- ポジション確約×新卒採用で新しい採用のあり方を考えるコミュニティ「ジョブズ」発足!第一回開催レポートを公開!!
- 現役人事×早期退職者によるトークセッションを開催。ここでしか語れない本音も飛び出した!【退職理由のホントのところ】
6.採用条件の新設・変更
新たに募集する職種を設けたり、初任給や手当などの条件を見直したりすることは、求職者にとって重要な関心事項です。採用広報の観点からも、こうした情報は積極的に発信していきたい内容のひとつです。
たとえば以下のようなケースでは、企業の方針や採用に対する姿勢が伝わりやすく、ニュース性も高くなります。
- 初任給ほか初任給の増額
- エンジニアの新卒採用は行っていなかったが、優秀な人材を育てるために採用枠を新設
- 育児や介護などの家庭の事情による離職を防ぎ、ワークライフバランスに合わせた働き方ができるよう、転勤を伴わない地域限定社員の採用枠を新設
- 首都圏など生活費水準が高いエリア配属に限りフレッシャーズ手当を増額
こうした採用環境に応じた新設や変更は、学生だけでなく中途・多様なライフステージにある求職者にも関心を持たれやすいテーマです。採用対象や勤務地、働き方の柔軟性、スキル・経験、さらには前述のようなハッカソンなどの選考プロセスと連動した制度設計など、発信できる切り口はさまざまです。
いずれの場合も発信の際には、新設、変更の背景・意図を明確に伝えることが重要です。単なる条件の列挙にとどめず、「なぜこの制度を導入したのか」「企業がどんな人材を求めているのか」といったストーリーを含めることで、より深い共感や話題化を生みやすくなります。
採用条件の新設・変更の参考事例5選
- マーキュリー、初任給のベースアップと年間休日の増加を決定
- ゴルフ業界における『最高のサービス・最高の処遇』を目指し2025年4月より「キャディー」の待遇改善を推進 呼称を「コースアテンダント(略称:CA)」に変更し、より専門性の高いサービスを提供します
- ベースアップ12,000円と月例賃金・賞与の配分見直しを含めて基本給を18.3%引き上げ、2025年の大卒初任給は30万円を支給
- 富士屋ホテル 2025年4月 新人事制度を導入
- 【株式会社リード・イノベーション】2026年度の新入社員給与を40万円に引き上げ!若手人材採用を強化
以下の企業の配信事例は新卒採用のものではありませんが、変更の背景と変更概要が合致し、ニュース性を見いだしているものです。参考にしてみてください。
参考:株式会社ニチリョク、自分の知識や経験を生かして働きたい、人の役に立ちたい、社会貢献したいと考えているシルバー世代に新制度(働く場の提供)を開始
参考:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 2025年はクルーへの感謝も“NO LIMIT!” 4月からパート・アルバイトの月間支給総額・平均7%増 時給を一律50円引き上げ、諸手当も増額
7.社内制度の新設・変更
社内制度や福利厚生は、求人情報の一部として簡単に記載されることが多いものの、実際には求職者が企業を選ぶ際の大きな判断材料のひとつです。働き方や休暇制度、研修・教育制度、最近ではテレワークや地域限定勤務など、働く場所に関する制度を新設・見直す企業も増えています。
たとえば、育児・介護休業法の改正に伴い、多くの企業が制度導入や整備を進めています。こうした法制度対応に関する発信も重要ですが、求職者が本当に知りたいのは、「制度が実際に使われているのか」「活用している社員の声やリアルな感想」といった、運用実態に関する情報です。
制度の概要だけでなく、活用事例や取得率、社員インタビューなどを含めて発信することで、入社後の働き方を具体的にイメージしてもらうことができます。とくにライフステージの変化を見据えて転職を考える中途求職者にとっては、企業文化や柔軟性を判断する指標にもなります。
社内制度に関する情報は、あらかじめ届けるべきタイミングを想定し、採用広報の一環として計画的に伝えていくことが大切です。人事制度の変更や新設を「ニュース」として発信することで、働く環境づくりに積極的な企業であることを印象づけられるでしょう。
社内制度の新設・変更の参考事例5選
- 入社祝い金を支給する「シャイン・アップ制度」を導入
- 一人ひとりのパフォーマンス最大発揮と成長を目的に、 育児・介護・障がい・妊娠等の両立支援を拡充
- 「さとやく休暇」、「バースデー休暇」2つの特別休暇制度を2025年度から新規導入
- 給与100 万円アップを目指す「5・50・100(ゴーゴーイチ)計画」大阪万博の通期パスを支給し、アイデア創出に向けた福利厚生も
- 休職者をフォローする従業員に手当「産育休・介護休フォロー手当」を導入

多様化する求職者行動に合わせた、戦略的な採用広報を
働き方の価値観が多様化し、企業側の人材獲得が一層難しくなる中で、採用広報の重要性はこれまで以上に高まっています。人事担当者や広報・PR部門の多くが、採用市場の変化に対応する必要性を感じているのではないでしょうか。
その背景には、就職活動の早期化や情報接点の拡大、企業選びの基準の変化など、求職者を取り巻く環境の変化があります。こうした変化を正しく理解し、それに合わせたコンテンツやタイミングでの情報発信を行うことが求められています。
本記事で紹介した入社式・内定式、説明会、インターンシップのような接点の強化に加え、採用条件や社内制度の新設・見直しといった「制度面の変化」も、採用広報のテーマとして有効です。単なる社内連絡事項ではなく、企業の姿勢や文化を伝える“ニュース”として発信する意識を持つことが重要です。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
新卒採用における採用広報のコンテンツ企画に関するQ&A
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