ベンチャー企業で新たに広報を始めようと思っても、「何からはじめたらいいのかわからない……」と悩んでしまう人は少なくないでしょう。
本記事では、ベンチャー企業の広報の始め方や、広報担当者に欠かせないスキルについて解説します。
広報は大企業だけが行うものではない!ベンチャー企業でこそ広報活動を行うメリット
広報と聞くと、大企業の広報部門を想像する方が多いと思いますが、広報活動は大企業だけが行うものではありません。むしろ、ベンチャー企業でこそ広報PR活動を行うことが重要です。
とはいえ、「広報活動ってコストがかかるんだよね……」「ベンチャー企業が広報活動を行うメリットってあるの?」といった、疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
まずは、ベンチャー企業で広報活動を行うメリットを3つご紹介します。
メリット1.企業や事業の認知を拡大できる
ベンチャー企業で広報活動を行う1つ目のメリットは、「企業や事業の認知を拡大できること」です。
広報活動は、企業やサービスの認知拡大につながります。ただ認知を得られるだけでなく、会社への信頼性が増すことで、ファンが増えることも広報活動のメリットです。
また、資金調達を実現させるためにも、採用を強化するためにも広報活動は必須です。
メディアへのアプローチ方法や露出戦略を練る以外にも、調達した資金で行いたいことや、目指していること、ビジョンを明確にしたうえで広報活動することが重要となります。
メリット2.低予算で広報活動に投資ができる
ベンチャー企業で広報活動を行う2つ目のメリットは、「低予算でも広報活動に投資ができること」です。
広報活動は「予算がかかる……」と思い込んでいる方も多いと思いますが、実は低予算や予算ゼロでも活動することが可能です。
昨今は、プレスリリースを無料で配信できるサービスも存在し、X(旧 Twitter)やInstagram、YouTube等を駆使して広報活動を行う広報担当者も多く存在します。
ただし、低予算でも広報活動は可能ですが、積極的に広報活動を行う、攻めの姿勢が大切になってきます。将来のために、早い段階で広報活動に投資することをおすすめします。
メリット3.社員のエンゲージメントを向上できる
ベンチャー企業で広報活動を行う3つ目のメリットは、「社員のエンゲージメント向上につながること」です。
広報活動は認知拡大だけのものではありません。広報活動を通して、社員のエンゲージメント向上や採用にもつながります。
企業が良い切り口でメディアに掲載・放映されたとき、社員は「世の中の役に立っているんだ」「うちの会社がテレビに出てる!」など、自社で働いていることに自信を持つことができます。
制度などを改定した場合、「社員へのメリット」や「改定理由」が放映されると、自分たちのことを想ってくれている会社なんだと感じることもあります。
ただ掲載されることだけでなく、社員を大切にしていることをPRできることは、働く社員への働くモチベーションやエンゲージメント向上につながり、離職率の低下も期待できます。
広報活動は組織課題の解決にもつながる非常に重要なポジションだといえるでしょう。
ベンチャー企業の広報が行うべき3つのこと
小規模かつスピード感もあるベンチャー企業では、効率的な広報活動が求められるケースが往々にしてあります。担当者の多くは、さまざまな制約の中で出来ることを探し、自社にフィットした広報ノウハウを、実践を通じて習得していく必要があるでしょう。
また、企業そのものへの「信頼」と提供しているサービスや商品への「理解」が、社会に正しく認知されると、売上や短期的なKPIの達成だけでなく、資金調達や採用活動の円滑化にも寄与し、結果的に説明のための時間と費用を抑えることにもつながります。
ですので、まず何よりも「知ってもらう」ところから始めましょう。「この領域ではこの会社」といった認知のアドバンテージを高める活動に取り組むことが重要です。
1.企画出しを怠らない
ベンチャー企業の広報活動は、まず「ネタ作り・企画出し」からスタートします。
相互理解の深いステークホルダーと良好な関係を維持する動きを「守りの広報」とするならば、ベンチャー企業の広報活動の多くは認知が不十分な状況からスタートするため、情報を積極的に開発し、社内外に発信していく「攻めの広報」が求められます。
「攻めの広報」を実践するためには、会社やそこに所属する人々、商品、サービスに関わる情報を抽出し、第三者からみて分かりやすいかたちに昇華していく「ネタづくり」のアクションが極めて重要になってきます。
自社の中に埋もれていて、まだきっと多くの人が知らない情報に関心をもってもらうためには、「わかりやすさ」に配慮しながら受け手が何を欲しがっているのかを考えることが大切。
発信するネタをブラッシュアップしていくことが、ひいてはメディアにニュースとして取り上げてもらうことにつながり、ステークホルダーからの関与を促すために欠かせない「攻めの広報」の第一歩となります。
他社の広報企画のたて方や、事例は参考になるものが多いです。ぜひ「関連記事」からご確認ください。
2.情報を継続的に発信し続ける
ベンチャー企業の広報活動は、継続的に情報を発信し続けることも大切です。
ベンチャー企業の広報担当者がメディアや記者と良好な関係を築くためには、一度の接触だけではうまくいきません。だからこそ、継続的に自社の情報を発信していく必要があります。
まずは、自社をメディアに知ってもらえる仕組みを作り、露出の獲得を目指しましょう。
3.他社の広報担当者やメディアとのつながりを作り続ける
ベンチャー企業の広報活動をする際に、重要になる3つ目のポイントは、メディアとのつながりを作り続けることです。
業界記者2〜3人とつながりを持てたからといって、人脈づくりを形成を怠ってはいけません。記者の部署間異動は早いケースもあるので、メディアとのリレーションは複数持つことをおすすめします。
また、メディア関係者だけでなく、同業他社の広報担当者とつながりを持つこともおすすめです。
「ライバル社の広報に協力するなんて……」と思われるかもしれませんが、広報担当者同士でつながりを持つには以下の2つのメリットがあります。
メリット1.良質な記者へのアプローチ先を増やせること
つながっていない記者がいれば、お互いに紹介し合うことで、自分自身もコンタクトできるメディアの数が増えます。
メディア側へ「他社がこんなおもしろい動きをしているので、ご紹介してもいいですか」と定期的に情報提供をし続けると、今度はメディア側から「○○の情報持っている方知りませんか?」と連絡が来る場合もあります。
メリット2.同業他社の動きや、業界全体の動きが把握ができること
同業他社の広報担当者とつながると、業界全体で起きている問題について情報交換ができ、同業他社がどのような広報活動を行っているか把握できます。それだけでなく、お互いに困っていることがあれば、フィードバックやフォローし合うことも可能です。
社外にも積極的に出向き、広報担当者やメディアと定期的に情報交換を行うことで、信頼関係を構築していきましょう。
ベンチャー企業の広報の始め方
ベンチャー企業の広報担当者はタスクが無限大。どのタスクから着手していいのか悩んでいる広報担当者も多いはず。
まず、広報担当に着任したらやるべきことを3つのステップに分けてご紹介します。
STEP1.自社のことを知ることから始めよう
ベンチャー企業の広報を始める1つ目のステップは「自社を把握すること」です。
広報担当に着任したからといって、すぐにプレスリリースを配信する必要はありません。
広報担当者は企業の顔となるため、まずは自社を把握することから始めましょう。業界情報から、徐々に会社や事業についてインプットすることをおすすめします。時間があれば、社員へのヒアリングも実施しましょう。代表やトップの意見だけでなく、社員の悩みや考えていることを把握し、広報活動で解決策を生み出すことも重要な仕事のひとつです。
業界や自社のことを勉強していくと、自ずと課題が浮き彫りとなってきます。やみくもに情報発信するのではなく、広報を通じて、どのように解決すればいいのかを見つけ出してから動きはじめましょう。
STEP2.1年後先まで見据えたPRスケジュールを作ってみよう
業界や自社の課題が洗い出せたら、2つ目のステップとして1年間のPRスケジュールを作ってみましょう。この段階では、簡易的なスケジュール作成で構いません。
1年を通して、どのようなプランで広報活動を行っていくのかを考えます。ただ広報活動をスケジュールに並べていくだけでなく、社会の時流に合わせて作成します。
ある程度スケジュールの作成が完了したら、代表や広報部長と一緒に、今後どのように広報活動を進めていくのか、そもそも実現可能なのか、など話し合う場を設けて最終確定させていきましょう。
STEP3.広報イベントや勉強会に積極的に参加しよう
3つ目のステップは、広報イベントや勉強会に積極的に参加し、広報のことを学ぶことです。
広報活動未経験者やベンチャー企業で広報活動を始める場合、広報について相談できる人が近くにいないケースが多いのが現状です。「どうやって広報のことを学んでいるんだろう……」と、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
そんなときは、広報イベントや広報勉強会に参加することをおすすめします。イベントや勉強会に参加すると、知識を体系的に得られるだけでなく、他社の広報担当者やメディアとつながれることも大きなメリットのひとつです。
PR TIMESでも広報PRをはじめて担当する方に向けた、無料の勉強会を実施しています。以下のページから詳細をご確認ください。
ベンチャー企業の広報手段とは?
発信するネタが決まったら、発信する手段を決めましょう。手段は多様化し、広報担当者が適応すべき領域もますます広がりをみせる中で、常に最適な手段を選択していく必要があります。
その際、あまりに難易度の高い手段を選ぶと、広報活動において最も大切な「自社らしさ」を損なってしまいます。まずは直観的に「出来そう」と思えるようなものからはじめてみるのはいかがでしょうか。3つの具体的な手段をご紹介します。
プレスリリースを書く
事業や組織の様々な動向をステークホルダーに伝えるために、プレスリリースの配信は最も基本的かつ重要なアクションです。新商品・新サービスの発表時やリニューアル時、組織の理念を制定したときなど、様々なタイミングにおける発信手段として有効的に活用できます。
また、プレスリリース配信サービスを活用することで、メディア関係者だけでなく、一般生活者にも直接情報を届けることができるため、近年では、柔らかく親しみのある表現も増えてきました。まずは、様々な先行事例を手本としながら伝わりやすい文章を作成してみることからはじめましょう。
イベントを開催する
小規模イベントの開催にチャレンジすることも、自社への理解を深められる点、参加者との関係価値を高めやすい点で積極的に活用したい手段といえます。
特に、発信する情報が多岐にわたるときや、商品サービスそのものが多機能でスムーズな理解を促しづらいときは、イベントを通じたダイレクトな発信機会も重要な広報手段となります。
その一方で、イベントの開催は、会場の確保から準備段階における進行管理、当日の運営まで、開催日までの間にやるべきことが多く、工数が多い側面もあります。開催する度にゼロから考えていては、中長期的かつ継続的な実施は難しくなってしまうでしょう。
オペレーション上のコストと見合ったやり方を仕組み化し、その継続性を高めながら、参加者の満足度や関係者の達成感向上につなげていくことが求められます。慣れている人を巻き込んだり、参加したイベントからヒントを得ることも大切です。
SNSをはじめる
オンラインコミュニケーションも大事な広報活動のひとつです。ひとつひとつのアウトプットは小さくても、継続的に発信していくことで「企業人格」を明らかにしていくことができます。
どのような企業なのか、何を解決してくれる商品・サービスを提供しているのか、顧客による評価はどうかなど、ステークホルダーの信頼を得るうえで、SNSアカウントの有無は、大切な要素のひとつになります。
上手に運用を継続していくことで、告知・集客手段としてはもちろん、アンケート実施、フォロワーとの1to1コミュニケーションなど、発展的な活用も期待することができます。あらゆる情報発信の基盤として、アカウントの運用を検討してみましょう。
メディアへ情報提供してみる
プレスリリースや企画が完成したら、メディアへ情報を提供してみましょう。もともとつながりのあるメディアがあれば、電話やメールで話を持ちかけます。
メディア関係者とつながりを持っていない場合、自社の業界記事を書いている記者を探すところから始めます。メディア関係者の探し方は、大きく分けて下記3つです。
- ネットや新聞の署名記事から探す
- 専門誌に電話で直接アプローチしてみる
- 広報担当者に紹介してもらう
業界メディアを洗い出し、記者を特定してアプローチすることは簡単なことではありませんが、広報活動の「メディア提供」は非常に重要な仕事となりますので、ぜひ挑戦してみましょう。
ベンチャー企業の広報担当者に必要なスキル
プレスリリース、イベント開催、SNS運用の他にも、他部署との連携、戦略策定、取材対応など、仕事のフィールドは多岐にわたります。多種多様な能力が要求される難しい仕事であると同時に、やり甲斐や達成感を見出しやすい仕事でもあります。広報担当者に欠かせない4つのスキルをみてみましょう。
「胆力」と「行動力」
広報担当者は、手元にある素材から話題を創り出すことも、何もない状態からプロジェクトを生み出すことも求められます。何かを構想するだけでは絵に描いた餅ですが、企画・コンセプト作りに端を発し、周囲を巻き込むべく行動し、物事を前進させ、実現を目指していく力が必要です。
さらに、その手腕は準備段階に限りません。世に出す段階になれば「どうすればより興味関心を惹くことができるか」について考えを巡らせ、いつ、どこで、どのようにと、具体的な計画立案と実行まで率いることになります。プロセスから結果まで、粘り強く推進していく胆力と行動力は欠かせません。
「速力」と「適応力」
トレンドや話題を日頃からキャッチしていても、自社広報に生かせなければあまり意味がありません。情報の消費スピードが速さを増し、変化も激しい環境下では、それらに対応していくだけでなく、自社の情報発信にとって大きく関与する機会やタイミングを最大限活かす視点も重要です。
またメディアも含めた、自社を取り巻く様々な関係者も、日々状況は変化していきます。自社の動きだけでなく、それらの変化にも目を向け、スピーディーに呼応する能力が求められています。
注目したい!ベンチャー企業の広報成功事例3選
他社の広報事例を参考にしたい広報担当者に向けて、広報活動が参考になるベンチャー企業事例を3つご紹介します。
実際に広報が上手なベンチャー企業を参考に、広報活動を進めていきましょう。
事例1.株式会社タイミー
サービスが有名になる前から、メディアアプローチを積極的に行っていたベンチャー企業の一例として「株式会社タイミー」があります。
最初の頃はアポを取るのにも苦戦したとのことですが、上場に向けた現在のフェーズでは数多くのメディアが取り上げています。
この1年でWebメディアやテレビ、雑誌などを含めた媒体になんと100以上ものメディア露出を実現。 苦労を乗り越えたからこそメディアに取り上げられる機会が多く、そのおかげでサービスのファンが増え、認知度も高まっているといえるでしょう。
事例2.freee株式会社
freee株式会社は、遊び心を取り入れながらのリレーションを築いていることが特徴です。
メディアとの忘年会等は一般的には会食形式で行いますが、freeeの場合はスナック形式で広報チームがママとして開催するなど、遊び心を取り入れていることが他の企業と一線を画しているといえるでしょう。
遊び心を取り入れることは、メディアからの印象も残りやすいので、その場限りの接触だけで終わらず継続的なリレーションが築けます。
300人規模の大型イベントを開催した際、会場に立ち見が出るほどの来場者集客に成功したり、メディアの招集とインタビュー獲得も実現したり。また、上場当日には70名以上の記者が集まるなど、社外とのリレーションが強い理由には「遊び心」があるのではないでしょうか。
事例3.株式会社グッドパッチ
株式会社グッドパッチでは、社員が積極的に情報発信をしていることが特徴です。
広報担当者や代表だけが情報発信しているのではなく、X(旧 Twitter)を見てみると、グッドパッチの社員が積極的にSNS上で情報発信をしています。
広報担当者が定期的に情報を発信し続けるには、社員の協力が不可欠です。情報発信することが会社の文化とすることは容易ではありません。
社員数が増えていくと、広報活動への理解の浸透は難しくなってくるので、早い段階で広報活動や情報発信を根付かせましょう。
ベンチャー企業にとって広報活動のメリットは大きい
ベンチャー企業の広報の始め方と求められるスキルについて紹介してきました。「自社らしさ」を重んじ、様々なステークホルダーとのより良い関係構築を図る役割を担う広報はまさしく企業の「顔」であり、様々な実践経験を通じてはじめてスキルが身につく職種でもあります。
ベンチャー企業に限らず、広報活動のメリットは大きいと言えます。自社ならではの広報ノウハウを確立し、広報活動による様々なメリットを得ながら会社を成長させていくために、まず踏み出す一歩を決め、取り組んでみてはいかがでしょうか。
ベンチャー企業の広報活動に関するQ&A
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