企業とステークホルダーとの関係構築を担う広報PR。その具体的な手段・方法は、プレスリリースの配信からイベント企画、コーポレートサイトの運用まで多岐にわたります。
今回は、数ある広報PR活動の手段・方法の中から、具体例を12個ピックアップして紹介します。
そもそも広報活動を行う目的とは?
広報PR活動の目的は、社内外のステークホルダーと良好な関係を構築すること。目的はさらに、広報PR活動を行う対象によって以下の3つに分類できます。
- コーポレート広報:採用や資金調達など自社全般に関わる情報の受発信を行い、株主や採用候補者との信頼関係を構築する
- サービス広報:商品・サービスに関する情報の受発信を行い、顧客からの信頼を獲得するとともに、売上に貢献する
- 社内広報:社員に向けた情報の受発信を行い、経営理念の浸透や離職率低下など社内活性化に寄与する
広報活動を行う目的について、詳細は以下の記事で解説しているので、参考にしてください。
広報活動の12の手段・方法の具体例とコツ
広報PR活動の目的を達成するための手段・方法には正解がなく、媒体研究や同業他社・業界の研究、プレスリリースの配信、イベントの開催などさまざまなものが考えられます。
ここでは、社内外への広報PR活動で用いられることの多い12の手段・方法の具体例と、それを実行するときのコツをご紹介します。
1.媒体研究
媒体研究とは、個別のメディアを研究すること。「過去の企画や特集にどんな傾向があるのか」「ネタの決定権を握るキーマンは誰か」など、さまざまな角度からメディアの特徴を把握します。
取材されたいという熱意だけが先行して、自社の製品とはまったく縁のないメディアへ企画を提案しても掲載にはつながりません。メディアの特徴をきちんと把握したうえで、「このネタはあのメディアの〇〇さんへ提案してみよう」と、戦略的に行動する必要があります。そのためには、地道に毎日コツコツと研究を積み重ねることが大切です。
媒体研究の具体的な方法や実行時のコツについては、こちらの記事を参考にしてください。
2.同業他社や業界の研究
同業他社がどんな形でメディアに露出したかを知ることは、自社の広報戦略を立てるうえで非常に役に立ちます。同業他社が取り上げられている=自社の掲載可能性も高いと考えられるためです。
具体的には、他社が掲載されているメディアを自社のアプローチ先として参考にしたり、他社が取材されている切り口を自社の企画に活かしたりできます。もちろん、他社の切り口をそのまま真似をするだけでは二番煎じとなりニュース性が劣るうえ、「自社ならでは」の魅力が伝わりません。他社研究と同時に、自社の「革新性」「特徴」など、独自の「取材するべき理由・ストーリー」も明確化できるとよいでしょう。また、業界全体のトレンドも把握し、広報戦略を適宜アップデートすることも大切です。
広報PR担当者が同業他社と接するときの注意点や情報共有のメリットについては、こちらの記事を参照してください。
広報戦略の立て方についてはこちらの記事で解説しています。
3.プレスリリースやニュースレターの作成・配信
プレスリリースは、メディア関係者からの問い合わせにつながる重要な情報源です。必要な情報を漏れなく、正確に、かつわかりやすくまとめたプレスリリースを作成しましょう。いつ、どこで、誰に向けて配信するかも重要な要素です。
プレスリリース配信サービスで一斉配信するのが一般的ですが、前述の媒体研究の結果を参考にしながら、発表内容と親和性の高いメディアや記者へ直接情報を提供することも有用です。
プレスリリースを作成するときのコツやポイントについては、こちらの記事でテンプレート付きで解説しています。
ニュースレター作成のコツやポイントについては下記の記事を参考にしてください。
記者へ直接情報を提供する手段として、後述するプレスリリースの「投げ込み」や「メディアキャラバン」も有効です。
4.記者発表会の開催
新製品や新サービスについて広く知ってもらいたい場合には、多数のメディア関係者が一堂に会する「記者発表会」を開催するのも有効です。予算や時期・会場の確保、メディア関係者の招待など、さまざまな準備が必要なので、広報PRの仕事の中でも規模の大きいものだといえるかもしれません。
実施までに労力はかかりますが、しっかりとメディアの目にとまる切り口をつくれば、一定の露出効果を見込めるのが記者発表会の特徴です。媒体研究・業界研究の結果を活かし、社会や生活者から関心を集めることができるかどうか、精査しながら企画を進めましょう。
記者発表会を開催する際に押さえておきたいポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
また、メディアに取り上げてもらうことを直接的な目的としない「プレスセミナー」という手段もあります。プレスセミナーは、メディア関係者を対象とした「勉強会」であるため、記者発表会よりも自由な形式・内容で実施できるのが特徴です。さらに、業界の第一人者としての自社をメディア関係者に印象づけられます。
プレスセミナーの効果や開催例、実施のコツやポイントなどはこちらの記事にまとめています。
5. 記者クラブへの投げ込み
記者クラブとは、省庁・政党、自治体などの公的機関に設置されている、大手メディアの記者で構成される任意組織のこと。記者にとって、取材先に関する情報を最速で手に入れられる窓口となっています。
こういった記者クラブにプレスリリースなどを「投げ込む」(※)と、複数の新聞社・テレビ局などの担当者へ同時に情報を届けることができます。
※「記者クラブへの情報提供」を意味する広報PR用語のひとつ。ポストへの投函、窓口への手渡しなど実際の手法はさまざま
記者クラブまで足を運ぶ必要のあるアナログな手法ですが、社会的重要性の高い発表などであれば投げ込みによって報道につながる可能性が大きく高まるでしょう。
記者クラブへの投げ込みを行う具体的な方法やコツ・注意点については、こちらの記事も参照してみてください。
6. 社内報の作成
社内広報(社内への情報発信)の手段のひとつが社内報です。経営理念の浸透や離職率低下、組織活性化に寄与するために、社内報を通じて経営の状態を共有したり、社員間のコミュニケーションを促進したりします。
目的が経営理念の浸透なら代表インタビューや経営戦略の取材、組織活性化なら新入社員の紹介や社内表彰者インタビューなど、広報PR担当者の企画次第で幅広いコンテンツを生み出せます。また、壁新聞や冊子、Webコンテンツなどいろいろな形で発行できるので、実現したい状態に合わせて適切な手段を選びましょう。
効果的な社内報を作成するコツやポイントについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
7.コーポレートサイトの更新
社内外のステークホルダーへ正確な情報を届けるためには、コーポレートサイトの更新も重要なポイントです。ステークホルダーとの重要な接点であるコーポレートサイトには、会社概要、プレスリリース、製品・サービス情報、住所、問い合わせ先、採用情報、IR情報など、多くの情報が掲載されているもの。それらを常に最新の内容にアップデートしておくことは、ステークホルダーとの信頼関係の構築に寄与します。
広報PR担当者が押さえておきたいコーポレートサイトのコンテンツ、運用のコツやポイントについては、こちらの記事で解説しています。
8.自社ブログ・SNSを通じた情報発信
自社ブログ・SNSを活用すると、生活者やステークホルダーとよりカジュアルにコミュニケーションを行えます。生活者やステークホルダーにとって自社を身近に感じてもらえるのがメリットですが、自由に運用しすぎると、炎上などの事態を招き信頼を失うリスクもあります。
自社の経営理念やミッション・ビジョンを軸に、企業・団体として一貫性のある姿勢を伝えることを意識しましょう。
また、「採用ブログ」のように、ブログやSNSを運営する目的をはじめに決めておくこともポイントです。漫然と情報発信するのではなく、自社の課題を改善することを意識して戦略的に運用できる状態を目指しましょう。
採用ブログを運営するときのポイントはこちらの記事にまとめています。
企業公式SNSの始め方や運用の注意点についてはこちらの記事を参考にしてください。
9.イベントの開催
生活者や採用候補者を対象にしたイベントは、広報PR担当者が企業や製品・サービスの魅力を直接伝えられると同時に、リアルなフィードバックを得られる機会です。
イベントを開催する場合、目的からゴール、予算、メディア関係者へのアプローチ、その他の細かなオペレーションに至るまで、設計すべきことが多くあります。また、高額な費用がかかることも多いため、最終的に達成したい目的を明確にしたうえでイベントを設計し、費用対効果を意識することが重要です。
企業の認知度向上やブランディング、生活者とのコミュニケーションなど、広報PR担当者としてゴールを具体的に描き、目標を設定します。
集客につながるイベント企画の具体的なアイデア15選を、こちらの記事で紹介しています。
10.メディアキャラバンの実施
メディアキャラバンとは、自社製品やサービスのサンプル・資料・プレスリリースなどを持参して多くのメディア関係者を訪問する活動のこと。メディア掲載や取材を目指すのはもちろん、直接足を運び顔を合わせることでメディア関係者と信頼関係を構築するねらいもあります。また、メディア関係者からその場で自社製品・サービスについてリアルなフィードバックを得られるのもメディアキャラバンならではのポイントです。
東京に拠点を置いているメディアが多いため、首都圏外に本社を置く企業・団体の広報PR担当者の場合、出張などの機会にまとめてアポイントを取り、各メディア関係者を訪問することが一般的です。集中的に行うことで高い効果が期待できます。
メディアキャラバンの概要や実施の流れ、メディアキャラバンでアポイントが取れないときの対処法など、それぞれ下記の記事で詳しく紹介しています。
11.ユーザーコミュニティの運営
ユーザー理解とエンゲージメントの強化のために運営される「ユーザーコミュニティ」。BtoCの場合には生活者、BtoBの場合には企業・団体が「ユーザー」となります。いずれの場合にも、ユーザーと自社が双方向のコミュニケーションを取ることができる貴重な場です。
コミュニティ上で得られる情報をもとにユーザー分析を行ったり、自社のサービス・プロダクトのナレッジを集約してカスタマーサポートのコストを削減したりと、目的次第で活用の幅が広がります。ステークホルダーとの信頼関係構築の手段としてユーザーコミュニティは非常に有効だと言えるでしょう。
コロナ禍を経て普及したオンラインのユーザーコミュニティについて、こちらの記事で運営のメリットや作り方・実際の事例を解説しています。
12.オリジナルグッズの制作
企業・団体のノベルティ・オリジナルグッズは、企業・団体のイメージの醸成や認知度向上、宣伝、組織活性化に使える広報PRの手段です。例えば、来社したステークホルダーに渡すペットボトル飲料、従業員が身につける社員証ホルダー、イベントで配布するステッカーなど、制作できるグッズの種類は多岐にわたります。
ただ、あまり実用性のないグッズでは、もらった側も持て余してしまいます。できる限り、日常生活で使える実用的なものがよいでしょう。自社らしさがしっかり伝わるデザインにすることが大切です。
目的に立ち返り、最適な広報PR活動の手段・方法を模索しよう
広報PR活動の手段・方法として、基本的な12個の例を紹介しました。もちろん広報PR活動の手段・方法はこれだけではなく、各企業・団体の経営課題や重視する活動によっても異なります。基本にとらわれすぎず自由な発想で行ってみることも重要です。
広報PR活動の目的は、さまざまなステークホルダーとの良好な関係を築くこと。常に目的に立ち返り、自社の課題を鑑みて最適な方法を模索することが大切です。広報PR担当者として活躍するために、状況に応じた多様な解決策を提示できる状態を目指しましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報の手段・方法に関するQ&A
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